OJTの難しさとは?配属後「部署任せ」育成の限界

著者:ものづくりコラム運営 OJTの難しさとは?配属後「部署任せ」育成の限界
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OJT(On the Job Training)とは、実際の業務を通じて仕事を学ぶ、日本企業で長く使われてきた人材育成の方法です。多くの企業では、配属後に先輩や上司のもとで仕事を覚えることが当たり前とされてきました。

しかし近年、「部署によって成長に差が出る」「OJTだけでは人が育たない」といった課題が目立つようになっています。それはOJTそのものが悪いからではなく、育成が配属先や個人任せになり、会社全体の視点で設計されていないことに原因があります。

本コラムでは、「そもそもOJTとは何か」を整理したうえで、なぜOJT偏重・部署任せの育成が限界を迎えているのか、そして今、企業に求められている会社全体で人を育てる視点について解説します。

1.そもそもOJTとは何か?

OJTとは On the Job Training の略で、
実際の業務を行いながら、先輩や上司から仕事を学ぶ育成方法です。

日本企業では長く主流の育成手法として使われてきました。
配属された部署で仕事を覚え、少しずつできることを増やしていく。
多くの人にとって、最も身近な「仕事の学び方」ではないでしょうか。

座学では身につきにくい現場感覚や判断力を養える点は、今でもOJTの大きな強みです。

2.なぜOJTは広く使われてきたのか?

OJTが日本企業に広く定着した背景には、当時の業務環境との強い相性がありました。

✅業務内容が比較的安定していた

かつては、業務内容や取引の流れが比較的安定しており、「仕事のやり方」や「判断の基準」が大きく変わらない時代でした。そのため、一度身につけたノウハウを長く使い続けることができました。

✅ベテランが長く同じ現場にいた

また、ベテラン社員が同じ現場に長く在籍しているケースも多く、経験や暗黙知が現場に蓄積されやすい環境でもありました。
新人や若手は、そうした先輩の仕事ぶりを間近で見ながら学ぶことで、自然と仕事の進め方や考え方を吸収することができたのです。

✅人の入れ替わりが少なかった

人の入れ替わりが少なかったことも、OJTが機能した大きな要因です。
時間をかけて育てても、その人が長く組織に残る前提があったため、「現場で少しずつ育てる」ことが合理的な投資として成立していました。

このように、
安定した業務・固定された人材・長期雇用という条件がそろっていたからこそ、「先輩の仕事を見て覚える」OJTは、最も効率的で現実的な育成方法だったのです。

さらに、教育専用の時間やコストを大きく割かずに、日々の業務を進めながら人を育てられる点も、企業にとって大きなメリットでした。
結果として、OJTは「特別な制度」ではなく、人材育成の前提として当たり前の方法として定着していきました。

3.OJTは悪くない。でも「それだけ」では足りない

誤解されがちですが、OJTそのものが悪いわけではありません。
実務を通じて学ぶことは、今でも人材育成に欠かせない要素です。

しかし近年、OJT「だけ」に頼る育成は、次第に限界を迎えています。

業務の高度化・専門化が進み、
背景知識や全体構造を理解しなければ判断できない場面が増えました。
その結果、「見て覚える」「やりながら慣れる」だけでは、
なぜそうするのかを理解しきれないケースが増えています。

OJTは有効な手段ではあるものの、
それ単体で人を育てきれる時代ではなくなっているのです。

OJTを補うための仕組みも存在する

実際には、OJTを補完するために
次のような仕組みを取り入れている企業もあります。

仕組み・制度 補足説明
メンター制度 他部署や上司とは別の先輩が、仕事や不安をフォローする仕組み
💡上司とは別の立場で相談できる存在を置くことで、業務外の不安やつまずきを早期に拾える
バディ・教育担当制度 年齢や立場が近い先輩が、日常の質問役になる制度
教育担当ローテーション 特定の人にOJTが属人化せず、教える側のスキル標準化にもつながる
定期的な1on1 仕事の進み具合や「つまずき」を言葉にする時間
💡作業進捗ではなく、理解度・不安・成長実感を確認する場として機能させる
振り返りミーティング 経験を共有し、学びをチームに残す場
業務の見える化 手順や判断基準を共有し、教え方の差を減らす工夫
💡「聞かないと分からない状態」を減らし、自己解決できる環境をつくる
他部署との接点 自分の仕事が会社全体でどうつながるかを知る機会

これらに共通しているのは、
育成を「個人の善意」ではなく「仕組み」で支えるという考え方です。

4.OJTが「部署任せ」になると何が起きるのか

なぜ部署任せになるのか

多くの企業では、配属と同時に育成の責任が現場に委ねられます。
育成方針や到達目標が会社全体で共有されていない場合、
「教えられる人が、教えられる範囲で教える」形になりがちです。

OJTが当たり前であるがゆえに、
育成を設計するという発想自体が後回しにされてしまいます。

どんなズレが起きるのか

部署任せのOJTでは、
目の前の業務には詳しくなる一方で、視野が狭くなりやすくなります。

📌自分の仕事が会社全体でどう役立っているのか分からない
📌他部署の役割や事情が見えない
📌目標やKGIよりも、作業の正確さだけが評価軸になる

本人は努力していても、
成長している実感を持ちにくくなるのが特徴です。

会社全体では何が起きているのか

会社全体で見ると、部署ごとに考え方や判断基準が分断されていきます。

その結果、
部分最適は進むものの、部門間の連携は弱まり、
組織全体としての生産性や柔軟性が下がっていきます。

これは個人の問題ではなく、
育成の設計が部署単位に閉じていることによる組織課題です。

5.「育たない」の正体は誰のせい?

人が育たないとき、
つい「本人の努力不足」や「意欲の問題」と捉えられがちです。

しかし多くの場合、問題は個人ではありません。
見える範囲や学べる範囲が限られていれば、
どれだけ努力しても成長の角度は上がりにくくなります。

たとえば、
「目の前の仕事を覚えること」だけが求められる環境では、
その仕事が会社全体の中でどんな意味を持つのかを考える機会がありません。
結果として、言われたことはこなせても、
自分で考えて動く力は育ちにくくなります。

これは本人の資質の問題ではなく、
育成の前提条件がそろっていない状態だと言えます。

育たない原因は、
人ではなく、育成の仕組みと視点にあります。

【Point】「育たない」は個人評価ではなく、育成設計のサイン📌見える業務範囲が狭いと、成長の方向性も限定される
📌ゴールや全体像が共有されていないと、努力が成果につながりにくい
📌OJTが「作業習得」で止まると、思考力は育たない
——-
人が育たないのは、
やる気がないからでも、能力が足りないからでもなく、
育つための前提が設計されていないだけの場合が多いのです。だからこそ必要なのは、「誰が悪いか」を探すことではなく、
どうすれば育つ環境になるのかを会社全体で考える視点です。

6.これから必要な「会社全体で育てる視点」

OJTは、これからも重要な育成手法であることに変わりはありません。
実務を通じて学ぶことは、仕事の理解や定着において欠かせないからです。

ただし今後は、
OJTを「現場に任せきりの育成」ではなく、
会社全体の設計の中に位置づける視点が求められます。

育成がうまくいっている企業では、現場任せ全社設計の役割が、明確に分かれています。

現場で育てるOJT
→実務を通じて、スキルや判断力を磨く

方向性を示し、つなぐ会社の役割
→育成のゴールや考え方を共有し、部門を越えて成長を支える

この二つが分断されていると、
現場では「何をどこまで育てればいいのか」が見えず、
本人も「自分がどこに向かっているのか」をつかめません。

逆に、会社全体で育成の視点が共有されていれば、
OJTは単なる作業習得ではなく、
成長の意味が見える学びの場へと変わります。


まとめ:OJTを「仕組みの一部」として機能させる

✅OJTは「育成のすべて」ではなく「育成の一部」
✅会社が育成の方向性を示すことで、現場のOJTが活きる
✅個人の成長と、組織の成長がつながりやすくなる

これからの人材育成に必要なのは、
誰か一人が頑張る仕組みではなく、
成長が自然に連鎖する設計です。


次回は、この考え方をさらに一歩進め、
学び直し(リスキリング)は、なぜ個人任せではうまくいかないのか
というテーマで、育成を“チーム戦”として捉える視点を掘り下げていきます。

OJTの限界を理解した先に、
次の一手として何が必要なのか。
そのヒントを整理していきます。

           

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