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製造業のテレワーク導入が難しい理由とは?事例と課題解決のポイント

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製造業はテレワークの導入が困難な業種であるといわれています。テレワークは在宅勤務などリモートで仕事のできる働き方で、従業員と企業の両方にさまざまなメリットがあります。そのため、自社に導入したいと考えている製造業も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では製造業にテレワーク導入が難しい理由を分析、導入時のポイントを解説します。また、実際に導入に成功した事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.製造業のテレワーク導入が難しい理由とよくある課題

製造業は、他の業種と比べるとテレワークの導入が難しい傾向にあります。たとえば部品の組み立てなど、工場内で行う仕事はとりわけテレワークの導入が困難です。

2022年2月にパーソル総合研究所が行った職種別のテレワーク実施率の調査によると、製造(組立・加工)のテレワーク実施率は4.5%でした。企画・マーケティングの61.4%や、法人向け営業の40.4%と比較すると、製造業のテレワーク導入が進んでいないことが推察できるでしょう。

【出典】 「第六回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」(パーソル総合研究所)

しかし裏を返せば、製造業が今後テレワークの導入率を伸ばしていく余地は十分に残されているといえます。テレワークを導入するための最初のステップは、自社のテレワーク導入の課題を明確にすることです。まずは、よく挙げられる課題について解説します。

セキュリティリスクの管理が難しい

製造業がテレワークを導入する際の課題の一つに、「セキュリティリスクの管理が難しい」ことがあります。製造業の業務は、秘匿性の高い情報を扱う頻度が比較的多い傾向にあるためです。たとえば、開発段階の設計書や図面などの技術情報は、自社の企業価値に直結する知的財産に該当します。これらの情報は社外秘扱いとなり、外部に流出するような事態は絶対に避けなければなりません。

しかしテレワークの一種であるモバイルワークは、セキュリティの面では今も大きな問題を抱えている状況です。たとえば飲食店や交通機関内でノートPCを開きモバイルワークをする人がいますが、他人に画面を見られる恐れがあります。オフィス内であれば、すでに万全の情報セキュリティ対策が施されているでしょう。しかし、普及し始めて間もないテレワークでは、セキュリティ対策が十分であるとは言いがたい状況です。そのため、無計画なテレワークの導入によって、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まる可能性があります。

テレワーク環境を構築するコストが高い

二つ目の課題は、テレワーク環境を構築するコストが高い点です。ここでのコストには、IoTシステムの導入(モノの遠隔操作、モノの動き・状態の検知、モノ同士の通信など)や、担当する人員の割り当て、工数などが該当します。

また、これまで社内で使用していたパソコンがデスクトップである場合、テレワークで使用するパソコンの購入が必須です。さらに従業員の自宅での通信環境の準備や、モバイル機器の貸与が発生するかもしれません。

適切な労務管理を行いにくい

三つ目には、テレワークでは適切な労務管理を行いにくいという課題があります。出社が当たり前だった時代は、社員同士が顔を合わせてコミュニケーションを取ることが一般的でした。社員一人ひとりの勤務時間や勤務態度、作業の進捗状況、チームの稼働状況を目視できたため、管理者も労務管理が行いやすかったでしょう。しかし、遠隔になると社員の様子が目に見えないため、業務管理が難しくなる傾向があります。

また、テレワークでは業務遂行のプロセスが見えにくいため、客観的な人事評価が難しくなるといった声もあります。成約数や売上など数値で量れる定量評価は、テレワーク後も変わらず可視化しやすい指標です。しかし、勤務態度や主体性、意欲や創意工夫といった定性評価は、テレワークの場合にどうしても見えにくくなってしまいます。日本企業の多くは完全成果主義でなく、業務のプロセスや仕事に対する姿勢も評価の対象です。そのため、定性的な評価軸をテレワーク後にどう扱うかがポイントとなります。

部署間のコミュニケーションが取りにくくなる

社員それぞれが離れた場所で働くテレワークでは、部署間のコミュニケーションが取りにくくなることも大きな課題です。具体的には、従来は自然に行っていた「雑談」がテレワークでは難しい点が挙げられます。雑談には同僚への信頼感や安心感を醸成する効果があったり、雑談の中から問題解決のヒントや新たなアイディアが生まれたりするメリットがあるともいわれています。無駄だと思われがちな雑談の重要性がテレワークの普及に伴って見直されるようになりました。

雑談以外にも、「休憩時間が別々になる」「業務上必要な人としかやりとりが発生しない」「飲み会などの社内イベントを行いにくい」など、テレワークには解決すべきコミュニケーション上の課題が今も多く残されています。

2.製造業にテレワークを導入するポイント・注意点

製造業がテレワークを導入するには、具体的にどういった点に注意すればよいのでしょうか。ここからは、テレワーク導入時のポイントや注意点について解説します。

テレワークを導入しやすい業務を洗い出す

テレワークには、導入しやすい業務とそうでない業務が存在します。そのため全社で一斉に導入しようとすると無理が生じ、さまざまな問題が起きやすくなります。したがって、まずは導入しやすい業務に限定して始めていくことが成功のコツです。たとえば、会議や研修といったオンライン化しやすい業務や、請求書や仕様書、各種資料の作成業務など、パソコンがあれば場所を選ばず作業できる業務などが該当します。また、対面で行う方が効率の良い現場業務は最初からテレワークにせず、特定の出勤日を設けるなどしてまとめて作業できるように工夫するとよいでしょう。

本来テレワークには、在宅勤務制度だけでなくサテライトオフィスでのリモートワークや、外出先でのモバイルワークなども含まれます。最初はすべてを同時に進めるのではなく、自社の業務に合わせて無理のない範囲の働き方を採用すると、リスクも少なくなるでしょう。

こういった点を踏まえて、初めは局所的・段階的にテレワークを導入すると、実施に必要な制度や環境を新たに整えやすくなります。また、小さな成功事例を積み重ねていけば他の業務へもスムーズに展開しやすくなるでしょう。
関連コラム:「中小製造業のペーパーレス化はどこまでできる?現場の課題と実施の手順

 

 

社内の協力体制づくりに手を抜かない

社内から協力を仰ぎ、連携を図ることもテレワーク導入のカギの一つです。そのための方法として、テレワーク推進のプロジェクトチームを社内に設置し、各部門から選出したメンバーで構成するとよいでしょう。全社を巻き込むと従業員一人ひとりがテレワークを自分ごと化できるため、社内の理解を得られやすくなります。

IoTシステムを導入する

テレワークを円滑に行うためには、業務遂行を支援する各種IoTシステムの上手な活用も欠かせません。たとえばWeb会議ツールやビジネスチャットツールなどは、テレワーク中のコミュニケーション量を左右する重要なICTツールです。また、労務管理の面では勤怠管理ツールが便利です。勤務日数や勤務時間を記録できる機能のほか、シフト管理や打刻機能、在席確認機能、給与ソフトと連携できる機能など多彩な機能が搭載されています。自社のニーズに合わせて適切なツールを比較検討するとよいでしょう。業務には、ファイル共有ツールやオンラインストレージ、グループウェアといったツールが役に立ちます。

※関連資料:お役立ち資料「中小製造業がDXを進める6ステップ│活用できる補助金やツール
 

3.製造業でのテレワーク導入事例

製造業で実際にテレワークの導入に成功した企業はいくつも存在します。最後に、製造業におけるテレワーク導入事例を2つ紹介します。

アイシン精機株式会社│自動車部品の製造・販売

自動車部品の製造・販売を手掛けるアイシン精機株式会社では、2020年1月から職種や資格を限定せずに全部署でテレワークを導入しました。結果、間接部門の2020年度総労働時間を2019年度比で見込み195.5時間の削減に成功しています。

導入時のポイントとして、テレワーク実施者全員を対象にアンケートへの回答を促し、現場からのフィードバックを収集しています。また、健康管理に関するガイドを作成し、在宅勤務で起きやすい従業員の体調不良を未然に防ぐよう努めました。そのほか、テレワーク導入後の業務上の困り事や改善点を定期的に話し合う場の設置や付加価値が低い業務の削減、ペーパーレス化も合わせて実施しています。

【参考】「テレワーク活用事例 – 業種(製造)」(総務省)

三菱航空機│航空機器の製造・販売

航空機器の製造・販売を行う三菱航空機も、テレワーク導入に成功した一社です。テレワーク導入によって、開発・設計スケジュールの短縮や生産性の向上が見込まれています。同社では、テレワークの導入にともなって3D CADアプリケーションの仮想デスクトップシステムを構築しました。これによりグローバル規模かつ24時間体制で設計・開発ができる環境の構築を実現しています。

【参考】製造(三菱航空機株式会社)| 引用 システムズ・ジャパン株式会社様 導入事例

4.製造業でもテレワーク導入は可能 ポイントを押さえて円滑な導入を

本記事では、製造業がテレワークを導入する際に直面する課題や導入時の注意点について解説しました。製造業は他の業種と比べるとテレワークの導入が難しい業務が多くあるため、導入に至っていない企業が多いことは調査データからも明らかです。しかし、製造業であってもテレワークは導入できます。自社の課題をしっかりと把握し、障壁を一つひとつ取り除いていけば、段階的にテレワークを実現することは十分に可能です。実際にテレワークへの移行に成功した企業も存在し、結果として労働時間の削減や生産性の向上を実現しています。したがって、テレワークは製造業にとっても経営上のメリットを得られる取り組みであるといえるでしょう。

テレワーク導入にあたっては、総務省がテレワーク総合情報サイトを運営しているほか、補助金制度も整備されています。また、テレワークでの業務をサポートする多くのITツールが開発されています。自社でテレワーク導入を検討する場合は、こうした制度やツールをうまく利用してみてください。