価格転嫁の根拠、どう準備する?埼玉県の無料ツールを活用しよう

著者:荒井 哲(アライ サトシ) 価格転嫁の根拠、どう準備する?埼玉県の無料ツールを活用しよう
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荒井 哲(アライ サトシ) IT経営事業部

中小企業診断士、ITコーディネータ
大阪大学工学部機械工学科卒業
ITCカンファレンス2024 優秀コンサル賞

「システムは動いている。でも、利益が出ているかどうかわからない」 そんな言葉を、現場で何度も聞いてきました。
私達が行うコンサルティングは、財務諸表を5期分さかのぼることから始まります。数字の変化を丁寧に読み解き、経営の「癖」と「課題」を明らかにする。その上で、生産管理システム(TECHS)のデータベースを分析し、時間チャージの計算・見積への価格転嫁・原価会議の運営と月次支援まで、現場が自走できる仕組みをともに作っていきます。
原価教育の座学では、自社の数字を使って工業簿記の考え方をお伝えします。「知識」ではなく「自分ごと」として原価を捉えてもらうことが、体質改善の近道だと考えているからです。

「値上げしたいけど、根拠が出せない」

私は、テクノアの中小企業診断士として、 生産管理システムを導入した中小製造業の皆様に対して、『IT経営コンサルティング』を提供しています。
現場では、「材料費が上がっているのに、なかなか価格に転嫁できない」という悩みを、いまも多くの経営者から聞きます。

コスト上昇の中で利益を守るには、「価格転嫁」は避けて通れない経営課題です。しかし、取引先に値上げを申し入れるには、感覚や口頭だけでは通用しません。客観的なデータに基づいた根拠資料が必要です。

材料費や外注費であれば、仕入伝票や発注履歴から変動を説明しやすいのですが、困るのは人件費・水道光熱費・配送費といった間接的なコストです。「何パーセント上がった」と示す公的データをどこから持ってくればいいのか、わからない方も多いのではないでしょうか。

1.埼玉県が開発した「価格交渉支援ツール」

埼玉県の「価格交渉支援ツール」とは?

そこでご紹介したいのが、埼玉県が令和5年2月に全国で初めて開発・公開した「価格交渉支援ツール」です。

【ものづくりコラム】価格交渉イメージ

このツールは1,400品目以上の原材料やサービスの幅広いデータを収録しており、毎月の日本銀行の発表に合わせて県がデータを更新しています。ツールを使うことで、企業間で取引される様々な原材料やサービスの価格について自由に選択し、価格の推移をグラフ化した資料を簡単に作成できます。

データの根拠も信頼性が高く、以下の公的統計が使われています。

国内企業物価指数・輸入物価指数・企業向けサービス価格指数(日本銀行調査統計局)
外国為替相場状況(日本銀行)
毎月勤労統計調査(厚生労働省)

特に注目すべきは、人件費のデータも含まれている点です。「人件費が上がっているから価格転嫁したい」という場合にも、公的統計に基づいた根拠資料として活用できます。

※2025年2月には労務費データ(業種別現金給与総額、都道府県別最低賃金、男女間賃金格差)の分析機能が追加されています。最新の情報は埼玉県公式ホームページでご確認ください。
参考:埼玉県公式ホームページ|価格交渉支援ツールをリニューアル-労務費データを拡充し、労務費の価格転嫁を強化!

全国知事会「優秀政策」に選定

このツールの価値は埼玉県だけにとどまりません。全国知事会の「先進政策バンク」に登録され、令和6年度のデジタル部門の優秀政策として選定されました。その後、全国へ展開が呼びかけられており、現在では多くの自治体ホームページでも紹介されています。

「一地方のツール」ではなく、全国が認めた価格交渉の公式エビデンスツールとして、あらゆる地域の中小企業に活用してほしいと思います。

もう一本の柱 ― 「収支計画シミュレーター」

埼玉県はもう一つのツールも提供しています。「収支計画シミュレーター」は、価格転嫁の有無が今後の企業収益に与える影響をシミュレーションできるツールです。

「値上げしなかったらどうなるか」を数字で見える化できるため、社内の意思決定にも、取引先との交渉にも活用できます。一般的な表計算ソフトで動作するため、経営者自ら操作・分析することも可能です。

どちらのツールも無料でダウンロードでき、埼玉県外の企業でも利用できます。

▶ 埼玉県公式ホームページ:彩の国 埼玉県|価格交渉に役立つ各種支援ツール

2.価格転嫁は「経営者の意思決定」 ― データが背中を押す

私がコンサルティングの現場でよく感じるのは、「値上げしなければならないとわかっていても、一歩が踏み出せない」という経営者の心理的な壁です。

長年の取引先に値上げを求めることは、関係性への配慮から躊躇してしまうものです。しかしその結果として、気づいた時には赤字体質が定着してしまっている――そんなケースを現場で何度も見てきました。

だからこそ、“感情”ではなく”データ”で話すことが大切です。「日本銀行・厚生労働省のデータによると、この2年でエネルギー費・人件費は〇〇%上昇しています。これは当社だけでなく、業界全体の話です」と伝えることができれば、取引先も納得感を持って交渉のテーブルに着いてくれます。

3.まとめ ― 今日から使えるアクション

価格転嫁の準備は、「来期から」「落ち着いたら」では手遅れになります。月次のコスト変動を定期的に可視化する習慣を今から始めることが、利益体質の会社をつくる第一歩です。

✅ まず埼玉県の価格交渉支援ツールをダウンロードしてみる
✅ 自社に関係する品目(鋼材・電力・人件費など)のグラフを出力してみる
✅ 収支計画シミュレーターで「転嫁しなかった場合」のシナリオを確認する
✅ 根拠資料を作成し、次の交渉に備える

ツールは無料、操作はExcel。ハードルは低いはずです。ぜひ今日から行動してみてください。

4.「データは揃った。でも、次に何をすればいい?」とお悩みの方へ

価格転嫁ツールで根拠資料は作れます。しかし、利益体質の会社に変わるためには、その先の仕組みづくりが重要です。

「どんぶり勘定から抜け出せない」
「赤字案件がどれかわからない」
「システムはあるのに、経営に使えていない」

そのようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ株式会社テクノアのIT経営コンサルティングにご相談ください。まずは現状のヒアリングから始め、次の一手を一緒に考えます。

📩 【お問い合わせ・ご相談はテクノア公式ホームページから】
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