中小製造業の管理会計ではどんなことをしたらいい?《先義後利》
著者:榊原 由佳(さかきばら ゆか)2014年入社。
中小企業診断士 2020年5月登録。
入社以来、中小製造業様向け生産管理ソフト「TECHS」のカスタマーサポート部において、サポート業務に従事。
TECHSに関するお客様からの様々な問い合わせやトラブルの対応を行い、システムの安定稼働を通して、業務改善を支援しています。
前回、財務会計と管理会計の違い、管理会計の必要性について、説明しました。
今回は、管理会計ではどんなことをするのか、一例をご紹介します。
※前回の記事はこちら
管理会計とは《先義後利》
1.管理会計ではどのようなことを行うのか
前回、財務会計と管理会計の違いを説明した際に、管理会計は「独自のルール」で行うことが可能とご説明しました。決まったルールはありませんが、一般的には、「予実管理」「原価管理」「財務分析・経営分析」「資金繰り管理」などが管理会計の主な業務として挙げられます。
・予実管理
予算と実績を把握する業務です。目標を達成するための予算と、実際に行われた実績を比較します。予算オーバーした場合、その原因を分析して、改善案を検討して、業績改善に役立てます。
・原価管理
製品のコストを把握する業務です。会社の業績は、個別の製品の売上の積み上げで出来上がっています。製品のコストを把握し、原価低減すること、必要に応じて価格交渉することは利益アップのためには欠かせません。
・財務分析、経営分析
決算書の数字を基に経営状態を把握する業務です。収益性、効率性、安定性、成長性などの視点から分析を行い、課題の明確化、解決策の立案などに役立てます。
・資金繰り管理
お金の出入りを把握する業務です。利益が出ていることと、現金を持っていることはイコールではありません。利益が出ていても、運転資金が不足してしまうと、いわゆる黒字倒産になってしまいますので、そうならないよう管理するのが資金繰り管理です。
2.管理会計の一例
私は、IT経営コンサルティングサービス「原価プロジェクト」を通して、中小製造業のお客様の管理会計の仕組みを構築するお手伝いをしています。
今回は、管理会計の一例として、どのようなことを行っているか、ご紹介したいと思います。
原価プロジェクトでは、生産管理システム「TECHS」シリーズを活用した個別原価管理の仕組み作りを支援しています。個別原価管理は、かかった原価を計算するだけでなく、適切な原価と実際の原価との差異を分析したり、対策を立てて改善活動を行ったりすることも含め、コストを管理することを目的としています。
原価プロジェクトは、以下の順序で行います。
【1】現状把握
【2】原価教育
【3】原価管理の現状調査
【4】正しい原価計算
【5】原価の見積反映方法
【6】原価会議の進め方
【1】現状把握
財務分析を行い、現在の経営状況や今後の経営目標についてヒアリングし、優先で取り組む経営課題を明確化します。
【2】原価教育
会社幹部・次世代リーダーの方に参加いただき、自社の数字に基づいた原価に関する研修を行います。値引き、不良、稼働率の向上が経営数字に及ぼす影響などを理解いただき、また、日常業務に取り組む際の意識変化を促します。
【3】原価管理の現状調査
TECHSデータの分析、現状管理のヒアリングを行い、経営課題に基づいたTECHS運用改善の提案を行います。
【4】正しい原価計算
自社の労務費、稼働時間を基に時間チャージを計算します。また、TECHS運用改善による直接原価の見える化を行います。
【5】原価の見積反映方法
自社の間接費、販管費を考慮した、目標原価率を決めます。また、価格交渉時の参考にしていただくため、TECHSデータを活用した原価から見積へのフィードバック方法についてご案内します。
【6】原価会議の進め方
会議資料を決定、原価会議の進め方を支援し、お客様の自走PDCAの構築を行います。
原価管理を行う場合、従業員の方の協力や理解が不可欠です。そのため、経営数字に対する理解を深めるための人材育成と全社で改善していく仕組み作りを並行して行います。
3.最後に
今回は、管理会計の一例として、弊社コンサルティングサービス「原価プロジェクト」で個別原価管理の仕組みを構築する際の手順をご紹介しました。具体的な内容については、また別の機会に記事にしていきたいと思いますが、この例を見て、難しそうと感じた方、とりあえず同じ手順でやってみようと思った方、様々いらっしゃるのではないかと思います。
もし、始めるにあたって、迷っていることなどございましたら、ぜひ、弊社に一度ご相談ください。弊社所属の中小企業診断士、ITコーディネータが相談に乗らせていただきます。