リショアリングとは?国内回帰が進む理由と、中小製造業が今考えるべき課題【2026年版】

著者:加久 尚子 リショアリングとは?国内回帰が進む理由と、中小製造業が今考えるべき課題【2026年版】
加久 尚子 ブランディング戦略室

2022年:ITコーディネータ資格取得
モノづくり企業様の「知りたいが見つかる」そんなコラムを作成し、情報発信してまいります。
IT利活用による可能性を模索し、お客様に寄り添った課題解決ができるよう、お手伝いさせていただきます。

「リショアリング(Reshoring)」とは、海外へ移転した生産拠点や製造工程を国内へ戻す「国内回帰」のことです。

かつては、人件費を抑えるために海外生産へ移行することが一般的でした。しかし近年では、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱や地政学リスク、円安によるコスト構造の変化などを背景に、「国内でものづくりを行う価値」が改めて見直されています。

一方で、国内回帰を進めたくても、多くの中小製造業では人手不足や技能継承、生産性向上といった新たな課題に直面しています。

本記事では、リショアリングの意味や注目される背景、日本の中小製造業を取り巻く現状、そしてこれからのものづくりに求められる視点について、最新動向を交えながら解説します。

この記事でわかること
✅リショアリング(国内回帰)の意味とオフショアリングとの違い
✅なぜ今、日本企業で国内回帰が進んでいるのか
✅日本の中小製造業を取り巻く環境変化
✅リショアリングがもたらすメリット・デメリット
✅人手不足時代に求められる考え方

 

1.リショアリング(国内回帰)とは?

リショアリングとは、海外へ移転した生産拠点や製造工程を、自国へ戻す取り組みです。近年は、サプライチェーンの強化や品質向上、安定供給を目的として世界的に注目されています。

リショアリングとは?「海外生産から国内生産へ戻す」という経営判断

リショアリング(Reshoring)とは、海外へ移転していた工場や生産工程を、自国へ戻す取り組みのことです。日本では「国内回帰」とも呼ばれています。

1980年代から2000年代にかけて、多くの企業が中国や東南アジアなどへ生産拠点を移しました。その背景には、人件費や製造コストを抑えられることに加え、市場の拡大が期待できることなどがありました。

しかし現在では、その前提が大きく変わりつつあります。

製造コストだけではなく、「必要な時に必要なものを安定して供給できるか」という視点が、企業の競争力を左右するようになったのです。
そのため近年は、「コストを最優先する海外生産」から、「安定供給や品質を重視した国内生産」へと考え方を見直す企業が増えています。

オフショアリングとの違い

リショアリングを理解するためには、「オフショアリング」との違いを知っておくことも重要です。

用語 内容
オフショアリング 国内で行っていた生産を海外へ移転すること
リショアリング 海外へ移転した生産を国内へ戻すこと

つまり、両者は正反対の取り組みと言えます。
なお、すべての企業が海外工場を閉鎖して国内へ戻しているわけではありません。
近年では、国内と海外の生産拠点を組み合わせ、それぞれの強みを生かす「最適配置」を進める企業も増えています。

リショアリングが注目される3つの理由

現在、リショアリングが注目されている背景には、次の3つがあります。

●サプライチェーンを安定させたい
●品質や短納期への対応力を高めたい
●地政学リスクや為替変動に左右されにくい生産体制を構築したい

つまり、「安く作ること」よりも、「安定して作り続けられること」が重要な時代になったと言えるでしょう。

2.なぜ今、国内回帰が進んでいるのか

リショアリングが進む背景には、コロナ禍や国際情勢の変化、物流コストの上昇などがあります。これまでの「海外で安く作る」という考え方だけでは、企業競争力を維持しにくくなっています。

「海外で作る方が安い」が当たり前ではなくなった

かつて海外生産の最大のメリットは、人件費を抑えられることでした。しかし近年は、製造業を取り巻く環境が大きく変化しています。
例えば、

⚠️コロナ禍による部品供給の停滞
⚠️海上輸送の混乱や物流コストの高騰
⚠️円安による輸入コストの上昇
⚠️地政学リスクの高まり
⚠️世界各国で進む保護主義的な政策

こうした出来事により、「海外で作れば安い」という考え方だけでは、生産計画を維持することが難しくなりました。

実際に、多くの製造業では、
「部品が届かずラインが止まる」
「納期が読めず受注計画を変更する」
「輸送費が想定以上にかかる」
といった経験をした企業も少なくありません。

これらは一時的な出来事ではなく、今後も起こり得るリスクとして捉えられています。
そのため、企業ではコストだけではなく、「供給を止めないこと」そのものが経営課題となっています。

「品質」「短納期」「柔軟な対応」が日本のものづくりの強み

国内回帰が進む理由は、コストだけではありません。

日本の中小製造業には、海外では代替しにくい強みがあります。

【日本の中小製造業の強み】
⚙多品種少量生産への柔軟な対応
⚙高い加工技術
⚙品質管理の徹底
⚙顧客ごとの細かな要望への対応
⚙設計変更へのスピーディーな対応

製造現場では、
「今日中に試作品を作れないか」
「急ぎで仕様変更したい」
「この部品だけ先に納品できないか」
といった相談が突然入ることも珍しくありません。

こうした場面では、現場・営業・設計が密に連携しながら柔軟に対応できることが、日本のものづくりの大きな強みとなっています。
国内に生産拠点があることで、顧客との距離も近くなり、品質や納期への細かな要求にも応えやすくなります。

「国内回帰=成功」ではない

一方で、「国内へ戻せばすべて解決する」というわけではありません。
むしろ、多くの中小製造業では、新たな課題も見え始めています。

例えば、
⚠️生産を増やしたくても、人材が確保できない
⚠️ベテラン社員の退職が近づき、技能継承が追いつかない
⚠️受注は増えても、生産能力が追いつかない

つまり、リショアリングはゴールではなく、新たなスタートとも言えます。

国内生産へ戻すこと以上に重要なのは、「限られた人員でも、持続的に生産できる体制を構築すること」です。この視点こそが、これからの中小製造業に求められる大きなテーマとなっています。

3.国内回帰を進めたくても、中小製造業には大きな壁がある

リショアリングによって国内での生産機会が増えても、多くの中小製造業では「人材不足」が大きな課題となっています。採用だけでなく、技能継承や生産性向上も重要な経営テーマです。

「仕事はある。でも人がいない」が現場の本音

国内回帰の動きは、中小製造業にとって新たな受注機会につながる可能性があります。

しかし、多くの現場では、それを前向きに喜べない事情もあります。
「仕事はある。でも、人がいない。」
これは、工場を訪れるとよく耳にする声です。

【よくある状況】
⚠️新しい仕事を受けたいが、人手不足で断らざるを得ない
⚠️ベテラン社員が一人休むだけで、生産計画を組み直さなければならない
⚠️特定の加工や段取りが、一人しかできない

受注が増えること自体は喜ばしいことですが、人材を確保できなければ、生産能力は思うように伸びません。
リショアリングによって国内生産が増えたとしても、「作れる体制」が整っていなければ、その機会を十分に生かせないのです。

データで見る日本の中小製造業を取り巻く現状

こうした状況は、現場の感覚だけではなく、公的機関や調査会社のデータからも読み取ることができます。

① 労働人口の減少は今後も続く見込み
日本では少子高齢化の進行により、生産年齢人口(15~64歳)は長期的に減少しています。
今後もこの傾向は続くと見込まれており、「採用すれば解決する」という時代ではなくなっています。
つまり、企業同士で限られた人材を奪い合う状況が続くことが予想されます。
② 製造業でも人手不足は依然として深刻
帝国データバンクが実施している「人手不足に対する企業の動向調査」では、製造業でも多くの企業が正社員不足を感じていることが示されています。業種によって差はあるものの、「採用活動を続けても思うように人が集まらない」という状況は、多くの企業に共通する課題です。
③ 技能継承も待ったなし
人手不足と並んで、多くの企業が抱えるのが技能継承です。
長年現場を支えてきた熟練技術者が定年を迎える一方、若手社員の育成には時間がかかります。
また、
✓加工条件が担当者の経験に頼っている
✓図面には書かれていない”勘どころ”がある
✓教える人も忙しく、教育の時間が確保できない
など、「技術はあるのに伝えられない」という課題も少なくありません。
経済産業省の「2026年版ものづくり白書」でも、人への投資や技能継承、AI・DXの活用による生産性向上の重要性が示されています。
📝要点:国内回帰が進んでも、人手不足や技能継承が課題となるため、「どう作り続けるか」が中小製造業の競争力を左右します。

4.リショアリングのメリット・デメリット

リショアリングのメリット

国内回帰には、コスト以外にもさまざまなメリットがあります。

💡品質を維持しやすい

製造現場との距離が近くなることで、品質改善や工程改善をスピーディーに行いやすくなります。

💡納期短縮につながる

海外輸送が不要になるため、リードタイムの短縮が期待できます。
また、設計変更や急な仕様変更にも柔軟に対応しやすくなります。

💡サプライチェーンを安定させやすい

調達先や生産拠点を国内にも持つことで、海外情勢や物流の影響を受けにくい体制づくりにつながります。

💡顧客との距離が近くなる

現場で打ち合わせをしながら試作品を作るなど、日本ならではの”ものづくり”の強みを発揮しやすくなります。

リショアリングのデメリット

一方で、国内回帰には課題もあります。

⚠️人件費や設備投資の負担

国内生産では、人件費や設備投資などのコスト負担が増える場合があります。
そのため、「海外から戻せば利益が出る」という単純な話ではありません。

⚠️ 人材確保が難しい

国内回帰を進めても、人材が確保できなければ、生産能力を十分に発揮できません。
近年では、「設備より先に、人材がボトルネックになる」という企業も増えています。

⚠️「生産性向上が欠かせない

限られた人員で生産を続けるためには、
・作業の標準化
・工程の見える化
・ムダな作業の削減
・データを活用した改善活動
など、生産性向上への取り組みがこれまで以上に重要になります。

5.国内回帰をチャンスに変えるために

リショアリングは、日本のものづくりにとって追い風とも言える動きです。

一方で、国内へ生産を戻すだけでは、すべての課題が解決するわけではありません。
人手不足、技能継承、生産性向上
これらは、リショアリングとは別の問題ではなく、国内回帰を成功させるために避けては通れないテーマです。

これからの中小製造業に求められるのは、「より多くの人を採用すること」だけではなく、「限られた人員でも持続的に生産できる仕組み」をつくることではないでしょうか。

日本の製造業が長年培ってきた品質や技術力、柔軟な対応力は、世界に誇れる強みです。

その強みを次世代へつなぎ、変化する社会の中でも競争力を維持していくためには、「どこで作るか」だけでなく、「どう作り続けるか」という視点が、これまで以上に重要になっています。

6.よくある質問(FAQ)

Q.リショアリングとは?
海外へ移転した生産拠点や製造工程を国内へ戻す取り組みです。日本では「国内回帰」とも呼ばれ、供給の安定化や品質向上を目的として進められています。
Q.リショアリングとオフショアリングの違いは?
オフショアリングは国内から海外へ生産を移すこと、リショアリングは海外から国内へ戻すことです。
Q.リショアリングの課題は?
人件費の上昇や人手不足、技能継承、生産性向上への対応が大きな課題です。
国内回帰によって仕事が増えても、人材を確保できなければ、生産能力を十分に発揮できないからです。
Q.なぜ今、リショアリングが進んでいるのですか?
コロナ禍による供給網の混乱、地政学リスク、円安、物流コストの上昇などにより、安定した供給体制を確保する重要性が高まっているためです。
Q.国内回帰にはどんなメリットがありますか?
品質管理のしやすさ、納期短縮、サプライチェーンの強化、顧客への柔軟な対応などが挙げられます。

 

参考・引用資料
・経済産業省「2026年版ものづくり白書」:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2026/
・中小企業庁「2025年版 中小企業白書」:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/
・帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」:https://www.tdb.co.jp/report/economic/
・総務省統計局 人口推計・労働力関連統計:https://www.stat.go.jp/

 

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