生産管理 基礎編:最適なITツールとは?方法・手法で理解する現場改善

著者:ものづくりコラム運営 生産管理 基礎編:最適なITツールとは?方法・手法で理解する現場改善
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「生産管理」とは、製造業における生産活動を効率的に進めるための管理全般を指します。
具体的には、計画の策定、工程・在庫の管理、品質管理、納期遵守など、製品を作る一連の流れを最適化することです。

効率化やコスト削減、納期遵守などを実現するためには、単に管理するだけでなく、生産管理の方法や手法を理解し、適切に活用することが重要です。
本記事では、生産管理の基礎から代表的な方法・手法、ITツール、改善事例まで、初心者にもわかりやすく解説します。

1.生産管理とは?(基本の確認)

生産管理の定義と目的

生産管理は、原材料の調達から製品出荷まで、ムダを減らし効率を上げるための管理活動です。
目的は主に以下の通りです。

・納期を守る
・コストを最適化する
・品質を安定させる
・在庫を適正化する

製造現場で生産管理が必要になる理由

個別受注生産や多品種少量生産が増える中、計画通りに生産しなければ納期遅れや在庫過多が発生します。生産管理を行うことで、計画と実績の差を把握し、改善につなげることが可能になります。

生産管理の管理対象

生産管理は以下の業務を対象として統合的に管理します。

主な対象業務
1.受注管理:顧客の注文内容や納期を把握
2.生産計画:長期・中期・短期の計画で生産量や順序を決定
3.資材調達・発注管理:原材料・部品を適切に調達
4.工程管理・進捗管理:作業進捗を把握し、遅れを防止
5.在庫管理:原材料・仕掛品・製品の在庫を最適化
6.品質管理:製品や工程の品質を確保
7.出荷・売上管理:製品の出荷タイミングや数量を管理
8.不良品・異常管理:不良品やトラブルを記録・分析して改善

管理対象は、単に「計画や進捗」だけでなく、受注から出荷、品質改善まで生産活動全体を含みます。この整理により、各手法やITツールをどの業務に適用するかが明確になるので、自社で管理すべき業務範囲や、現在どんなツールで各業務をこなしているか確認してみましょう。

2.生産管理の代表的な方法・手法

ここでは、管理対象の中で、実務でよく使われる方法・手法に絞って解説します。

生産計画の立て方

概要:需要予測や受注情報に基づき、長期・中期・短期の3レベルで生産計画を作成

[実務ポイント]
部門ごとのリソース(人員・設備・資材)を把握し、計画と実際の差異を定期的にチェック
[注意点]
計画だけで安心せず、受注変動や設備トラブルに対応できる柔軟性を確保

在庫管理手法

概要:発注点方式・安全在庫・ABC分析などで適正な在庫水準を維持

[実務ポイント]
ABC分析や共通部品など、重要部品に優先順位をつけ、欠品リスクの高い部品を重点管理
[注意点]
過剰在庫はコスト増、欠品は納期遅延につながるため、データ精度が重要

進捗管理・工程管理の方法

概要:ガントチャートやバーンダウンチャートで工程の進捗を可視化

[実務ポイント]
ボトルネック工程や作業負荷を把握し、ラインバランスを調整
[注意点]
現場の作業状況をリアルタイムで反映できる仕組みがあるとより効果的

品質管理との連携

概要:QC手法(チェックシート、パレート図、特性要因図など)を活用

[実務ポイント]
工程内での不良要因を特定し、改善策を工程にフィードバック
[注意点]
生産管理と品質管理を切り離さず連携することで、不良発生を未然に防ぐ

3.生産管理で活用されるITツール

製造業では、Excelだけでなく、さまざまなITツールを活用することで、生産管理の精度と効率を向上させることができます。

主なITツール
①生産管理システム
工程・在庫・納期など、日々の生産活動を効率的に管理し、受注から売上までの生産活動にかかわる業務を支援するパッケージシステムです。
生産管理の3要素である品質・コスト・納期(QCD)の最適化を目的とします。
ツール名生産管理システム(パッケージ)
特  徴:受注から売上まで管理し、「在庫・工程・原価・納期管理」を統合
企業規模:小~中規模向け
導入効果:導入簡単、即効性あり、データの一元管理が可能
注 意 点  :標準機能中心で、独自業務はカスタマイズが必要
 
※システムによって業務範囲が異なります。「会計ソフト」と別管理かつ連携可能な生産管理システムも多い。
※関連コラム:生産管理システムとは?中小製造業の方必見!導入前に知っておきたいポイントをご紹介
②ERP(Enterprise Resource Planning)
生産管理システムや会計システム、人事管理、物流管理といった業務を統合して管理するシステムです。
ツール名ERP
特  徴:生産から販売・購買・会計まで全社統合
企業規模:中~大規模向け
導入効果:全社最適化、情報共有が容易
注 意 点  :導入コスト高、運用教育が必要
 
※関連コラム:ERPとは?経営資源を管理するシステムの種類やメリット・デメリット
※関連コラム:生産管理システムとERPの違いとは?
③MES(Manufacturing Execution System)
「製造実行システム」を意味し、工程管理に近い位置づけ。製造現場の工程や作業進捗、品質情報をリアルタイムで把握・管理するシステムです。
ツール名MES
特  徴:現場工程・進捗・品質をリアルタイム管理
企業規模:中~大規模向け
導入効果:現場可視化で迅速な意思決定
注 意 点  :ERPや既存システムとの連携が前提
 
※関連コラム:MESとは?製造実行システムとしての機能や業務のIT化による改善例をご紹介!
④ノーコード自社開発システム
専門知識がなくても、独自の業務管理システムを作成できるツールです。
ツール名:ノーコード自社開発システム
特  徴:専門知識不要で独自システムを柔軟に作成可能
企業規模:小~中規模向け
導入効果:柔軟に改善・拡張できる
注 意 点  :運用ルール設計が重要
⑤SCM(Supply Chain Management)
サプライチェーンにおけるリソースやコストを効率的に管理し、原材料から製品出荷まで、サプライチェーン全体を最適化する管理手法・システムです。
ツール名SCM
特  徴:原材料から製品出荷までの全体最適化
企業規模:中~大規模向け
導入効果:資材遅延低減、在庫最適化
注 意 点  :生産管理システムやWMSなど他の生産・在庫管理システムとも連携するケースが多い
 
※関連コラム:製造業におけるサプライチェーンとは?SCMがもたらす効果と注意点
⑥APS(Advanced Planning and Scheduling)
生産計画とリソースを最適化し、納期遵守や工程ボトルネック解消を支援するツールです。
ツール名APS
特  徴:生産計画とリソースを最適化
企業規模:中~大規模向け
導入効果:納期遵守率向上、工程ボトルネック可視化
注 意 点  :精度の高いデータが必要
⑦BIツール(Business Intelligence)
企業に蓄積された大量のデータを収集・分析・可視化するソフトウェアです。生産データや経営データを分析・可視化し、意思決定を支援します。
ツール名BIツール
特  徴:データ分析・可視化による意思決定支援
企業規模:小~大規模向け
導入効果:改善点の発見や迅速な経営判断が可能
注 意 点  :生産管理システムなどの既存システムとのデータ連携設計が必要
 
※参照元のデータが不十分だと正確な分析ができません。きれいなデータを用意したうえで、“現状の可視化”ツールとして活用が必要です。
⑧IoTプラットフォーム(Internet of Things Platform)
設備やセンサーからリアルタイムでデータを取得し、稼働状況や保全管理を行う仕組みです。
インターネットに接続された多様なIoTデバイスからデータを収集し、それを分析・管理・活用するためのシステム基盤となります。
ツール名IoTプラットフォーム
特  徴:設備・センサーからリアルタイム取得
企業規模:小~大規模向け
導入効果:予知保全、スマートファクトリー化
注 意 点  :初期導入負荷が大きい
⑨WMS(Warehouse Management System)
在庫の管理を効率化するデジタルツールです。倉庫内の入出庫や在庫管理を効率化し、正確な棚卸を可能にするシステムです。
ツール名WMS(倉庫管理システム)
特  徴:倉庫の入出庫・在庫管理を効率化
企業規模:小~中規模向け
導入効果:棚卸工数削減、在庫精度向上
注 意 点  :ERPや生産管理システムとの連携推奨
 
※関連コラム:WMS(倉庫管理システム)とは?機能やメリット・デメリット、選び方

生産管理で活用できるITツールは様々です。全体最適を望むのか、一部の管理のみシステム化するのか、目的に応じて選択肢が異なります。まずは、導入検討前に業務フローと改善したいポイントや目的を整理することが成功の鍵となります。

4.業規模・生産方式別の生産管理手法

生産管理の手法は、企業の規模や生産方式によって適したものが異なります。ツールに依存せず、計画・工程・在庫・進捗管理などの運用スタイルや方法に着目して選ぶことが重要です。ここでは、小規模向けから量産向けまで、実務でよく使われる運用スタイルとメリット・デメリットを紹介します。

💡point
・ITツール以前に、自社の規模・生産方式に合った運用スタイルを選ぶことが重要
・運用方法とツールを組み合わせることで、効率化の効果を最大化

手作業や紙・Excel中心の運用

小規模な現場では、まだ手作業やExcelを使った管理が中心になることも多く、導入が簡単で柔軟に運用できるのが特徴です。

向いている規模・方式 小規模、少品種少量生産、単純な工程
メリット 初期コストが低く、導入が簡単
デメリット データの誤記や重複、全社最適化は困難。担当者に依存しやすい

標準化された生産計画・工程管理

一定の繰り返し生産がある中規模現場では、工程や作業手順を標準化することでミスを減らし、計画精度を高められます。

向いている規模・方式 中規模、多品種少量生産、一定の繰り返し生産あり
メリット 工程や作業手順の標準化でミスが減り、計画精度が向上
デメリット ルールに柔軟性が少なく、急な変更対応が難しい

ボードやカードによる可視化管理(カンバン方式、看板管理)

現場の状況を一目で把握できる可視化手法は、現場主導の改善活動を促進するのに向いています。

向いている規模・方式 小~中規模、ジャストインタイム生産、部品調達が重要
メリット 現場の進捗が一目でわかる。現場主導で改善しやすい
デメリット 工程や在庫の規模が大きくなると管理が複雑化

数理モデル・高度計画(APS的な考え方)

量産や多工程生産では、複数の工程や設備、人員の稼働状況を考慮しながら、納期と作業負荷を最適化できる高度計画が有効です。

向いている規模・方式 中~大規模、量産・多工程生産
メリット 工程ごとの作業量や設備稼働を計算し、どの工程で何をどれだけ生産すれば納期通りに完成できるかを予測・調整できる
ボトルネック工程を事前に把握できるため、急な変更や遅延に備えやすい
デメリット 精度の高いデータ整備が必須で、運用には知識が必要

5.よくある課題と対処法

生産管理を進める中で、中小製造業では次のような課題が多く見られます。

課題 対処法
計画と実績が合わない データ精度向上、進捗管理の強化(生産管理システムやMES、APS活用)
急な変更対応が難しい APSやMESで柔軟な工程調整を実現
現場協力が得にくい 可視化と情報共有を強化、現場参加型改善を促進
データ精度が低い IoTやBIツールでリアルタイムデータを活用

課題に応じたツールや手法を組み合わせることで、効率的な生産管理を実現できます。現場担当者様の声も拾いながら、会社全体で現状や課題を把握しましょう。

6.まとめ

生産管理の目的は、ムダを減らし、生産性を高めることです。
✅管理対象(計画・工程・在庫・品質・受発注・出荷など)を整理する
✅代表的な方法・手法やITツールを理解し、自社に合ったものを選択する
✅小さな改善から始め、効果を測定しながら継続的に改善する
このステップを踏むことで、現場で無理なく生産管理を効率化できます。

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