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製造業のコスト削減方法│知っておきたい注意点と効果を高めるコツ

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一般家庭の家計改善と同じく、企業の収支改善や業績向上の方法は主に「収入を増やす」、「支出を減らす」の二つです。今回の記事ではそのうちの「支出を減らす」ことについて解説します。

企業において支出を減らすことを、一般に「コスト削減(コストダウン)」といいます。物価が急騰している昨今、どの企業においても会社全体を挙げて取り組むべき重要な課題でしょう。

とはいえ、製造業においてコスト削減は簡単ではありません。製造業の特徴として、支出項目が他業種と比較して多岐にわたり、コスト削減の対象とすべき項目と削減が難しい項目があります。そのため、やみくもにコスト削減を行ってしまうと、かえって自社の業績にマイナスの影響を与える可能性もあるのです。

この記事では、製造業のコスト削減方法について、注意点と効果を高めるコツ、おすすめのアイデアを紹介します。

1.製造業のコスト削減における基礎知識

製造業について、コストを削減しやすい/削減しにくい費用、コスト削減の際の注意点や効果を高めるポイントを説明します。

製造業でコスト削減をしやすい費用

製造業においてコストを削減しやすい費用項目には、労務費、水道光熱費、通信費、移動費などが挙げられます。ただしコスト削減に取り組んでも、一朝一夕で効果が現れるとは限りません。費用の種類によってコスト削減の難易度は変わります。

製品の製造に直接関係しない間接的な費用は削減しやすいといえます。たとえば、製造原価に当たる原材料費は安易に削減することはできませんが、光熱費について、照明を使っていないときはこまめに切るようにルールづくりをすれば、比較的簡単に電気代を削減できるでしょう。これらは、「労務費」と「経費(水道光熱費、通信費、移動費)」に大別できます。

逆に、製品の品質維持や事業の運営に欠かせない費用のコスト削減は難しいといえます。賃料、外注費、材料費、燃料費などは削減が難しいばかりか、社会情勢の変化に伴い、増加することも珍しくありません。

コスト削減を実施しやすい費用 コスト削減を実施しにくい費用
労務費、水道光熱費、通信費、移動費など 賃料、外注費、材料費、燃料費など

製造業のコスト削減における注意点

・必要な投資まで削らない
製品の品質や生産効率に直接的に影響する費用は必要な投資と考えるべきです。削減するとかえって製品の品質が下がるなどのリスクがあるためです。たとえば製造原価を下げ、利益を上げようとして、原材料を従来よりも安価なものに変えると、製品の質が低下する可能性が高いでしょう。また、設備投資費、研究開発費、広告宣伝費などを削れば、一時的にはコスト削減できますが、長期的には売上が減少してしまうかもしれません。

 

・コスト削減に関して高すぎる目標や厳しすぎるルールを設定しない
コスト削減に関してシビアに詰めすぎると、従業員に過度なプレッシャーをかけてしまうでしょう。照明をこまめに切る程度のことにしても、面倒と思うのが人の心理です。また、強制されているように感じると自然と反発するものですし、経営層や管理職は高い給料をもらっているのに、現場ばかりに押しつけて……と思われてしまうかもしれません。こういった雰囲気が社内に拡散すると、業務の遂行に支障をきたすおそれがあります。従業員のモチベーションや健康状態にも悪影響を及ぼしてしまうでしょう。

製造業のコスト削減効果を高めるポイント

・社内の協力体制づくりに力を入れる
コスト削減には従業員全員の協力が欠かせません。ただ頭ごなしに命令するのではなく、「コスト削減を行う理由や背景」「コスト削減を行うメリット」などを伝えて理解を求めることが重要です。コスト削減に取り組むうえでの、従業員の納得感や責任感を高めることを目標にしましょう。

 

・5S活動で日々の職場環境を整える
5S活動は、5つの徹底により職場の環境改善を図るための活動のことです。5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」の5つの頭文字をとった言葉です。具体例としては、道具の定位置を決める、不要なものを捨てるなどが挙げられます。日々の5S活動により無駄なコストの発生を予防でき、作業効率や生産性向上にも繋がります。

2.製造業のコスト削減を実現する具体的な方法

次に、製造業においてコストを削減するための具体的な方法を紹介します。ひとつひとつ の削減効果は小さかったり、導入コストがかかったりしますが、適切な計画策定とその後の効果測定により、長期にわたるコスト削減が期待できるでしょう。

労務費を削減する方法

・現状の労務費を正確に把握する
まず現状の人員にかかる正確な費用を把握することで、削減する費用の目標を定めることができます。

 

・労務費の一部を変動費に変える
企業で削減効果が大きいのは労働力にかかる費用です。この一部を流動的に調整できるように仕組み化することで、売上や業務量に応じて労務費を調整しやすくなります。具体的には、正社員の賃金の業績連動化(インセンティブ制、業務連動ボーナス制の導入)、一部業務の外注、フロー型人材の雇用などです。フロー型人材の例としては、繁忙期に増員しやすいアルバ
イトやパート、派遣社員、契約社員などが考えられます。ただし、人出不足に陥っては元も子もないので、人員確保に支障をきたさないように注意が必要でしょう。

 

・業務効率の上がる仕組みをつくる
稼働人数や稼働時間を最適な数値に調整することを目標として、業務効率の上がる仕組みをつくることが大切です。非効率的な生産工程を改善したり、人材配置を最適化したりすることで労務が軽減できます。具体例としては、業務マニュアルの作成、ロボットやAI・IoTソリューションによる業務の自動化などが挙げられます。

経費(水道光熱費、通信費、移動費)を削減する方法

・LED照明に切り替える
エネルギー効率のよい照明機器への切り替えは、長期的に見て安定したコスト削減につながります。LEDは導入しやすい機器の一つといえるでしょう。以前は水銀灯から代替できるLED照明などは非常に高価でしたが、近年は価格も安定してきています。また、必要に応じて電源のオン/オフを自動で操作する人感センサのような機器もあります。

 

・節水弁を取りつける
あまり知られていませんが、節水は費用対効果が高く、非常に有効なコスト削減方法の一つです。節水弁は蛇口などに弁を取りつけるだけで使用できるものもあります。ただし、機器の洗浄に用いる水源などに使用する場合は、水圧の確保に注意しましょう。

 

・地下水を利用する
場合によっては、地下水の利用も選択肢に入れられます。上水として使うためには、水質の確保、浄化施設など水道システムの導入が必要になることもありますが、冷却用など、工業用水としてならそのまま使うことも可能な場合があります。

 

・ネット回線や社用携帯の契約プランを見直す
一般家庭でもそうですが、通信費は見直しやすいコストといえます。代理店と一括契約をしているならば、更新の時期に複数の会社から見積もりを取って、価格の引き下げ交渉をするとよいでしょう。また、複合機リースやセキュリティ機器などと併せて一括契約をすると、価格が安くなるケースもあります。

 

・Web会議システムなど、IT技術を導入する
製造業でもIT技術の導入によって経費を削減できます。営業、事務など、リモート(テレワーク)でも仕事ができる部署はないでしょうか。必ずしも全員を工場に集結させる必要はないかもしれません。

関連コラム:「中小製造業のペーパーレス化はどこまでできる?現場の課題と実施の手順

 

 

3.製造業でコスト削減に成功した事例

ここからは、生産管理システムやIoT機器の導入により、コスト削減の成功事例をご紹介します。

余剰品の発生防止に成功→2年弱で約1,300万円削減
(コーセーエンジニアリング株式会社 様)

■実施背景
以前は独自のシステムを使用していた。会社規模の拡大にともなってシステムの追加改造を繰り返したことにより、全社システムとしての統一性を欠き、限界を感じるようになった。

■実施内容
個別受注生産に対応し、システムに一貫性があり、会社の成長に合わせて活用できると判断し、パッケージソフト「TECHS-S」の導入を決定。導入に際し、会社全体で適した効率的な方法を考えた。全部門のリーダーを集め、どの業務をどの部門が担当すべきかを徹底的に議論した。例としては購買部門が担当していた部品表の取込について、連絡ミスや取込漏れが多くあったことから、設計部門が行うように運用を変更した。

■実施効果
進捗、原価の「見える化」と共に、在庫の「見える化」にも取り組み、大きな改善効果を生み出した。設計担当が在庫状況を把握できるようになったことで、以前は管理しきれずに処分していた大量の余剰在庫を無駄なく活用できるようになり、結果、2年弱で1,280万円もの原価削減効果を生み出した。

稼働率の「見える化」による社員の意識変化→生産高は 1.7 倍
機械稼働率改善→内製化率向上
(枚岡合金工具株式会社 様)

■実施背景
機械の稼働率を意識しているのが管理者だけで、機械が停止している時間があっても会社として把握できないという課題を抱えていた。しかし、センサ検出だけではデータ抽出が十分ではなく、正確な稼働状況の把握が難しかった。

■実施内容
機械の停止時間を減らして生産性を向上させるためには、機械稼働状況の「見える化」が必要と考え、ネットワークカメラとAI画像認識を利用したIoTプラットフォーム 「A-Eyeカメラ(エーアイカメラ)」を導入。クラウドと連携した「あんどん機能」で、共有モニターだけでなく、スマートフォンやタブレット端末でもリアルタイムに状況を把握。

■実施効果
停止時間や稼働率などの「見える化」により、実際の稼働状況がわかったことで、機械を直接操作する社員だけでなく、営業部門の社員も「機械稼働率が上がる受注」を意識した営業活動を行うようになるなど、全社員の意識が変化。結果、今まで外注していた加工を社内で行い、機械稼働率を上げていこうという意識が全員に芽生えた。内製化率が上がり、月別の生産高も金額ベースで1.7倍に。

拠点間の情報共有で、購買価格の地域差をなくし、原価低減を実現
(コトブキテクレックス株式会社 様)

■実施背景
以前はオーダーメイドのシステムで原価を管理していたが、長年の使用での老朽化など、さまざまな問題が発生していた。そのため新システム導入を検討し、生産管理システムのシェアNo.1という実績をもつ「TECHS-S」を導入。

■実施内容
初めに三つの工場に「TECHS-S」を導入し、その後すぐに他の拠点にも追加導入。他拠点の状況がリアルタイムに見えるようになったことで、慣習に根付いたさまざまな地域差がなくなる。たとえば、ある拠点では、近隣ではそこでしか売っていないという理由で割高な資材を買っていたが、本社で買って送るほうが安いことが判明。こうした「見える化」により、購買の適正化と効率化に成功。各拠点のデータの一元管理による原価低減効果を得る。

■実施効果
各拠点がシステムで一つに繋がったことで、他拠点がどこに発注を依頼し、単価がいくらだったかなどを把握できる。加えて、過去の発注先・単価なども簡単に検索できるため、発注前の確認や相見積もりも積極的に行うようになった。さらに購買状況の「見える化」で、原価より納期を優先してしまうといった担当者側の課題にも気づく。結果、事務工数が以前の半分程度になった。

以前は、全社の仕入伝票を総務部がシステムに入力し、原価や買掛金を集計。結果が出るのも遅い状態だった。現在は月に25時間以上の工数を削減。全社での紙の使用量も半分程度に減った。帳簿作成システム「EUC Tool」と、ハンディバーコードリーダーの活用で正確性と効率性を両立。

4.製造業のコスト削減に役立つ生産管理システム・サービス

続いて、コスト削減、経費削減に役立つテクノアの生産管理システムの詳細をご紹介します。

個別受注型機械・装置業様向け生産管理システム「TECHS-S」


*システム概要
「TECHS-S」は、個別受注型の機械・装置製造中小企業のための生産管理システムです。

*導入による効果
製番ごとに構成部品原価を分かりやすく管理できます。CADやExcelから部品表データを取り込むこともでき、マスタ登録が不要です。過去の類似実績から原価を参照し、原価グラフにより、受注、製番、製品それぞれの単位で、原価の予算金額、実績金額、最終予測金額を確認可能です。また、仕掛中でも最終予測金額が確認できるので、早い段階で対策を打つことも可能です。

購入品や外注費の価格交渉のための支援機能を活用することにより、原価低減効果を得られます。さらに、工数・進捗・負荷管理を実現し、労務費の低減が可能です。原価やムダの「見える化」により、全社員のやる気を引き出します。
個別受注型 機械・装置業様向け生産管理システム「TECHS-S(テックス・エス)」

多品種少量型 部品加工業様向け生産管理システム「TECHS-BK」

*システム概要
「TECHS-BK」は、多品種少量型部品加工中小企業のための生産管理システムです。

*導入による効果
過去の類似例の仕入単価や総額などの実績データを発注金額に反映し、消耗品購入、材料購入、外注熱処理、外注加工などの発注書を発行します。アセンブリ品は子部品データをCSVデータで取り込み、親子で管理できます。仕掛中の製番別原価をリアルタイムに把握することも可能です。製番別原価明細問合せ機能により、原価を在庫引当費、在庫材料費、消耗品費、仕入材料費、外注加工費、社内加工費、その他の7要素に分けてリアルタイムに分析できます。また、仕掛中でも原価予測や粗利の確認ができ、早期の分析や対策が行えるようになり、利益体質への改善をサポートします。

作業指示書の発行により、加工時間の予実比較による生産性向上や、進捗状況をリアルタイムで把握し、負荷調整をいつでも行えるので、労務費の低減につながります。改善効果を「見える化」し、公平な数字評価により全社員のやる気を引き出します。

多品種少量型 部品加工業様向け生産管理システム「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」

5.製造業のコスト削減方法、注意点と効果を高めるコツの総括

企業が支出を減らすことをコスト削減といいます。製造業では、多岐にわたる支出項目のなかで、コストを削減すべき費用項目を適切に見極めることが必要です。労務費、水道光熱費、通信費、移動費などは比較的削減しやすいといえます。計画策定の際には、必要な投資まで削らないようにし、 高すぎる目標や厳しすぎるルールを設定しないようにも注意しましょう。

コスト削減効果を高めるためには、社内の協力体制づくりに力を入れることや、 5S活動で日々の職場環境を整えることが必要です。コスト削減を実現する具体的な方法としては、労務費の流動性を高める仕組みづくりをするほか、経費を見直したり、効率的な機器、システム(仕組み)を導入したりすることもできます。文中事例で紹介した通り、適切な生産管理ソフトやIoTの導入もコスト削減に効果的です。