最適なチャージ設定とは?時間チャージの計算に必要な情報や3つの課題を解説!

著者:榊原 由佳(さかきばら ゆか) 最適なチャージ設定とは?時間チャージの計算に必要な情報や3つの課題を解説!        
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榊原 由佳(さかきばら ゆか) IT経営コンサルティング事業部

2014年入社。
中小企業診断士 2020年5月登録。

入社以来、中小製造業様向け生産管理ソフト「TECHS」のカスタマーサポート部において、サポート業務に従事。
TECHSに関するお客様からの様々な問い合わせやトラブルの対応を行い、システムの安定稼働を通して、業務改善を支援しています。

製造業における原価管理において欠かせない要素の一つが、「時間チャージ」です。加工費(加工賃)の計算に用いる「時間チャージ」ですが、アワーレートやチャージレートといった呼ばれ方もし、機械の「マシンチャージ」や人の「マンチャージ」、「工程チャージ」と様々な種類があります。しかし、そもそも自社で使用しているチャージ設定は正しいのか、他社はどのように計算しているのか、時間チャージはいくらにしたらいいのか?と課題を抱える企業様も多いのではないでしょうか。
そこで、原価計算やコスト管理に必要な要素である「時間チャージ」の計算方法や計算に必要な情報、製造業が抱える「時間チャージ」に関する3つの課題を解説いたします。

1.知っておきたい製造業のチャージとは?

時間チャージとは?

時間チャージとは、ものづくりのために加工や組み立てを行った場合に発生する1時間あたりのコストのことです。アワーレートと呼ばれることもあります。製品や受注(製番)ごとの個別の原価計算をする際に、「工数×時間チャージ」で、加工工程や組立工程にかかる時間をコストに換算するために使用されます。

時間チャージの種類

時間チャージには大きく分けて、2つの種類があります。1つは原価ベースの時間チャージ、もう1つは見積で使用する時間チャージです。

●原価チャージ
原価チャージというのは、図の直接製造費を出すためのチャージ、あくまで人件費や設備費という費用をもとに計算される時間チャージです。
●見積チャージ
一方で、見積チャージは、図のように、人件費や設備費だけでなく、製造間接費や販管費、さらには利益をも含んでいます。

費用だけの原価チャージと、利益など諸々含んだ売値を決めるための見積チャージの2種類の時間チャージがあります。同じ会社の中でも、営業部と製造部で異なる時間チャージを使っていることがあるのはこのためです。今回のコラムでは、原価チャージを取り上げて解説していきます。

2.最適な時間チャージとは?

原価と時間チャージ

製造原価には、材料費、外注費、労務費、製造経費があります。そして、それらの費用は直接費と間接費に分かれます。
材料費、外注費、直接工の労務費、製造経費に含まれている機械の設備費は、直接費になります。製造直接費を計算する際、材料費は使用した数量×単価を、外注費は協力会社への支払費用を原価として計上します。労務費や設備費は、工数×時間チャージで計上します。時間チャージがいくらであるか、ということは、製造直接費の把握のためには非常に重要です。

時間チャージの計算に必要な情報

時間チャージの計算は、「費用÷時間」で行います。

ここでいう費用とは、工数×時間チャージで費用計上する、直接作業者の人件費と加工に使用される機械の設備費のことです。また、時間は、人や機械が製造にかかかる時間、つまり、実稼働時間のことです。実稼働時間については、工数の集計をしている場合はその時間を、集計がない場合は、稼働可能時間に稼働率をかけて計算します。

人ごとや機械ごとに分けて計算する場合は、次のような計算式で算出します。

●人の時間チャージ(マンチャージ)
マンチャージ=年間労務費÷人の年間実稼働時間
または
マンチャージ=年間労務費÷(年間就業時間×稼働率)

 

●機械の時間チャージ(マシンチャージ)
マシンチャージ=年間設備費÷機械の実稼働時間
または、
マシンチャージ=年間設備費÷(年間稼働可能時間×稼働率)

 

「時間チャージ」は定期的な見直しが必須

時間チャージは上記の通り、「費用÷実稼働時間」で計算されます。会社の費用や実稼働時間は常に一定ではありません。会社の成長に伴い、従業員数の増加、賃金の引上げ、機械設備への投資など、年によって費用は変化します。また、仕事量の多い年、少ない年があり、実稼働時間も年によって変化します。そのため、時間チャージについても、定期的に見直しを行っていく必要があります。
見直しを行わず、実態と異なる時間チャージを使っていると、正確な製造原価を把握できません。管理上は利益が出ているのに、実際の決算では利益がでていない、というようなことになりかねません。少なくとも、1年に1回、決算書が出たタイミングで見直しすることをおすすめします。

正確な原価管理とは?

原価管理とは、より多くの利益を得られるように製品の製造にかかる原価の管理を行うことです。原価管理には、発生した原価を計算するだけではなく、適切な原価と実際の原価との差異を分析したり、対策を立てて改善活動を行ったりすることも含まれます。
原価管理については、今後、解説コラムでご紹介いたします。

3.中小企業診断士が見た製造業における「チャージ設定」の課題とポイント

時間チャージの設定は、原価の把握と原価管理を行う上で、非常に重要な役割を果たします。しかし、その設定にはいくつかの課題があります。ここでは3つの大ひゅお的な課題についてみてみます。

自社のレベルに合わせた時間チャージ設定

まず、「時間チャージの粒度をどうするか?」です。全社一律、工程ごと、部署ごと、個人・機械ごと、など、どれくらい細かく時間チャージを設定するかがポイントになります。細かく設定するほど、原価は正確になりますが、管理は複雑化し、手間がかかるようになります。また、時間チャージの高い機械を使うと原価が高くなってしまうため、より性能のいい機械を使ってほしいのに、その機械が使いにくくなる、ということも起こりがちです。あまり正確性にこだわらず、自社のレベルに合わせて粒度を決めることがポイントです。

時間チャージの要素

2つ目は、「時間チャージに含む費用をどうするか?」です。計算方法の説明で、直接工の労務費、設備費と書きましたが、具体的に何を入れるべきなのか、で迷っている経営者・管理者の方は多いです。時々作業を行う工場長や管理者の労務費はどうするのか、設備費に含む範囲、修繕費や電力費は含まれるのかなど、よく相談されます。絶対的な答えはありませんので、自社でのその費用の在り方を考慮して、時間チャージに含んだ方がしっくりくるか、含まない方がしっくりくるか、考えてまずは決めてしまうことが大切です。

実稼働時間と稼働率の把握

3つ目は、「実稼働時間をどうするか?」です。実績工数を集計している会社はよいですが、そうでない場合は、稼働可能時間×稼働率で実稼働時間を計算することになります。稼働率はあくまで「恐らくこれくらいは作業をしているはずだ」という主観的なものになります。実際の実稼働時間と乖離している可能性もあります。しかし、「実稼働時間を正確に把握してから…」と言っていては、いつまで経っても時間チャージが設定できないかもしれません。まずは、主観的でもいいので、稼働率を決めて、時間チャージを設定しつつ、実稼働時間を把握する取り組みを始めてください。1か月~3か月ほど実績を収集すると、大体稼働率が分かるようになると思いますので、稼働率が大きく異なった場合は、その時点で時間チャージを再設定しましょう。

4.自社のチャージを見直したいなら、中小企業診断士へ相談

時間チャージの設定、見直しに課題を抱える皆様、ぜひ専門家のサポートをご検討ください。生産管理システムの製造・販売・導入で中小製造業様を支援してきたテクノアの中小企業診断士・ITコーディネータなら、貴社に合ったアドバイスが可能です。他社事例もご紹介できますので、ぜひ、この機会にご相談ください。

時間チャージの見直しをサポート『IT経営コンサルティング』

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