ものづくりコラム COLUMN

製造業でのKPI設定とは?製造現場で必要な負荷(現場・現状)の把握について

著者:今村 洋一郎(いまむら よういちろう)
生産管理コンテンツ

システムの導入などにより製造現場の業務を「見える化」し、KPIで管理することで生産性の向上を図るなど、製造業でも「KPI」による改善が進められています。ここでは製造現場に焦点を当て、製造現場で求められるKPIの具体例や設定する際のポイントなどを解説します。

1.負荷(現場・現状)把握のための製造現場でのKPI設定

製造現場を見える化するKPI設定

製造現場では業務の「見える化」を実現して生産効率等を高めていくために、KPIを利用します。新たな設備を導入したり、色々な技術を駆使し改善を図っています。
※KPIとはKey Performance Indicatorの略で、似たような言葉にKGIがありますがKGIは企業の大きな目標であるのに対し、KPIはその達成に欠かせない中間目標という区別になります。


※製造業で活用されている主なKPI
製造現場でのKPIについては、まず「見える化」して自社の作業を分析・把握し改善につなげていくことが重要となります。KPIを「見える化」し、生産性の向上や業務改善につなげていくには、KPIの評価が必要になります。

製造現場KPI評価

製造現場におけるKPI評価では、製造に関わる「ヒト・モノ・カネ(設備)」を指標としたKPIを作成して生産性を高める事を目的にします。その際にはQCD(品質、コスト、納期)の観点を含めてください。ただその場合には、品質を向上させると原価が高くなることや原価を下げると品質も下がる、など相反する問題が発生する事が頻繁に起こります。そこで、KPIツリーを作成し問題をツリー状に分解する事で、その原因や解決策を道きだすことができます。
まずは問題をKGI(重要目標達成指標)とし、その解決策をKPIにて導き出すことで評価することが可能になります。日々のアクションはKPIで設定して進捗を管理していってください。導き出された課題は、PDCAサイクルを回して改善に取り組みます。

製造作業の監視

PDCAサイクルを回すためには、実際の自社状況の把握が必須です。ネットワークカメラなどを利用し、現場の状況をリアルタイムで見える化、「ムリ・ムダ・ムラ」の原因を分析してQCD向上に繋げていきます。現在ではDXが進み専用の監視ツールも出てきているので、そういったものを活用する事も有効です。

抽出された原因は、必ず分析して改善へと繋げられるよう見える化することが重要です。

2.なぜ製造業でKPIが必要なのか

自社の現状を理解し「生産性向上」へのヒント

生産性の向上や低下につながる要因はさまざまです。数値の管理ができていないと自社の現状が良いか悪いかが分からないことに加え、「従業員は高いパフォーマンスを発揮できているか」「機械設備は予定通り稼働しているか」などの状況把握も困難となります。
特に製造現場においては、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)の4つの要素が製品の品質管理を正確に行うためには欠かせないとされています。この4つの要素を感覚的に捉えるのではなく、システムに蓄積された情報を収集し、KPIと照らし合わせることで、自社の強みと弱みを把握することができるのです。

製造現場の見える化を実現するため原価管理

KPIを設定することで、利益の要となる「原価管理」を徹底できるようになります。原料費や燃料費など、製品1つにかかった「材料費」、製造にかかった「人件費」、その他に支出した「製造経費」の3項目を合計し、「標準原価」として把握をします。
「標準原価」に応じて生産計画を立てることで、より具体的で詳細の計画の作成や売上との差異を分析することができます。さらに、原価管理を行うことで、より正確な利益の管理ができるのです。

3.製造業におけるKPIの種類

製造業として把握していくべき数値は国際基準で定められています。MES(製造実行システム)領域でのKPIは6つの領域に大別され合計34項目で構成されています。KPI(重要業績評価指標)とそのデータは以下の通りです。

効率性

労働生産性、負荷度、生産量、負荷効率、利用効率、設備総合効率、正味設備効率、設備有効性、工程効率

品質

品質率、段取り率、設備保全利用率、直行率、廃棄度合、廃棄率、工程利用率、手直し率、減衰率

能力

機械能力指数、クリティカル機械能力指数、工程能力指数、クリティカル工程能力指数

環境

材料使用率、有害物質、危険物質廃棄率、総合エネルギー消費量

在庫管理

在庫回転率、良品率、総合良品率、製品廃棄率、在庫輸送廃棄率、その他廃棄率

保全

設備負荷率、平均故障間隔、改良保全率

4.製造業でKPI設定の具体例

生産品目・スケジュール単位で進捗をチェックすべきKPIと工程・製造系列・整備ユニット単位で作成されるKPIに分けられます。

原価率に関するKPI設定

原価構成要素と原価の間に差があるか確認します。

設備稼働率に関するKPI

設備に関するKPIでは、以下の指標を中心に用います。

製造リードタイムに関するKPI設定

リードタイムに関するKPIでは以下の指標を用います。

不良率に関するKPI設定

「不良品÷商品数」で算出します。

工数生産性に関するKPI設定(労働生産性)

労働生産性を測る指標として、以下のKPIを中心に用います。

5.KPIを設定する上でのポイント

Specific:明確な

KPIを設定する大きな目的として「全てのスタッフに情報共有をすること」があげられます。現場レベルでの活用を狙うためにも、内容を設定する際には誰もが理解・解釈できる内容にすることが肝心です。数値や日付などを入れることで、よりイメージしやすい情報にすることもできます。

Measurable:測定可能な

数値化が難しい項目、特定地点で数値が見えにくい項目はKPI項目として設定するべきではありません。目標の数値、タスクの進捗による数値の変化、現状の数値など、明確に測定できる項目を選びましょう。

Achievable:達成可能な

KPIは誰が見ても達成可能な数値を設定すべきです。ポジションやスキルによって達成できるかどうかが変わるものは、KPIとして不向きです。KPIの値が高すぎたり、現実と乖離してしまったりすると、チームの士気やKPIの認識の低下につながりかねません。スタッフが同じ認識でプロジェクトや業務の達成を目指せる値を設定するようにしましょう。

Relevant:適切な

KPIを設定するためには、KGI(最終目標)の設定が必要です。1つのKGIに対して複数のKPIを設定することが多いのですが、それぞれのKPIとKGIの関連性を見極めることがとても重要です。必要不可欠ではないKPIが設定されてしまうと、必死にKPIをこなしたのにKGIは達成できなかったという事態を招いてしまいます。

Time-Bound:期限を定めた

KPIを設定するときには期限の設定も忘れないようにしましょう。期限が決まっていないと優先順位があいまいになり、行動を起こしにくい環境となります。期日が設定されることでタスクとしての認知度があがり、優先順位がわかることで業務が効率的に進めることができます。

6.KPIを設定する上での注意点

KPI設定の目的を明確化する

KPIはKGIにつながっていることが大前提です。KPIを設定する際には、どのような効果を狙うのか、KPI達成によってどのような影響がもたらされるのかを明示しておきましょう。また、仕組みを作って終わりにするのではなく、設定したKPIの項目で過不足がないか、目的を達成できているのか、定期的に振り返り改善することを忘れないようにしましょう。

KPI設定は経営者だけのものではない

KPIの管理は現場の担当者が責任を持ち、継続的に原因分析・改善策の考案などマネジメントを行うことが理想です。一般的にKPIは、財務諸表等から取得できる項目で設定され幹部が把握していますが、製造現場の場合、KPIは現場レベルで管理し活用することでアクションにつながりやすくなり、効果を期待できます。経営や事業部の幹部は現場と連携し、KGIとの関連性や効果測定を継続的に行うことで、全体的な目標と作業効率の管理ができるようになるでしょう。KPIを現場レベルで改善策を練ることで、組織の責任感と全体目標の浸透にもつながるメリットもあります。

KPI設定でPDCAを回す

KPIを設定したうえで、数値目標を達成するためにどのようなPDCAを回していくかが鍵となります。月毎にKPI管理と分析を行い問題点・改善点を明確にしたうえで、取り掛かるべき施策のPDCAを設計しましょう。「目的」「実施施策」「実施時間や頻度」「担当者と役割」「管理方法」など、組織階層や部署ごとにプロセスを定めることで、組織全体の指針とそのために個人がすべきことが明確になります。分かりやすい目標とフローが業務効率化につながり、生産性の向上につながるでしょう。

7.まとめ

製造現場におけるKPIは、利益などの資金管理と作業効率の大切な指標となります。継続的にQCDを向上し続けるには、より深く、高い精度で「ムリ・ムダ・ムラ」の原因を特定し、早期の課題解決が欠かせません。
QCD以外にも事故発生件数や健康経営の指標も含め、従業員の働きやすさや満足度の向上を目指している企業も多くあります。事業を拡大していくに伴い、管理すべき数値も対処すべき問題も膨れ上がりますので、自社の目的に応じたKPIを活用し業務改善をしていきましょう。

今村 洋一郎(いまむら よういちろう) TECHS事業部 営業T

今村 洋一郎(いまむら よういちろう)
TECHS事業部 営業部
入社以来、生産管理システム「TECHSシリーズ」の導入提案、ITツールの活用方法を提案させていただいております。
ITの利活用及びお客様の体質改善のご支援をいたします。