産業競争力強化法とは? なぜ今、国は企業の投資を後押ししているのか
著者:ものづくりコラム運営
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産業競争力強化法とは、企業の投資や新事業への挑戦を後押しし、日本経済全体の成長力を高めることを目的とした法律です。
この法律は2014年に施行されて以降、経済環境や社会情勢の変化に応じて、段階的に改正が重ねられてきました。直近では、国内投資の促進や新たな事業の創出を強く意識した内容へと制度が見直されています。
一見すると、産業競争力強化法は大企業や成長産業を対象とした政策のように感じられるかもしれません。しかし実際には、設備投資や人材育成、新規事業への取り組みなど、多くの中小企業が日常的に直面している経営判断と深く関係しています。
なぜ今、国は企業の「投資」をこれほど重視しているのでしょうか。
なぜ「産業競争力」という言葉が、あらためて政策の中心に据えられているのでしょうか。
本コラムでは、産業競争力強化法の基本的な考え方から、これまでの改正、最新の改正内容、そして今後の改正の見通しまでを整理しながら、中小企業や製造業にとってどのような意味を持つのかを分かりやすく解説します。
1.産業競争力強化法は何のために生まれたのか
産業競争力強化法の施行と制定の背景
産業競争力強化法は、2014年1月に施行された法律です。
制定の背景には、日本経済が長期間にわたって低成長に悩まされ、企業の投資意欲が伸び悩んでいたという事情があります。
企業が新しい設備や技術、人材に投資しなければ、生産性は向上しません。生産性が伸びなければ賃金も上がりにくくなり、消費の拡大も期待しづらくなります。こうした状況が続くことで、経済全体が停滞するという悪循環が生まれていました。
この悪循環を断ち切るために、「企業が前向きに挑戦できる環境を制度面から支える」ことを目的として整備されたのが、産業競争力強化法です。
産業競争力強化法が目指す「競争力」の考え方
ここでいう「競争力」とは、単に価格が安いことや企業規模が大きいことを指すものではありません。
技術力や開発力、変化に対応する柔軟性、人材を生かす力など、企業が持つ総合的な強さを高めていくことが、この法律の基本的な考え方です。
経済産業省の整理では、産業競争力強化法は
「企業の新陳代謝を促し、付加価値の高い事業活動が生まれ続ける環境をつくる」
ことを狙いとしています。
目先のコスト削減ではなく、中長期的に価値を生み出し続ける力をどう育てていくか。
その視点が、産業競争力強化法の理念の中核にあります。
成長段階に応じた支援という産業競争力強化法の特徴
産業競争力強化法の大きな特徴の一つが、企業の成長段階に応じた幅広い支援を想定している点です。
この法律は、創業期のスタートアップだけを対象としたものではありません。
事業を立ち上げたばかりの段階から、成長期、成熟期、さらには事業の見直しや再構築が求められる局面まで、さまざまなフェーズにある企業の挑戦を支える仕組みが組み込まれています。
具体的には
◍新規事業や新技術に挑戦する企業への規制・制度面での支援
◍事業再編や企業間連携(M&A・事業統合等)を進めるための計画認定制度
◍スタートアップ投資や創業支援を通じた新陳代謝の促進
などが柱となっています。
「挑戦したいが、制度やリスクが壁になる」
そうした状況を減らすことが、産業競争力強化法の重要な役割です。
2.これまでの改正と制度の進化
産業競争力強化法は、一度作って終わりの法律ではありません。
施行後も、経済環境や社会構造の変化に合わせて、継続的な見直しが行われてきました。
主な改正の流れ
■2018年改正
事業再編や新事業活動を後押しする制度が整理・拡充され、既存事業の見直しや事業ポートフォリオの転換を行いやすくする方向性が強まりました。
■2021年改正
「事業適応計画」の枠組みが導入され、デジタル化や脱炭素など、環境変化に対応する企業の取り組みを支援する姿勢が明確になりました。
これらに共通するのは、
「変わろうとする企業の動きを止めない」
という政策メッセージです。
直近の改正で何が変わったのか
直近では、2024年に産業競争力強化法の大きな改正が行われ、同年9月から一部が施行されています。
2024年の改正で特に重視されているのは、
💡国内投資の促進
💡新たな事業の創出
という2つのポイントです。
国際競争の激化やサプライチェーンの再構築が進む中で、
海外依存のリスクが顕在化する中で、「国内で投資し、国内で価値を生み出す企業」を増やす
という明確な方向性が示されています。
3.なぜ今「投資支援」が強化されているのか
産業競争力強化法の特徴は、補助金だけに頼らない多層的な支援にあります。
代表的な支援内容としては、
◍国の認定を受けた計画に基づく 税制優遇・金融支援
◍事業再編・新事業活動を進めるための 制度上の特例措置
◍実証実験や新ビジネスを後押しする 規制の特例・柔軟な運用
◍スタートアップや中小企業を含めた 創業・成長支援の枠組み
などが挙げられます。
単なる「補助金の申請制度」ではなく、
企業の意思決定を後押しするための制度設計
である点が、この法律の大きな特徴です。
4.なぜ今「投資支援」が強化されているのか
企業投資は、景気が良ければ自然に増えるものではありません。
将来の見通しが不透明な局面では、企業はどうしても慎重な判断を取りがちになります。
その結果、日本では「現状維持」が合理的な選択になりやすい環境が長く続いてきました。
産業競争力強化法の改正には、
📝投資しないことのリスクを下げる
📝投資することの不確実性を制度で補う
という明確な意図があります。
国が制度面から背中を押すことで、企業が次の一歩を踏み出しやすくする。
それが、近年の改正に共通する考え方です。
5.中小企業にとってのチャンスと注意点
産業競争力強化法は、大企業だけを対象とした法律ではありません。中小企業や中堅企業も重要な対象として位置づけられています。
一方で、注意すべき点もあります。
制度を活用すれば自動的に成果が出るわけではありませんし、申請や要件確認には一定の手間もかかります。
| 【💡注意ポイント】 ✅要件確認や申請に一定の手間がかかる ✅制度を使えば必ず成果が出るわけではない |
重要なのは、制度を使うこと自体を目的にしないことです。
自社の成長戦略や事業の方向性と照らし合わせながら、「自社の戦略に合っているか」という視点で判断し、「選択肢の一つ」として冷静に検討する姿勢が求められます。
6.製造業の視点で考える産業競争力
製造業における「投資」は、設備投資だけを指すものではありません。
技術の高度化、人材育成、業務プロセスの見直し、事業モデルの転換なども重要な投資です。
少子高齢化や人手不足が進む中で、「何もしないこと」、つまり、現状を維持すること自体がリスクになるケースも増えています。産業競争力強化法の改正は、こうした現実を前提に、「変わり続ける企業」を後押しする法律だと捉えることができます。
7.今後の改正の見通しと企業が意識すべきこと
政府は今後も、投資促進や成長分野支援を軸に、制度の見直しや拡充が続く可能性は高いと考えられます。
その中で企業に求められるのは
「制度が出てから考える」のではなく、
自社の将来像を整理し、その上で制度を選択肢として活用する姿勢です。
産業競争力強化法が示すメッセージ
産業競争力強化法の改正は、企業に対して「成長への挑戦は、国としても後押しする」というメッセージを発しています。
中小企業にとって、これは義務ではなく機会です。
制度そのもの以上に、背景や方向性を読み取り、自社の意思決定にどう活かすかが問われています。














