製造業の利益を守る!原価管理の基本とその重要性を解説

著者:礒崎 美華(いそざき みか) 製造業の利益を守る!原価管理の基本とその重要性を解説        
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礒崎 美華(いそざき みか) IT経営コンサルティング事業部

お客様と一緒に課題を見極め、一つでも多くの改善ができたとお喜びいただけるよう、お客様に合ったIT利活用をご提案します。

製造業において、利益を確保し、競争力を維持するためには、適切な原価管理が欠かせません。原価管理を怠れば、製品の価格設定を誤り、利益を圧迫してしまう可能性があります。一方、効果的な原価管理を実践することで、利益率の向上や無駄の削減につながり、会社の成長に大きく貢献します。

本コラムでは、製造業の経営者や管理者必見の原価管理の基本について解説します。

1.成長の鍵はここに!製造業における原価管理の重要性

原価管理とは

製造業における原価管理とは、製品の製造やプロジェクトの完了までに必要なコストを計算、分析、制御する一連のプロセスです。原価管理を行うことで、利益率の改善や経営判断、リスク管理を行うことができます。

なぜ、いま原価管理なのか

製造業における原価管理は、単なるコスト削減の手法にとどまらず、企業の利益最大化と競争力維持のための重要な戦略です。競争が激化する現代のビジネス環境では、効率的な原価管理が企業の存続と成長を左右する鍵となります。経営者や経営層だけでなく、従業員も巻き込みながら原価管理の重要性を理解し、継続的な改善を図ることが、利益の最大化と競争力の強化を実現するために不可欠です。

2.製造原価の理解を深める基本と分類

製造原価とは

製造原価とは、その名の通り、製品を製造するために直接的に発生する全ての費用を指します。具体的には、材料費や労務費、製造全般に渡る経費などが含まれます。製造原価を正確に把握することは、価格設定や利益計算、さらに競争戦略の立案に極めて重要です。

標準原価と見積原価の違い

製造原価を理解する上で、標準原価や見積原価という概念も知っておく必要があります。

・標準原価:理想的な条件下での製造費用を基に設定された原価
実際の製造原価と比較することで、効率性や問題点を分析するために使用します。

 

・見積原価:将来の製造において予測される原価を見積もったもの
新製品開発や受注時のコスト見積もりに使用されます。

 

製造業における原価項目について

製造業では、製品のコストを管理するために、原価をいくつかの項目に分けて整理することが重要です。原価項目は、直接費と間接費に大別されます。この分類により、コスト構造をより理解しやすくなります。

●直接費
製品の製造に直接的に関与する費用です。
・直接材料費:製品の製造に使用される具体的な材料の費用(例:製品の製造における素材や部材)
・直接労務費:製品の製造に直接従事する作業員の賃金や手当(例:加工担当者や組立担当者の給料)

 

●間接費
製品の製造に直接関与しないが、製造プロセスに不可欠な費用です。
・製造間接費:製造現場全体にかかる費用(例:工場の光熱費、工具類、機械のメンテナンス費用)
・経費:製造に関連するその他の費用(例:特定の工程を外部の企業に委託するための外注費)

【具体的な原価項目の例】
下記の表を使って、製造業における具体的な原価項目を整理してみます。

原価項目名 説明
材料費 製品の製造に直接使用される原材料の費用
例:自動車製造における鋼板や電子部品
労務費 製品の製造に直接関連する作業員の賃金や諸手当
例:加工担当者や組立担当者の給料
外注費 製造の一部を外部の企業に委託する費用
例:自社でできない特殊加工
経 費 製造に関連するその他の費用
例:工場の光熱費、工具類、機械のメンテナンス費用

3.PDCAサイクルで強化する原価管理

STEP1目標設定:標準価格と標準原価を定める

最初のステップは、製品の目標価格やその基準となる原価を設定することです。市場調査や競合分析を通じて、標準価格を決めます。同時に、製造過程でかかる適正な標準原価を計算して、基準を明確にします。
 

STEP2現状分析:実際のコストを把握する

次に、現状分析を行います。原価計算を実践し、製品ごとにかかる実際のコストを詳しく調べます。材料費や人件費などの直接コストだけでなく、間接コストも含めて実績原価を把握するこが重要です。
 

STEP3差異分析:目標と実際の差を分析する

現状が分かったら、設定した目標と実際の結果の差を分析します。例えば、材料費の変動や生産効率の差など、どの要因が目標との差異を生んでいるかを特定します。これにより、利益にどのような影響が出ているかを把握します。
 

STEP4改善行動:改善策を考えて実行する

最後に、差異分析の結果をもとに具体的な改善策を計画し、実行します。たとえば、材料の仕入れ先の見直しや、生産工程の効率化などがあります。改善策は持続的で効果的なものにすることが重要です。
 
このように、目標設定から改善行動までの4つのステップを丁寧に行うことで、原価管理が効果的に行えます。PDCAサイクルを継続的に回すことで、企業の利益率向上に繋がります。
 

4.製造業の原価管理:直面する課題

製造業において原価管理は極めて重要ですが、さまざまな課題に直面しています。ここで
は、よく聞く課題について具体的に見ていきましょう。

正しい実績原価をリアルタイムに把握できない

製造業における最大の課題の一つは、正確な実績原価をリアルタイムに把握することの難しさです。材料費、労務費、経費など多くの要素が絡むため、リアルタイムでの情報収集やデータ入力が求められます。しかしこれが難しく、結果として原価管理が遅れやすくなります。改善策として、生産管理システムを導入すると、データが一元化されるため、各部門間の情報共有がスムーズになり、より正確な原価管理が可能になります。これにより、リアルタイムでの意思決定がしやすくなり、経営の俊敏性が向上します。
 

従業員のスキル不足

もう一つの大きな課題は従業員のスキル不足です。特に、原価計算やデータ分析を正確に行うための専門知識を持った人材が不足している場合、正しいデータ収集や分析が行われなくなります。改善策として経験豊富な従業員による新人やスキル不足の従業員への指導とサポートを行う、または、定期的な講習会やセミナーを通じて、原価計算やデータ分析の基礎から応用までを習得させることが考えられます。
 

適正な原価配分の難しさ

共通経費の配分や間接費の適正な割り当てが難しく、最終的な原価がどのくらいになるのかが不明瞭になることがあります。改善策として、まず自社の間接費の配布割合を知ることです。配賦割合を把握し、製品別に間接費を適切に割り当てます。
 

部門間のコミュニケーション不足

コスト管理は一部門だけの取り組みではなく、全社的な協力が必要です。しかし、部門間のコミュニケーションが不足していると、情報共有がスムーズに行われず、最適なコスト管理ができないことがあります。改善策として、各部門のリーダーや担当者が定期的に集まり、進捗状況や課題を共有する原価会議を開催する。これにより、部門間の連携を強化し、コスト管理に関する情報の透明性と共有を促進します。
 

5.原価管理で差をつける経営戦略

収益性の向上

原価管理を適切に行うことで、収益性の高いプロジェクトや製品がどれなのかを明確に把握できます。これにより、売れ筋商品の強化や、不採算商品の見直しが容易になります。
 

コスト削減

原価管理により、無駄なコストや資源の浪費が明らかになります。例えば、材料費や人件費のムダを特定することで、具体的な削減策を講じることができます。
 

意思決定の迅速化

データに基づく原価管理は、迅速な意思決定をサポートします。リアルタイムで原価情報を把握することで、状況に応じた迅速な対応が可能となります。
 

競争力の強化

効率的な原価管理は、他社との価格競争において優位に立つための重要な要素です。コストを低減しつつ品質を維持することができれば、消費者に対しても強力なアピールポイントとなります。
 

6.まとめ

製造業における原価管理は、企業の利益を最大化し競争力を維持するための重要な要素です。本コラムでは、原価管理の基本から実践方法、直面する課題と対策について紹介しました。 原価管理を適切に行うことで、製造コストを把握し、利益率を向上させ、迅速な経営判断が可能となります。PDCAサイクルによる継続的改善が鍵となります。 主な課題として、リアルタイムでの原価把握、従業員のスキル不足、原価配分の難しさ、部門間のコミュニケーション不足が挙げられます。これらには、生産管理システムの導入やスタッフ教育、定期的な原価会議が有効です。 最終的に、原価管理を強化することで、収益性の向上、コスト削減、迅速な意思決定、競争力の強化が実現し、企業の持続的成長と市場での優位性を築くことができます。
 

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