TPM活動の目的や基本理念とは?注目される理由や16大ロス、8本柱

著者:ものづくりコラム運営 TPM活動の目的や基本理念とは?注目される理由や16大ロス、8本柱        
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製造現場の稼働効率を高め、利益や安全性の向上を目指す指標として「TPM活動」が注目を集めています。TPM活動とは全員参加による生産保全をめざす取り組みであり、工場の生産効率化にとどまらず、企業体質の強化やサステナビリティ経営にも大きく貢献します。本記事ではTPM活動の目的や基本理念、16大ロス、8本柱などをわかりやすく解説し、より高い生産性をめざすためのヒントを提供します。

1.TPM活動の概要

TPM活動とは何か、なぜ重要視されているのかを把握することは、生産現場を改善する上で欠かせない第一歩です。まずはTPM活動の基本定義と目的、そして基本理念を見ていきましょう。

TPM活動とは

TPMとは「Total Productive Maintenance」の略で、日本語では「全員参加の生産保全」と訳されることが多い考え方です。全社的な視点で生産保全を行うことで、設備が常に正常な状態で稼働し、トラブルを未然に防ぐことを目指しています。具体的には、設備や機器が安定して動き続けるよう、点検や修理、改善を継続的に行う活動を指します。
TPMの思想自体は40年以上も前に登場したものですが、効率的な生産体制の構築や品質向上がより強く求められるようになった近年、再び注目を集めています。

TPM活動の目的

TPM活動の最大の目的は、製造現場における多種多様なロスをゼロに近づけることです。例えば、設備の故障や不良、作業上のムダなど、あらゆるロスを削減し、生産性と品質、そして収益性を高めることにつながります。ロスを徹底的に洗い出し、原因を分析・改善し続けることで、競争力を高める大きな原動力となるでしょう。

TPM活動の5つの基本理念

TPMを運用する中で大切にされているのが、日本プラントメンテナンス協会が定義する5つの基本理念です。TPM活動に取り組む際には、これらの理念を常に意識して行動することが求められます。

・儲ける企業体質づくり
TPMはあくまで企業の収益向上や健全化をめざす活動であり、活動自体が目的になってはいけません。ロス削減から得られた成果をいかに企業体質の強化や収益増に結びつけるかを考えながら取り組むことが大切です。
・予防哲学(未然防止)
不具合やトラブルは、起きてから対処するのではなく、起きる前に対策することが重要です。定期的な点検や見直しなど、未然に防ぐ仕組みづくりを重視することがTPM活動の基本となります。
・全員参加(参画経営・人間尊重)
現場の作業者だけでなく、管理や企画など幅広い部門の人々が一丸となって協力し合うことがTPM活動の大前提です。一人ひとりが自分の仕事領域だけでなく、全体の生産効率を意識していくことで、ロスの発見や改善点の導出が加速します。
・現場現物主義
口頭やデータだけでなく、実際の生産現場に足を運び、目で見て、耳で聞き、手を動かして確認することが基本です。現状を正確に把握しないまま対策を打っても、本質的な解決にはつながりにくいため、現場を大切にする姿勢が求められます。
・常識の新陳代謝
固定観念や慣習にとらわれず、常に新しい視点を取り入れ、柔軟に変化に対応することが大切です。時には外部の意見を参考に、変化するニーズや市場要求に合わせ、常に試行錯誤を繰り返すことが、ものづくりの現場には欠かせません。

これらの基本理念を踏まえてTPM活動に取り組むことで、より効果的な改善活動を展開することができます。

2.TPM活動が再び注目されている理由

TPM活動は長い歴史を持つ改善手法ですが、近年再び脚光を浴びています。ここでは、TPM活動が再注目されている背景について解説します。

市場の競争が激化しているため

グローバル化の進展により、製造業では国内外を問わず、高品質・低コスト・短納期のいずれも達成することが当然視されるようになりました。このような厳しい環境下で利益を確保するには、個々の企業が生産効率を最大化し、製品およびサービスの価値を高めることが必要です。TPM活動には、設備と人の両軸を徹底的に最適化する力があり、競争力強化の一助となっています。

設備が経年化しているため

多くの工場や製造現場で、古い設備をいかに安定稼働させるかが大きな課題です。故障リスクの増大やトラブル発生率が上昇しやすい状況を放置していては、スムーズな生産は望めません。そこでTPM活動を通じて、設備を常に点検・補修し、長期にわたり安定稼働を実現する予防保全が重要視されています。

サステナビリティ経営が注目を集めているため

環境負荷を低減し、エネルギー消費を抑えることは、今や地球規模での大きな課題です。多くの企業が脱炭素などの施策に取り組む中、生産現場での無駄を省く仕組みを構築することは持続可能な経営に直結します。TPM活動によって廃棄やエネルギーの無駄を削減できれば、環境面と経営面の両方で大きなメリットが得られるでしょう。

3.TPMで定義される16大ロス

TPM活動では、生産性向上を阻害する要因を「ロス」として定義し、その排除に取り組みます。ここでは、TPMで定義される16大ロスについて解説します。これらのロスは通常、設備、人、原単価の3つの観点から分類されます。

設備の効率化を阻害する8大ロス

故障ロス 設備が故障して稼働が止まることで発生する生産ロス。定期点検や適切なメンテナンスによって未然に防ぐことが重要です。
段取り・調整ロス 製品の切替えや設備調整に要する時間。作業手順の標準化や段取り時間の短縮を図ることで効率化を実現できます。
刃具交換ロス 刃具や工具の交換に伴う生産停止によるロス。予備を用意したり、交換基準を明確に設定したりして影響を小さくする取り組みが求められます。
立上がりロス 設備起動直後の生産が安定しないために損失が出るロス。作業条件や温度設定などを見直すことで、立ち上がり時間を最小化し、歩留まりを高めます。
チョコ停・空転ロス 短時間のライン停止や無負荷運転によるロス。頻繁に起きる原因を究明し、根本対策を打つことが重要です。
速度低下ロス 設備の設計速度よりも低い速度で稼働していることによって生じるロス。作業者の慣れや安全確保などの要因を洗い出し、改善策を進める必要があります。
シャットダウン(SD)ロス 計画休止時に発生する生産活動上のロス。計画された停止でも、必要以上のロスが発生していないか点検と対策を行い、適切に管理します。

これらの8大ロスは、設備の稼働率や生産性に直接影響を与えます。例えば、故障ロスは予期せぬ生産停止を引き起こし、納期遅れや機会損失につながる可能性があります。また、段取り・調整ロスは、特に多品種少量生産を行う工場で大きな課題となります。

TPM活動では、これらのロスを徹底的に分析し、その原因を特定して対策を講じます。例えば、予防保全の強化による故障ロスの削減や、段取り時間の短縮技術の導入などが挙げられます。

人の効率化を阻害する5大ロス

管理ロス 原料や部品の調達、故障修理などで待ち時間が発生することによるロス。情報や物品の手配をスムーズに行える管理体制を構築することが必要です
動作ロス 作業者の無駄な動きや不必要な動作によるロス。工場のレイアウトや作業手順を見直し、動作の無駄を徹底的に省くことが求められます。
編成ロス 作業チームの編成や人員配置が適切でない場合に発生するロス。最適な人員配置やシフト計画を行うことで、チーム全体の作業効率を高められます。
自働化置き換えロス 自動化を導入しても、最適に活用されずに作業効率を下げてしまうロス。自動化の設計や導入計画を綿密に行い、現場との連携を取ることが重要です。
測定調整ロス 作業時の測定や調整に時間がかかることで発生するロス。標準作業の策定や機器の精度向上で、余分な計測・調整作業を減らす工夫が求められます。

人に関するこれらのロスは、作業効率や労働生産性に大きな影響を与えます。例えば、動作ロスは作業者の疲労増加や作業時間の延長につながり、品質低下や生産性低下の原因となる可能性があります。

TPM活動では、作業の標準化や効率的な動線の設計、適切な人員配置などを通じて、これらのロスの削減に取り組みます。また、自動化技術の適切な導入や、測定・調整作業の効率化なども重要な取り組みとなります。

原単位の効率化を阻害する3大ロス

原単位とは、ある製品を生産するために必要なエネルギーや時間、材料などの指標です。これらが無駄に使われることで、原単価の高騰や利益率の低下を招きます。

歩留まりロス 材料の無駄使いや歩留まりの悪さによって生じるロス。生産条件の最適化や歩留まり改善を図ることがポイントです。
エネルギーロス 照明や機械稼働などの不必要なエネルギー消費によるロス。休憩時の設備停止やエネルギーモニタリングシステムの活用など、省エネ対策を強化する必要があります。
型・治工具ロス 型や治工具を製作・補修するための金銭的ロス。高耐久の素材選定や設計の見直しによって、交換頻度や製作コストを削減できる可能性があります。

原単位を最適化する取り組みは、企業のコスト構造を根本から改善できる可能性を秘めています。材料のロスを減らす改善や、環境負荷の低減にもつながるエネルギー管理の最適化など、幅広い視点でロスを削減できるのが特徴です。

これら16大ロスの削減に取り組むことで、生産性の向上、品質の改善、コストの削減を同時に実現することができます。TPM活動の成功の鍵は、これらのロスを正確に把握し、効果的な対策を講じることにあります。
 

4.TPMの8本柱とは

TPM活動を推進するためには、全員参加で16大ロスをゼロに近づけることが求められます。ここで大切になるのが「TPMの8本柱」です。これら8つの柱は、生産現場にとどまらず、経営層や保守・管理部門、さらには企画部門などを含む企業全体の取り組みを示しており、組織横断的に連携しながら進めることで成果を生み出します。

生産システムの個別改善

生産システムの個別改善は、生産プロセスや設備のロス・ムダを徹底的に排除することを目的としています。この活動では、まず個別のプロセスを改めて調査し、現場の全容を把握します。その上で、プロセスをひとつずつ最適化して、全体の生産性効率向上を目指します。
具体的には、ボトルネックの特定と解消、設備の効率化、作業の標準化などが含まれます。例えば、生産ラインの各工程の生産能力を分析し、全体のバランスを最適化することで、生産性を向上させることができます。また、設備の段取り時間短縮や、作業者の動線改善なども、個別改善の重要な要素です。

オペレーターの自主保全

現場のオペレーターが自分の担当設備を自ら点検し、異常を早期に発見・対応するのが自主保全です。設備の基本的な状態を理解し、清掃・注油・部品交換などを普段から実施することで、故障を未然に防ぎます。

保守部門の計画保全

設備の保守を専門に担う部門が、長期的な視点で設備のメンテナンスを計画的に実行する取り組みです。劣化傾向を把握しながら適切な時期に部品交換や修理を行い、設備の寿命をのばし、突発的なダウンタイムを最小限に抑えます。

製品・設備開発管理

新しい製品や設備を開発する段階から、将来的な保全の容易さや設備効率を考慮することが重要です。開発段階での設計や材料選定が、後々の故障リスクやメンテナンス性を左右するため、製造現場や保守部門との連携が欠かせません。

品質保全体制の確立

生産時に発生する不良を極力減らし、均一かつ高品質な商品を提供するための体制づくりです。設備の精度維持だけでなく、作業標準書や品質管理の仕組みを整備し、常に安定した品質を保証できるようにします。

教育・訓練の最適化

TPM活動を支えるのは、人材の意欲と能力です。現場で必要な知識やスキルを定期的に研修し、教育の質を高めることで、作業者が主体的に改善にかかわる風土をつくります。

管理間接部門の効率化

間接部門とは、生産そのものを行わないものの、資材調達や品質管理などを担う部門です。部門間の連絡体制を最適化し、必要な情報や資材をタイムリーに提供できるようにすることで、製造現場のロス削減につながります。

安全衛生と環境の管理

各種設備や作業環境において、安全性や衛生面を確保し、環境負荷を軽減することもTPMの重要な柱です。作業者が安心して働ける職場環境を整え、社内外からの信頼を高めることが、長期的な企業成長へとつながります。
 

5.TPM活動の成功に向けて:全社一丸となった取り組みの重要性

本記事では、TPM活動の概要や目的、そして再び注目されている背景を交えつつ、16大ロスと8本柱を中心に解説しました。TPM活動の真髄は、設備だけでなく、人や組織、開発段階から管理部門までを含め、全社一丸で取り組む点にあります。部分的な最適化ではなく、生産システムと人材育成を同時に進めることで、継続的に生産性と品質を高める土台を築くことができます。
最後に、TPM活動を成功させるポイントとして、以下のような点が挙げられます。
・経営陣から現場レベルまで、全員で目的を共有する。
・ロスを正しく把握し、データに基づいた改善策を練る。
・改善だけでなく、予防保全や未然防止を徹底する。
・知識や技能を活かせるよう、継続的に教育と訓練を行う。
・活動を“企業体質の強化”に結びつけ、儲かる仕組みを意識する。
これらを地道に実践し続けることで、現場ではトラブルの減少・コスト削減・生産効率アップ・品質向上といった結果が得られ、企業全体としての競争力を高めることができるでしょう。TPM活動は一朝一夕で完結するものではありませんが、着実に取り組むことで、大きな成果をもたらす可能性を秘めています。今後も変化していく経営環境の中で、TPM活動はものづくり企業の頼もしい手段となるはずです。

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