製品の設計図面|生産管理における課題や効率化のためのポイント
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設計図面と聞くと、多くの人は建築図面やデザイン図面、漫画のネームなどを思い浮かべるかもしれません。実は、これらもすべて設計図面の一種です。設計図面の種類は非常に豊富で、さまざまな分野で活用されています。本記事では、特に製造業において重要な役割を果たす、製品を製造するための設計図面に焦点を当てて解説していきます。
1.製造業における設計図面とは?
製造業において、設計図面は製品の設計から製造までの全工程を支える重要な要素です。ここでは、設計図面の役割や種類について詳しく見ていきましょう。
設計図面の役割
設計図面とは、製品を製造するために、設計者の意図や製造に必要な情報を伝えるためのものです。造る製品の形状、寸法、材質などがイラストや図、文章、数値などで記載されています。設計図面があれば、部品の形状、組み立て方など、多くの情報を正確に共有することができます。
複雑な形状や構造を口頭や文面で伝えることは非常に難しく、誤解や間違いが生じやすいため、設計図面が必要不可欠となります。図面を通じて視覚的に情報を伝達することで、製造プロセスの効率化や品質の向上につながります。
製造業で使う設計図面の種類
製造業で使用される設計図面は、用途や目的に応じてさまざまな種類があります。主な種類は以下の通りです。
・計画図:製品の基本的な構想や設計方針を示す図面
・試作図:試作品を作成するための図面
・製作図:実際の製品製造に使用する詳細な図面
・見積図:顧客に見積を提示する際に使用する簡略化された図面・承認図:顧客の承認を得るために提出する図面
・説明図:製品の使用方法や特徴を説明するための図面
これらの図面は、製品開発の各段階で適切に使用されることで、効率的な製造プロセスの実現や顧客との円滑なコミュニケーションを可能にします。
2.製造企業が設計図面を取り扱ううえで大切なこと
製造企業にとって、設計図面の管理は非常に重要です。設計図面は長期間保管することが多いため、適切な管理が必要となります。特に、製造物責任(PL)法によって、製造物を引き渡したときから10年間は損害賠償請求を受ける可能性があるため、製品の図面を適切に保管しておくことが不可欠です。
もし製品の図面を保管していなければ、万が一の損害賠償請求に対して論理的根拠を明確に示すことができず、企業にとって大きなリスクとなります。
また、効率的な設計図面の管理を行うことで、生産性の向上も期待できます。例えば、図面の検索時間を削減したり、誤発注や設計ミスを防止したりすることができます。これにより、製造プロセス全体の効率化やコスト削減につながります。
3.設計図面の管理において製造業者が抱える課題
設計図面の重要性は理解していても、多くの製造業者がその管理に課題を抱えています。ここでは、一般的な設計図面管理の問題点について詳しく見ていきます。
保管場所や方法が統一されていない
多くの企業では、設計図面の保管場所や方法が統一されていないことが大きな問題となっています。紙媒体でのファイル管理や、ファイルサーバーに図面データを保存していても、ルールが統一されていないとうまく活用できないことも多いです。
≪図面管理でよくある課題≫
・必要な図面をすぐに検索できない
・探している設計図面がどこにあるか把握できていないためトラブルにつながる
・同じ設計図面を複数作成してしまう
・設計図面を紛失する
≪管理方法別のデメリット≫
管理方法 | デメリット |
紙媒体による図面管理 | ・年度別にファイリングしているため、紙媒体の図面を探す工数がかかる ・現場に図面が回る場合もあり、紙図面の紛失 ・前回図面との比較時に、目視での図面の差異確認に限界がある |
紙図面をスキャンしたデータ管理 (ファイルサーバなど) |
・ファイル名のルールが統一されておらず、結局、ファイルを開いて確認する手間が生じる ・個人のパソコンに保存してしまい、共有できていない |
これらの問題は、作業効率の低下や製品品質への悪影響、さらには重要な情報の喪失につながる可能性があります。
設計図面に関する情報の履歴が残っていない
設計図面の更新履歴(版管理)が適切に管理されていない場合、どの設計図面が最新のものか判断できず、誤った図面を使用してしまうといった問題が発生してしまいます。
これらの問題は、製品の品質低下や生産ラインでのトラブルの原因となる可能性があるため、設計図面の更新管理(版管理)の徹底が必要です。
部門ごとに情報を共有しにくい
設計図面の管理が属人化している場合、部門間での情報共有が困難になることがあります。その結果、「部署をまたいだ設計図面の入手に手間や時間がかかる」、「部門間のコミュニケーションが滞り、製品開発の遅延につながる」といった問題が生じ、企業全体の生産性低下や競争力の低下につながる可能性があります。
同じ設計図面の情報が紙とデータで混在している
紙の図面とデジタルデータが混在している場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
・紙面で保管されたり、クラウド上にあったりと情報が混在し、管理が困難になる
・進捗状況の管理ができなくなる
・最新版を修正したつもりが、過去の設計図面を修正していた
これらの問題は、製品の品質管理や生産効率に大きな影響を与える可能性があります。
4.設計図面の効率的な管理には「データ化」がおすすめ
設計図面の管理における多くの課題を解決する方法として、「データ化」が非常に効果的です。ここでは、設計図面のデータ化がもたらす利点や具体的な方法、そして効率的な管理のポイントについて詳しく説明します。
紙の設計図面をデータ化する利点
設計図面をデータ化することで得られるメリットについて、ご紹介します。
- ・保管場所を縮小できる
- デジタルデータとして保存することで、物理的な保管スペースを大幅に削減できます。
- ・閲覧や検索などの作業が容易になる
- キーワード検索やカテゴリ分類により、必要な図面を素早く見つけることができます。
- ・紙の劣化による図面の見づらさを防げる
- デジタルデータは劣化せず、長期間にわたって鮮明な状態を保つことができます。
データ化の方法
設計図面のデータ化には、以下のような方法があります。専用のシステムを導入することで、共有や修正の面で手間がかかりにくくなります。また、セキュリティや検索機能など、設計図面管理に特化した機能を活用できます。
・スキャナや複合機などで紙の設計図面をスキャンしてデータ化する
・PDFやCADデータに変換する(一般的な方法)
・設計図面管理専用のシステムを導入する(おすすめ)
データ化した設計図面を管理するポイント
- ①フォルダやファイル名をルール化する
- 検索効率を向上させるため、ファイル名にキーワードを含めることをおすすめします。例えば、「日付_種類_名称」のような形式で統一することで、必要な図面を素早く見つけることができます。
また、更新の痕跡をファイル名に残すこともルール化すると良いでしょう。例えば、ファイル名に更新日を入れることで、どの図面が最新版かすぐにわかるようになります。さらに、更新情報の管理方法を決めていれば、過去の図面も検索しやすくなります。
- ②保管場所を統一する
- 保管場所を定めていないと情報が点在してしまうため、社内で保管場所とルールを決めて周知することが重要です。例えば、共有フォルダを作成して保管するなどの方法があります。
図面を一元管理できる仕組みを整えることが大切です。図面管理システムを利用することで一元管理ができ、保管場所が分散するリスクや各部署で保管方法が異なることを避けられます。
5.図面管理システムを利用するメリットと注意点
図面管理システムの導入は、設計図面の効率的な管理を実現する強力なツールとなります。ここでは、図面管理システムを利用するメリットと、導入時に注意すべき点について詳しく解説します。
図面管理システムを利用するメリット
製造業において、図面管理システムを導入することで得られるメリットは計り知れません。効率化、コスト削減、品質向上など、様々な面で企業に大きな利益をもたらします。ここでは、その主要なメリットについて詳しく見ていきましょう。
- ・情報の一元管理で業務効率アップ
- 図面管理システムを導入すると、すべての図面や関連文書を一箇所で管理できるようになります。これにより、必要な情報をすぐに見つけ出すことができ、作業時間の大幅な短縮につながります。また、最新版の図面を常に把握できるため、古い情報による混乱も防げます。
- ・検索性が向上する
- キーワード検索やカテゴリ検索が可能になるため、求めるデータだけを素早く抽出できます。多くの場合、プロジェクト名や時期など、複数の検索方法が用意されているため、柔軟な検索が可能です。また、最近ではAI(人工知能)による類似図面の検索など様々なソリューションの登場により、図面を探す工数を大幅に削減することもでき、管理方法の幅が広がっています。
【関連製品】部品の局所的な形状と全体的な形状を捉えるAIを搭載した『AI類似図面検索』
【導入事例】図面管理の手間と作業の属人化を解消 効率化でできた時間を活用し受注金額2割増! - ・会社全体でデータが共有しやすい
- 他部門の図面データに簡単にアクセスができるようになり、データの属人化を防ぐことができます。また、一定の法則で管理することで、共有時の行き違いを少なくできます。
- ・ペーパーレス化でコスト削減と環境保護を両立
- 紙の図面から電子データへの移行により、印刷コストや保管スペースの削減が可能になります。同時に、紙の使用量を減らすことで、環境負荷の低減にも貢献できます。SDGsへの取り組みをアピールする良い機会にもなるでしょう。
- ・データ分析で製品開発を加速
- 蓄積された図面データを分析することで、製品開発や生産プロセスの改善に役立つ洞察を得ることができます。これは、イノベーションの促進や、競争力の強化につながる重要な要素となります。
図面管理システムの導入は、単なる業務効率化だけでなく、企業の競争力強化や持続可能な成長につながる重要な投資です。今後の製造業において、避けては通れない道筋と言えるでしょう。 - ・品質管理の向上で顧客満足度アップ
- 図面の変更履歴を簡単に追跡できるため、品質管理が容易になります。また、標準化された管理プロセスにより、ヒューマンエラーを減らすことができます。結果として、製品の品質向上につながり、顧客満足度の向上に寄与します。
- ・セキュリティ強化で機密情報を守る
- アクセス権限の設定により、必要な人だけが図面を閲覧・編集できるようになります。これにより、機密情報の漏洩リスクを大幅に低減できます。また、クラウドベースのシステムを利用すれば、自然災害などによるデータ損失のリスクも軽減できます。
- ・リモートワークを支援し、働き方改革を推進
- 図面管理システムの導入により、場所を問わず図面へのアクセスが可能になります。これは、リモートワークの推進や、海外拠点との連携強化に大きく貢献します。働き方改革の一環として、従業員の柔軟な働き方をサポートすることができるのです。
図面管理システムを利用する注意点
製造業において、図面管理システムの導入は大きなメリットをもたらしますが、同時にいくつかの注意点も存在します。ここでは、システム導入時に考慮すべき重要なポイントについて解説します。
- ①導入コストを慎重に検討する必要がある
- 図面管理システムの導入には、一定の投資が必要になります。主な費用項目としては以下が挙げられます:
・初期導入費用(ソフトウェア購入費、セットアップ費用など)
・ランニングコスト(月額利用料、保守点検費用など)
・ハードウェア更新費用(必要に応じて)
・従業員のトレーニング費用
これらの費用は、企業の規模や選択するシステムによって大きく異なります。システム導入を検討する際は、初期費用だけでなく長期的なコストも含めて総合的に評価することが重要です。ROI(投資収益率)を慎重に計算し、経営判断を行いましょう。 - ②セキュリティ対策は万全に
- 図面データは企業の知的財産であり、競争力の源泉となる重要な情報です。そのため、セキュリティ対策には特に注意を払う必要があります。
・外部からの脅威に対する対策
…強固なファイアウォールの設置
…最新のアンチウイルスソフトの導入
…定期的なセキュリティアップデートの実施
・内部からの情報流出防止
…アクセス権限の厳密な管理
…ユーザー認証の強化(多要素認証の導入など)
…操作ログの記録と定期的な監査
・データバックアップと災害対策
…定期的なバックアップの実施
…クラウドストレージの活用による冗長化
…BCP(事業継続計画)の策定
セキュリティ対策は、技術的な側面だけでなく、従業員教育も重要です。定期的なセキュリティトレーニングを実施し、情報セキュリティに対する意識を高めることが大切です。
図面管理システムの導入は、企業の競争力強化につながる重要な施策です。しかし、そのメリットを最大限に活かすためには、コストとセキュリティの両面から慎重に検討を行う必要があります。長期的な視点を持って、自社に最適なシステムを選択し、適切な運用体制を整えることが成功への鍵となるでしょう。
5.設計図面管理の最適化で製造業の生産性向上を
ここまで、製造業における設計図面の重要性や管理における課題、そして効率的な管理方法について詳しく見てきました。設計図面の適切な管理は、製造業の生産性向上や競争力強化に直結する重要な要素です。
設計図面のデータ化や図面管理システムの導入は、多くの企業が抱える課題を解決し、業務効率を大幅に向上させる可能性を秘めています。しかし、単にシステムを導入するだけでなく、社内のワークフローや管理ルールを整備し、従業員全体で新しい管理方法を徹底することが成功の鍵となります。
また、技術の進歩に伴い、より高度な図面管理システムも登場しています。その一つが、AI(人工知能)を活用した図面検索システムです。例えば、テクノアが提供する『AI類似図面検索』は、製造業におけるDX促進システム・サービスとして注目を集めています。このシステムは、過去の図面データベースから類似した形状の図面をAIが自動的に検索し、提示してくれる画期的なツールです。従来の検索方法では見つけづらかった類似図面も、AIの高度な画像認識技術により素早く発見することができます。
≪AI類似図面検索の特徴≫
・AIが「検索の対象とする形状」を自動選択し、簡単な操作で過去図面から類似した形状のものを検索
・類似度をわかりやすく色と数値で表示
・登録する図面に情報(図番、品名、サイズなど)を付加できるので検索や分類が簡単
・図面比較や版管理などの図面管理機能も搭載
・生産管理システムを参照し、図面と紐づいた様々なデータを取り出せます
・既存のファイルサーバー上に保存されていた図面も、自動取り込み可能
▼導入事例はこちら
AI類似図面検索で社内の情報資産を有効活用! 残業時間半減&取引先からの信頼度UP|株式会社フォーバンド様(福岡県)
効率的な図面管理は、製品開発のスピードアップや品質向上、そしてコスト削減につながります。それは即ち、企業の競争力強化に直結します。製造業の皆様、設計図面管理の最適化に向けて一歩踏み出してみませんか?