混流生産とは? メリット・課題・導入のポイントをわかりやすく解説
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「混流生産(こんりゅうせいさん)」という言葉を聞いたことがありますか?
製造業の現場でよく使われる言葉ですが、実は私たちの身近な場面にも似た考え方があります。
例えば、パン屋さんが「食パン → クロワッサン → あんぱん」を同じオーブンで順番に焼くように、製造業でも1本の生産ラインで複数の製品をつくる方式があります。これが「混流生産」です。
多品種少量生産の時代に対応するため、いま多くの企業がこの方式を採用し始めています。本記事では、「混流生産とは何か?」をわかりやすく解説しながら、そのメリットや課題、導入のポイントまで紹介します。
1.混流生産とは?
定義と基本の考え方
混流生産とは、同じ生産ラインで複数の製品を交互に流して生産する方式のことです。英語では “Mixed-Model Production” と呼ばれ、トヨタ自動車の生産方式にも代表される考え方です。
従来の大量生産では、1種類の製品を専用ラインで作り続ける「専流生産」が主流でした。
一方、混流生産では、製品の種類や仕様が異なっても、共通部分を活かして1本のラインで柔軟に対応します。
混流生産と専流生産の違い
製造現場では、「混流生産」と対になる考え方として「専流生産(せんりゅうせいさん)」があります。
専流生産とは、同じ製品を連続して生産する方式で、いわゆる「一品流し」や「単一ライン生産」と呼ばれる形態です。生産ラインが特定の製品に専用化されているため、段取り替えの手間が少なく、生産効率が高いという特徴があります。
一方で、顧客ニーズの多様化や短納期化が進む中では、製品ごとにラインを分けることが難しくなっています。そこで注目されているのが、複数の製品を同じラインで生産する「混流生産」です。
以下の表では、この2つの生産方式の違いを整理してみましょう。
項目 | 混流生産 | 専流生産 |
---|---|---|
製品種類 | 多品種(複数製品) | 単一製品 |
生産量 | 少量多品種 | 大量生産向き |
柔軟性 | 高い(仕様変更に対応) | 低い(ライン固定) |
設備コスト | 低減できる(共通化) | 製品ごとにラインが必要 |
管理の難易度 | 高い(段取り替えが発生) | 低い(安定生産) |
混流生産の種類
混流生産にはいくつかの形態があります。
- ①ロット混流生産
- ある程度のまとまり(ロット)ごとに製品を切り替える方式。
例:A製品を10個→B製品を10個→A製品…と順番に流す - ②混流1個流し
- 1つずつ異なる製品を順に生産する方式。
例:A→B→C→A…と、連続的に違う製品を作る
後者は特に柔軟性が高く、顧客ニーズに細かく対応できますが、工程設計や現場管理が難しくなります。
2.混流生産のメリット・デメリット
混流生産のメリット
- ①設備の有効活用
- 製品ごとに専用ラインを設ける必要がないため、設備投資を抑えられます。
たとえば、異なる製品を同じ機械で生産できれば、ライン稼働率が上がり、遊休時間を減らすことができます。 - ②在庫削減・リードタイム短縮
- 製品を順次切り替えて流せるため、大量の仕掛品や完成在庫を持たずに済みます。
必要なものを、必要なタイミングで生産できる ― まさに「ジャストインタイム」の実現につながります。 - ③顧客対応力の向上
- 顧客の要望に応じて製品仕様を柔軟に変えられるのも大きな利点です。
多品種少量やカスタム対応を求められる現場では、混流生産が強みになります。
混流生産のデメリット・課題
- ①段取り替えの負担
- 製品を切り替えるたびに治具や工具、設定の変更が必要になります。
段取り替えの時間が長いと、ライン停止が増え、生産効率が下がる原因になります。 - ②属人化・ミスリスク
- 多品種に対応する分、作業員のスキル差や判断の違いが品質に影響しやすくなります。
特に、紙やExcelでの現場管理では、誤投入や生産順序ミスが起きやすくなります。 - ③自動化・機械化の難しさ
- 製品仕様が頻繁に変わるため、機械やロボットによる自動化が難しくなりがちです。
そのため、標準化や共通化設計が欠かせません。
3.イメージでわかる「混流生産」
「製造業の話は難しい」と感じる人のために、日常生活の例で考えてみましょう。
- 🍞パン屋のオーブン
- 同じオーブンで、朝は食パン、昼は菓子パン、夕方は惣菜パンを焼く。
→ 一台の設備を最大限に使うという点で、混流生産に近い考え方です。 - 📜印刷
- 同じ印刷機で「会社パンフレット → チラシ → ポスター」と順番に印刷する。
→ 紙のサイズや色を切り替えながら効率的に生産。 - 🚙自動車工場の混流ライン
- トヨタでは、同じラインで異なる車種を流す「混流ライン」が採用されています。
生産計画をデジタルで管理し、必要に応じて自動で段取り替えが行われます。
これらの例からも分かるように、混流生産は「限られたリソースをどう活かすか」という工夫の結晶なのです。
4.混流生産を導入する際のステップとポイント
混流生産をうまく進めるには、次のようなステップを踏むことが重要です。
- ●STEP1:自社の製品構造・工程を可視化する
- 部品や工程を分析し、共通化できる部分を洗い出します。
- ●STEP2:段取り時間を短縮する
<dd工具や治具の標準化、交換時間の短縮、並行作業などを検討します。>●STEP3:共通部品・モジュール化を進める製品設計段階から共通パーツを増やすことで、混流ラインの柔軟性が高まります。●STEP4:作業標準の整備・教育作業マニュアルのデジタル化や動画マニュアルの導入など、属人化を防ぐ工夫が必要です。●STEP5:システム導入による生産計画管理Excel管理では限界があるため、混流順序の自動最適化やリアルタイム進捗管理を行えるシステム導入が有効です。
まとめ
混流生産は、「多品種少量の時代」に最適な生産方式の一つです。
製造業だけでなく、日常の業務にも通じる“柔軟性”と“効率化”のバランスを考えるヒントでもあります。
最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは「製品や工程を見える化する」「段取り時間を減らす」といった小さな改善から始めることが、混流生産への第一歩です。
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