品質管理とは?品質保証との違い、手法や考え方、IT化の重要性を解説
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「品質管理」は、製造業に携わっている方であればおそらく一度は耳にしたことのある言葉でしょう。しかし品質管理が具体的にどのような作業であるかを理解し、正しく実行できている方はそこまで多くないのではないでしょうか。メーカーなどの企業が品質管理を行う上で、その内容や手法を正しく理解することはきわめて重要です。また、近年ではIoT技術の進歩によりあらゆる仕事がITシステム化されていますが、品質管理の仕事内容も例外ではありません。
そのため、品質管理を行うに当たってはシステムを活用できるように、事前知識を持っておくことも必要となります。本記事では、品質管理の基礎的な知識と手法、IT化の重要性と品質管理に役立つおすすめのシステムについて解説します。
1.品質管理とは?
まずは、品質管理において押さえておくべき基本的な知識について解説します。
品質管理の基礎知識
品質管理(Quality Control)とは、製品を製造する工程において、その品質を管理する取り組みのことです。英語の「Quality Control」を略して「QC」と呼ばれることもあります。
企業がものづくりにおいて品質管理を行う目的は、不良品や不適合品の発生などの品質のばらつきを未然に防止し、一定の水準を安定して維持することにあります。製品の品質が低下することで顧客からのクレームを招くおそれがあるほか、売上を落としたり、最悪の場合は企業への信頼を著しく損なうリスクにつながったりすることもあります。したがって、品質管理は製造業にとって欠かすことのできない大事な取り組みです。
品質管理は、工程管理と品質検証、品質改善で構成されます。具体的には、製造における各工程を検査し、製品やサービスが自社で定めた品質の基準を満たしているか、また検査自体が適切に実施されているかの監視です。基準を満たさなかったり、異常や不具合が発生したりした際は、その原因を特定し、品質の改善やトラブルの再発防止に取り組むことになります。
品質管理は、製造の評価において重要な指標である「QCD」にも関連します。QCDとは、「品質(Quality)」、「コスト(Cost)」、「納期(Delivery)」の3つの要素で構成される概念です。QCDの向上、すなわち品質の高さとコストの低さ、納期の早さをバランスよく満たしていることが、製造評価の観点から良質な製品であるとされます。
なお、QCDを満たすために、製造現場の組織内で品質管理活動を行うグループが自発的に発足することがあります。このグループは「QCサークル」と呼ばれます。
品質保証との違い
品質管理と似た概念として、「品質保証(Quality Assurance)」というものが存在します。これは、製品の原材料の調達から出荷・販売までの全工程において、製品の品質を保証する取り組みのことです。英語の「Quality Assurance」を略して「QA」と呼ばれることもあります。
QCでは、製造工程で検査を実施するため、出荷前までの品質基準に対して責任を負うものになります。一方で、QAでは製品が市場に流通した後の品質までが保証対象の範囲です。製品を使用する消費者に対して責任を負う点でQCと異なります。
品質管理に関連する規格や資格
品質管理には、確認しておきたい規格や資格についてご紹介します。
- ・ISO9000シリーズ
- 品質管理システム(QMS)の国際規格群です。これは、品質保証に関して要求される事項を標準として規格化したもので、この規格に基づき、製品やサービスを提供する企業が品質マネジメントシステムの構築や運用を行い、それらを自社内で評価します。また、第三者(機関)が企業の品質マネジメントを審査することもあります。
- ・QC検定
- 品質管理に関する各種情報の知識を問う検定です。日本規格協会グループ(JSA GROUP)が実施しています。
2.品質管理の主な手法や改善のための考え方
品質管理は具体的にどのように行えばよいのでしょうか。ここからは、品質管理で用いられる主な手法や、品質管理で改善を行うための考え方について解説します。
QC7つ道具
QC7つ道具とは、品質管理において、数値データを集計、分析し、改善に用いられる7つの品質管理ツール群を指します。QC7つ道具に含まれる内容は以下の7つです
- 1.グラフ
- 2.チェックシート
- 3.パレート図
- 4.ヒストグラム
- 5.特性要因図
- 6.散布図
- 7.管理図
品質管理を行う際には、それぞれの工程において各種数値を抽出し、数値を具体的な指標としてデータを分析しながら改善施策を立案、実行していくことが望ましいです。そこでこれらの7つ道具をデータ分析に活用することで、製造現場の具体的な課題を明らかにするために役立ちます。
まず、問題を発見する際にグラフと管理図が役立ちます。グラフでは数値データを比較する際に、棒グラフや折れ線グラフなどを用いて複数のデータをまとめてわかりやすく視覚化できることが特徴です。管理図は重さや長さ、硬さなどのデータを可視化し、工程が安定しているかどうかを確認できます。
パレート図とヒストグラム、特性要因図は、問題が生じる原因を突き止める際に役立つツールです。パレート図では、問題の原因を内容別に分類し、項目ごとに多さを確認できます。ヒストグラムは、データを任意でいくつかに区切り、その区間データを集計することで、平均値や異常値、ばらつきを確認するものです。問題の原因に対して講じた対策の効果を測定する際に役立ちます。特定要員図は、原因と結果の因果関係を整理して理解するために用いられるものです。
最後に、対策を施した問題が解決したことを確認する目的で、グラフや散布図、管理図を使用します。問題の発見に用いたグラフや管理図のほか、2つのデータの関係を調べることのできる散布図によって、要因と結果との相関関係を把握できます。
PDCAサイクル
品質管理では、改善を一度で終わらせるのではなく、何度も繰り返して品質を維持、向上させていくことが求められます。この改善を繰り返す流れのことをPDCAサイクルと呼びます。
PDCAとは、「計画(Plan)」、「実行(Do)」、「確認(Check)」、「処理(Action)」の4段階の頭文字をとったものです。具体的には、はじめに品質管理の計画を立てて、実行し、結果を確認したうえでさらなる改善に向けて処理をする一連のサイクルを指します。このサイクルを繰り返し実施することで、継続的な改善が可能です。
IE
IEは「Industrial Engineering」を略した言葉で、「生産工学」あるいは「産業工学」を意味します。具体的には、製品を適切な品質と価格で製造・販売するために、予算や原価の管理、生産技術や設備、資源の開発、改善など、経営において必要な工程を工学的手法に基づいて推進していくことを指します。品質管理において、製品の質と量の両方を向上させるために重要な要素です。
5S
現場環境を適切に管理、維持していくために必要な考え方を端的に示した概念が5Sです。これは、「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「躾」によって構成されます。現場で5Sを徹底することにより、作業のミスや無駄を減らし、業務効率化を図ることができます。結果として、生産される製品やサービスの品質向上にもつながるというものです。
4M
4Mは「人(Man)」、「機械(Machine)」、「材料(Material)」、「方法(Method)」の4つの要素からなる概念です。品質向上のためには、作業に携わる「人」に対して、採用時の教育やスキルアップの研修、作業者が不足した際の補充が不可欠です。作業に用いる「機械」は適切な選定と定期的なメンテナンスが必要となります。
また、「材料」は数や質の管理が求められ、作業の「方法」については作業手順書などによる明文化やマニュアルの整備を行うことが欠かせません。これら4つの要素をもれなく満たすことが、品質を適切に管理するうえでのポイントとなります。
TQC
TQC(Total Quality Control)は全社的な品質管理のことです。日本産業標準調査会(JISC)によると、「品質管理に関するさまざまな手法を総合的かつ全社的に展開して適用し従業員の総力を結集してその企業の実力向上を目指すもの」と定義されています。品質管理は企業の一部門だけが実行しても達成できるものではなく、社をあげて一丸となって取り組むことが求められます。
TQM
TQMは「Total Quality Management」の略語で、日本品質管理学会(JSQC)が「品質/質を中核に、顧客及び社会のニーズを満たす製品・サービスの提供と、働く人々の満足を通した組織の長期的な成功を目的とし、プロセス及びシステムの維持向上、改善及び革新を、全部門・全階層の参加を得て、様々な手法を駆使して行うことで、経営環境の変化に適した効果的かつ効率的な組織運営を実現する活動」と定義しています。
TQMと似た概念であるTQCでは、現場の従業員が主体となって品質管理を行います。一方、TQMは組織全体という意味合いで、経営層までを巻き込み、経営から現場へトップダウンで品質管理を行う点でTQCと異なります。
SQC
SQCは「Statistical Quality Control」の略で、「統計的品質管理」の意です。品質管理に用いられるデータを統計的に収集、解析して、品質の基準を決定し、品質管理を行う手法を指します。統計的手法を用いる理由として、品質の測定における偶然を極力排除し、誤差を見積もり、規則性を見出すことが挙げられます。
3.品質管理の効率化に役立つITシステム
品質管理は、専用のITシステムを導入することで効率的に行うことが可能です。その理由を解説するとともに、品質管理業務に役立つおすすめのシステムについてご紹介します。
品質管理をIT化することの重要性
昨今の製造現場では、品質管理システムや生産管理システムなどのITシステムが活用されるようになっています。管理業務をIT化することで、品質管理や生産管理で用いるデータを一元管理でき、データを部門間で共有しやすくなったり、社内連携が強化できたりといった恩恵を得られるようになります。品質管理を全社で行いやすくなり、結果として品質管理活動の推進も期待できるようになるのです。
また、製造現場の業務内容を見える化をすることによって、管理業務の最適化にも役立ちます。さらに、蓄積されたビッグデータを活用することで、生産活動の効率化や、精度向上などの改善活動につなげることも可能です。
品質改善に効果的な製造業向け生産管理システム
本記事では、製造業向けのおすすめ生産管理システムとして「TECHS-S(テックス・エス)」と「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」をご紹介します。
TECHS-S(テックス・エス)は、個別受注型で中小中堅規模の機械・装置業向けに開発された生産管理システムです。管理業務に役立つ機能を多数搭載し、工数管理や進捗管理、納期管理といった、品質管理全体の効率化を実現します。また、TECHS-Sは製品を受注してから設計し、生産を行う個別受注型の製造業に特化していることも大きな特長です。部品マスタの事前登録が不要で、CADやExcelからのデータ取り込み、在庫品のトレース管理、バーコード対応、システム開発に利用するアプリケーションであるEUCツールを利用したデータ活用、リアルタイムの原価把握といった機能を備えています。
個別受注型機械・装置業様向け生産管理システム「TECHS-S(テックス・エス)」
TECHS-BK(テックス・ビーケー)は、多品種少量型で中小規模の部品加工業向けに開発された生産管理システムです。当製品も、品質管理において重要な工程の工数管理や、労務費低減、納期遵守などの効果を期待できます。TECHS-BKの主な機能には、受注から生産、売上までの一元管理、部品マスタの登録不要、EDIやExcelからのデータ取り込み、在庫品のトレース管理、バーコードハンディターミナル対応、図面参照機能、先行製番への対応などがあります。
多品種少量型 部品加工業様向け生産管理システム「TECHS-BK(テックス・ビーケー)」
4.製造業に不可欠の品質管理には、ITシステムの導入も検討を
消費者が安心して利用できる製品を生み出すことは、企業が果たすべき大切な役割のひとつです。また、企業利益を追求する観点においても、品質管理は製造業において欠かせない活動といえるでしょう。
一方、実際に行うべき品質管理業務の内容は多岐にわたり、すべてを人力で行おうとすると、担当者に大きな負担がかかることが予測されます。効率的な品質管理体制を構築するためには、自社に適したITシステムを導入し、運用していくことが望ましいといえるでしょう。得意先により品質チェックシートが異なるなど、品質管理のシステム化に課題を持つ企業は多いはずです。しかし、システム化を行うことで、過去の検査工程や品質結果をデータ化して情報を共有し、不良の防止やトラブル発生時の迅速な対応が行えるようにもなります。本記事では、品質管理に役立つツールとして、生産管理システム『TECHSシリーズ』や、工程や品質の実績収集に特化した『Ez-Collect』をご紹介しましたが、自社の現状を把握したうえで適切なツールの導入を検討してみてください。