リスキリングは個人任せではなく「チーム戦」
著者:ものづくりコラム運営
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リスキリングとは、変化し続ける環境に対応するために、個人と組織が新しいスキルや考え方を学び直すことです。
そして結論から言えば、リスキリングは「個人任せ」では成功せず、会社全体で設計する“チーム戦”にして初めて成果につながります。
本コラムでは、
なぜリスキリングが個人任せになりやすいのか、
なぜそれでは成果が出にくいのか、
そして会社としてどんな視点でリスキリングを捉え直すべきかを整理します。
1.そもそもリスキリングとは何か。なぜ今、必要なのか
「リスキリング」と聞くと、どこか意識が高い人向けの言葉に感じるかもしれません。勉強熱心な人や、キャリアを強く意識している人がやるもの。
自分には関係ない話だ、と感じる方も少なくないでしょう。
実際の現場では、
「忙しくてそれどころじゃない」
「今の仕事で手一杯」
「必要ならその都度覚えればいい」
そんな声のほうが、ずっと現実的です。
しかし、ここで言うリスキリングは、特別な人が、特別な勉強をすることではありません。
リスキリングとは?
リスキリングとは、環境や仕事の変化に対応するために、新しいスキルや考え方を学び直すことです。
単なる勉強や資格取得ではなく、「これからも仕事として価値を出し続けるための再設計」と言い換えることもできます。
近年、リスキリングが強く求められるようになった背景には、
働く環境そのものの大きな変化があります。
業務は細分化・高度化し、
デジタル化やデータ活用は一部の専門職だけのものではなくなりました。
製造業であっても、
生産管理、工程改善、原価管理、顧客対応など、
複数の視点を行き来しながら判断する力が求められています。
つまり、
「一度身につけたスキルだけで通用する時代ではなくなった」
これが、リスキリングが注目されている最大の理由です。
しかしここで、ひとつ大きな誤解があります。
それは、リスキリングを「個人が自発的に頑張るもの」と捉えてしまうことです。
確かに、学ぶ主体は個人です。
けれど、
・何を学ぶべきか
・どこで使うのか
・どんな成果を期待されているのか
が見えない状態で、学び続けることは現実的ではありません。
リスキリングが必要とされているのは、
個人の能力不足が原因ではなく、
仕事と学びの前提条件が変わったからです。
この変化に対して、
「各自で何とかしてほしい」という姿勢のままでは、
リスキリングは掛け声倒れに終わります。
ここから先で見ていくのは、
なぜリスキリングが個人任せになりやすいのか、
そして、成果を出している会社は何を変えているのか、という点です。
「リスキリングしろ」と言われても、現場は動けない
本を読め。
勉強しろ。
自己投資しろ。
リスキリングという言葉が広まるにつれ、こうしたメッセージは多くの企業で当たり前のように使われるようになりました。
しかし現実には、
日々の業務に追われる中で学習時間を確保するのは簡単ではありません。
「必要なのは分かっているけれど、今は余裕がない」
多くの現場が、そう感じています。
ここに、リスキリングが形骸化する最初のズレがあります。
2.なぜリスキリングは「個人任せ」になりがちなのか
リスキリングがうまく進まない背景には、企業側の“無意識の前提”があります。
成長=自己責任という空気
多くの企業で、リスキリングは「必要だから、各自でやっておいてほしいもの」として扱われがちです。
・「成長意欲のある人が学ぶもの」
・「やる気があれば勝手に伸びる」
そんな空気があると、学びは個人に委ねられていきます。また、リスキリングが日々の業務とは別物として認識されていることがあります。
学ぶ時間は業務外という前提
業務時間=成果を出す時間
学習時間=個人の努力
と切り分けてしまうと、学びはどうしても後回しになります。
成果はすぐ求められる
学びは本来、時間をかけて効いてくるものです。
しかし短期的な成果ばかりを求めると、
リスキリングは「コスパが悪いもの」と見なされがちになります。
会社が求めることとは?
また、何をどこまで学べばいいのかが明確でないケースも少なくありません。
「とりあえず勉強しておいて」と言われても、
仕事とのつながりが見えなければ、方向を見失ってしまいます。
結果として、
・時間に余裕のある人
・もともと学習意欲の高い人
だけが動き、
そうでない人は取り残されていきます。これは個人の問題ではなく、設計の問題です。
リスキリングが個人任せになってしまうのは、
会社として
「学びをどう業務につなげるのか」
「どんな状態を目指しているのか」
が共有されていないからです。
3.個人任せリスキリングの限界
仮に、個人が努力して学び続けたとしても、それだけで組織の力が高まるとは限りません。
個人任せのリスキリングには、いくつかの限界があります。
「やる人」と「やらない人」の二極化が進む
個人任せのリスキリングでは、
どうしても次のような差が生まれます。
●もともと学ぶ意欲が高い人は、さらに成長する
●忙しさや目的が見えない人は、置いていかれる
結果として、
一部の人だけに負荷と期待が集中する状態になります。
これは「意識の差」ではなく、
仕組みとして差が拡大する構造です。
学んでも「使われない」経験が、学習意欲を削ぐ
個人で学んだスキルが、
⚠️現場で使う機会がない
⚠️周囲が理解していない
⚠️評価や成果につながらない
こうした状態が続くと、
人は「学んでも意味がない」と感じ始めます。
これは能力不足ではなく、
学びと業務が接続されていないことが原因です。
個人の頑張りに依存する組織は、再現性がない
個人任せのリスキリングは、
・成果が人に紐づく
・仕組みとして残らない
・人が変わると、ゼロに戻る
という弱点を持っています。
組織としての学習が蓄積されない以上、
長期的に見れば、成長は頭打ちになります。
さらに、個人の成長が評価や成果に結びつかないと、学び続けるモチベーションも維持しにくくなります。
個人任せのリスキリングは、一部の人の成長で止まり、組織の変化につながらないのです。
結果として、
努力した人の中の一部(2割程度)しか成果を実感できない
そんな構造が生まれてしまいます。
4.成果が出るのは「チーム戦」のリスキリング
一方で、リスキリングをチーム戦として捉えている会社では、学びが組織の力に変わっていきます。
共通言語がないと、学びは共有できない
まず必要なのは、共通言語です。
共通言語とは、専門用語を覚えることではありません。
✅「何を大事にしているのか」
✅「何を基準に判断するのか」
といった、考え方や前提の共有を指します。
たとえば、
同じ「改善」という言葉でも、
・コスト削減の話なのか
・リードタイム短縮なのか
・品質安定の話なのか
が人によって違えば、会話はかみ合いません。
共通言語がない状態では、
個人がどれだけ学んでも、
その学びは他人に伝わらず、チームに広がりません。
学びをチームに広げるための最初の条件が、共通言語です。
共通言語があるから、目線がそろう
共通言語がそろうと、次に起きるのが目線の統一です。
目線とは、
✅どこをゴールとしているのか
✅何を優先すべきなのか
という判断軸のことです。
個人任せのリスキリングでは、
「自分に必要だと思うこと」を各自が学びます。
その結果、
知識やスキルの方向がバラバラになりがちです。
一方で、共通言語があれば、
✅「この学びは、どの業務につながるのか」
✅「チームとして、どこを強くしたいのか」
を同じ前提で考えられます。
学びの方向がそろうことで、初めて“チームの成長”になります。
目線がそろうと、学びが循環し始める
目線がそろったチームでは、学びは個人で完結しません。
| 🔄学んだことを現場で試す 🔄うまくいった点、いかなかった点を共有する 🔄次に活かす |
このサイクルが自然に回り始めます。
これが、学びの循環です。
誰か一人の成功や失敗が、
チーム全体の知見として蓄積されるため、
学びのスピードも質も上がっていきます。
結果として、
個人の成長がチームの成果につながり、
チームの成果が、また個人の成長を後押しします。
リスキリングが「チーム戦」になる瞬間です。
5.チームで学ぶと、個人も育つ
リスキリングを「チーム戦」として設計すると、最初に変わるのは個人の成長スピードです。
チームで学ぶ環境では、
✅学んだことを共有する前提がある
✅周囲も同じ方向を向いている
✅話が通じる相手がいる
こうした状態が生まれます。
その結果、
学びは「自分のため」だけで終わらず、
仕事の中で使われ、反応が返ってくるものになります。
変化①学びが「成果」に結びつく
個人で学ぶ場合、
「これで合っているのか?」
「本当に役に立っているのか?」
が分かりにくくなりがちです。
一方、チームで学んでいると、
💡学んだことを試す場がある
💡周囲からフィードバックが返ってくる
💡改善のスピードが上がる
学びが仕事の成果と直結しやすくなります。
変化②成長が「実感」できる
人は、「成長している」と実感できたときに、
学びを前向きに続けられます。
チーム戦のリスキリングでは、
💡チームの成果が見える
💡自分の学びが役立ったと分かる
💡「必要とされている」感覚が生まれる
これが、個人のモチベーションを自然に引き上げます。
変化③「頑張る人」だけに負荷が集中しない
個人任せの学習では、
どうしても一部の人に期待が集中します。
しかし、チームで学ぶ前提があれば、
💡学びが分散される
💡知識が共有される
💡特定の人への依存が減る
結果として、組織として安定した成長が可能になります。
6.会社として考えるべき「共通言語」と「ベーススキル」
チームでリスキリングを機能させるために、会社として欠かせない視点があります。
それが、
共通言語とベーススキルです。
なぜ「共通言語」が必要なのか
同じ言葉を使っていても、
人によって意味の捉え方が違うことは珍しくありません。
| 🔍改善 🔍効率化 🔍データ 🔍属人化 |
これらがバラバラに理解されていると、学びは共有されず、議論も噛み合いません。
共通言語とは、
考え方や判断の前提をそろえることです。
これがあることで、
✅話が早くなる
✅認識のズレが減る
✅学びがチーム全体に広がる
といった状態が生まれます。
ベーススキルは「全員が立つ土台」
リスキリングというと、高度な専門スキルを思い浮かべがちですが、
その前にそろえるべきものがあります。
それが、ベーススキルです。
たとえば、
✅業務の全体像を理解する力
✅情報を整理し、共有する力
✅データや数字を読み取る力
これらは、
職種や経験を問わず、
チームとして仕事を進めるための共通の土台になります。
会社の役割は「学ばせる」ことではない
会社がやるべきなのは、
個人に勉強を強制することではありません。
| 💡何を共通で身につけるのかを示す 💡学びが活きる場を設計する 💡学びが共有される流れをつくる |
この設計があることで、
リスキリングは個人任せではなく、
組織の力として積み上がっていきます。
7.まとめ|チームで学ぶ前提での「リスキリング」
リスキリングは、意識の高い一部の人だけが取り組むものではありません。
個人に任せきりにした学びは、
続かず、広がらず、組織の力にもなりにくい。
だからこそ必要なのは、
「チームで学ぶ」前提と、会社としての設計です。
共通言語をそろえ、
全員が立つベーススキルを整えることで、
学びは個人の努力ではなく、組織の力として積み上がります。
人は、仕組みで育ちます。
リスキリングもまた、
個人戦ではなく、チーム戦で考えるべきテーマなのです。














