製造業界の基礎知識│業種の種類や市場規模、近年の課題・取り組み

著者:ものづくりコラム運営 製造業界の基礎知識│業種の種類や市場規模、近年の課題・取り組み

製造業とは、製品を生産し、販売する産業のことです。製造業はこれまで日本経済を支え、バブル期には世界でトップ地位を獲得するほどの業界でした。しかし、さまざまな要因によって日本の製造業は衰退しつつあり、現在も刻一刻と変化する環境にさらされています。製造業は今どのような局面を迎え、これからどうなっていくのでしょうか。本記事では、これから製造業界で働き始める方が押さえておくべき、基本的な知識についてわかりやすく解説します。

1.製造業界の基礎知識

はじめに、製造業界に関して押さえておくべき市場規模や代表的な種類などの基礎的な知識について解説します。

日本における製造業の市場規模

製造業は、日本全体のGDP(国内総生産)において2割程度を占める業種です。ちなみに、2021年の製造業におけるGDPは約113兆円であり、日本全体の20.6%でした。製造業は、自動車メーカーを筆頭にして日本経済を支える存在であるといえるでしょう。製造業は、日本が「ものづくり大国」と呼ばれるほどの経済大国になるまで、経済を牽引してきました。日本のGDPは、2023年1月時点で世界3位となっています。

【参照】「2021年度(令和3年度)国民経済計算年次推計(フロー編)ポイント」(内閣府)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/2021/sankou/pdf/point_flow20221223.pdf

製造業界の代表的な種類

製造業には多種多様な種類が存在します。製造業は、以下の7種類に大別できます。

<製造業の代表的な種類>

製造業の種類 事業の概要 代表的な企業の例
機械関連 機械品の設計から生産・組み立てなど トヨタ自動車株式会社
三菱電機株式会社
株式会社日立製作所
金属・鉄鋼関連 金属・鉄鋼原料の調達・製造など 三菱重工業株式会社
住友電気工業株式会社
日本製鉄株式会社
電子部品・電子デバイス関連 パソコンやスマートフォンなどの設計から生産・組み立てなど 株式会社日立製作所
日本電産株式会社
TDK株式会社
化学関連 化学関連製品(洋服の繊維や食料品の原材料など)の生産 三菱ケミカルグループ株式会社
住友化学株式会社
富士フイルムホールディングス株式会社
食品関連 食品(菓子、ジュース、加工食品など)の生産 日本たばこ産業株式会社
アサヒグループホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社
建築・住宅関連 建造物の建築から資材の調達・製造など 大和ハウス工業株式会社
積水ハウス株式会社
飯田グループホールディングス株式会社
医薬品関連 医薬品の生産、研究開発や臨床試験など 武田薬品工業株式会社
大塚ホールディングス株式会社
アステラス製薬株式会社

日本における製造業界の近年の業況

日本における製造業界は、2022年に入ってから大企業製造業・中小製造業ともに、業況が減少に転じています。2020年下半期から2021年にかけては、大企業製造業を中心に回復基調にありました。2022年以降の3年間は、約半数の製造業者は営業利益が増加する見込みです。製造業の営業利益は、2021年に入るまで減少傾向にありました。これは、主に新型コロナウイルス感染症などの影響を受けたためです。

日本における製造業界は、2020年に入るまで営業利益は減少傾向にありました。これは、主に新型コロナウイルス感染症などの影響を受けたためです。2020年下半期から2021年にかけては、大企業製造業を中心に回復基調にありました。2022年以降の3年間は、約半数の製造業者は営業利益が増加する見込みです。しかし2022年に入ってから大企業製造業・中小製造業ともに、業況が減少に転じています。

【参照】「2022年版 ものづくり白書(令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策)」(経済産業省 厚生労働省 文部科学省)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/2021/sankou/pdf/point_flow20221223.pdf

2.日本の製造業を取り巻く近年の環境の変化

次に、日本の製造業を取り巻く、近年のさまざまな環境の変化について解説します

国際競争力の低下

日本の製造業は国際的な競争力を落としている傾向にあります。IMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が作成する「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」によれば、日本の競争力順位は63カ国・地域中34位と、前年の31位からさらに順位を落としており、真ん中以下の順位となっています。アジア・太平洋地域においても、14カ国・地域中10位と低い順位です。
世界競争力年鑑の公表が始まった1989年からバブル期が終焉を迎えた1992年まで日本は1位を維持しており、1996年までは5位と高い順位でした。しかし、1997年には金融システム不安が表面化して17位に転落。それから20位台半ばを推移して2019年には30位以下となりました。
要因として、人件費が安いなどコストを抑えた生産が実現しやすい新興国の台頭や、少子高齢化による人材の不足・技術伝承の遅れなどが挙げられます。

感染症や自然災害の影響

2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、さまざまな産業がサプライチェーンへの緊急対応を余儀なくされました。製造業では海外需要の落ち込みによる輸出の減少が見られたほか、感染症拡大防止と新車需要の落ち込みによる生産調整で受注が減少しました。また、外出自粛などの影響により国内での生産・販売額の減少が見られました。

半導体などの部素材の不足

2020年秋以降、半導体不足は世界的に深刻な課題となっています。その影響は日本国内へも広がっており、特に自動車業界が致命的な打撃を受けました。低性能で安価な製品を使用する自動車向けの半導体よりも、高性能で高価なパソコンやスマートフォン向けの半導体の製造が優先されたことにより、自動車メーカーは減産を余儀なくされています。
しかしスマートフォン製造においても決して影響は小さくありません。業種や業態を問わずあらゆる製造業が生産計画どおりに半導体製造を行えないという事態となりました。日本の製造業においても、例外なく大きな影響を受けています。
また、部素材不足については、2021年以降のアジア諸国でのロックダウンの影響により、ハーネスのコネクターなどの不足が生じています。

カーボンニュートラルの浸透

カーボンニュートラルの実現に向けて、全世界でさまざまな取り組みが始まっています。年限つきでカーボンニュートラルを宣言する国や地域は世界に150ほどです。2021年にはこれらの国・地域のCO2排出量が全世界の排出量における約9割を占めるまでに高まっています。このような状況を受けて、各国では気候変動政策が大きく進行しているのです。
世界各国の工場をはじめとした産業部門は、発電所に次いで多くのCO2を排出しているといわれています。そこで、いかにCO2排出を抑えることができるかが今後の課題となっています。具体的には、各国政府の取り組みに加えてCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催、各産業分野の民間企業が参加するイニシアティブの立ち上げ、金融機関が企業などに対して気候関連リスクなどに関する情報開示を推奨するフレームワークの改訂などが行われてきました。

3.日本の製造業の課題解決につながる取り組み

ここでは、日本の製造業の課題解決につながる3つの取り組みについて解説します。

デジタルシフトによる労働環境や働き方の改善

製造業の人材不足は日々深刻化しているのが現状です。若年就業者数は、2002年から2021年までの約20年間で121万人減少しました。一方で、高齢就業者数は、2002年から2021年までの約20年間で33万人増加しており、労働人口の不足と高齢化が見て取れます。今後、産業用ロボットや生産管理システムの導入などにより労働環境を整えることが急務です、また、担当業務によってはテレワークの導入も検討するなど、働き方の改善によって労働人口の確保につながることが期待できます。

※関連コラムはこちら:製造業のテレワーク導入が難しい理由とは?事例と課題解決のポイント

ICT化によるスマートファクトリーの実現

現在、日本だけでなく世界中の製造業で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が推進されています。製造業のDXといって最初に思い浮かべるのは、デジタル技術を駆使することでものづくりを行う「スマートファクトリー」ではないでしょうか。スマートファクトリーとは、デジタル技術を活用することで、業務プロセスに改革をもたらしたり、生産性・品質の継続的な向上を可能にしたりする工場を指します。これからの製造業が国内外で競争力を維持するために、スマートファクトリーは欠かすことのできない取り組みの一つです。すでに多くの企業がスマートファクトリーの実現に向けて動き始めています。

※関連コラムはこちら:
スマートファクトリーとは?定義やメリット、注目される背景
IoTとは?意味や注目される理由、製造業の導入事例とよくある課題

ムダをなくし生産コストを抑える取り組みの実行

製造業において、日々のコストを削減する取り組みは非常に重要です。企業では「7つのムダ」のように、製造業の現場でしばしば起こる、付加価値を生まないムダな現象や結果を改善する取り組みも始めています。製造業に従事する人が頭に入れておくべきものとして、7つのムダの頭文字をとった「かざふてつどう」が標語となり、ムダを排除しようとする動きが始まっているのです。

※関連コラムはこちら:製造業のコスト削減方法│知っておきたい注意点と効果を高めるコツ

4.変革期を迎えた製造業は大きなチャンスを迎えている

今回は、製造業界で働いていくうえで最低限知っておきたいことについて解説しました。全体像を知っておくと、実際に働いたとき大いに役に立つでしょう。今回は基礎的な解説に留めていますので、もし製造業に興味を持った方は、より詳しく調べてみてください。本サイトのほかの記事も参考にしていただければ幸いです。
日本のものづくり力を、過去に持っていた優位性を再構築するという視点で考えると、製造業の領域は強力な原点の一つであるといえます。変革期を迎えた現代を危機ではなく大きなチャンスであると前向きに捉えることが重要です。世界のものづくり経済という大きな視点において、今まさに立て直しを図っていく時期でしょう。これから製造業界を志す方々も、大きな変革の中でぜひチャンスを掴んでください。

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