デジタル経営とは?中小製造業でも実践可能な「デジタル経営」のはじめ方
著者:ものづくりコラム運営ものづくりコラム運営チームです。
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「デジタル経営」とは、企業がデジタル技術を経営の中心に据え、経営判断や事業運営をデータに基づいて行う経営方法のことです。
本コラムでは、中小製造業の経営者や現場担当者はもちろん、支援者として関わる中小企業診断士やITコーディネータの方にも役立つ、デジタル経営の基本と導入ステップをわかりやすく解説します。
現場での改善や経営判断のスピードアップにつながる具体例を交えながら、デジタル技術を使って経営をよりスムーズに、そして成長につなげるための第一歩を一緒に考えていきましょう。
1.デジタル経営とは?~基本概念と重要性~
「デジタル経営」とは、デジタル技術を活用して経営判断や業務運営を効率的・柔軟に行う経営手法のことです。
単なるシステム導入ではなく、経営全体をデータでつなぎ、意思決定のスピードと精度を高めることを目的としています。
ここで整理しておきたいのが、「デジタル化」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の違いです。
📌デジタル化:紙や手作業といったアナログ業務をデジタルツールに置き換えること
📌デジタル経営(DX含む):業務効率化だけでなく、経営戦略や組織文化までをデジタルで変革すること
中小製造業においても、在庫管理・生産計画・受発注業務をデジタル化することで、リアルタイムでの情報共有やコスト削減が実現できます。
💡ポイント 経営者含めITツールの導入は「難しそう」「ハードルが高い」と感じているケースが多いです。最初は「業務の見える化」など身近なテーマから取り組むことが大切です。 |
2.デジタル経営の3つの柱
実際、「何から手をつければいいのか分からない」と感じる経営者も多いテーマです。デジタル経営を効果的に進めるには、次の3つの柱を意識するとわかりやすいです。
(1)経営戦略のデジタル化
経営戦略のデジタル化とは、経営判断にデータを活用する仕組みをつくることです。
たとえば、売上や原価、在庫、稼働率といった数字を「感覚」ではなく「データ」で判断できるようにします。
まずは、財務諸表や月次の販売データなど、すでに手元にある数字をもとに現状を把握しましょう。
さらに、生産管理システムなどのITツールを活用すれば、日々の作業実績やコスト情報を蓄積・分析できます。
これにより、どの製品や取引が利益を生んでいるのか、どこにムダがあるのかが明確になり、経営課題を「見える化」できます。
💡ポイント 「勘や経験ではなくデータで考える文化」を根づかせることが、デジタル経営の第一歩です。 |
(2)業務プロセスのデジタル化
2つ目は、現場の業務プロセスをデジタル技術で最適化することです。
紙やエクセル中心の運用を見直し、クラウドツールやシステムを使って情報を一元管理します。
例えば、
・生産スケジュールや進捗を共有できる「生産管理システム」
・部品や材料の在庫をリアルタイムで把握できる「在庫管理ツール」
・取引先との見積・受注情報を共有する「クラウド受発注サービス」
これらを導入することで、重複入力や連絡漏れといったミスを防ぎ、現場と経営の情報がスムーズにつながります。
💡ポイント 「現場で困っていること」から入ると、経営者・従業員の納得感を得やすく、導入がスムーズになります。 |
(3)組織・人材のデジタル化
最後の柱は、人と組織のデジタル対応力を高めることです。どんなに優れたシステムを導入しても、社員が使いこなせなければ意味がありません。
具体的には、
・社員がデジタルツールを使いこなせるよう、社内教育を実施する
・情報共有のルール(入力のタイミングやフォーマット)を統一する
・現場からの改善提案をデジタルで集約・共有する
こうした取り組みが、「デジタルを活かす文化」づくりにつながります。また、支援者やコンサルタントが外部講師として関わることで、社内理解を深めるサポートも可能です。
💡ポイント 「ツール導入=ゴール」ではなく、社員が自走できる状態を目指すことが成功の鍵です。 |
このように、デジタル経営の3つの柱は「戦略」「業務」「人材」の3層で構成され、相互に影響し合います。経営者は自社の現状に合わせて、どの柱から取り組むべきかを見極めることが重要です。
3.中小製造業での導入ステップ
「デジタル経営」は、一度に大掛かりな改革を行う必要はありません。小さく始めて、段階的に拡大することが成功の鍵です。
- ステップ1:現状を見える化する
- まずは業務の流れを洗い出し、「どこで時間がかかっているか」「どこでミスが発生しているか」を整理します。現場ヒアリングや付箋を使った業務マップづくりも効果的です。
- ステップ2:ツールを選び、部分的に導入する
- 最初は、クラウド型の生産管理システムや在庫管理アプリなど、導入しやすいものから始めましょう。紙やエクセルでは把握しにくかった情報を、リアルタイムで共有できるようになります。
- ステップ3:運用を定着させ、文化を作る
- ツールを導入しても、使われなければ意味がありません。社内教育やマニュアル整備、日々の小さな改善活動を通じて、「デジタルを使うことが当たり前」になる環境をつくることが重要です。
💡ポイント 提案時は「導入ステップ」と「定着支援」をセットで示すことで、経営者の不安を和らげやすくなります。 |
例えば?「デジタル経営」をサポート!IT経営コンサルティングメニュー
4.デジタル経営の成功事例
ここでは「デジタル経営」に取り組み、変革に成功された企業様の事例を一部ご紹介します。
※他の事例も見る:https://www.techs-s.com/case_digital_keiei
原価の見せ方を工夫して現場の士気を高揚!赤字製品を一気に黒字化へ
企業名 | 株式会社大東 様 |
所在地 | 兵庫県姫路市 |
事業内容 | 金属切削加工 |
改善事例のポイント | 📌 アナログ体制からの脱却 📌 業務効率の劇的改善(受注から請求まで一元化) 📌 財務分析で自社の数字を明確化 📌 IT経営コンサルティングで土台作り 📌 データが示した事実(現状):原価管理で明確に…「赤字製品」への危機感 |
製品毎の原価データを活用した価格改定で、売上高130%、営業利益160%を実現!
企業名 | 株式会社 日英カーボン製作所 様 |
所在地 | 兵庫県尼崎市 |
事業内容 | カーボン・グラファイトを使用した機械用部品の製造、販売 |
改善事例のポイント | 📌 生産管理システムの活用で更なる改善の余地に気づく 📌 データ活用による経営改善 📌 戦略を調整し利益重視の経営へ(売上高で130%、営業利益率で160%伸びる結果へ) 📌 稼働率や不良品の削減…社内の意識改革と連携強化 📌 継続的な改善と新規事業への挑戦 |
100年企業が最高売上・最高利益を実現!
企業名 | ニッパテック株式会社 様 |
所在地 | 大阪府大阪市 |
事業内容 | 機械刃物及び機械部品の製造販売 |
改善事例のポイント | 📌 コンサルティングは目標や方向性を社内で共有する手段 📌 導入プロセスと直面した課題(新しいシステムの導入に対して「嫌がる・反対する」社内の雰囲気) 📌 創業100年の歴史の中で最高の売上と利益を達成 |
5.まとめ・次のステップ
デジタル経営は、「最新のITを導入すること」ではなく、経営をより見える化し、正しい判断を下すための仕組みを整えることです。
中小製造業でも、段階を踏めば十分に実践可能です。
デジタル経営の要点を振り返る
💡経営戦略のデジタル化:データをもとに経営課題を明確化し、数字で判断できる体制をつくる。
💡業務プロセスのデジタル化:現場の情報をリアルタイムで共有し、ミスやムダを減らす。
💡組織・人材のデジタル化:社員がツールを使いこなせるように教育し、改善が自走する文化を育てる。
この3つの柱は、どれかひとつだけでなく、段階的にバランスよく進めることが理想です。最初から完璧を目指す必要はありません。小さな改善を積み重ねることで、確実に成果が見えてきます。
次に取り組むべきステップ
- ・現状を「見える化」する
- 業務の流れや課題、データの管理状況を棚卸ししましょう。紙やExcel中心なら、それを一覧化するだけでも立派な第一歩です。
- ・課題と目的を明確にする
- 「どの業務にムダが多いのか」「どんな情報をリアルタイムで知りたいのか」を整理し、目的を定めます。
- ・小さなデジタル化から始める
- いきなり大きなシステムを導入せず、無料ツールや小規模な仕組みからテスト的に始めることで、社内の理解を得やすくなります。
- ・支援者と伴走する
- 中小企業診断士やITコーディネータなどの専門家に相談し、自社に合ったステップを一緒に設計するのも効果的です。
「導入して終わり」ではなく、「活用して成果を出す」ことをゴールに設定しましょう。
デジタル経営は、単なる流行語ではありません。
今後、人手不足や原価高騰といった環境変化に柔軟に対応するための“新しい経営のスタンダード”になっていくでしょう。
🔎経営者は、「何から始めるか」を決める勇気を持つことが大切です。完璧を目指すのではなく、まずは現状を見える化し、小さな一歩を踏み出すことが変革の第一歩になります。
🔎現場担当者は、日々の作業の中で感じている「ムダ」や「やりにくさ」を声に出すことが重要です。現場の気づきこそが、デジタル化の方向性を決めるヒントになります。自分たちの業務が改善されるプロセスを一緒に作る意識を持ちましょう。
🔎支援者(中小企業診断士・ITコーディネータなど)は、経営者や現場が抱える課題を言語化し、最適なステップを共に考える伴走者としての役割が求められます。ツールの導入支援だけでなく、社内の理解を深める“翻訳者”のような立ち位置が効果的です。
こうした三者の視点が重なり合うことで、「システムを導入した企業」から「デジタルを活かして成長する企業」へと進化していくことができます。
小さな一歩を共有し、共に成長していく姿勢こそが、これからのデジタル経営の本質です。