部品加工業でもサブスクモデルは可能? 利用と提供の両面から考える

著者:ものづくりコラム運営 部品加工業でもサブスクモデルは可能? 利用と提供の両面から考える
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従来の製造業では、製品を販売したら取引が終了する「モノ売り」が一般的です。しかし近年、製品そのものではなく使う価値やサービスを提供するサブスクリプション(サブスク)型のビジネスモデルが注目されています。

大手工作機械メーカーやIoT製品だけでなく、中小の部品加工業や組立装置業でも、サブスクモデルの導入は可能なのか?自社が「利用する側」として設備やツールを活用するのか、「提供する側」として顧客に価値を提供するのか、それぞれの視点から可能性やメリットを考えてみましょう。

1.はじめに|モノ売りから「利用価値提供」への転換

製品やサービスを「購入するのではなく、利用する権利に対して継続的に料金を支払う仕組み」のことを、サブスクリプション(略してサブスク)と言います。映画や音楽、生産管理システムなどのソフトウェアなどで身近になったこの仕組みですが、製造業でも少しずつ注目されています。

中小製造業の部品加工業や組立装置業では、自社の事業として「サブスク」という概念が浸透していない企業も多いのが現状です。しかし、自社の設備や加工サービスを工夫次第でサブスク型で活用したり、顧客向けに提供したりする可能性は十分にあります。従来の「製品販売」中心のビジネスから、顧客に「価値を提供し続ける」モデルへ転換することで、安定した収益や長期的な顧客関係を築くことが可能です。

本コラムでは、部品加工業でもサブスクは現実的に考えられるのかを、「利用する側」と「提供する側」の両面から解説します。

2.部品加工業がサブスクを「利用する側」の場合

部品加工業が自社の生産体制を強化するためにサブスクを活用するケースです。ここでいう「利用する側」とは、自社が設備やツール、ソフトウェアを必要に応じて借りたり、定額で活用する立場を指します。

具体的な活用例

💡CAD/CAMソフトの月額契約
高額なソフトを購入せずに月額で利用。最新機能やクラウド連携を活用することで、設計効率を大幅に向上できる。
💡加工機器や測定器のサブスクレンタル
高額な測定器やマシニングセンタを所有せず、必要な期間だけレンタル。小ロット生産や試作案件、短納期対応に柔軟に対応可能。
💡切削工具・治具の定額交換サービス
摩耗や消耗に応じて定期的に交換されるため、消耗品コストを安定化できる。現場作業者の工具管理負荷も軽減。
💡クラウド型IoTセンサー付き設備の利用
稼働データをクラウドで管理し、生産効率や加工精度の分析に活用可能。

サブスクを利用するメリット

📌初期投資リスクの低減
設備購入費用を抑えられるため、資金繰りの負担が軽減。
📌柔軟な生産体制の実現
案件や受注量に応じて必要な設備やツールを活用できる。多品種少量生産に強い体制を構築可能。
📌作業効率・品質改善への活用
IoTやクラウドデータを活用し、稼働状況や加工精度を分析。効率改善や品質向上につなげられる。
📌技術・知識の継続的な更新
ソフトウェアや設備の最新機能を利用することで、社内スキルやノウハウの更新が可能。

3.部品加工業がサブスクを「提供する側」の場合

次に、部品加工業が自社の加工サービスや設備を顧客に対して「サブスク型サービス」として提供するケースです。具体例として一部をご紹介します。

具体例

💡小ロット試作加工の月額契約サービス
顧客は毎月一定額で試作加工を依頼でき、短納期・少量生産のニーズに対応。
💡組立装置や加工装置の稼働時間課金モデル
顧客は設備を所有せず、使用時間に応じて月額課金。初期費用を抑えた導入が可能。
💡IoTデータ付き加工サービス
稼働データや加工結果を顧客に提供し、改善提案や保守サービスをセットで提供。
💡消耗品・治具込みの加工契約
工具や治具の交換も含めたサブスク契約により、顧客側の手間を減らす。

サブスクモデルを提供するメリット

✅継続収益の確保
月額契約による安定的な収益を得られるため、経営の安定化につながる。
✅顧客満足度向上
短納期・少量案件に柔軟対応でき、リピート受注や長期取引の拡大に有利。
✅データ活用によるサービス改善
顧客への加工データ提供を通じて、品質改善や効率向上に役立つ提案が可能。
✅他社との差別化
「加工サービス+付加価値」の提供により、競合他社との差別化が可能。

このように様々な活用例やメリットが見られる一方、ハードルの高さの課題もあります。次に、デメリットや注意点について紹介します。

4.サブスクモデル導入にあたっての課題と対応策

サブスク型の取り組みは魅力的ですが、特に中小の部品加工業にとっては、導入にあたっていくつかのハードルがあります。契約設計や社内体制の整備、データ管理など、準備不足では思った効果が得られない可能性もあります。
この章では、サブスクを「利用する立場」と「提供する立場」それぞれの課題と対応策を整理し、中小部品加工業が現実的に取り組むためのヒントを紹介します。事前に課題を理解しておくことで、段階的かつ現実的にサブスクを活用するためのヒントになります。

部品加工業がサブスクを「利用する立場」の課題と対応策

【課題】
①契約・料金体系の理解不足
複数プランや利用条件がある場合、どれが自社に最適かわからないことがある。

②設備やツールの運用管理
サブスクで利用する機器やソフトの管理が社内フローに組み込まれていない場合、稼働や消耗品交換が漏れることがある。

③社内スキル・知識の不足
IoT機器やクラウドサービス、ソフトウェアの操作に慣れていないと、十分に活用できない可能性がある。

【対応策】
①小規模からの試行導入
まずは1~2件の設備やソフトをサブスクで試し、費用対効果や運用手順を確認する。

②社内運用フローの整備
稼働記録や消耗品交換の管理方法を事前に定め、担当者を明確にする。

③教育・支援の活用
ソフトウェアベンダーやクラウドサービスのサポートを活用して、操作方法やデータ管理を学ぶ。

部品加工業がサブスクを「提供する立場」の課題と対応策

【課題】
①契約・料金体系の設計
・適正価格の設定が難しい
・顧客の利用頻度やボリュームに応じた柔軟性が必要

②社内体制の整備
・サービス提供に伴う稼働管理・サポート・メンテナンス・データ管理の負荷が増大
・従来の販売フローに組み込むには工夫が必要

③リスク管理
・顧客数が少ない場合、月額収益が不安定
・設備の損耗や故障によるコストが発生する可能性

④社内スキル・知識不足
・IoTやクラウド、データ分析の知識が必要
・データ活用や改善提案を行う体制が未整備の場合、サービス価値を十分に提供できない

【対応策】
①段階的・小規模導入
まずは一部設備やサービスでサブスクを試行し、顧客の反応や社内運用を検証する。

②柔軟な料金体系の設計
利用頻度や加工量に応じたプランを複数用意。試験導入期間は割引価格で提供するなど、顧客ハードルを下げる。

③社内体制の整備
サービス提供に必要な担当者、業務フロー、データ管理システムを整備。特に消耗品や稼働管理を可視化して、トラブル防止につなげる。

④社内スキル向上と外部支援の活用
IoTやデータ分析スキルを社員教育や外部サポートで補完。ベンダーのクラウドサービスや運用支援を活用することで、データ活用によるサービス価値の最大化が可能。

⑤リスク分散策の検討
複数の小規模顧客への提供から始め、設備や契約数を分散して安定収益を確保。

5.中小製造業でもサブスクが実現可能な理由

中小製造業においても、サブスク型ビジネスは十分に実現可能です。その理由を整理すると、以下のポイントが挙げられます。

[1]段階的な導入で小規模でも検証可能
サブスク化を一度に全社で行う必要はありません。まずは一部の設備やサービスで試験導入し、運用方法や顧客反応を確認することが可能です。小規模で始めることでリスクを最小限に抑え、成功事例を積み上げながら徐々に拡大できます。
[2]IoTやクラウドサービスで管理が容易
設備稼働状況や消耗品の管理、データ収集や分析には従来は手間がかかりましたが、IoTやクラウドサービスを活用することで効率的に運用できます。遠隔で稼働状況を把握したり、データを基に改善提案を行ったりすることも可能です。
[3]「モノ売り」から「利用価値提供」への転換
従来の「製品売り切り型」ビジネスでは、受注ごとの売上に依存していました。しかし、サブスク型に切り替えることで、顧客は必要な時に必要な分だけ利用でき、企業は継続的にサービスを提供する形となります。この変化により、顧客満足度の向上だけでなく、自社の競争力強化や収益の安定化も期待できます。
[4]小規模でも差別化のチャンスがある
大手と比べて規模が小さくても、特定分野の技術力や迅速な対応力を活かして、ニッチな顧客向けのサブスクサービスを提供することが可能です。例えば、少量多品種の加工や特殊工具・治具のレンタルなど、顧客の困りごとに応じたサービスは中小企業ならではの強みとなります。

6.まとめ

サブスク型のビジネスは、中小の部品加工業でも十分に可能です。本コラムでは、サブスクの基本的な考え方を紹介し、「使う立場」と「提供する立場」の両方から、メリット・デメリットや導入時の課題と対応策を整理しました。

特に提供する立場では、契約内容や料金体系の設計、社内体制の整備、設備やデータの管理、リスクへの備えが重要になります。しかし、小さく始めて段階的に広げる方法や、IoTやクラウドサービスの活用により、無理なく運用可能です。また、従来の「モノを売る」だけでなく「使ってもらう価値を提供する」という考え方に変えることで、顧客満足度の向上だけでなく、自社の安定収益や競争力強化にもつながります。

さらに、サブスクモデルの導入は自社の強みを見直すきっかけにもなります。得意な技術や迅速な対応力、独自の設備など、自社が持つ価値をどのようにサービスとして提供できるかを考えることで、顧客に選ばれるポイントを明確にできます。このプロセスを通じて、新たな事業のチャンスや収益源を見つけることも可能です。

中小企業だからこそ、小規模でもニッチな分野に特化したサービスを提供できる強みがあります。例えば、少量多品種の加工や特殊治具のレンタルなど、顧客の困りごとに応じたサービスは、大手には真似できない価値を生み出せます。

これからサブスクに挑戦する場合は、まず一部の設備やサービスで試し、運用方法や効果を確認しながら徐々に広げることが大切です。小規模でも段階的に取り組むことで、安定収益や顧客関係の強化につながります。段階的かつ計画的に取り組むことで、中小製造業でも十分に価値を生み出し、自社の強みを活かした新しい事業のチャンスにつなげることができます。

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