製造業におけるリードタイムとは?長くなる要因と短縮する方法

著者:ものづくりコラム運営 製造業におけるリードタイムとは?長くなる要因と短縮する方法        
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製造業では、製品を発注してから納品するまでにかかる時間が非常に重要です。取引先からの急な追加注文に対応したい、あるいは市場動向に合わせて製造ラインを柔軟に動かしたいといった場合、リードタイムが短いほどビジネスチャンスをしっかりと捉えることができます。そこで本記事では、製造業のリードタイムとは何か、なぜ長くなってしまうのか、そして短縮するためにどんなポイントがあるのかを詳しく解説します。

1.製造業におけるリードタイムとは?

製造業におけるリードタイムとは、受注(お客様の発注)から製品の納品までにかかる時間を指す言葉です。多くの場合、製品を実際に作るための作業時間だけではなく、発送や待ち時間も含まれています。工程は「開発」「調達」「生産」「物流」の大きく4つに分けられ、それぞれがスムーズに進むかどうかによって全体のスピードが左右されます。ここでは、リードタイムの基本的な考え方を理解するために、各工程の特徴と重要性を見ていきましょう。

開発リードタイム

開発リードタイムは、製品の企画や計画段階から試作品や設計が確定し、生産準備が整うまでを指します。顧客との打ち合わせやモデリング、試作を繰り返しながら最終的な仕様を詰めることが多く、品質面やデザイン面も大切にしながら開発を行うため、比較的長い時間を要する工程といえます。特に、顧客のニーズが複雑化している場合や、高い精度が求められる製品ほど試作段階の回数が増えがちです。開発リードタイムをいかに短縮するかが、のちの量産に大きく影響を与えます。

調達リードタイム

調達リードタイムとは、生産に必要な部品や原材料をそろえるまでの期間です。サプライヤーが国内か海外かによっても期間に差が出ますし、在庫をどの程度もっておくかの方針でも変化します。また、発注先との協議や支払い条件など、社内外での連携スケジュールが絡む場合もあるため、スムーズにいかないと調達の遅れが全体のリードタイムを押し延ばす原因になりやすい工程です。

生産リードタイム

生産リードタイムは、素材や部品を組み立てたり加工したりして最終製品に仕上げるまでの時間を指します。実際に工場での作業工程が長引くと、そのままリードタイム全体にも影響が及びます。たとえば、作業パートごとの段取り替えや生産ラインの負荷状況が原因で工程が停滞してしまうと、翌工程を待たせてしまう可能性も高いでしょう。安定した歩留まりと効率の良いライン運営が求められる要の工程です。この工程では、生産ラインの効率性、作業者のスキル、設備の性能など、さまざまな要因が影響します。生産リードタイムの短縮は、直接的にコスト削減や生産性向上につながるため、多くの製造業で重点的に取り組まれています。

物流リードタイム

最後は物流リードタイムです。製品が完成したあとの梱包や出荷準備、そして実際の配送にかかる時間を含みます。出荷指示から運送会社の手配、在庫管理システムとの連携など、製品が顧客のもとへ届くまでの一連の流れを滞りなくこなすことがゴールです。この工程が長引くと、どれだけ迅速に生産できても最終的な納品が遅れてしまいます。
 

2.製造業においてリードタイムが長くなる要因とは?

「短納期・高品質」を実現することは顧客満足度に直結します。リードタイムが長いと、顧客の要望に対して遅れてしまいかねず、ビジネスチャンスを逃すリスクも高まります。なぜリードタイムは長くなるのでしょうか。ここでは、代表的な3つの要因について解説します。

工程間の連携がうまくできていないから

リードタイムが長くなる最も一般的な要因の一つは、工程間の連携不足です。次の工程への引き継ぎがスムーズに行われていない場合や、各工程間の情報共有が不十分な場合、全体のプロセスに遅延が生じてしまいます。
例えば、開発部門と生産部門の連携が不十分だと、設計変更の情報が適切に伝わらず、生産ラインでの混乱や手戻りが発生する可能性があります。また、調達部門と生産部門の連携がうまくいっていないと、必要な部材が適切なタイミングで供給されず、生産が滞る恐れがあります。
このような連携の問題は、各工程で待ち時間を生じさせ、全体のリードタイムを大幅に延長させてしまいます。効率的な情報共有システムの構築や、部門間のコミュニケーション強化が求められます。

不良品や事故が発生しているから

製造工程において不良品や事故が発生すると、生産ラインを一時停止して原因を探る必要が生じます。一部のラインを止めただけでも、全体のリズムが狂ってしまい、結果的にリードタイムが大幅に延びることもあります。また、不良品の発生は単にリードタイムを延長させるだけでなく、追加の修正作業や再製造のコストも発生させます。さらに、品質管理の強化や検査工程の追加が必要となり、これらも全体のリードタイムを長くする要因となります。
事故の発生も同様に、生産ラインの停止や安全確認のための時間を要し、リードタイムの延長につながります。安全管理の徹底と、不良品発生の予防策の実施が重要です。

培ったノウハウが実践に活かされていないから

多くの製造業では、長年の経験を通じて様々なノウハウが蓄積されています。しかし、このノウハウが適切に活用されていない場合、リードタイムの短縮機会を逃してしまう可能性があります。
過去の失敗事例などが部門間で共有されず、ノウハウが埋もれてしまっているケースも少なくありません。結果として、同じ失敗を繰り返してしまい、リードタイムの短縮が果たせないという状況に陥ります。
例えば、過去に発生した品質問題の解決策が文書化されていなかったり、新しい従業員に適切に伝達されていなかったりすると、同様の問題が再発する可能性が高くなります。これは不必要な時間とリソースの浪費につながり、リードタイムの延長を招きます。
ノウハウの共有と活用を促進するためには、効果的な知識管理システムの導入や、定期的な社内研修の実施が有効です。また、ベテラン従業員の経験を若手に伝承する仕組みづくりも重要です。
 

3.製造業のリードタイムを短縮するポイント

ここからは、製造業におけるリードタイムを短縮するための具体的な方法を紹介します。各工程での工夫を積み重ねると、最終的には大きな効果となって現れます。ひとつずつチェックしていきましょう。

開発リードタイムを短縮する方法

開発段階で多くの時間を必要とする背景には、顧客の要望に合わせて度重なる仕様変更が発生したり、試作フェーズでの手戻りが多かったりする場合が考えられます。これを改善するための方法としては、過去の設計や試作品を再利用できる仕組みづくりがおすすめです。データベースを整備し、設計図や検証結果をいつでも閲覧できるようにしておけば、新たな開発案件にも短時間で対応しやすくなります。この段階での情報収集や蓄積は企業の大きな財産となるでしょう。また、試作回数をなるべく減らすために、シミュレーション技術の活用も有効です。シミュレーションを導入することで現物を製作する前に検証が可能になり、コスト削減にもつながります。

①過去の設計や試作品を再利用できる仕組みを作る
過去のプロジェクトで作成された設計図や試作品のデータをデータベース化し、いつでも見返せるようにしておくことで、開発時間の短縮につながります。類似製品の開発時に、これらの資産を効果的に活用することで、一から設計をやり直す必要がなくなります。
②シミュレーション技術を用いて試作回数を減らす
最新のCADソフトウェアや解析ツールを活用することで、実際の試作品を作成する前に、製品の性能や耐久性をシミュレーションすることができます。これにより、試作回数を減らすことができ、時間短縮だけでなくコスト削減も期待できます。
③並行開発の導入
製品の異なる部分を同時に開発することで、全体の開発期間を短縮することができます。ただし、この方法を効果的に実施するためには、チーム間の緊密な連携と情報共有が不可欠です。

調達リードタイムを短縮する方法

部品や原材料の調達では、他部門との連携強化やサプライヤーとの協力体制づくりが重要です。設計変更があった場合でも、サプライヤーにいち早く情報を共有しておけば、調達スケジュールを組み替えやすくなります。さらに、代替可能なサプライヤーを候補として確保しておくことは、リスクヘッジの観点からも有効です。サプライヤーが一社に集中していると、万が一そのサプライヤーでトラブルが起きた場合、大きな影響が生じます。複数社と連携できるようにしておくことで、調達面の不安を軽減し、結果としてリードタイムも短縮しやすくなるでしょう。

①他部門やサプライヤーとの連携を強化する
調達部門と生産部門、そしてサプライヤーとの緊密な連携を図ることで、必要な材料を必要な時に確実に入手することができます。定期的な情報共有会議の開催や、リアルタイムの在庫情報共有システムの導入などが効果的です。
②代替可能なサプライヤーを事前に検討しておく
主要サプライヤーからの供給が滞った場合に備えて、代替可能なサプライヤーを事前に検討し、関係を構築しておくことが重要です。これにより、調達のリスクを分散し、安定的な材料供給を確保することができます。
③サプライヤーの地理的分散
地理的に分散したサプライヤーネットワークを構築することで、自然災害や地域的な問題による供給リスクを軽減できます。また、生産拠点に近いサプライヤーを活用することで、輸送時間の短縮も期待できます。

生産リードタイムを短縮する方法

生産ラインで時間を要している作業がどこにあるのかを明確にすることが第一歩です。特に段取り替えに時間がかかっている場合は、機械配置を見直す、作業工程を集約するなどの改善方法が考えられます。また、最近ではIoTの活用によって、機械稼働状況をリアルタイムで把握できるようになってきました。センサーを活用して機器の動作ログを蓄積すると、故障やメンテナンスのタイミングを予測し、生産速度を最大化する取り組みが可能です。設備投資は必要になりますが、リードタイムの短縮とともに品質向上や安定供給にも寄与します。
≪参考≫

①時間のかかる作業を特定して改善する
生産ラインの各工程を詳細に分析し、特に時間のかかる作業や、ボトルネックとなっている工程を特定します。これらの工程に対して、作業方法の改善や自動化の導入などの対策を講じることで、全体の生産時間を短縮できます。
②IoTを活用して生産速度を上げる
IoT(Internet of Things)技術を活用して、生産設備の稼働状況をリアルタイムで把握し、最適な生産計画を立てることができます。また、予知保全システムの導入により、設備の突発的な故障を予防し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
③生産ラインのレイアウト最適化
生産ラインのレイアウトを見直し、無駄な動きや待ち時間を削減することで、生産効率を向上させることができます。例えば、ワークステーション間の距離を短縮したり、材料の流れを最適化したりすることが有効です。

物流リードタイムを短縮する方法

物流工程の効率化を図るためには、配送手段やルートの見直しが有効な手段となります。たとえば、長距離輸送の場合に航空便や船便など複数の輸送手段を使い分けることで、輸送日数を大幅に削減できる可能性があります。また、出荷準備の効率化も欠かせません。出荷指示のタイミングやピッキング作業のシステム化により、在庫の位置を瞬時に把握できるようにしておくと、無駄な動きを減らしリードタイムを短縮できます。

①配送手段やルートを見直す
配送ルートの最適化や、複数の配送手段の組み合わせにより、配送時間を短縮することができます。また、地域ごとの配送センターの設置や、クロスドッキング方式の導入なども効果的です。
②出荷準備の効率化を図る
出荷作業の自動化や、ピッキング作業の効率化により、出荷準備にかかる時間を短縮できます。バーコードやRFIDタグを活用した在庫管理システムの導入も有効です。
③リアルタイムの配送状況追跡システムの導入
GPS技術を活用した配送車両の追跡システムを導入することで、リアルタイムで配送状況を把握し、最適なルート選択や配送スケジュールの調整が可能になります。

 

4.製造業のリードタイム短縮で競争力アップを実現しよう

本記事では、製造業におけるリードタイムの基本的な考え方から、長くなる要因、そして短縮するための具体的ポイントを解説しました。リードタイムの短縮は、単に「早く製造する」だけではなく、開発・調達・生産・物流それぞれの工程を再点検し、連動性を高め、ノウハウを共有していくことが大切です。
特に、開発段階の設計データの再利用やシミュレーション技術の活用、サプライヤー選択や連携強化による調達リードタイムの削減、生産ラインの最適化やIoT導入による効率的な稼働管理、そして物流面での出荷準備や配送の見直しなど、あらゆる側面からアプローチすることで確実に改善を図れます。社内の情報共有体制を整え、過去事例も含めたノウハウをしっかり活用することにより、さらなるリードタイム短縮を実現できるでしょう。

自社のスマートな生産管理体制を確立したい、あるいはリードタイム短縮を実践したいと考えているのであれば、同業種に関わらず他社の事例に目を向けてみるのも一つの手です。まずは自社の現状を把握し、どのポイントから改善すべきか、しっかりと分析してみましょう。現状を知るためのツールとして、生産管理システムや工程管理システムの導入も効果的です。現在どの工程にどのぐらいの工数がかかっているのかなど、現状を把握するためにデータを蓄積してみるのもよいでしょう。
リードタイムを短縮し、製造業の競争力を高めるための第一歩として、この機会にぜひ資料をご覧いただき、自社に合った対策の検討を進めてみてはいかがでしょうか。今後の製造現場の発展のためにも、多角的な視点での改善が期待されます。ぜひ前向きにご活用ください。
 

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