KPIを増やすほど“何をすべきか分からなくなる”――工場改善の落とし穴
著者:ものづくりコラム運営
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工場の改善を進めようとすると、ついKPI(重要業績指標)を増やしたくなります。しかし実際には、KPIを増やすほど現場は“肝心なことが見えなくなる”という現象が起きます。
数字は増えたのに改善が進まない――その原因こそが、今回のテーマです。
本コラムでは、
「なぜKPIが多いほど工場は動かなくなるのか?」「どう絞れば行動につながるKPIになるのか?」を、5分程で読める形でまとめました。
1.KPIが多いと“優先順位”が消える
まず、KPI過多によって現場に何が起きるのかを整理します。
KPIとは、目標を達成するために“どれくらい進んでいるか”を数字で確認するための指標のことです。
工場には品質、納期、生産性、安全、コスト、在庫、設備稼働率…“見える化のため”にさまざまなKPIが設定されています。
しかし、指標が10個・20個と増えていくほど…
🗨️結局どこに注力すべきかわからない
🗨️報告資料づくりばかり増える
🗨️会議が数字の読み合わせで終わる
🗨️現場が「何を改善すればよいか」判断できない
という状態に陥りやすくなります。
KPIは「増やした瞬間に価値が上がる」ものではなく、「数が増えると優先順位がぼやける」道具なのです。
【関連コラム①】:製造業でのKPI設定とは?製造現場で必要な負荷(現場・現状)の把握について
【関連コラム②】:マンガで解説!数字だらけのKPI設定も、もう怖くない!
2.KPIは“3つの問い”で絞れるKPIは“3つの問い”で絞れる
「減らす」ではなく「選ぶ」。そのための判断基準を明確にします。KPIを絞る際は、次の “3つの問い” に答えられるかが重要です。
- Q1:経営の目的に直結しているか?
- その指標が改善されると、利益・顧客価値・納期安定に貢献するか。
- Q2:現場の行動が変わるか?
- 数字を見たとき、「では何をするか」がすぐに判断できるか。
- Q3:誰が見ても同じ意味で理解できるか?
- 定義が曖昧な指標は、会議で必ず解釈が分かれる。
この3つの問いを満たす指標だけを残すと、“見るとすぐ行動につながるKPI” に生まれ変わります。
逆に、この条件を満たさないKPIはいくら増やしても改善にはつながりません。
3.よくあるKPIのつまずきとその対処法
多くの工場で共通する「KPIが使われなくなる原因」を、具体的な対処法とセットで紹介します。
- 🔎結果指標だけで、原因が見えない
- 例:不良率・納期遵守率・生産性
→ 「悪い」はわかるが「なぜ」がわからない
対策: 工程内不良や前工程遅れ数など、“原因に近い指標”を追加する - 🔎指標の定義がバラバラで比較できない
- 例:稼働率の計算式が部署ごとに異なる
対策: 計算式・集計ルールを一本化する - 🔎調べるのが大変で“資料づくりのためのKPI”になる
- Excel集計が多く、改善活動の時間が削られる
対策: 必要度の見直し+可能なものは自動収集へ - 🔎目的が薄く、“見ているだけ”の数字が増える
- 例:毎日チェックする必要のない指標をルーティン化
対策: 目的が曖昧な指標は思い切って使用頻度を下げるか削除する
KPIが“改善の道具”ではなく“管理のノルマ”になった瞬間、現場は数字を追いかけるだけで動けなくなります。
4.KPIを5分で整理するミニワーク
ここでは、すぐに実践できる、紙1枚でできる簡単なKPI棚卸しとして、KPIの“断捨離”ワークをご紹介します。
| 【Check】 ✅ いま運用しているKPIをすべて書き出す ✅「見ても行動が変わらない指標」に×をつける ✅ 品質/納期/生産性の3グループに仕分ける ✅ 目的が重複している項目を統合する ✅ “経営に効くKPI”を3〜5個だけ残す |
これを1回行うだけで、「なぜこの数字を見るのか?」が明確になり、現場と管理層の視点が揃います。
5.KPIを絞ると工場はどう変わるか
最後に、KPIを整理した工場で実際に起きる変化をまとめます。KPIを減らすと、次のような変化が生まれます。
| 💡会議が短くなる(読み合わせが消える) 💡“今日取り組むべきこと”が明確になる 💡現場の改善スピードが上がる 💡指標を追うのではなく“改善に向けた行動”が増える 💡経営層と現場の優先順位が一致する |
つまり、
KPIの数を減らすことは、工場の判断力を取り戻すことに直結します。
6.まとめ:KPIは“少なく、深く”が最も機能する
KPIは多ければ良いものではありません。
最も機能するのは、「数は少なく、現場が行動につながる指標」だけが残った状態です。
あなたの工場のKPIは、“見るだけの数字”になっていませんか?
次の会議で、ぜひ “指標の断捨離” から始めてみてください。















