企業成長を左右する人材不足対策~働きやすさを「見える化」する認定制度の活用~
著者:松尾 翼(まつお つばさ)2023年 中小企業診断士登録
2024年 テクノア入社
前職では理学療法士として、医療・介護領域でリハビリ業務に従事し、10年間にわたり患者様の健康や生活の質向上を支援してまいりました。
現在はカスタマーサクセス本部で生産管理システムの導入および運用支援を担当しています。
IT化を通じて業務改革を推進し、お客様の持続的成長と生産性向上に取り組んでまいります。
これまでの経験を活かし、お客様に寄り添いながら、共にビジョン達成を支援してまいります。
はじめに
従業員の高齢化や若手人材の採用難などの人材不足は中小企業の喫緊の課題です。一方で、人材不足をあまり感じていない企業も存在していることも分かっています。その背景には、「働きやすい職場づくり」、「福利厚生の充実」、「働き方の多様化やワークライフバランスの推進」などの取り組みを積極的に行っている共通点が見られます。
人手が不足していない企業の、その要因(複数回答、上位10項目)
出典:経済産業省「中小企業白書2024」
今回はそれらの取り組みを客観的に見える化し、企業の魅力を高めるために役立つ3つの認定制度をご紹介しながら、中小企業が成長を続けるためのポイントを整理していきます。
1.くるみん認定制度:子育て支援の充実で人材の定着を促す
くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマーク
出典:厚生労働省HP
「くるみん」は「次世代育成支援対策推進法」に基づき、子育て中の従業員をサポートするための制度や実績が一定の要件を満たした企業を認定する制度です。たとえば、育児休業の取得率や短時間勤務・フレックスタイムなどの柔軟な働き方の導入状況などが審査対象となります。
・子育て世代が安心して働ける環境を整えることで、離職率の低下や優秀な人材の確保につながる。
・「子育てに理解がある企業」としてのイメージが醸成され、採用ブランディングにも効果的。
2.えるぼし認定制度:女性活躍推進による組織力・多様性の強化
出典:厚生労働省HP
「えるぼし」は「女性活躍推進法」に基づき、女性の活躍推進に積極的に取り組む企業を認定する制度です。女性管理職比率の向上、男女の平均勤続年数の均衡、研修や昇進の機会提供などが総合的に評価されます。
・女性社員のモチベーションアップと組織内での新たなアイデア創出を促す。
・優秀な女性人材や次世代の採用を効率的に行うことができる。
3.ユースエール認定制度:若者の採用と育成に特化した環境整備
出典:厚生労働省HP
「ユースエール認定」は「若者雇用促進法」に基づき、若者の就職やキャリア形成を支援する企業を認定する制度です。正社員比率の高さ、残業時間の適正化、新人研修や教育プログラムの充実度などが審査対象となります。
・人材育成に力を入れる姿勢が、企業全体の活性化やイノベーションの創発に結びつく。
・若年層が働きやすい企業として認知されやすく、採用力や定着率が高まる。
4.まとめ
『中小企業白書2024』にあるように、人材不足を感じていない中小企業ほど、社内制度の充実や柔軟な働き方の導入など、多様な人材が定着・活躍できる環境づくりに注力しています。「くるみん認定制度」「えるぼし認定制度」「ユースエール認定制度」といった公式の認定制度は、そうした施策を客観的に裏付けるうえで非常に有効な手段です。
認定取得への取り組みは社内改革を進められるだけでなく、社外へのアピールにも有用です。自社の現状や外部環境を見据えながら認定取得に取り組むことで、競争環境での優位性獲得にもつながります。ぜひこの機会に、認定制度の取得を検討していただきたいです。