原価管理こそ”稼ぐ力”の出発点〜中小企業白書2026が示す製造業の生き残り戦略〜

著者:榊原 由佳(さかきばら ゆか) 原価管理こそ”稼ぐ力”の出発点〜中小企業白書2026が示す製造業の生き残り戦略〜
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榊原 由佳(さかきばら ゆか) IT経営事業部

●2014年 株式会社テクノア入社
生産管理システム「TECHS」シリーズのサポートセンターにて、数多くの製造業の現場の声を直接お聞きするサポート業務に従事

●2020年~ 中小企業診断士・ITコーディネータ登録
IT経営事業部へ異動。システム導入だけではなく、経営課題の根本解決を目指した支援活動を開始。

「経営者の思いと現場の実情の両方を理解し、実現可能な改善策を共に見つけていくこと」
経営課題の明確化から、ITを活用した解決提案、仕組み作りまで、
経営者の思いと現場の声を聞き、ともに考え、歩む支援を心がけています。

現状維持は最大のリスク
これは、2026年版中小企業白書が経営者様に向けて示した重要なメッセージです。原材料費の高騰、最低賃金の引き上げ、深刻化する人手不足。経営を取り巻く環境は急速に変わり続けています。だからこそ今、変化を恐れずに「稼ぐ力」を高めることが、会社を守り、社員を守る道です。その出発点となるのが「原価管理」であることを、本稿では白書のデータと実際の事例を交えながらお伝えします。

1.「稼ぐ力」で中小企業と大企業の間に何が起きているのか

『売上は伸びているのに、手元に残る利益が増えない』そう感じている経営者様も多いのではないでしょうか。企業規模別のデータが、その背景を示しています。

①労働分配率の推移
中規模企業(資本金1千万円以上1億円未満)の労働分配率は、2024年度時点で74.4%、小規模企業(資本金1千万円未満)では81.5%に達しています。大企業の47.3%と比べると、賃上げ余力の差は極めて大きい状況です。

財務省「法人企業統計調査年報」

財務省「法人企業統計調査年報」

引用:中小企業庁|中小企業白書2026「第1部第1章 中小企業・小規模事業者の動向〈第1-1-24図〉

②付加価値額の構成要素
さらに、中小企業の付加価値額に占める営業純益の割合は9.5%と10%を下回っており、大企業の36.0%とは大きな開きがあります。
これは「売上が上がっているのに手元に残らない」という現実を裏付ける数字です。付加価値の大半は人件費に充てられ、賃料など固定費の削減にも限界があります。だからこそ、付加価値そのものを増やす「稼ぐ力」の強化が必要なのです。

財務省「法人企業統計調査年報」付加価値額の構成要素

財務省「法人企業統計調査年報」加価値額の構成要素

引用:中小企業庁|中小企業白書2026「第1部第1章 中小企業・小規模事業者の動向〈第1-1-23図〉

 

 

2.白書が示した”稼ぐ力”強化のカギ:価格転嫁と原価管理

では、付加価値を高めるために具体的に何をすれば良いのか。白書が製造業経営者に示すカギが「価格転嫁」と「原価管理」です。
コストの上昇分を適切に販売価格に転嫁すること(価格転嫁)は、付加価値額の維持・増加に直結します。
しかし、価格転嫁はただ「値上げを申し入れる」だけでは実現しません。取引先から「なぜこの価格なのか」と問われたとき、根拠を持って答えられる企業が交渉を有利に進められます。

この「根拠」を提供してくれるのが、原価管理です。

(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」価格転嫁の状況(原価の把握状況別)

(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」価格転嫁の状況(原価の把握状況別)

引用:中小企業庁|中小企業白書2026「第2部第2章 中小企業の「稼ぐ力」の強化に向けた取組〈第2-2-33図〉」

原価管理を詳細に行う事業者ほど価格転嫁率が高くなる傾向が、白書のデータで示されています。「このコストがかかっているから、この価格でないと受けられない」と言える企業こそが、交渉を有利に進められるのです。

3.原価管理がもたらす3つの効果
「稼ぐ力」を生む現場への浸透

中小企業白書2026は、原価管理に取り組んでいる事業者が実際に得た効果もまとめています。その結果、最も多かったのが「価格設定の最適化」、次いで「予算管理の精度向上」、そして「従業員のコスト意識向上」と続いています。

①原価管理で得られた効果
(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」原価管理によって得られた効果

(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」原価管理によって得られた効果

引用:中小企業庁|中小企業白書2026「第2部第2章 中小企業の「稼ぐ力」の強化に向けた取組〈第2-2-38図〉」

原価管理は単なる「コスト計算」ではありません。価格交渉の根拠をつくり、予算管理の精度を高め、現場のコスト意識まで変えていく——経営全体に波及する取り組みなのです。
さらに注目すべきは、原価管理データをどこまで社内に浸透させているかによって、価格転嫁率にも差が出るというデータです。

②原価管理データ活用の社内浸透度別「価格転嫁の状況」
白書によれば、原価管理データを現場担当者まで共有・活用している事業者は、経営者だけにとどめている事業者と比較して、価格転嫁率が高い傾向にあることが示されています。「経営者だけが知っている原価」ではなく、「現場が使いこなす原価」こそが、企業の稼ぐ力を高めるのです。

(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」価格転嫁の状況(原価管理データ活用の社内浸透度別)

(株)帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」価格転嫁の状況

引用:中小企業庁|中小企業白書2026「第2部第2章 中小企業の「稼ぐ力」の強化に向けた取組〈第2-2-37図〉」

4.原価が見えた瞬間、会社が変わる——
ある製造業の事例

ここでは、当社が支援させていただいた実際の事例をご紹介します。大阪府で産業用機械刃物を製造するニッパテック株式会社(1921年創業、従業員50名)です。

同社は長年の製造技術を強みにする一方で、業務の属人化とコスト把握の難しさを課題としていました。デジタル化による経営革新を決断し、生産管理システム「TECHS-BK」とIT経営コンサルティングを導入。川嵜専務が語る狙いは「製造工程の見える化と納期短縮」「正確な原価の把握」「業務フローや役割分担の再構築」の3つです。

しかし、15年使い続けた旧システムへの強い社内抵抗——「旧システムの呪縛」が立ちはだかりました。「実績入力をやったからって製品が出来上がるの?」という現場の声が象徴するように、新習慣の定着が最初の壁でした。
乗り越えたのは繰り返しの対話でした。原価会議を定期開催し「実績を取るのも一つの仕事」という認識を浸透させると、データから「同じ形状でも加工の順番を変えることで時間を短縮できる」という現場発の知見が生まれ、改善文化が根づいていきました。

結果として、作業時間は最大20%短縮、納期は前年比で約25%短縮に成功。そして1921年の創業以来100年の歴史の中で、過去最高の売上と利益を達成しました。これはまさに、白書が示す原価管理の効果〈「従業員のコスト意識向上」と「予算管理の精度向上」〉が実際に体現された姿です。原価管理は経営者だけの仕事ではなく、現場を巻き込んだ改善文化を生む取り組みなのです。
※肩書はインタビュー当時のものです。

原価会議の様子

事例の詳細およびインタビュー動画をみる

5.生産管理システムの活用が原価管理を加速させる

「原価管理の重要性はわかった。でも、具体的にどうやって進めればいいのか?」
こうした声に対して、当社がご提案しているのが、生産管理システム(『TECHS』シリーズ)の活用です。

手作業やExcelでは転記ミスやタイムラグが生じ、月末になってようやく「先月の実績」がわかる状況では経営判断が遅れてしまいます。『TECHS』のような生産管理システムを活用すると、次のことが実現できます。

💡製品ごとの実際原価の自動集計

材料費・工数・外注費を製品・案件単位でリアルタイムに集計

💡見積もりと実績の比較

「想定した原価」と「実際にかかった原価」のズレを即座に確認

💡時間チャージを活用した製品別原価の把握

あらかじめ設定した時間チャージと実績工数をもとに、製品・工程ごとの原価を可視化

💡データの一元管理

営業・製造・経理が同じデータを共有し、組織全体の情報共有が可能に

ただし、システムは「入れて終わり」では効果は出ません。現場に定着させ、データを経営判断に活かす使いこなす段階まで到達してはじめて、真の原価管理が実現します。

6.まとめ

2026年版中小企業白書が示したメッセージは明確です。「現状維持は最大のリスク」——経営環境の転換期において、何もしないことが最大の経営リスクです。
特に中小製造業の経営者様に今すぐ取り組んでいただきたいのが「原価管理」です。

原価を正確に把握することで、価格交渉に根拠が生まれる
✅ 価格転嫁が実現し、付加価値額が増加する
✅ 利益が残り、賃上げ・設備投資・人材育成の原資が確保できる
✅ 数字が見える文化が現場の意識を変え、組織が強くなる

「あなたの会社は、自社製品の原価を正確に把握できていますか?」
もしこの問いに自信を持って答えられないとしたら、それが変革の出発点です。当社のIT経営コンサルティングでは、TECHSを活用した原価管理の仕組みの構築から、現場への定着支援まで、経営者様に伴走しながらご支援いたします。まずはお気軽に無料相談をご活用ください。

IT経営コンサルティング

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