設備投資で失敗しないために。「補助金」との賢い付き合い方を解説

著者:高山 一祥(たかやま かずよし) 設備投資で失敗しないために。「補助金」との賢い付き合い方を解説
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高山 一祥(たかやま かずよし) 営業本部

前職では、工作機械の専門商社にて、各種工作機械やCAD/CAMなどの提案営業を行っていました。
また、営業活動と並行して、各種補助金の申請支援も行っておりました。
テクノアでは、これらの経験も活かし、お客様がより利益体質になれるようなご提案をしてまいります。

初めまして。株式会社テクノアの高山一祥と申します。

私はテクノアに転職する前は工作機械の専門商社に勤めており、中小製造業様に工作機械や産業ロボットなどの生産設備の提案を行っていました。現在は同じく中小製造業様向けにTECHSなどの主に生産管理ソリューションの提案を行っています。

前職から中小製造業様とお付き合いさせていただく中で、設備投資を行う際に国や自治体の補助金を活用されたいというお話を伺うことがとても多く感じます。私自身、前職から補助金申請のサポートをさせていただくことが多く、実際に補助金を活用して設備投資を行う会社様を見てきました。そんな経験から設備投資をするにあたり、補助金を活用するメリットとデメリットを解説させていただきます。

1.代表的な補助金

(1)ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセスの改善に取り組む際に必要な設備投資などを支援する補助金です。最新の機械導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのシステム構築など、幅広い投資に活用できるため、製造業はもちろん、サービス業など様々な業種で利用されています。

(2)小規模事業者持続化補助金
従業員数が少ない小規模事業者を対象に、販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する補助金です。Webサイトの制作やリニューアル、広告宣伝費、店舗の改装費用など、比較的幅広い経費が対象となるため、初めて補助金を利用する事業者にとっても活用しやすいのが特徴です。

(3)IT導入補助金
人手不足や働き方改革への対応として、業務効率化を図りたい企業に最適な補助金です。会計ソフトや受発注システム、勤怠管理システムといったITツールを導入する際の経費の一部が補助されます。自社の課題やニーズに合ったツールを導入することで、DXの第一歩を踏み出すことができます。

2.補助金のメリット

補助金の活用は、資金面以外にも企業に多くのメリットをもたらします。
(1)自己資金の負担軽減と事業リスクの低減
最大のメリットは、返済不要の資金を得られることです。 新規事業や設備投資には多額の資金が必要ですが、補助金によって自己資金の負担を軽減でき、より挑戦しやすくなります。

(2)事業計画の具体化と経営改善のきっかけ
補助金の申請には、事業の目的や将来性、市場の動向などを盛り込んだ詳細な事業計画書の作成が不可欠です。このプロセスを通じて、自社の強みや弱み、課題を客観的に見つめ直すことができ、経営改善の大きなきっかけとなります。

(3)企業の信頼性向上
補助金の採択は、国から事業の将来性や計画の妥当性について「お墨付き」をもらったことを意味します。 これにより、金融機関からの融資を受けやすくなったり、取引先からの信頼が高まったりする効果も期待できます。

3.補助金のデメリット

一方で、補助金には注意すべき点もあります。メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットも十分に理解した上で、計画的に活用を検討することが重要です。
(1)申請には手間と時間がかかり、不採択の場合もある
補助金の申請には、公募要領の詳細を確認し、事業計画書をはじめとする多くの書類を準備する必要があります。相応の手間と時間をかけて準備しても、審査によって採択・不採択が決まるため、必ずしも資金を得られるとは限りません。

(2)資金の受け取りは原則「後払い」
ほとんどの補助金は、まず自社で経費を支払い、事業を実施した後に、実績を報告して初めて支払われる「精算払い(後払い)」方式です。そのため、採択が決定しても、事業期間中の支払いに充てる「つなぎ資金」を自己資金や融資で確保しておく必要があります。
また、サブスクリプション形式のITツールの利用料も対象経費とすることができますが、○年分の前払いを行い、その支払い実績を元に補助金を受け取ることができます。その場合、補助金を利用しない場合と比較して、一時的な現金支出が発生することに注意が必要です。

(3)事業実施後にも報告義務などの制約がある
補助金は受け取って終わりではありません。事業完了後に詳細な実績報告書を提出する義務があります。また、補助金で購入した機械や設備は、定められた期間内に目的外で使用したり、売却したりすることができないといった制約が課される場合がほとんどです。

4.まとめ

資金的なメリットがとても魅力的な補助金ですが、「利用してみたら意外と手間がかかった」「申請作業やその後の毎年の報告を考えると、受け取った額以上の工数がかかっているのでは」といった声もお聞きします。
私が感じることは、補助金ありきで設備投資計画を立てないことが重要だということです。検討している生産設備やソフトウェアを導入することによって、自社の事業をどのように変えることができるのか、どれだけの生産性向上や利益貢献が見込めるのか。本来、投資判断の軸はここにあるべきです。
「補助金が出るから投資を行う」、逆に「補助金が出ないなら投資を見送る」という補助金ありきの判断は、経営の意思決定を外部要因に委ねてしまうことに他ならず、非常に危険です。 なぜなら、補助金の公募スケジュールに振り回されて最適な導入タイミングを逃したり、不採択になった途端に事業計画そのものが頓挫してしまったりするからです。
正しい順序は、まず自社の成長戦略に基づいた事業計画があり、その計画を実行するための選択肢の一つとして補助金を検討する、という考え方です。理想は「たとえ補助金が採択されなくても、自己資金や融資で実行する価値のある投資だ」と確信できる計画であることです。
補助金は、あくまで主体的な経営判断を後押ししてくれる「ブースター」のようなもの。そのメリットと、見過ごせない多くのデメリットの両方を正しく理解し、自社の状況を冷静に見極めた上で、慎重に活用を判断することが求められます。

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