意外とボトルネック?段取り替えに隠れた工数を減らす方法
著者:ものづくりコラム運営中小製造業の多品種少量生産の現場では、製品の切り替えごとに発生する「段取り替え」が、知らず知らずのうちに生産効率を下げる原因になっています。機械は稼働しているのに思ったほど生産が進まない――そんな悩みを解決する鍵が、段取り改善です。本コラムでは、段取り替えがボトルネックになる理由と、中小製造業の現場で今すぐ取り組める改善策をご紹介します。
1.段取り替えとは?意外とボトルネックになっている現場の時間
段取り替えって何?
段取り替え(Setup / Changeover)とは、機械や設備を次の製品に切り替えるための準備作業のことです。多品種少量生産の現場では頻繁に発生し、機械が停止している間に行われる作業が中心になります。目に見えにくい作業時間ですが、工程全体の生産効率に大きく影響します。
段取り替えがボトルネックになる理由
段取り替えが工程全体の効率を下げる背景には、いくつかの特徴があります。ここでは代表的な理由(要因)を整理してみます。
- 📝段取り中は機械が停止するため稼働率が下がる
- 段取り替え中は機械が動かないため、全体の生産能力に直接影響します。
- 📝作業手順のバラつきによる余分な工数
- 作業者によって段取りの進め方や順序が異なると、同じ作業でも所要時間が変動しムダが生じます。
- 📝多品種少量生産では段取り時間の割合が大きくなる
- 製品切り替えが頻繁に発生する場合、段取り時間の総計が工程全体の時間に占める割合が大きくなり、ボトルネック化しやすくなります。
段取り替えに含まれる具体的な作業例
段取り改善に取り組む前に、まずは段取り替えに含まれる作業を理解しておきましょう。
🔩工具・治具の交換:金型や刃物の取り付け・取り外し、作業機器の設定 🔩機械の設定・調整:切削条件・圧力・温度・材料サイズの微調整 🔩材料・部品の準備:次製品用の材料搬入・セット、計量・補充 🔩作業手順の確認・記録:段取り手順のチェック、前回段取り時の注意点確認 🔩安全・清掃・整理整頓:作業台や機械の清掃、安全装置・保護具の準備 |
2.SMEDでできる段取り改善
中小製造業で段取り時間を短縮し、生産効率を上げるために有効なのが SMED(Single Minute Exchange of Die) です。
「内段取り」や「外段取り」を分け、作業手順を標準化・見える化することで、段取り時間のムラを減らし、生産効率や納期遵守率の向上につながります。
SMEDとは?
「SMED(スミッド)」とは、段取り替え時間を短縮するための改善手法のことです。
正式名称は、
Single Minute Exchange of Die(シングル・ミニット・エクスチェンジ・オブ・ダイ) (=“一桁の分数で金型を交換する”) |
という意味です。
もともとは、トヨタ生産方式(TPS)の一環として提唱された考え方で、アメリカの生産性研究家・新郷重夫(しんごう しげお)氏が体系化しました。
SMEDの目的
SMEDの目的は、「機械の停止時間を最小化し、生産効率を上げること」。
つまり、段取り替えにかかるムダな時間をなくし、できるだけ短時間で次の生産を始められるようにする考え方です。
SMEDの基本ステップ
SMEDでは、段取り替え作業を次のように分類・改善していきます。
- 💡内段取り(Internal Setup)
- 機械が停止していないとできない作業(例:金型交換、治具の取り付け)
- 💡外段取り(External Setup)
- 機械が動いていてもできる作業(例:工具準備、材料確認、図面チェック)
この2つを整理し、
👉 外段取りを増やして「機械が止まっている時間」を短くする、
👉 内段取りそのものも簡素化・標準化する、
というのがSMEDの基本方針です。
SMEDの効果
得られる効果として主に以下のような例があげられます。
✅取り時間の大幅短縮(例:60分 → 10分)
✅生産計画の柔軟性アップ(小ロット生産に対応しやすく)
✅在庫の削減(頻繁な切り替えが可能に)
✅現場の負担軽減(ムリ・ムダ・ムラの削減)
【💡中小製造業のポイント】 多品種少量生産が主流の中小製造業では、製品切り替えが頻繁なため、段取り替えの効率化が大きな効果を生みます。 SMEDを導入すれば、少人数の現場でもムリなく段取り改善が進められ、生産効率と納期遵守の両立が可能になります。 |
3.今日からできる段取り改善のヒント
SMEDのような大掛かりな改善でなくても、現場レベルでできる工夫はたくさんあります。
- ①段取り時間の「見える化」から始める
- 作業日報の登録時に、実際の加工時間と段取り時間を分けて記録してみましょう。、実際に段取りにかかっている時間を計測することで、「思っていたより時間がかかっていた」工程や、「人によってばらつきが大きい」作業を可視化することで、改善の優先順位が見えてきます。
- ②次の作業の準備を“前倒し”する
- 機械の稼働中に、次の製品に使う工具・治具・図面をそろえておくことで、切り替え時間を短縮できます。
「段取りの段取り」を意識することで、ムダな待ち時間を減らせます。 - ③よく使う工具や部品の“定位置”を決める
- 「探す」時間は大きなロスです。作業者が迷わずに工具を取れるだけでも数分の短縮につながります。
レンチやドライバー、測定器などの使用頻度が高い工具を定位置管理し、「取り出し3秒」を目指すだけでも作業リズムが変わります。 - ④段取り手順を共有・標準化する
- 標準化することで作業のバラつきを減らし、安定した段取り時間を実現します。熟練者のノウハウを動画や写真で残して、チーム全員で共有しましょう。
新任者でも同じ手順で作業できるようになり、人に依存しない段取りが実現できるのです。 - ⑤設備停止の「スキマ時間」を活用する
- 段取り替えの間に、周辺清掃や次工程の準備など、別の作業を組み合わせることで効率アップ。
「止まっている時間」をできるだけ価値ある時間に変える工夫です。 - ⑥改善提案を“1人1つ”出してみる
- 全員で1つずつ「もっとやりやすくなる工夫」を考えるだけでも、現場全体に改善の意識が広がります。
大きな投資よりも、こうした小さな改善の積み重ねが大きな成果につながります。 - ③小さな改善を積み重ねる(カイゼン活動)
- 1回の短縮がわずかでも、積み重ねることで大きな生産性向上につながります。
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4.まとめ
段取り替えは、多品種少量生産が主流の中小製造業において、見過ごせない「生産効率の壁」です。
SMEDの考え方を取り入れ、段取り作業を分解・標準化することで、無理なく効率を高めることができます。
現場のちょっとした工夫から始めてみることが、継続的な段取り改善の第一歩です。
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