ものづくりコラム COLUMN

スマートファクトリーとは?定義やメリット、注目される背景を解説!

著者:今村 洋一郎

皆さんこんにちは。
株式会社テクノア TECHS事業部 今村です。

よく聞く「スマートファクトリー」ですが、いざ自社で取り組もうとした際に何をすべきかお悩みではないでしょうか?今回は、「スマートファクトリー」をテーマに、実現に向けた工場の自動化や仕組化など、製造業が取り組むべきポイントと合わせて解説します。

1.スマートファクトリーとは?

スマートファクトリーとは、AI・IoTソリューションの導入によるデータ活用や分析で、生産活動の業務プロセスの改善や最適化、自動化を実現する工場のことを指します。IoTの導入で稼働率などの工場の見える化(可視化)や、AIを活用した自動化など、DXを推進する上でも重要な取り組みの一つとも言えます。
昨今、工場の最適化にとどまらず企業全体の取り組みとして注目される「スマートファクトリー」について詳しく見てみましょう。

スマートファクトリーの定義

AIやIoTなどの先端テクノロジーを取り入れ、2011年にドイツが提唱した国家プロジェクト「第四次産業革命(インダストリー4.0)」を体現した工場をスマートファクトリーと言えます。「第四次産業革命(インダストリー4.0)」は、製造業のIT化促進を目的にドイツで考案されました。工場の仕組化や生産活動(工程)の自動化や最適化を行うことで、コスト削減や生産性向上の継続的実現を目指す取り組みです。その中でも「製造ラインの自動化」が注目されがちですが、設計開発・ロジスティクス・経営まで、製造業の企業活動に関わる全プロセスをスマート化する必要があります。

スマートファクトリーの目的

工場においては、製造ラインの自動化や最大効率の生産性実現を目的に、AIやIoT機器、センサー、ビックデータなどを活用した取り組みとしてスマートファクトリーが注目されています。スマートファクトリーの目的として代表的なものを6つご紹介します。

〇生産性向上
生産管理システムやAIを活用した設備の稼働監視など、リアルタイムで工程進捗や負荷状況を把握することで、業務の効率化や稼働率の向上を図ることができます。また、過去の製造実績といったデータ分析を行うことで、加工工程の最適化や標準化で、生産性向上が期待されます。
【生産性向上を目的としたIoT活用例】
・設備の稼働率向上:AIカメラやセンサーを活用し、稼働や進捗状況を把握
・ヒトの稼働率向上:生産管理システム等のデータ活用でリアルタイムに進捗状況を把握
・作業効率化(負担軽減):生産スケジューラを活用し、負荷を考慮した作業の自動割当
・設備の停止時間削減:AIカメラやセンサーを活用し、停止した設備をアラート通知

 

〇品質向上
図面データや作業実績をデータ化することで、過去の実績から分析し、品質向上へつなげることも目的の一つです。過去の不良から原因や不良の生じやすい工程を特定し対策することで、不良率の最小化やミスの再発を防止する事にも役立ちます。また、データ化で加工工程の標準化や作業のノウハウ共有ができれば、品質の安定化やばらつきの低減にもつながります。

 

〇コスト削減
AIやIoTソリューションの活用で、原価管理や設備の稼働状況、在庫をリアルタイムで把握することで、生産活動で生じるコスト削減にもつながります。
【生産管理システムの導入でコスト削減に成功した事例はコチラ】
在庫の『見える化』により2年弱で1,280万円の原価削減

 

〇製品化・量産化の期間短縮
受注案件情報や製造までの加工指示、部品表など生産活動に関わる情報を一元管理することで、急な仕様変更への迅速な対応できます。製品化・量産化の期間短縮を実現するためにも、現場改善を行う上で工場の見える化やシステムでの運用が求められます。

 

〇人材不足・育成への対応
高い技術をもつベテラン社員のノウハウをデータ化し共有するだけでなく、AIに学習させるなど、標準化や技術の継承を目的にAI・IoTソリューションを導入する事例も増えてきています。

 

〇新たな付加価値の提供
蓄積されたビックデータやシミュレーターなどの活用で、製品開発やユーザーへのサポートなど新たな付加価値を提供できる可能性があります。日々変動するユーザーのニーズへ素早く対応できるよう、ノウハウなどのデータ共有による加工技術の拡大や、予測システムや過去の実績を基にした製品開発を行うために、ITツールの導入が求められます。

 

スマートファクトリーの実現に向け、どういった目的で取り組むべきか、しっかりと見極めた上で、AI・IoTソリューションの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
たとえば、現場と本社をネットワーク繋ぐことで、遠隔地の工場の稼働状況確認や管理が行いやすい環境も整備できます。本社からの現場モニタリング、AI搭載型IoT機器による不良検知など環境を変えることで、製造業が抱える人材不足解消やコスト削減などの課題解決にも役立つのです。

スマートファクトリーが注目される背景

日本の製造業において人手不足の深刻化や競争力低迷、レガシー化しつつある既存設備の置き換えなど、様々な課題が存在しています。業界全体が抱える課題の解決には、製造コストの削減や製造ラインの自動化、全工場の稼働状況の把握とコントロール、ロジスティクス改善といった製造業のDX推進が不可欠です。スマートファクトリーの実現で、現場から経営までスマート化することで、業界全体が抱える課題を解決するとともに、自社の競争力強化につながるとも考えられています。

2.スマートファクトリーのメリットと課題

工場のスマート化がもたらすメリット

スマートファクトリーの実現において、先端テクノロジーの導入やデータ分析が必要です。
ここでは代表的な3つのメリットをご紹介します。

〇製造効率の向上
IoT機器やAIによるデータ活用で製造工程を可視化することができます。また、蓄積したデータを分析することで、製造ラインや現場における課題を発見し、迅速に解決策を検討することで製造効率の向上につながります。AIカメラやセンサーを用いた設備の稼働率や、負荷を考慮した設備や人の自動割当てなど、ITツールを活用した現場改善も可能です。最近では、AI画像認識による人物トラッキングで工場内の動線の見直しや、設備の稼働率から生産計画の見直しを行うなど、様々な取り組みを行っている事例も見られます。さらに、製造ラインの自動化が実現できれば、人的コストの削減や人財不足解消も期待できます。

 

〇技術伝承の体系化
現場での知見やノウハウを収集・分析してデータベース化し、社内で共有できることもメリットの一つに挙げられます。製造業界全体が抱える属人化の解決には、次世代への技術伝承が必要不可欠です。ベテラン社員の技術を、どのように継承すべきか、人手不足の中で重要な課題です。高い技術力をAIに学習させ方法や、加工実績をデータ化することで、誰でもノウハウを共有できる環境を整えるなど方法は様々です。ベテラン社員の技術を体系化することで、後継者や若い人材を効率的に育成できます。

 

〇未来予測の実現
スマートファクトリーでは、製造現場のデータや販売管理などの様々なデータを基に、未来予測が可能になります。例えば、工場稼働率や生産性、人員の稼働領域などをAIが予測するといった場面が想定されます。また、新設備導入時の生産性を数字で予測することもできます。AIカメラやセンサーを活用し、機器や設備の稼働状況をリアルタイムで監視できれば、緊急停止などのトラブルや故障の前兆をつかみやすく、迅速な対応が可能になります。

 

ここでのメリットは一例ですが、スマートファクトリーの実現で得られるメリットは企業によって様々です。また、データを可視化し、適切な判断が可能になる「見える工場」を生み出すだけでなく、データ活用によるボトルネックを予測する「止まらない工場」や拠点間の連携を強化する「つながる工場」の実現も可能になります。

製造業のデジタル化における課題

スマートファクトリーの実現や浸透のために立ちはだかる課題もあります。次に課題の例をご紹介します。

〇データ統合が難しい
生産活動に関わる部門や工場ごとに使用しているシステムが異なるなど、一元管理に苦労している企業も多いのではないでしょうか。スマートファクトリーの実現において、業務の一元化やデータ統合は必要不可欠です。部門間や、工場や本社などの拠点連携を効率かつ安全なネットワークでつなぐ仕組みを用意するには一定のコストと時間がかかります。社外秘の情報を取り扱う場合など、社内ネットワークのセキュリティ対策の重要度も高く、さらなるコスト増加にもつながりかねません。

 

〇専任人材の確保や社内研修が必要
スマートファクトリーの運用には、用意した仕組みを管理および運用できる専任人材が必要になります。社内への導入時に研修などを行い、利用方法などを周知させる必要や、稼働後のサポート体制など準備が必要です。そのため、人件費が増加する恐れがあります。また、一元管理を行うために、システムの入れ替えが生じる際には、今までの運用が変わることから、社員の協力も必要になってきます。特に大きなシステム入替や導入が生じる場合、しっかりと目的を伝えるなど、会社としてのサポートを行わないと、専任担当者への負担が大きくなってしまう可能性もあるため、会社の取り組みとしてのプロジェクト管理が必要です。

3. スマートファクトリー実現に向けた3つのフェーズ

ここでは、経済産業省で公開されている「スマートファクトリーロードマップ」を参考に3つのフェーズについて解説します。

「スマートファクトリーロードマップ」ではスマート化の目的ごとに、データの活用具合を示す3つのレベルが設定されています。スマートファクトリーの重要なポイントである「データ活用」の観点から推進度合いを測る仕組みです。生産性向上といった目的ごとに、AIやIoT機器をどのように活用し、どのような状態を実現すればよいかイメージできるよう整理するために使用します。

【参考】経済産業省 中部経済産業局「スマートファクトリーロードマップ」
https://www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/smart_factory_roadmap/roadmap.pd

STEP1:スマートファクトリー化の目的を定める

経営戦略なども踏まえた上で、工場のスマート化に向けた目標設定が必要です。目標については第1章で解説した「スマートファクトリーの目的」にあるよう、品質向上やコスト削減、生産性向上、人材不足解消など大目標を定めるのが先決です。また、続いて不良品低減や在庫削減などの小目標を定めても良いでしょう。
スマートファクトリーの実現に向け、その目的やゴールまでのロードマップを描き、全体最適を行うための計画を練る必要があります。そのためにも、活用するシステムを把握し、データ基盤の構築も必要となってきます。AIやIoT機器を導入するだけで終わらないよう計画してみましょう。

(システム、AI・IoT機器導入時のポイント)
・既存システムとの親和性:システム連携による効率化が図れるかを確認
・フィードバックループを考慮:PDCAサイクルによる最適化のようにデータ収集と活用で迅速かつ効率的な判断を行う
・機能拡張の可能性:”やりたいこと”や稼働条件が実現できるか、カスタマイズの必要性などを確認。

スマートファクトリーでは、既存システムとの親和性を考慮しながら、システム連携を行う必要があります。その上で、全体の最適化や生産性向上のためにフォードバックループを回していきましょう。

STEP2:データの収集・蓄積(データ活用レベル1)

AIやIoT機器のセンサーなどを活用し、各地の工場や社内に散らばったデータを収集して統合する取組です。例えば、生産管理システムやAIカメラなどの工場の見える化システムを導入することで、効率的なデータ管理が可能になります。

〇生産管理システム
テクノアが提供する生産管理システム「TECHSシリーズ」は、生産活動に関わる業務の一元管理や、工程や部品手配などの進捗や原価がリアルタイムで把握できるシステムです。

・1アカウントから利用できるクラウド対応型生産管理システム「TECHS-S NOA」
製品ページ:https://www.techs-s.com/product/techs-s-noa
・個別受注型 機械・装置業様向け生産管理システム「TECHS-S」
製品ページ:https://www.techs-s.com/product/techs-s
・多品種少量型 部品加工業様向け生産管理システム「TECHS-BK」
製品ページ:https://www.techs-s.com/product/techs-bk

 

〇工場の見える化システム
・AI画像認識を利用した工場の見える化システム「A-Eyeカメラ」
リンク:https://marugoto.technoa.co.jp/
設備のメーカや新旧問わずに対応可能。
A-Eyeカメラはネットワークカメラで撮影された画像を元にAI(人工知能)が生産設備の稼働状況を判断し、クラウドに情報を蓄積するIoTシステムです。蓄積された情報をリアルタイムに集計・分析し、全社員で稼働状況を共有することで「工場の見える化」を推進します。

 

STEP3:データによる分析・予測(データ活用レベル2)

AIやIoT機器のセンサー、生産管理システムなどの導入で蓄積されたデータを分析し、将来の予測に役立てます。例えば、工場内の稼働状況や工程進捗状況などのデータを分析し、完了予定時間や納期を予測できます。予測に基づき、生産プロセスを停滞させる要因を特定し、効率化の課題を発見することが重要です。

STEP4:データによる制御・最適化(データ活用レベル3)

データ活用レベルの3つ目のフェーズでは、データを活用しながら、最適な経営判断を検討することを目指します。蓄積したデータを基に分析し、最適な判断や実行ができるよう、データと向き合う意識も重要です。例えば、効率的かつ最短で製造が完了するよう、作業計画を最適化するためにはどうすべきか、判断材料となるデータの蓄積と活用が重要です。最終的に工場稼働率や生産性が向上し、人間の非稼働率やコストを下げることができれば、スマート化に成功したと言えます。

このように、スマートファクトリーを実現するためには、データの「集積・蓄積」「分析」「活用」のサイクルを回し、成果を出す基本的構造が必要です。AIやIoTを用いてデータを「集積・蓄積」し、ビックデータの活用でデータを「分析」、得られた分析結果とデータをノウハウとして「活用」してみましょう。ここで重要なのは、システムやIoT機器の導入は手段であり、企業の財産としてデータ活用できる環境が必要となります。ゴールとして、システム導入したその先をイメージできるよう、ぜひ自社の「スマートファクトリーロードマップ」を作成してみましょう。

4.まとめ

今後、IoTやAIが発展していくことによって、より緻密なオペレーションが可能になるばかりでなく、従来人間の力だけでは把握しきれなかった、より詳細な事象が見えるようになってくるかもしれません。「製造業で働く人」と聞くと、作業着を着た人が工具片手に仕事している…… というイメージが強いかもしれませんが、ポケットにスマートフォンやタブレットを携帯して業務にあたるというのが、やがて当たり前の時代になってくるでしょう。

今村 洋一郎 TEHCS事業部 九州営業課

ITコーディネータ(認定番号)9028112020C

入社以来、生産管理システム「TECHSシリーズ」の導入提案、ITツールの活用方法を提案させていただいております。
ITの利活用及びお客様の体質改善のご支援をいたします。