【ものづくりDX CAMP|DAY.1】DX簡易診断で「現状把握」から始めよう
「DXって聞くけど、うちのような中小企業には関係ない…」
「システム導入は高額だし、何から手をつけていいかわからない…」
「従業員5名のうちの会社でもDXって必要なの?」
そんな悩みを抱える中小製造業の経営者・担当者の方へ。実は、DXは大企業だけのものではありません。むしろ、人手不足や競争激化に直面する中小製造業こそ、DXによって大きな恩恵を受けられる可能性があります。
本記事では、「何から始めればいいかわからない」という中小製造業の担当者向けに、DX推進の第一歩である「現状把握」が5分でできるDX簡易診断を準備しました。
高額なシステム導入の前に、まずは自社の現在地を知ることから始めませんか?
1.今すぐできる!自社DX診断チェックリスト
現状把握の重要性を理解したところで、実際に自社の状況を診断してみましょう。お盆休み中の時間を活用して、簡単な自己診断を行うことで、DXへの第一歩を踏み出すことができます。
簡易DX診断[1]:現状把握のための基本項目
自社のDX状況を把握するために、まず以下の基本項目について整理してみましょう。
【紙ベースの業務プロセスの洗い出し】
まずは、現在も紙ベースで行っている業務を全て洗い出してみてください。
▢ 製造指示書や作業指示書
▢ 品質検査記録
▢ 在庫管理台帳
▢ 顧客との契約書・見積書
▢ 売上納品書や請求書
▢ 仕入先への発注書
▢ 会計・経理関連書類
▢ 設備点検記録
▢ 従業員の勤怠管理
これらの中で、デジタル化することで効率が大幅に向上しそうなものから優先順位をつけてみるとよいでしょう。
【データ管理・活用状況の確認】
次に、現在のデータ管理状況を確認します。
▢ データはどこに保存されているか(個人のPC、共有フォルダ、クラウドなど)
▢ データは統一された形式で管理されているか
▢ 必要な時にすぐにデータを取り出せるか
▢ データを分析・活用できているか
▢ データのバックアップは適切に行われているか
【ITツール導入状況の整理】
現在使用しているITツールを整理してみましょう。
▢ 見積管理システム
▢ 生産管理システム
▢ 顧客管理システム
▢ 在庫管理システム
▢ 会計ソフト
▢ コミュニケーションツール(メール、チャットなど)
▢ ファイル共有システム(図面管理)
簡易DX診断[2]:自社はどのフェーズ?DX推進度チェック
次に、以下のチェックシートを使って、自社のDX準備状況を客観的に評価してみましょう。準備段階からDX実現まで自社が今どのフェーズにいるのかを確認し、段階別の判定により、優先すべき施策と投資領域を認識できれば幸いです。
フェーズ1:DX準備・構想策定(ビジョン策定と課題の明確化)【4項目以上で次の段階へ!】
【DX推進の基盤づくり】
▢ 企業の目指すべき姿(ビジョン)を策定している
▢ DX推進の目的や解決したい課題を明確化している
▢ 現状の業務プロセスや課題を体系的に把握している
▢ 経営層がDX推進にコミットし、リーダーシップを発揮している
▢ DX推進のための予算・人的リソースを確保している
▢ 既存のIT基盤・システムの現状を整理している
▢ 情報セキュリティの基本方針・体制を整備している
フェーズ2:デジタイゼーション(アナログデータのデジタル化)【4項目以上で次の段階へ!】
【基本的なデジタル化の状況をチェック!】
▢ 紙の書類・帳票の多くを電子ファイル(Excel、PDF等)で管理している
▢ 手書きの業務日報や作業記録をデジタル入力に変更している
▢ FAXでのやり取りをメールやデジタルファイル送付、Webシステムに置き換えている
▢ 紙ベースの顧客情報や在庫管理をシステムを活用し、デジタルデータで管理している
▢ 会議資料を紙から電子資料(プロジェクター・PC画面)に変更している
▢ 従業員の勤怠管理をタイムカードからデジタル打刻に変更している
フェーズ3:デジタライゼーション(業務プロセスのデジタル化)【5項目以上で次の段階へ!】
【業務プロセス全体のデジタル化をチェック!】
▢ 複数部署間でデータを連携・共有できるシステムを導入している
▢ 在庫管理から発注まで一連の流れを自動化している
▢ 売上・財務データをリアルタイムで可視化・分析できる
▢ データ分析に基づいた業務改善を定期的に実施している
▢ テレワークやモバイルワークが円滑に行える環境を整備している
▢ 承認業務をワークフローシステムで自動化している
▢ RPA(ロボット)で定型業務を自動化している
フェーズ4:DX(事業・ビジネスモデルの変革)【目指せ5項目以上!】
【ビジネスモデル・事業の変革をチェック!】
▢ デジタル技術を活用した新しいサービス・商品を提供している
▢ 顧客接点をデジタル化し、新たな顧客体験を創出している
▢ データドリブンな意思決定により事業戦略を策定している
▢ デジタルプラットフォームを通じて新しい収益モデルを構築している
▢ AIやIoTなど先進技術を事業の中核に組み込んでいる
▢ 顧客データや原価データの分析により個別最適化されたサービスを提供している
▢ 従来の競合他社とは異なる価値提案で差別化を図っている
DX推進プロジェクトレベル
また、応用編として現状確認のためのチェック項目も用意しました。プロジェクトを進める上で、チームとしての社内の現状把握も行ってみましょう。
【組織体制レベル】
▢ 経営者がDXの必要性を理解し、積極的に推進している
▢ DX推進の責任者・担当者が明確に決まっている
▢ 従業員全体がDXの取り組みに理解を示している
▢ DX推進のための予算が確保されている
▢ 外部専門家との連携体制が整っている
【人材・スキルレベル】
▢ ITに詳しい従業員がいる
▢ 新しいシステムの操作を習得する意欲のある従業員が多い
▢ データを分析・活用できる人材がいる
▢ 業務改善に積極的に取り組む文化がある
▢ 従業員のITスキル向上のための教育機会を提供している
診断結果の活用方法
チェックシートの結果を基に、今後のアクションプランを検討してみましょう。診断結果を基に、以下の優先順位でアクションプランを立てると分かりやすいかもしれません。
☑ 緊急度・重要度が高い項目:業務に大きな影響を与えるもの
☑ すぐに着手できる項目:コストや労力をかけずに改善できる項目
☑ 効果の大きい項目:改善により大幅な効率化が期待できる項目
☑ 長期的な取り組みが必要な項目:時間をかけて段階的に改善していく項目
また、以下のような場合は、外部の専門家やシステム会社のサポートを検討することをお勧めします。
☑ 技術的な知識が不足している
☑ 適切なシステム選定ができない
☑ 導入後の運用・保守体制が不安
☑ 投資対効果の計算が困難
☑ 従業員の教育・研修が必要
外部支援を活用することで、より効率的で確実なDX推進が可能になります。
2.現状把握から始める、無理のないDXへの第一歩
これまで見てきたように、DXは決して大企業だけのものではありません。中小製造業でも、適切なアプローチで取り組むことで大きな成果を得ることができます。重要なのは、無理をせず、自社の状況に合ったペースで進めることです。
まずは「知ること」から始めよう
DXの第一歩は、最新技術の導入でも高額なシステムの購入でもありません。まずは自社の現状を正確に「知る」ことから始めましょう。本コラムで紹介したチェックリストを活用して、客観的に自社の状況を把握してください。現状把握により、「自社の強みと弱み」、「最も改善効果の高い業務プロセス」、「適切な取り組みの順序」が明確になり、DX推進の道筋が定まります。
DXは一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、小さな改善の積み重ねが、やがて大きな変革につながります。完璧を求めるあまり、何も始められないよりも、できることから少しずつ始めることが大切です。まずは現在の課題を解決し、その経験を活かして次のステップに進む。この繰り返しにより、自社に最適なDXの形が見えてきます。
次回の「ものづくり DX CAMP」第2弾では、「デジタイゼーション」のフェーズにについて詳しく解説します。現状把握ができたら、いよいよ具体的な改善に取り組んでみましょう!
\\次のステップ「DX推進の羅針盤」DXの目的を考える!//
DAY2:DXの土台作り~ビジョン策定と課題の明確化~