発注ミスはなぜ起こるのか?原因や影響、ミスを防ぐ対策と対処法
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製造業において重要な発注業務で発生してしまった「発注ミス」。発注ミスの対策は避けては通れない課題とも言えます。発注ミスは業務効率の低下や顧客満足度の減少につながるだけでなく、金銭的にも精神的にも大きな損失を招く可能性があります。しかし、適切な対策を講じることで、大幅に改善することが可能です。本記事では、発注ミスが起こる原因や具体的な影響、そしてミスを防ぐための効果的な対策と、万が一ミスが発生した際の適切な対処法について詳しく解説します。発注プロセスの改善を通じて、業務効率化とコスト削減のヒントとしてご覧ください。
1.発注ミスが起こる原因を考えてみる
発注ミスを繰り返さないためにも、まずは起こりうる原因を考えてみましょう。発注ミスは、様々な要因が絡み合って発生します。主な原因として以下の4つが挙げられます。これらの原因を理解し、適切に対処することが発注ミス防止の第一歩となります。
記載・転記ミスや確認不足
- 【原因】
- 数量や品番(図番)、価格の入力間違いなどによる記載ミスや転記ミスは、代表的な原因のひとつです。特に、手書きの発注書や部門間で発生する転記入力を行う際に、間違った情報で発行してしまうことがあります。
このようなミスは、部門間で異なるシステムを使うなど複雑な管理方法であることや、紙や電話、FAXなどのアナログな業務で起こりやすい傾向にあります。例えば、手書きの発注書を読み間違えたり、FAXの文字が不鮮明で誤読したりすることがあります。また、長時間の作業による疲労や注意力の低下も、記載ミスや転記ミスの要因となります。 - 【対策】
- 対策としては、デジタル化を進めることが効果的です。発注書をデジタル化し、システムに直接入力することで、転記の必要がなくなり、ミスのリスクを軽減できます。また、入力時のダブルチェックや、システムによる自動チェック機能の導入も有効です。
メールやFAXの送付ミス
- 【原因】
- メールやFAXなどを送付する際に、宛先間違えによる発注ミスも少なくありません。宛先の入力ミスや選択ミス、情報が古い場合や不正確な連絡先の情報などが原因で起こることが多いです。
特に、似た名前の取引先が複数ある場合や、同じ取引先でも部署や担当者によって異なるメールアドレスを使用している場合などは、送付ミスが起こりやすくなります。メールの誤送信は、発注業務に限らず、複数の作業を同時進行で行うような多忙な時に発生しやすい、インシデントとも言えます。CCやBCCの使用を誤ると、本来送付すべきでない相手に情報が漏洩してしまう危険性もあるため特に注意が必要です。 - 【対策】
- これらのミスを防ぐには、メール送信前の確認プロセスを徹底することが重要です。例えば、重要なメールは送信前に上司や同僚にチェックしてもらう、送信ボタンを押す前に必ず宛先を再確認するなどのルールを設けることが効果的です。また、取引先の連絡先情報を定期的に更新し、最新の状態を保つことも大切です。
管理方法やチェック体制の不備
- 【原因】
- どうしても属人化しやすい発注業務では、担当者一人に業務が集中してしまい、単独で作業を行うことで生じるミスもあります。単独で作業を行うことでミスが見つかりにくくなり、それがさらに他のミスも引き起こしやすくなるという悪循環に陥ることがあります。
チェック体制の不備は、特に小規模な企業や人手不足の企業で顕著に見られます。一人で複数の業務をこなさなければならない状況では、自身の作業をチェックする余裕がなくなってしまいます。また、長年同じ作業を行っているベテラン社員が「自分は間違えないから」と思い込み、チェックを怠ることもあります。 - 【対策】
- この問題を解決するには、組織的なチェック体制の構築が不可欠です。例えば、ダブルチェック制度を導入し、必ず別の担当者が確認を行うようにします。チェックリストを作成し、確認すべき項目を明確にすることで、見落としを防ぐことができます。さらに、定期的な研修やミーティングを通じて、チェックの重要性を全社員に周知徹底することも大切です。
また、受発注データが社内や部門間で共有できていない状況も原因のひとつです。データの見える化し、発注担当者だけでなく、生産計画に携わるすべての部門が同じデータをリアルタイムで共有することで「人的なミス」を起こさせない環境づくりも対策の一つとしておすすめします。
人手不足や業務の属人化
- 【原因】
- 人手不足によって、発注業務を行うための十分な時間や労力を確保できていないことによるミスも多発しています。他の業務の合間に発注業務を行っていることも多く、ミスにつながりやすい状況を生み出しています。
人手不足は、単に発注業務だけでなく、企業全体の業務効率を低下させる大きな要因となります。発注担当者が他の業務に追われ、発注業務に十分な時間を割けない状況では、急ぎの発注を慌てて行ったり、チェックを省略したりすることになりがちです。 - 【対策】
- この問題に対しては、まず業務の優先順位付けと効率化が必要です。発注業務の重要性を認識し、適切な時間と人員を割り当てることが大切です。また、可能であれば専任の発注担当者を設けることも検討すべきです。さらに、後述する受発注システムの導入により、業務の自動化・効率化を図ることも効果的な対策となります。
これらの要因以外にも、部門間のコミュニケーション不足や複雑な業務フロー、すぐにデータを確認できない整理されていない労働環境など、様々な要因が組み合わさって、必然的に発注ミスが生じてしまいます。担当者の個人のミスで済まさず、その奥にある根本的な課題見極められるよう調査が必要です。
2.発注ミスによる影響を把握
発注ミスは、企業活動に様々な悪影響を及ぼします。主な影響として以下の3つが挙げられます。これらの影響を十分に理解し、発注ミス防止の重要性を認識することが大切です。
業務の負担が増える
発注ミスにより、再発注業務や取引先への謝罪や報告などを行う必要が生じるため、業務の負担が増加します。発注をし直したり、間違えて届いた材料や部品などを返品したりする作業が増えることで、本来の業務に支障をきたす可能性があります。
例えば、誤った数量の部品を発注してしまった場合、以下のような追加作業が発生します:
(想定される作業)
①誤発注に気づいた時点で、取引先に連絡して発注のキャンセルや変更を依頼する
②正しい数量で再発注を行う
③誤って届いた部品がある場合は、返品の手続きを行う
④在庫管理システムの数値を修正する
⑤関係部署に状況を説明し、生産計画の調整を行う
これらの作業は、通常の業務フローには含まれていないため、担当者の負担を大きく増加させます。この時、急な対応を迫られることで、他の業務にも影響が及ぶ可能性があります。また、発注ミスを犯したという精神的にもつらい状態で対応が迫られるなど、さらなる悪循環を招かないよう、発生ミスが生じた際の業務フローも明確化しておくことが必要です。
生産性が低下する
発注ミスで生じる追加業務や部品の納期遅延による後工程への影響により、生産性が低下する恐れがあります。追加での発注や在庫の確認、配送の手配など、本来の業務の時間が減ってしまうことで、本来の業務が後回しになるなど、今回の発注ミス以外の案件にも与える影響も無視できません。リカバリー業務は生産ラインの効率を下げるだけでなく、従業員の負担を増やし、ストレスなども引き起こしやすくなります。
具体的には、以下のような影響が考えられます:
①部品や材料の到着が遅れることによる生産ラインの停止
②急遽の発注変更による調達コストの増加
③発注ミスの対応に時間を取られることによる他の業務の遅延
④ミスの対応に追われることによる従業員のモチベーション低下
これらの要因が重なることで、企業全体の生産性が著しく低下する可能性があります。特に、ジャストインタイム方式を採用している企業では、発注ミスの影響がより深刻になる傾向があります。
顧客満足度が低下する
顧客へのサービスや商品の納品が遅れることで、顧客からの信頼を失ってしまう可能性があります。顧客にネガティブな印象を持たれやすくなり、長期的に取引へ悪影響を与えてしまう恐れがあります。また、顧客によっては「納期遅延」に対するペナルティが生じる場合もあるため、最も避けたい影響の一つです。
顧客満足度の低下は、以下のような形で現れる可能性があります:
①納期遅延による顧客の生産計画の乱れ
②品質問題(誤った仕様の製品を納品してしまうなど)による顧客の信頼喪失
③度重なるミスによる取引量の減少や取引停止
④評判の悪化による新規顧客の獲得機会の損失
特に、BtoB取引においては、一つの発注ミスが取引先の生産ラインに大きな影響を与える可能性があります。そのため、発注ミスの影響は単なる一回の取引にとどまらず、長期的な取引関係全体に波及する可能性があることを認識しておく必要があります。
3.発注ミスを防ぐ対策と発注ミスが起こったときの対処法
発注ミスを防ぐための対策と、万が一発注ミスが起こってしまった場合の対処法について解説します。これらの対策を適切に実施することで、発注ミスのリスクを大幅に軽減することができます。
発注ミスを防ぐ対策
- ・作業工程を見直す
- 発注業務の業務フローを可視化して見直すことが重要です。業務フローを可視化することでミスが起こりやすい工程を見つけ、対策を立てやすくなります。不必要な工程などがあれば見直し、各工程で行うべき内容をが明確化することで、業務の属人化を防ぐことにもつながります。
業務の属人化とは、特定の個人にしか分からない業務や、特定の個人しか遂行できない業務が存在する状態を指します。属人化が進むと、担当者個人が不在の際に業務が滞ったり、ミスが発生したりする可能性が高くなります。例えば、ベテラン社員だけが把握している取引先との特殊な取り決めや、特定の担当者しか操作できないシステムなどが該当します。作業工程の見直しは、以下のステップで行うことができます:
①現在の発注業務の流れを図式化する
②各工程でのリスクポイントを洗い出す
③不必要な工程や重複している作業がないか確認する
④ミスが起きやすい工程に対して、具体的な改善策を検討する
⑤改善策を実施し、効果を検証する
⑥定期的に業務フローを見直し、継続的な改善を行うこのプロセスを通じて、より効率的で信頼性の高い発注業務フローを構築することができます。
- ・チェック体制を強化する
- チェック体制が強化されれば、抜け漏れしやすい工程を確認しやすくなります。可視化した業務フローをもとにして、各工程のチェックリスト作成も効果的な方法の一つです。また、複数でのチェック体制に整えることもミスを防ぐことにつながります。二重チェック体制を導入する、承認プロセスを構築して見直すなどの自社にあったチェック体制を考えてみましょう
承認プロセスを構築するとは、発注業務において複数の担当者や上司が確認や承認を行う仕組みを作ることです。例えば、発注担当者が入力した内容を別の担当者がチェックし、最終的に上司が承認するといった流れを設けることで、ミスの発見や防止につながります。
具体的なチェック体制強化の方法としては、以下のようなものが挙げられます:
①チェックリストの作成と活用
②ダブルチェック制度の導入
③システムによる自動チェック機能の実装
④定期的な内部監査の実施
⑤チェック担当者の教育と訓練これらの施策を組み合わせることで、より堅固なチェック体制を構築することができます。生産管理システムによっては、「発注承認機能」を標準搭載しているものもあるため、システム導入を検討されている場合は稼働条件の一つとして検討してみてください。
- ・発注業務を標準化し人員を増やす
- 発注業務を担当する従業員を増やすことも有効な対策です。発注業務を行う従業員の人数が足りておらず、担当者に負荷が集中する環境がミスにつながっている可能性もあるためです。発注担当者の負担が軽減されると、人手不足によるストレスやヒューマンエラーを防ぐことができます。ただし、採用コストや教育コストを踏まえ、人員補充の計画を立てる必要があります。今いるメンバーで何とかしたい場合は、発注業務の標準化や業務の見直しを行い、だれでも代わりに対応できるようマニュアル作成を行うなど工夫してみるのもよいでしょう。
人員増強を検討する際は、以下の点を考慮することが重要です:
①現在の業務量と人員のバランスを分析する
②将来的な業務量の増加予測を立てる
③新規採用と既存社員の教育・配置転換のバランスを検討する
④採用・教育にかかるコストと期待される効果を比較する
⑤段階的な人員増強計画を立てるまた、単に人数を増やすだけでなく、適切なスキルと経験を持った人材を配置することが重要です。発注業務に精通した経験者を採用したり、若手社員を育成したりするなど、長期的な視点での人材戦略が求められます。
4.発注ミスの防止は、一朝一夕には実現できない
本コラムでは、中小製造業における発注ミスの原因、影響、そして対策について詳しく解説してきました。発注ミスは単なる事務的なエラーではなく、企業の生産性や顧客満足度に大きな影響を与える重要な問題です。
記載ミスや転記ミス、メールの送付ミス、チェック体制の不備、人手不足など、発注ミスの原因は多岐にわたります。これらの原因を正確に把握し、適切な対策を講じることが重要です。
発注ミスによる影響は、業務負担の増加、生産性の低下、顧客満足度の低下など、企業活動全体に及ぶ可能性があります。特に、顧客との信頼関係に与える影響は長期的で深刻なものとなりかねません。
しかし、適切な対策を講じることで、発注ミスのリスクを大幅に軽減することができます。作業工程の見直し、チェック体制の強化、人員の適正配置、システムの導入など、自社の状況に合わせた対策を実施することが重要です。また、万が一発注ミスが発生した場合も、迅速かつ適切な対応を心がけることで、影響を最小限に抑えることができます。
発注業務の改善は、単に発注ミスを減らすだけでなく、業務効率の向上、従業員の負担軽減、顧客満足度の維持・向上など、多くのメリットをもたらします。本コラムで紹介した対策を参考に、自社の発注業務を見直し、継続的な改善に取り組んでいただければ幸いです。
発注業務の改善に役立つ「生産管理システム」
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①CADデータも取込可能!部品リストを基にした部品表で手配漏れを防止
②部品表情報を基に発注処理が行えるため、転記作業をなくし発注業務を効率化
③発注承認機能を活用したダブルチェック体制の構築
④システムより発注書のメール送信機能で送信ミスを防止(仕入先ごとに送信先や本文の設定が可能)
⑤全部門で見れる「発注問合せ」機能にて、リアルタイムで受け入れ状況を確認
(入荷予定日を基にした納期管理を徹底)
⑥検収処理機能および仕入データのエクスポートや財務連携で、経理業務も効率化 - 脱アナログへ!取引先ともつながるWeb受発注システム『BtoBプラットフォーム 受発注 for 製造業』
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発注ミスの防止は、一朝一夕には実現できません。しかし、地道な努力と適切な戦略によって、確実に改善することができます。発注業務の品質向上が、企業全体の競争力強化につながることを念頭に置き、全社一丸となって取り組んでいきましょう。