「2024年版 ものづくり白書」から学ぶ

著者:井上 悟(いのうえ さとる) 「2024年版 ものづくり白書」から学ぶ        
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井上 悟(いのうえ さとる) カスタマーサクセス本部

2022年 テクノア入社
2020年 中小企業診断士登録

大手スポーツ用品などの小売業や調剤薬局、医療法人での勤務を経て、テクノアへ入社。
中小企業診断士として、経済産業省補助金(ものづくり補助金・事業再構築補助金)について、約50社の対応経験あり。

製造業・小売業・サービス業・飲食業などの幅広い業種に対して、お客様に寄り添った「伴走型支援」を信条にしています。

こんにちは、株式会社テクノアの井上悟です。
皆さんは、「ものづくり白書」をご存知でしょうか。
「ものづくり白書」の正式名称は、「ものづくり白書 ―製造基盤技術振興基本法に基づく年次報告―」で、日本の製造業の現状分析、将来展望、政策提言をまとめた、経済産業省が毎年発行する報告書です。

1.「ものづくり白書」とは?

「ものづくり」と聞くと、工場で機械が動いている様子や、職人さんが丁寧に製品を作っている姿を思い浮かべるかもしれません。
日本の「ものづくり」は世界でも高く評価されていますが、近年は海外との競争が激化したり、新しい技術がどんどん登場するなど、変化の激しい時代になっています。そのような中、日本の「ものづくり」をもっと強く、元気にするために、毎年発行されているのが「ものづくり白書」です。

2.「ものづくり白書」でわかること

世界のライバル企業に負けないためには?
世界の経済状況や、他の国がどんな技術を持っているかを分析し、日本の製造業が勝ち残るための戦略が書かれています。

・工場をもっとスマートに!
AIやロボットなど、最新の技術を工場に導入して、効率的に製品を作っていく方法が紹介されています。
・地球にやさしい「ものづくり」
環境問題への対策は、もはや必須です。地球温暖化を防ぐ技術や、資源を無駄にしないリサイクルの取り組みなどが紹介されています。

また、「ものづくり」の未来を担う人材が、AIやロボットを使いこなすには、高い技術を持った人が必要不可欠です。そのため、人材育成の重要性についても書かれています。

3.誰が読むの?

ものづくり白書は、次に挙げる方々を対象者層としています。

・工場で働く人
最新技術や、今後の「ものづくり」の動向を知ることができます。
・製造業の経営者
自社の将来戦略を考える上で、とても参考になる情報が満載です。
・新しい技術に興味がある学生さん

将来、日本の「ものづくり」を支える仕事に就きたいと思っている人は必見です。

4.2024年版ものづくり白書のポイント

2024年版ものづくり白書は、国際的な構造変化が加速する中、我が国製造産業の持続的な成長のために「サプライチェーンの強靭化」を主要テーマに掲げています。今回は、同白書の内容を以下の3つのポイントに絞って解説します。

ポイント1:世界経済・産業構造の変化と製造業の課題

ものづくり白書では、世界経済・産業構造が大きく変化している現状を踏まえ、以下の3つの変化を指摘しています。

【変化1】グローバル分業体制の見直し
国際間対立の激化や地政学リスクの高まり、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱などを背景に、各国は経済安全保障を重視し、国内回帰や地域ブロック化の動きを進めています。
【変化2】デジタル化・グリーン化の進展
AI、IoT、ロボットなどのデジタル技術の進展や、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの加速により、製造業のビジネスモデルや競争のルールが大きく変化しています。
【変化3】人材不足の深刻化
世界的に少子高齢化が進む中、製造業における人材不足は深刻化しており、人材の確保・育成は喫緊の課題となっています。

これらの変化は、我が国製造業にとって大きな課題と機会をもたらします。グローバルな競争が激化する一方で、新たな技術やビジネスモデルを創出することで、新たな成長の機会を掴むことが期待されます。

出典:[2024年ものづくり白書」(経済産業省)

ポイント2:サプライチェーン強靭化に向けた戦略

同白書では、製造業が変化に対応し、持続的な成長を実現するために「サプライチェーンの強靭化」が必要不可欠だと述べています。具体的には、以下の3つの戦略が提示されています。

出典:[2024年ものづくり白書」(経済産業省)

【戦略1】多様なリスクに対応したレジリエントなサプライチェーン構築
(1)分散と集中を使い分けた生産体制の構築

特定国への依存度を低減するため、複数拠点での生産体制を構築するとともに、競争力の源泉となる技術・製品については国内生産拠点の維持・強化を図ることが重要です。
(2)サプライチェーンの情報共有・可視化
AIやIoTなどのデジタル技術を活用し、サプライチェーン全体の情報をリアルタイムに把握・分析することで、リスクの早期発見・対応を可能にします。
(3)国内における部素材産業の競争力強化
海外依存度の高い部素材や製品の国内調達体制を強化するため、国内の部素材産業の競争力強化や代替材料の開発などが重要となります。

【戦略2】デジタル化によるサプライチェーンの効率化・高度化
(1)デジタル技術を活用した設計・生産プロセスの効率化
AIやIoT、ロボットなどのデジタル技術を活用することで、設計・開発から生産、物流に至るまで、サプライチェーン全体の効率化・高度化を推進します。
(2)データ連携基盤の整備
企業間やサプライチェーン全体でのデータ連携を促進するため、共通のデータフォーマットやセキュリティ基準を定めたデータ連携基盤の整備が不可欠です。
(3)サイバーセキュリティ対策の強化
デジタル化の進展に伴い、サイバー攻撃のリスクも高まっているため、サプライチェーン全体におけるセキュリティ対策の強化が重要となります。

【戦略3】人材育成・人材の流動化

出典:[2024年ものづくり白書」(経済産業省)

(1)デジタル化に対応した人材育成
AIやIoTなどのデジタル技術を使いこなせる人材や、データ分析スキルを持つ人材の育成が急務となっています。
(2)多様な人材の活躍促進
女性や高齢者、外国人など、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、人材不足の解消を目指します。
(3)人材の流動化促進
企業間や産学間での人材交流を促進することで、イノベーションの創出や人材のスキルアップを図ります。

ポイント3:企業の取り組み事例と今後の展望

同白書では、上記の戦略を実践する企業の取り組み事例を紹介しています。例えば、自動車部品メーカーが海外子会社との連携を強化し、自然災害発生時でも部品供給を継続できる体制を構築した事例や、化学メーカーがAIを活用して需要変動を予測し、生産計画の最適化に取り組む事例などが挙げられています。
最後に、サプライチェーン強靭化は、企業単独の取り組みだけでは実現できません。政府は、法制度の整備や税制優遇、国際連携など、あらゆる政策を総動員して企業の取り組みを支援していく必要があると結論付けています。

5.まとめ

2024年版ものづくり白書は、世界経済・産業構造の変化を踏まえ、「サプライチェーンの強靭化」という重要なテーマに焦点を当てています。この機会を活かして、白書で提示された戦略を参考に、変化に対応できる強靭なサプライチェーンを構築することで、持続的な成長を実現していくことを目指していきましょう。

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