DXもこわくない!製造業のビジネスモデルを考える《先義後利》
著者:佐々木 靜(ささき しずか)入社から7年間、TECHSの運用指導を担当しておりました。
ユーザー様に様々なことを教えていただき、仕事の楽しさを実感。
このご恩を返すため、中小製造業様のお役に立つためには?と考え、中小企業診断士を志しました。
システムをきっかけに、現場と経営をつなぎ、中小製造業様にもっと元気になっていただくために活動中です。
こんにちは。株式会社テクノアの佐々木です。
今やDX(デジタルトランスフォーメーション)という単語が、当たり前のように使われるようになってきました。皆さんの会社でもDXの推進に取り組んでいますでしょうか?
製造業のDXというと、製造現場にIoTを取り入れたり、AIを活用して業務を効率化したり、工場を自動化したり、というイメージが強いですよね。専門性が高く、IT人材が不足している自社では難しいのでは…とお考えの方もいるのではないでしょうか?
今回は「DXを推進したいけど敷居が高い」と感じている方、「取り組み始めたけれど、これで合っているのか不安」という方向けに、改めてDXとはなにか、どのように考え、実現していけばよいのか、ポイントをお伝えしたいと思います。
1.DXの定義
インターネットで「DXとは」と調べると、まず出てくるのが経済産業省によるDXの定義です。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
難しい表現なので、ポイントに絞ってみましょう。
- 激しい変化に対応する
- データとデジタル技術を活用する
- ニーズに合わせて、製品やサービス、ビジネスモデルを変える
- 会社内を変革して、競争優位を確立する
DXにはこういった要素が必要なようです。
1つ目のポイントから「大きく変わらなくてはいけない」「変わり続けなくてはいけない」という事がわかります。2つ目からは、システムを導入して単純に作業をデジタル化するだけでなく「蓄積されたデータを利活用する」または「デジタルありきの業務プロセスに変える」必要があると読み取れます。3つ目は「ニーズに対応すること」「製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルの変化でもOK」という事です。4つ目はこれらを実行した結果、「競争優位性が確立できる」ことがゴールであると言っています。
しかし、お客様のニーズを把握して、それに対応できる新製品を開発することは、一朝一夕では難しいですよね。長期的目線ではお客様のニーズを探るマーケティングや新製品開発を意識しつつ、まずはビジネスモデルの変革から着手してみてはいかがでしょうか。
2.ビジネスモデルとは
では、ビジネスモデルとは何でしょうか?「誰に、何を、どのように提供し、どこでどれだけ儲けるか」というビジネスの仕組みのことを言います。ビジネスを継続していくためには、この仕組みを繰り返し再現できる必要があります。
ここで重要なのが「何を」を考えることです。「何を」は製造している製品そのものではなく、「お客様に提供している価値」のことです。例えば、部品加工業様がお客様に提供するのは、部品そのものではなく、
- 設備投資をしなくても高精度な加工が実現できる利便性
- 自社で作るより安く済むお得感
- 希望納期通りに部品が手に入る安心感
など、お客様のお役に立ったり、不便を取り除いたりすることです。
製造業様に「御社はどういう会社ですか?」と質問をすると、多くの場合は「○○を作っています」と回答されます。時には「こういう設備を持っています」と回答されることもあります。製造業はものを作るのが当たり前という慣習から、製品そのものに着目されることが多くありますが、ビジネスとしてはそのものがお客様にどのような価値を提供するかが重要です。お客様にとって価値があるから対価をいただくことができ、ビジネスを継続できるのです。
ビジネスモデルの変革とは、この価値を「どのように作っていくか」または「どのように届けていくか」を変えることです。同じ価値でも作り方や届け方を変えるだけで、ビジネスは全く異なるものになります。
3.ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルを整理するために便利なフレームワークがあります。その名も「ビジネスモデルキャンバス」です。9つの枠を埋めていくことで、「誰に、何を、どのように提供し、どこでどれだけ儲けるか」を整理することができます。
今回、詳細な説明は割愛しますが、ビジネスモデルキャンバスはお客様への提供価値を中心に置き、左半分にその価値をどうやって作るかを、右半分にその価値をどう届けるかを書き込んでいきます。書いていく中で、項目間がストーリーとしてつながらない部分や、非効率に感じる部分が見つかったら、それは現在の課題かもしれません。
また、変化が激しい時代では、ターゲットとする顧客層や提供価値が時々刻々と変わっていきます。定期的にビジネスモデルを見直すことで、新たな課題に気付くこともできます。
このように気付いた課題を、デジタル技術を使って解決していくことが、DXの実現につながります。デジタル技術を活用することは、あくまで手段であり目的ではありません。必ずしも高度なデジタル技術を使用しなくても、課題は解決できる場合があります。まずは自社のビジネスモデルをしっかりと整理し、変革すべきポイントを把握することから始めてみましょう。
4.まとめ
- DXは単なるデジタル化ではなく、変化をして競争優位性を確立することがゴール
- どんなデジタル技術を使うかよりも、まず自社のビジネスモデルを理解することが大切
- 変化が激しい時代には、ビジネスモデルの定期的な見直しを