ものづくりコラム COLUMN

製造業の業務改善事例5選│アイデアや提案を考える手順とヒント

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総務省・経済産業省が発表している「令和3年経済センサス-活動調査」によると、2020年の我が国の売上(収入)金額において、製造業は第2位(合計に占める割合23.0%)であり、依然として日本の基幹産業であるといえます。一方、経済産業省・厚生労働省・文部科学省が発表している「2021年度版ものづくり白書」によると、製造業各企業の売上高、営業利益は減少傾向にあります。

【参考】 「令和3年経済センサス-活動調査」(総務省・経済産業省)
【参考】 「2021年度版ものづくり白書」(経済産業省・厚生労働省・文部科学省)

減少傾向の背景には、他国の国際競争力の高まりや国内での少子化に伴う人手不足など、さまざまな要因が考えられます。当然ながら国全体の問題解決、改善に向けた取り組みが必要ですが、製造業各企業の改善活動も欠かせません。たとえ今までの業績が安定していたとしても、日々の業務改善を怠れば、長く生き残っていくことは難しい環境といえるでしょう。

しかし、自社の製造現場において改善ポイントを見つけることは簡単ではありません。
この記事では、製造業の業務改善事例5選を紹介し、アイデアや提案を考える手順とヒントを解説していきます。

1.製造業の業務改善を進める手順

製造業の業務改善を進める手順として、問題点の洗い出しから改善に向けた計画の立案、実行の各プロセスについて説明します。

Step1 業務内容を「見える化」する

大前提として、最初に既存の業務プロセスと発生中の問題を見える状態にすることが必要です。仮に経営層や管理職に問題点が見えなかったとしても、従業員が改善の必要性を感じていないとは言い切れません。

従業員の意見を拾い上げるために、まずは業務内容を文書化し共有することが大切です。具体例としては、作業手順のフローチャート化などが挙げられます。さらに、各部署や事業部間で必要な連携も可視化し情報を共有しておくことも必要です。その際は、担当者や管理者に直接ヒアリングを行うことをおすすめします。

属人化している業務や全社で認識されていない業務を洗い出し、よりよくできるポイントはないか探し出すのが改善のスタート地点です。

Step2 問題を洗い出して優先度を決める

現場で働く作業者から問題点や改善点の指摘・意見が上がってきたら、軽んじることなく、問題点を洗い出すチャンスとみなすべきです。

例えば、「治具の置き場を変えたい」といった内容のみでも当然価値のある意見です。一見ただの不満・不平に感じられる内容であっても、業務の無駄や非効率、従業員への過度な負担などの顕在化されていない問題が明らかになるきっかけとなり得ます。

挙がってきた問題点をリスト化し、対処の優先順位をつけましょう。改善案の策定や実行は手間がかかるため、通常業務に比べどうしても後回しになりがちです。期限を設けた具体的な行動計画を決めることが大切です。

Step3 必要なタスクを整理・実行する

解決が必要な問題点や改善できるポイントをリストにまとめたら、改善に向けた計画を策定します。計画の実行担当者を決めることも有効です。

どのような改善案があるのか、効果が高くてもコストがかかるもの、コストはかからなくても改善効果が小さいものなど、それぞれの案のメリット・デメリットを整理します。最終的に責任者の合意に至ったプランを担当者に実行させます。

Step4 効果を計測しながら改善を進める

改善計画を実行させたらそれで終わりではありません。たとえば業務の効率化を図って現場改善のつもりで設備・装置・備品のレイアウトを変更したものの、予想に反して利用しづらくなってしまい、従業員から不評だったという例もあります。

狙った効果が出ているか、効果を計測しながら改善を進めます。言い換えれば、改善とは流動的なものであり、日常的に続くものでもあるのです。

2.製造業の業務改善に成功した事例5選

実際に業務改善、生産性向上に成功した事例を5つ、それまでの背景と取り組み方、効果についてご紹介します。

システム導入を機に部門横断で業務を改革、全部門で業務を見直し
(株式会社フジワラテクノアート 様)

■目的・背景
2019年に、「創造的業務に向けた時間の創出」を経営方針として、業務効率化への取り組みを開始。業務の可視化・標準化、生産管理の効率化に取り組む。当時は、手組みの販売管理システムと、Excelや紙ベースでの設計・製造工程の管理を併用していた。新システムを検討する中で、経営方針を実現し、長期にわたる会社の成長を見据えて活用できるシステムだと感じ、テクノアの「TECHS-S」を導入。

■取り組みと効果
導入目的を、経営方針である「時間の創出」と明確にしたうえで、業務改革を推進。実現委員会を立ち上げ、トップダウンとボトムアップ両方の体制を整えた。全部門の担当者を集め、業務フローの見直しとルール化を行った。

「TECHS-S」で情報の可視化が実現した結果、社内のコミュニケ―ションが活性化。原価情報を多角的に確認できるようになった。部門横断で業務の見直しを行い、月間400時間もの発注工数を削減。ペーパーレス化も実現し、用紙代や、電話・FAX等、月に約12万円の通信コストも削減できた。DX化、IT化による時間創出により、社内に新たなチャレンジへの意欲が生まれ、よい循環ができた。こうしたIT活用が評価され、2020年に「おかやまIT経営力大賞」の大賞を受賞。また、2022年には「日本DX大賞」にて大賞を受賞。

 

※導入製品:
個別受注型 機械・装置業様向け生産管理システム「TECHS-S(テックス・エス)」

進捗確認工数:年間1,200時間削減
(株式会社山口技研 様)

■目的・背景
従来はExcelで生産管理を行っていたが、ファイルやシート間の連携が複雑になり、処理に時間がかかったり、操作ミスでデータが壊れ、データ自体のチェックやメンテナンスが必要となったりと、運用の限界を感じていた。そこでシステム導入の検討を始め、データ抽出が簡単で、帳票作成も融通が利き、サポートも手厚い「TECHS-BK」を導入。

■取り組みと効果
以前は、得意先から問い合わせがある度に進捗確認のため工場内を探し回っていたが、工程の進捗状況が自席で確認できるようになったことで月間100時間の工数を削減。図面もデジタル化し、ボタンを押すだけで検索や参照が行えるように。図面を技術的財産として活用できるようになった。

原価グラフを価格交渉に活かしたり、帳簿作成システム「EUC Tool」から出力したデータをもとに、受注金額ベースで負荷状況を確認したりすることで、収益率を10%アップ。また、作業時間を手書きからタブレット入力に切り替えたことで、効率化と進捗管理ができるように。システム導入による改善効果と、社員の意識向上という付随効果を評価され、「中部IT経営力大賞2018」で奨励賞を受賞。

 

※導入製品:多品種少量型 部品加工業様向け生産管理システム「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」
※導入事例の詳細は〈こちら

事務工数:約63時間/月削減|半日かかっていた事務作業が30分に
(株式会社三信精機 様)

■目的・背景
Excel管理から脱却するために、自社に合致した生産管理システムを探していた。中小企業診断士から「TECHS-S」の名が挙がり、デモンストレーションを確認。装置受注、部品加工も行う自社業務に合致している上、原価の「見える化」、進捗管理等の機能が網羅されていたので採用を決定した。

■取り組みと効果
「TECHS-S」のスムーズな導入のために、ベンダーと部品表取込の打ち合わせを何度も行った。結果、約63時間/月の事務工数削減に成功。「TECHS-S」の部品表で情報を一元管理することによって、部品の手配状況などの情報の属人化もなくなった。また、蓄積された原価の内訳データを社内会議に提出し、案件単位、期間単位で分析。結果、営業部門が売上金額だけでなく、粗利率も考慮した提案ができるように。

「TECHS-S」導入による情報の「見える化」で、全社的に原価・工数を意識した仕事をするようになった結果、粗利率が2倍に。「TECHS-S」を通じて、業務の効率化を進め、事務負荷の平準化を実現。蓄積されていくデータをもとに、自社の改善点を発見し、全社を挙げて改善を行い、よりよい会社を目指すPDCAサイクルをつくる。

 

※導入製品:個別受注型 機械・装置業様向け生産管理システム「TECHS-S(テックス・エス)」
※導入事例の詳細は〈こちら

手書きや転記の廃止で工数削減、業務品質・信頼向上
(株式会社木幡計器製作所 様)


■目的・背景
以前はAccessをベースとした手組みの販売管理システムを使用していたが、多品種少量生産のため、製品や部品の点数が多く、データ量の増加につれてシステムの動作が年々遅くなり、不具合も増えていた。システムを開発した企業の廃業などで、サポートも受けられなくなってしまっていた。それで、多品種少量生産に特化したパッケージシステムで、比較的安価かつ、カスタマイズもできることから、「TECHS-BK」導入を決定。

■取り組みと効果
「TECHS-BK」の導入で、製番と検査成績表の紐づけ、不良情報、ロットトレースなどが楽に管理できるように。構成部品のロット記録や工程チェック票も、効率よく入出力できるようになった。さらに、伝票設計オプションや「EUC Tool」を使い、二次元バーコードを印字したオリジナルの帳票を作成。読み取れるようにしたことで、データの入力や検索等、製造以外の業務時間を月48時間削減し、全社的に残業時間も削減。リアルタイムで進捗状況を確認できるようになったことで、事務所にいながら納期回答が可能になり、工数を月15時間削減できた。

それまで他部署に発行依頼していた、製品の梱包時に貼りつけるラベルを、現場で直接印刷できるようになり、依頼の手間や手待ち時間、人為的なミスが減る。ほかにも、「TECHS-BK」をカスタマイズして、タッチパネルで検査結果を入力すると自動で合否判定を行い、検査成績書が発行できるようにした。こういった自動化が、月30時間の検査関連工数の削減に加え、お客様からの信頼向上につながった。

 

※導入製品:多品種少量型 部品加工業様向け生産管理システム「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」
※導入事例の詳細は〈こちら

稼働率の「見える化」による社員の意識変化→生産高は 1.7 倍
機械稼働率改善→内製化率向上
(枚岡合金工具株式会社 様)

導入事例_枚岡合金工具様_あんどん
■目的・背景
全社員で行う会社の経営計画作成研修で、機械稼働状況の「見える化」で稼働率を把握し、生産性を向上しようと提案した社員がいた。会社としても機械の稼働率を意識しているのが管理者だけで、機械が停止している時間を把握できないという課題を抱えていた。そこで、情報の3S活動(後述)として、工場の「見える化」に取り組むことにしたが、センサ検出だけではデータ抽出が十分ではなく、正確な稼働状況の把握が難しかった。監視方法のカスタマイズ性が高いことから、ネットワークカメラで撮影した画像をAIが認識して稼働状況を判断するIoTプラットフォーム「A-Eyeカメラ」を導入。

■取り組みと効果
クラウドと連携した「あんどん機能」で、共有モニターだけでなく、スマートフォンやタブレット端末でリアルタイムに状況を把握。 停止時間や稼働率などの「見える化」により、実際の稼働状況がわかったことで、機械を直接操作する社員のみならず、営業部門の社員も「機械稼働率が上がる受注」を意識した営業活動を行うようになった。機械稼働率を上げていこうという意識が全員に芽生えた結果、外注していた工程の内製化が進み、月別の生産高も金額ベースで1.7倍に。機械稼働率の目標を立て、達成するための計画を立案、結果を分析し、改善につなげるPDCAサイクルをつくり上げることができた。

 

 

※導入製品:AI画像認識を利用した設備・機械の見える化システム「A-Eyeカメラ(エーアイカメラ)」
※導入事例の詳細は〈こちら

3.製造業の業務改善において効果を高めるポイント

改善方法の効果を高めるために改善前、改善後にわたって留意すべき3つの必須ポイントをご紹介します。

実行したい施策の優先順位を決める

製造業の業務は多岐にわたるため、改善を要する課題が広範囲に点在しやすいといえます。そのためすべての改善施策を同時に実施すると負担が大きくなりやすく、狙った効果を出せない可能性があります。

改善策実行により現場への負担が増えると、通常業務の効率が落ちたり、急な変化に対応しづらくなったりしてしまうでしょう。必要なコスト(時間や費用、人員)や、得られる効果の観点で分類し、計画的に実施すべきです。

経営層の意向だけで進めずに現場の声も重視する

経営層よりも現場の従業員のほうが業務の実態を把握している場合もあります。経営層の意見のみを重視したトップダウンの進め方だけではなく、従業員が意見を出し合いつつ改善を進められることが重要です。

改善できれば、結果として従業員全員のクオリティ・オブ・ライフ向上につながることを納得してもらうようにしましょう。

製造の工程全体への影響を常に考慮する

一部の工程が最適化されても、別の工程で問題が発生することがあります。たとえば、ある業務の処理手順を見直し、効率化したところ、かえって後工程への連携が悪くなり、全体として作業効率が悪化するといったケースです。

施策の立案・計画段階で、改善策を実施した場合、前後の工程にどのような影響が出るかを予測しておくことも必要です。

4.製造業の改善アイデアを考える切り口

業務改善ポイントを見つけるにあたり、製造業でよく使われる6つの考え方、メソッドをご紹介します。

5S(3S)

5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」の5つの頭文字をとった言葉です。3Sは最初の「整理」「整頓」「清掃」のみを指します。5Sの徹底により職場の環境改善を図るための活動を「5S活動」と呼びます。

具体例として、道具の定位置を決める、不要なものを捨てる、毎日掃除するなど、仕事の効率化につながる考え方ですが、ものづくりの基本的なルールとして、従業員のモラル向上を目指しているといえるでしょう。

7つのムダ

製造現場で発生する無駄「加工」「在庫」「つくりすぎ」「手待ち」「動作」「運搬」「不良・手直し」の7つをまとめたと言われる言葉です。覚えるために頭文字を順番に読んだ「飾って豆腐(かざってとうふ)」の語呂合わせが用いられています。

トヨタ生産方式(トヨタ自動車の生み出した生産活動の運用方式)で定義されており、ムダ取りをし、原価低減を目指す、トヨタらしいメソッドともいえます。

QCDS

生産活動で管理する「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」「Safety(安全)」もしくは「Service(サービス)」の4つをまとめた言葉です。

これらはどれかを過剰に追求すればどれかがおろそかになるというトレードオフの関係にあり、バランスが重要です。製造業の改善活動において、目的や期待する効果を皆で考えるうえでのよい切り口になるでしょう。

4M

生産活動に必要な要素である「人(Man)」「方法(Method)」「材料(Material)」「機械(Machine)」の4つをまとめた言葉です。「測定・計測(Measurement)」を加えた5Mという用語も使われています。

4Mに「測定・計測(Measurement)」と「環境(Environment)」を加えた6つは5M+1Eと呼ばれます。どれも適切に追求すれば、より質の高い生産ラインを構築し、製品の品質を向上させることができるでしょう。

KMK

「ルールを決める(K)」「ルールを守る/守らせる(M)」「ルール通りに行っているか確認・改善する(K)」の3つをまとめた言葉です。

当たり前のことをしっかりと行うための日々の管理・指導の進め方に関する考え方で、すべての改善施策において継続的に効果を出すために必要といえるでしょう。

5.製造業の業務改善事例5選とアイデアや提案を考える手順とヒントの総括

企業が競争に打ち勝っていくためには、常に業務の改善を目指すことが必要です。
製造業の業務改善を進める手順として、
①業務内容を見える状態にする
②問題を洗い出して優先度を決める
③必要なタスクを整理・実行する
④効果を計測しながら改善を進める
という一連の流れが挙げられます。

工夫の一環として、テクノアの生産管理システムや工場の見える化システムの導入により「見える化」を実現し、業務改善に成功した5つの事例をご紹介しました。

製造業の業務改善において効果を高めるポイントは、実行したい施策の優先順位を決め、現場の声を重視し、工程全体への影響を常に考慮することです。「5S」、「7つのムダ」、「QCDS」といった製造業界で広く取り入れられている考え方に沿って自社業務を見直すことにより、改善できるポイントが見えてきます。