生産管理とは何か ~システム化は必要ですか?~
著者:井上 創(いのうえ つくる)大手鉄鋼メーカーでの生産技術エンジニアを経て、経営コンサルタントとして多くの企業様の経営改善を行ってきました。
エンジニア時代に、仕入先であった中小製造業様が日々経営に悩まれている姿を目の当たりにし、「将来少しでもお手伝いきれば」と考え、中小企業診断士の勉強を始めました。
エンジニアとしての「現場改善」、コンサルタントとしての「経営改善」の経験を活かして、お客様の経営課題の解決を支援いたします。
中小製造業において、生産性向上や業務効率化、競争力強化は常に重要な課題です。これらの課題を解決する方法の一つとして、生産管理システムの導入が注目されています。しかし、「生産管理とはそもそも何か?」「生産管理システムは本当に必要なのか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、生産管理の基本から、その目的、生産管理システム化の判断軸について、お伝えいたします。
1.生産管理とは?
そもそも生産管理とは何でしょうか?
生産管理とは、受注・生産計画から出荷・納品までの管理全般のことです。
生産管理がない場合にどのような問題が起こるかを考えてみましょう。
生産管理は、ものづくりの全体調整機能であり、受注から出荷・納品までの生産プロセスを効率的に管理し、最適化する役割を担います。
生産管理がなければ、例えば以下のような問題が発生します。
・過剰在庫の発生:作業者が勝手に製品を作ってしまい、余剰在庫が増加する。
・部材不足による遅延:必要な部品や材料が揃わず、納期遅延が発生する。
・作業効率の低下:前工程の遅れにより、後工程の作業者が手待ち状態になる。
・品質のばらつき:作業者間で仕事量や手順に差が生じ、品質が安定しない。
これらの問題は、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のいずれにも悪影響を及ぼし、結果として企業の競争力を低下させてしまいます。
2.生産管理の目的
では生産管理の目的は何でしょうか?
生産管理の目的は、QCD、すなわち品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の最適化を図ることにあります。
これらの要素は相互に関連しており、一方を優先すると他方に影響が出る場合があります。そのため、生産管理では人、モノ、カネといったリソース(経営資源)を最適に配分し、バランス良くQCDを向上させることが求められます。
3.生産管理システムとは
生産管理システムとは、複雑な生産管理業務を効率化し、QCDの最適化を支援するシステムです。
従来、紙やExcelなどを用いて行われていた情報管理を、システム上で行うことで、例えば以下のようなメリットがあります。
QCDの最適化:
・情報の一元化: 各部門でバラバラに管理されていた情報を一元管理することで、情報伝達の齟齬や遅延を防ぐ。
・業務の効率化: 手作業によるミスを減らし、業務を自動化することで、担当者はより重要な業務に集中できる。
・リアルタイムな状況把握: 生産状況や在庫状況をリアルタイムに把握することで、迅速な意思決定が可能となる。
また、QCDを最適化するためには、目標と現状のギャップ、つまり問題を的確に把握することが重要です。
システム化することで、このギャップを可視化し、社内のどこに問題があるのかを浮き彫りにすることができます。そうすることで効率的に改善活動(QCD最適化)を行うことが可能です。
その他のメリット:
・業務の効率化: 手作業によるミスを減らし、業務を自動化することで、担当者はより重要な業務に集中できるようになり、生産性向上に貢献する。
・人材育成: システムを通じて標準化された業務フローを共有することで、担当者による属人的な業務を減らし、誰でも一定レベル以上の業務遂行を可能にするなど、人材育成にも役立つ。
4.システム化が必要か?
「では、すべての企業が生産管理システムを導入するべきなのか?」というと、そうではありません。
システム導入はあくまで手段であり、目的は会社の課題解決(QCD最適化含む)です。
例えば、以下のようなケースでは、生産管理システム導入の効果が期待できます。
・情報の共有がうまくいっていないと感じている
・手作業が多く、ミスが多い
・納期遅延が発生しやすい
・在庫管理に課題を感じている
・コスト削減を進めたい
一方で、以下のようなケースでは、システム導入以外の解決策の方が効果的な場合があります。
・業務フローが非常にシンプルで、現状でも全く問題なく回っている場合
・システム導入よりも、まずは業務フローの見直しや社員教育など、他の方法で課題解決を図る方が効果的だと判断できる場合
5.まとめ
生産管理の目的は、QCDの最適化を通じて、企業の競争力を高め、顧客満足度を向上させることにあります。そのためには、生産管理の重要性を理解し、適切な管理体制を構築することが不可欠です。
生産管理システムの導入は、情報の一元化やリアルタイムなデータ管理を可能にし、生産管理の効率化を図る有効な手段です。しかし、システム化ありきではなく、自社の課題をしっかりと洗い出し、最適な解決策を検討することが重要です。
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〇システム化は本当に必要?そもそも『生産管理』とは?【アーカイブ動画】
https://www.techs-s.com/media/show/209
〇生産管理システム選びで失敗しないための6つの質問【アーカイブ動画】
https://www.techs-s.com/media/show/210
この記事が、皆さまの生産管理の見直しや、業務改善の一助になれば幸いです。