業務標準化とは?必要な理由や効率的な進め方、メリット・デメリット
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業務標準化とは、どの従業員が担当しても同じ品質が出せるように、業務手順を最適化することです。品質管理が重要な製造業において、ミスを防ぎ、工場を効率的、安定的に運用するための要素の一つでもあります。
製造業における安定運用の重要性は、おそらくほとんどの方が理解していることでしょう。しかし、そのために必要な業務標準化の内容について、具体的に理解している方は少ないのではないでしょうか。
本記事では、業務標準化の基礎的な知識やメリット・デメリット、実施に当たって注意すべき点に加えて、業務標準化に役立つおすすめのITシステムについても解説します。
1.業務標準化の基礎知識
はじめに、業務標準化に関して押さえておくべき基礎的な知識について解説します。
業務標準化とは?
業務標準化とは、「どの従業員が担当しても同じ品質が出せるように、業務手順を最適化すること」です。逆に、特定の従業員でなければ品質を維持できない状態を「属人化」と呼びます。
業務標準化が必要な理由
従業員が業務を行うに当たり、業務の標準化が必要な理由を二つ挙げます。
- ・急な人員変動に対応するため
- 企業では、人事異動や従業員の長期休暇、休職や退職など、人員の変動することがしばしば起こります。この際、業務が属人化していると、新たな担当者への業務引き継ぎがスムーズに行えません。
さらに、なんらかの理由で担当者が突然不在になるなどの緊急時に、業務そのものが遂行できなくなる事態も起こりえます。したがって、いつ人員が変動し担当者が替わっても滞りなく業務を遂行し続けるために、業務標準化は不可欠であるといえます。
- ・品質のばらつきを抑えるため
- 業務標準化ができていない状態では、同じ業務でも作業を行う担当者によって手順や成果にばらつきが生じ、結果として品質が不安定になるおそれがあります。
品質が安定しない製品を消費者に提供してしまうと、問い合わせやクレームにつながるほか、顧客満足度を下げるリスクにもなりかねません。品質を維持してこういった危険を回避するために、業務標準化の実施が必要となるわけです。
2.業務標準化を行うメリット・目的
業務標準化を行うに当たっては、その目的や得られるメリットをあらかじめ明確にしたうえで臨むことが望ましいです。ここからは企業が業務標準化を行う目的やそのメリットについて解説します。
業務品質が安定する
業務標準化を行うことで、誰が業務を担当しても同じ品質を維持できることから、 作業の抜け漏れやミスが発生しにくくなり、結果として業務品質の安定化につながります。また、従業員同士で作業内容を共有しやすくなり、コミュニケーションが円滑になる点も重要です。
業務品質が不安定な企業では、その安定を目的として業務標準化を実施するとよいでしょう。
人材育成の負担が軽減される
人財育成における負担の軽減を目的として、業務標準化を行う場合もあります。業務標準化によって新入社員に業務内容をレクチャーしやすくなり、新人の早期戦力化につながります。さらに、人材育成の工数やコストが削減されることで、会社全体の生産性向上も期待できるでしょう。
また、人材育成が不十分だと新入社員が業務を遂行できず、離職を招くリスクがありますが、こういったリスクの低減を期待できることもメリットの一つです。業務標準化が行われている企業では、社内に業務マニュアルやフローチャート、Wikiなどの資料が整備されていることが特徴です。自分の業務に関してわからないことがあった際に、こうした資料を読むことで不明点を自力で解消できるようになります。また、不明点を誰かに質問する際、聞かれた側が答えやすいうえ、回答に大きな違いが生じにくいこともポイントです。
従業員のスキルアップを期待できる
業務標準化は、従業員のスキルアップが目的になることもあります。たとえば、業務フローを確立することで、業務の複雑さをなくし、会社全体の業務の流れを把握することができます。さらに、業務を見える化することで、一つひとつの業務を段階的に習得しやすくなり、新入社員がスキルを身につけるまでの期間を短縮できます。また、標準化した業務はマニュアルや研修に落とし込みやすいため、全社的なスキルアップを望めます。これは新卒社員だけでなく、中途社員や他部署から異動してきた社員についても同様です。業務標準化が行われていない企業と比べ、新入社員を早期戦力化できることは大きな強みであるといえるでしょう。
さらに、業務を標準化することで従業員の知識や技術、ノウハウを体系化でき、会社全体のスキルが底上げされます。これは、市場で競争優位性を得るために重要です。
3.業務標準化を行う際のデメリット・注意点
これまで解説してきたように、業務標準化は企業にとって欠かせないものであり、多くのメリットもあります。一方で、業務の標準化を行うには、デメリットや注意点を把握し、対策することも必要です。ここからはデメリットについて、実施時の注意点もあわせて説明します。
標準化が難しい業務も存在する
業務の標準化を行う上で、中には標準化が難しい業務もあります。たとえば、個人の経験や技術力が求められる工程や、個人のセンスや感性 が問われる業務などです。
具体例としては、大規模工場での大量生産品でなく、オリジナリティの高い工芸品を職人が一点一点つくる場合などが挙げられます。社内でどの業務が標準化に向いており、逆にどれが向いていないかをしっかりと見極めるようにしてください。
従業員がマニュアル通りにしか動かなくなる
業務標準化には、個人の思考を停止させるリスクもあります。標準化された業務はミスこそ減らせるものの、イレギュラーな業務には対応できない社員が出てくる可能性も考慮しなければなりません。
業務内容によってはマニュアルに書かれていない柔軟な対応も求められるということと、臨機応変に動けなくなることで、万一の際にミスやトラブルが起こるおそれもあることを押さえておきましょう。臨機応変に対応が必要な業務においては、マニュアルの内容を限定的に書きすぎないことや、イレギュラー対応時に過去の対応履歴を参照できる環境づくりなども必要です。マニュアル通りに動くだけでなく、マニュアルの情報を活用して動けるよう工夫してみましょう。
従業員のモチベーション低下を招きかねない
繰り返しの単純作業が日常業務に多く含まれる場合、従業員の不満やストレスにつながる可能性がある点にも注意が必要です。
また、長期にわたって働いてきたベテラン社員のモチベーションを低下させる可能性もあります。新入社員が早期に成果を出せるようになることで、業務に熟達したベテラン社員が、現場での優位性を失ってしまうためです。業務標準化を実施する場合には、社歴の長い社員が抵抗感を抱いたり、ときには反発したりすることを想定し、慎重に進める必要があります。
4.業務標準化の効率的な進め方
ここからは、実際に業務標準化を行う際の効率的な進め方について、四つのステップに分類して解説します。
Step1.業務内容の洗い出し
最初のステップは、業務内容を洗い出すことです。具体的には、工数や発生頻度、難易度などの数値化しやすい指標を用いて現状の業務を分類・整理していくことを指します。まずは現場へヒアリングを行い、業務の実態を把握しましょう。
これにより、全社に共有されていない業務や、知られていないノウハウを見つけられる可能性があります。
Step2.標準化する業務の選定
次に、Step1で分類した業務を、標準化の優先度が高い順に順位づけします。標準化すべき業務は膨大なボリュームになりがちなので、品質維持が重要な業務から優先して取り掛かるとスムーズでしょう。
また、重要度の高さだけでなく「成果を出しやすい業務かどうか」も基準となります。成果を出しやすくすることで、早い段階から成功体験を積むことができ、担当者のモチベーション維持にもつながります。
Step3.マニュアルの作成
三つ目のステップは、「業務マニュアルを作成すること」です。マニュアルが整備されることで、業務を同じ手順に統一しやすくなります。
マニュアル作成については、まず業務の全体像を可視化し、おおまかな骨子をつくってから個々に分解して進めていくとよいでしょう。これは、初めから細部まで網羅した完璧なマニュアルを目指そうとすると、途中で挫折してしまうことがあるためです。また、いざ業務を実践してみると、完璧につくったはずのマニュアル通りに進まないこともあります。したがって、最初はざっくりと流れをつくったうえで、徐々に密度を高くしていくことをおすすめします。
なお、マニュアルを効率的に作成するには、フローチャートやマインドマップなどの分析手法やツールの活用が効果的です。フローチャートは業務フローを整理する際に、マインドマップは各業務を細かく分解する際に役立ちます。あわせて押さえておくとよいでしょう。
Step4.定期的な振り返りと改善
マニュアルを通じて業務標準化を行った後は、標準化が定着しているかどうかを定期的に振り返り、必要に応じて改善をしましょう。これはいわゆる「PDCAサイクルを回す」ことと同義です。
たとえば、マニュアルを使用する従業員がフィードバックやコメントを残せる仕組みをつくっておくと、マニュアルを更新しやすくなります。新たな知見をマニュアルに適宜反映していくことで、業務改善や業務品質の向上につながり、全社でのスキルアップが期待できるのです。一度だけマニュアルを作れば完結するものではない、ということを念頭に入れておきましょう。
なお、マニュアルの更新を効率化するため、マニュアルは紙ベースでなくクラウド上のデジタルデータで管理することを推奨します。デジタルデータであれば編集が容易で、使用する側も閲覧やコメント投稿がしやすくなるといった利点があります。
業務標準化を実施するに当たっては、専用のITシステムを導入することも前向きに検討するとよいでしょう。特にマニュアル作成には労力が要るため、一から用意する場合は担当者の負担が大きくなってしまうためです。
5.業務標準化に役立つシステム・サービス
最後に、業務標準化に役立つシステム・サービスをご紹介します。
中小製造業様において、部門ごとに使用しているツールが異なるため行っている転記作業など、改善できる業務が生じることもあります。そこで、生産管理システムなどのツールを導入することで、部門間での情報共有や業務の一元管理を実現でき、業務改善や標準化に貢献することができます。
中小製造業様向け生産管理システム「TECHSシリーズ」
- ■個別受注型 機械・装置業様向け生産管理システム「TECHS-S(テックス・エス)」
- 例えば、株式会社テクノアの 「TECHS-S(テックス・エス)」は、業務標準化に利用できるITシステムです。本製品は、個別受注型機械・装置業様向けに開発された生産管理システムで、業務標準化に役立つ多数の機能を備えています。
特徴的な機能の一つとして、「OA(オフィスオートメーション)」が挙げられます。これは、CADやExcelなどのデータ取り込み機能によって、資材調達部門や事務部門の入力を自動化できるといったものです。入力業務の自動化により、担当する従業員が替わっても品質を維持しやすくなり、標準化に貢献できます。
また、TECHS-Sは各種データを一元管理でき、必要なデータを必要なタイミングですぐに抽出できます。業務標準化に必要なデータ分析の精度を高め、工数削減も期待できることから、こうしたツールを積極的に活用していくとよいでしょう。
- ■多品種少量型 部品加工業様向け生産管理システム「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」
- さらに同社の「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」も、業務標準化に有用な生産管理システムです。こちらは多品種少量型の部品加工業向けに開発されており、TECHS-Sと同等の機能を備えています。こうしたITシステムは業種に特化したものを使用したほうが現場に浸透しやすいことから、自社に適したものを選ぶとよいでしょう。
生産スケジューラ「Seiryu(セイリュウ)」
同社の生産スケジューラ「Seiryu(セイリュウ)」も、中小製造業においてとくに属人化しやすい「生産計画」の業務標準化に貢献が期待できるシステムです。
本製品は多品種・少量生産の中小企業向けに特化している生産スケジューラであり、工場で使用する機械の稼働スケジュールを自動管理できます。また管理の際には、時間の単位を、分、時間、日などに変更可能です。スケジュール管理をアナログで行おうとすると、手間がかかるうえに正確性の担保が困難です。
さらに急な計画変更が生じた際に、機械の割り当てを整理して一つひとつ再設定することは非現実的ともいえるでしょう。Seiryuはこうした管理業務をシステム上で実施し、計画変更時も変更後のスケジュール調整や機械の割り当てを自動的に行ってくれるため、誰が担当しても無理のないスケジュール管理が可能となります。
6.製造業に業務標準化は欠かせない
品質管理が大切な製造業において、業務標準化は非常に重要度の高い取り組みです。実施する際には、品質の安定化や人員の育成といったメリットだけに目を向けるのではなく、自社の現状をしっかりと把握し、事前にリスクを想定の上でマニュアルの作成や定期的な振り返り・改善を行いましょう。
本記事では業務標準化の基礎的な知識の解説に加えて、いくつかの生産管理システム、生産スケジューラをご紹介しました。どれも標準化に役立つ業界特化型の製品です。標準化の人的リソースが不足していたり、アナログの業務が多くDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要を感じたり、担当者の負担が大きくなっていたりといった課題がある場合は、ITシステムの導入も視野に入れてみてください。