製造業におけるサプライチェーンとは?SCMがもたらす効果と注意点
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製造業におけるサプライチェーンは、製品が消費者の手に届くまでの流れを形作る重要な仕組みです。
原材料の調達から製造、在庫管理、物流、そして販売に至るまで、多段階にわたるプロセスが複数の企業によって連携されることで、消費者にスムーズに商品を届けることが可能となります。
多くの企業が協力して構築されるこの仕組みを円滑に管理するために、サプライチェーンを効率的に管理するサプライチェーンマネジメント(SCM)の存在は欠かせません。
SCMにより、各プロセス間の無駄を削減し、スムーズな流通体制を実現することで、コスト削減や供給の安定化が図られます。
本記事では、製造業のサプライチェーンの基礎と、SCMの導入がどのように効率化や利益向上に寄与するかを解説していきます。
1.製造業におけるサプライチェーンの基礎知識
製造業におけるサプライチェーンの仕組みと、その管理手法であるSCMの基本概念について解説します。
サプライチェーンとは?
サプライチェーンとは、原材料調達をはじめとした、製造、在庫管理、物流、販売などを通して、製品が消費者の手元に届くまでの流れのことです。
● 原材料調達:製造に必要な原材料を仕入れる
● 製造:工場や製造拠点で実際に製品を加工・組立する
● 在庫管理:適正な在庫を維持し、過不足のない管理を行う
● 物流:完成品を各拠点に輸送し、消費者に届けるための手配を行う
● 販売:最終的に消費者に製品を提供する
これらのプロセスは通常、1つの企業だけでは完結しません。
製造業の場合、サプライヤーによる原材料供給から流通・販売に至るまで、複数の工程で多くの企業が協力して構築されています。この企業連携のネットワークがサプライチェーンです。
SCMとは?
SCMとは、サプライチェーンにおけるリソースやコストを効率的に管理し、最適化を図る手法です。
プロセス間のタイムラグや、過剰な手続き、設備・人員の稼働率の低さといったサプライチェーンにおける無駄を取り除くことで、利益を追求することが可能です。
効率的なSCMにより、製品の供給が安定し、競争力が強化されます。
SCMが求められる背景
SCMが求められる背景としては、複数の要因が挙げられます。
- ●ビジネスのグローバル化
- 生産拠点を海外に移転する企業が増え、大規模なサプライチェーンが一般化しています。
効率良く供給を行うためには、体制の構築が重要であり、SCMの最適化が不可欠です。
大規模なSCMのためには、ITシステムを導入するなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も求められています。
DX推進により、在庫管理の精度向上や、市場需要の予測精度の向上、また顧客対応力の向上が見込めます。 - ●人手不足の深刻化
- 近年、労働市場では慢性的な人手不足が深刻になっています。
この大きな理由としては、少子高齢化や労働市場の需要と供給のアンバランスなどが挙げられます。
製造業においても、多くの企業が人材不足を抱えています。SCMによって労働者の負担軽減や、省人化の実現が求められています。 - ●顧客ニーズの複雑化
- 技術の進歩や情報の多様化に伴い、消費者のニーズが高度化・複雑化しています。
製造業では、市場動向などを意識して「売れる分だけ生産する」体制が必要となっているため、従来の「少品種大量生産」から「多品種少量生産」へのシフトが求められています。
このため、市場動向に応じた柔軟な供給体制の構築が必要になってきており、効率的なSCMによるリソース管理が必須となってきています。
少品種大量生産と比較して、より柔軟な供給体制が求められる多品種少量生産は、多種の原材料を扱うため管理がより複雑になります。また、従業員や製造ラインに求められる作業も高度化し、管理工数も増大します。
この「ヒト」「モノ」「カネ」「時間」「知的財産」などの経営資源を、無駄なく効率的に利用できるように管理することが重要になってきているのです。
2.製造業におけるSCMがもたらす効果
SCMは、製造業の運営において大きな効果をもたらします。
ここでは、SCMの活用による具体的なメリットを解説します。
情報を一元管理しやすい
SCMの実施により、サプライチェーン全体に関わる情報を一元管理できるようになります。
これにより、各プロセスや関係者間での情報共有がスムーズになり、業務が効率化されます。
サプライチェーンの情報管理によってもたらされる効果をいくつか見てみましょう。
- ●製造、物流、販売の情報管理が統一される
- SCMを用いることで、製造や物流、販売に関する重要なデータを一か所で管理できます。
これにより、製品が顧客の手に渡るまでのプロセスを全体的に把握でき、進捗や状況確認がしやすくなります。 - ●関係企業や部署間での円滑な連携が可能に
- サプライチェーンに関わる企業や部署間で情報をリアルタイムに共有することで、業務のミスや遅延を防ぎ、連携がスムーズになります。
たとえば、在庫の不足が予想される場合、早期に関連部署や取引先と調整することで、供給体制を速やかに整えることができます。 - ●プロセスごとの効率化がしやすくなる
- 全体の情報が見える化されることで、各プロセスのボトルネックや無駄を明確にし、改善がしやすくなります。
情報がまとまっていると、意思決定のスピードも向上し、迅速な対応が可能になります。
適切な在庫管理が可能になる
SCMによって、製品の需要に応じた適切な在庫量を保てるようになり、供給体制を最適化できます。
在庫過多による無駄を防ぎやすくなり、無駄なコストを削減することが可能なうえ、在庫不足による機会損失を防ぐこともでき、売上アップも見込めます。
効率的な在庫・供給体制が整うことで、顧客の需要に柔軟に対応しやすくなり、ビジネス機会を逃すことが少なくなり、利益拡大につながります。
人的資源の有効活用につながる
SCMによって、人材が必要になるプロセスを把握できるようになり、的確な人員配置が可能になります。
業務の波や需要に応じた的確な人員配置により、人材リソースを効率的に活用でき、無駄な人件費を抑えられます。
また、現行の供給体制を見直すことにより、より効率的で省人化された体制の構築も可能です。
業務の自動化の検討や、作業フローの改善に取り組むことができ、人手不足の問題が軽減し、少人数でも効率的に対応できる体制を整えることができます。
このようなノウハウの蓄積は、業務のあらゆる面で役に立つでしょう。
3.製造業におけるSCMの注意点
SCMは、効率的な運用によって企業に多くのメリットをもたらしますが、その導入と運用にはさまざまな課題が伴います。
ここでは、SCM導入における注意点と効果的な運用方法について解説します。
導入・運用に費用がかかる
SCMを実現するためには、基本的にシステム導入が不可欠です。しかし、これには初期投資が発生し、運用には継続的な費用もかかります。システムの構築や保守には専門的な知識を持ったシステム担当者が必要であり、またシステム運用のために人員を確保しなければなりません。さらに、システムのライセンス費や人件費といったランニングコストも発生するため、導入にあたっては費用対効果をしっかりと見極めることが重要です。
他社を含めたマネジメントが必要になる
また、SCMは自社単独で完結するものではなく、複数の企業が関わる管理が求められます。
サプライチェーン上には異なるルールや方針を持つ企業が複数存在し、企業ごとに独自のノウハウを持っているため、業務の統一が難しいこともあります。
SCMを効果的に進めるためには、企業間で共通認識を持ち、業務の一体化を図るための努力が欠かせません。
社内のロジスティクスが必須
また、自社内でのロジスティクスも必須です。
ロジスティクスとは、サプライチェーンの中で、製品や原材料を効率的に輸送・保管する仕組みを指します。
製品が最適な状態で消費者に届くように、在庫管理や配送計画などを通じて物流全体を最適化する役割を果たします。
ロジスティクスにおいても、ERPなどの新しいITシステムの導入や、従来の業務フローの変更に抵抗を示す従業員がいるかもしれません。
そのため、システム導入後には新しい体制の定着を図るために、従業員へのフォロー教育をしっかりと行い、新体制に対する理解を深めてもらう必要があります。
生産管理体制の見直し・改善のためのシステムをご紹介
SCMの改善には、生産管理システムや受発注システムの導入が有効です。
サプライヤーとの取引の電子化や、適切な在庫管理により、情報の正確性が向上し、ロジスティクスの効率の向上が見込めます。
ここでは、テクノアが提供するSCMのためのシステムを2つ紹介します。
- 『TECHS-S NOA(テックス・エス・ノア)』
- 「TECHS-S NOA」は個別受注型の中小製造業向けに開発された、クラウド対応の生産管理システムです。
CADやExcelからのデータ取り込み機能により、資材調達やの入力工数を大幅に削減出来ます。
利用料は定額サービス(サブスクリプションモデル)で、クラウド環境で利用可能のため、導入コストを抑えて短期間でシステムの利用を開始できます。 - 『BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業』
- 製造業界において、発注企業と受注企業の双方で行われている受発注業務を電子化します。
取引データをサプライヤー同士で共有することができるため、取引書面のペーパーレス化、電話やFAXなどの通信費削減、作業の手間や人為的ミスが削減される他、リアルタイムな状況管理や情報共有を実現します。
データの正確性がアップし、伝達ミスや認識のズレによる調整工数も削減することができます。
TECHS-S NOAから発注データをクラウド上にシームレスに連携することも可能です。
4.サプライチェーンの見直しで、さらなる事業発展を目指しましょう
SCMは、中小製造業にとっても、効率化と競争力向上のために欠かせない重要な手法です。
変化する市場ニーズに対応するためには、適切な供給体制と柔軟な業務の最適化が求められます。
SCMの導入には初期コストがかかるものの、その先にある業務の効率化やコスト削減の効果は大きく、長期的な成長を支えることが可能です。
中小製造業が強固なビジネス基盤を築くために、業界全体で積極的にSCMに取り組んでいきましょう。