なぜ「納期遅延」が起こるのか?作業実績データで原因を究明し再発を防ぐ
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中小製造業にとって、「納期を守る」ことは取引先との信頼関係を維持する上で非常に重要です。とはいえ、日々さまざまな工程が並行して進む現場では、納期遅延が発生してしまうこともあります。そのような状況を、「よくあること」「仕方ないこと」として流してしまうと、原因が見過ごされ、同じ遅延が繰り返されるリスクが高まります。
納期遅延の要因を「経験や勘」だけに頼っていては、根本的な改善は困難です。
本コラムでは、作業実績データを活用することで納期遅延の原因を明らかにし、再発を防止するためのアプローチをご紹介します。
1.納期遅延のよくあるパターンと“見えない原因”
納期遅延は、どの製造現場でも起こり得る共通の課題です。しかし、日常的なトラブルとして放置されがちなこれらの遅延には、実は共通するパターンと「見えにくい」本質的な原因が潜んでいます。
「納期遅延」でよくみられる4つの要因
- パターン1:前工程の遅れが連鎖する
- ある工程で少しでも作業が遅れると、後工程にしわ寄せが起こり、最終納期に影響します。
- パターン2:部品の手配ミスや納品遅れ
- 部品が揃わなければ、加工や組立を開始できません。購買や在庫管理のミスが直接納期に響きます。
- パターン3:作業者の属人化(急な休み・スキルギャップ)
- 属人的な作業が多い現場では、特定作業者が不在になると対応できず、工程がストップします。
- パターン4:指示ミス・仕様変更の混乱
- 現場への指示伝達があいまいなままだと、やり直しや手戻りが発生し、工程全体が押していきます。
見えない原因の正体
納期遅延の原因は表面的には分かりやすいものの、実際には「なぜそこが遅れたのか」が見えていないケースが多くあります。例えば、先ほどの「パターン1」や「パターン2」について、ちょっとした工程のトラブルが後工程に影響し、納期遅延へとつながります。しかし、部品の納品状況や、各工程の加工進捗が把握できていれば、納期遅延を防ぐ手立てが見つけられたかもしれません。このように、感覚的な判断では限界があるため、見える化が必要です。
2.なぜ「作業実績データ」が重要なのか?
納期遅延を改善するには、現場で「何が起こっていたか」を客観的に把握する必要があります。ここで重要になるのが、作業実績データの活用です。属人的な判断に頼らず、事実をもとにした分析が改善の第一歩となります。
属人的判断からの脱却
「遅れている気がする」「たぶんA工程が原因だろう」といった曖昧な把握では、正確な対策は打てません。作業実績データを記録することで、どこで何が起こったかを客観的に把握できま
作業実績データとは?
開始・終了時間、作業者、設備、遅延の有無や理由など、工程ごとの詳細なデータを蓄積することを指します。これにより、特定の工程や人物、時間帯などに偏りがあるかを分析できます。
データ取得は難しくない
手書きでの記録でも良いですが、生産管理システムを活用すれば、作業実績の自動収集や集計が可能になります。現場の負担を減らしつつ、精度の高いデータを得ることができます。
スマホで実績入力!生産管理システム『TECHS-BK』新オプション!
3.データから読み解く「納期遅延」の真因
作業実績データを蓄積・分析することで、「なんとなく遅れている」から「ここで・なぜ遅れたのか」へと把握のレベルを高められます。ここでは実際によくあるパターン別に、原因究明と改善のヒントをご紹介します。
ケース1:加工工程の遅れ→段取り時間のばらつき
【実績データの分析で分かったこと】
・毎回段取り時間が異なる
【原因と対策】
・ベテランと新人で作業時間に大きな差があることが判明し、マニュアル整備と教育で改善
ケース2:組立工程の遅れ→部品納品のタイミング
【実績データの分析で分かったこと】
・納品スケジュールと実績を比較し、主要部品の到着がいつも遅れている
【原因と対策】
・仕入先との納期管理体制を見直すことで改善
ケース3:外注戻りの遅れ→情報共有不足
【実績データの分析で分かったこと】
・外注工程のリードタイムが長い
【原因と対策】
・外注先への出図が遅延しがちであり、外注側も準備が間に合っていないことが判明
・情報共有の見える化と外注工程の進捗把握により、納期遅延を解消
よくある“思い込み”とデータのギャップ
現場では、「人手不足が原因だろう」「外注が遅れている」といった“思い込み”で原因を決めつけてしまうことがあります。しかし実際にデータを見てみると、意外な事実が明らかになることも少なくありません。
- 「人手不足が原因」は本当か?
- 実際の作業実績を見てみると、作業が遅れるのは特定の工程だけで、他は余力があったというケースもあります。
- 「外注が遅い」は本当か?
- データを追ってみると、そもそも出図が遅く、外注に責任を転嫁していたケースもあります。
- 「問題はないと思っていたのに」
- 進捗管理表上では問題がないように見えても、実績データでは常に工程が後ろ倒しになっていたという事例も。
4.再発を防ぐ!納期遅延への具体策
納期遅延を一時的に解消しても、再び発生してしまえば意味がありません。継続的な改善と再発防止には、データを活かした定期的なチェックと、仕組みとしての対策が必要です。
- 週次での実績分析と振り返り
- 「予定と実績のズレ」を定期的に確認する仕組みを作ることで、遅延の芽を早期に発見できます。
- リードタイム・計画の見直し
- 実績に合わせて計画を調整することで、実行可能性の高いスケジュールに刷新できます。
- 作業負荷の平準化
- 作業実績を分析することで、特定の作業者に負荷が集中していることが分かります。適切な人員配置や教育が重要です。
- 外注・仕入先との情報共有強化
- 外注工程も含めた進捗の見える化により、社外との連携ミスを防ぎます。
5.生産管理システムで実現する納期遵守率アップ
ここまで見てきた「データの活用」や「見える化」を実現する上で、心強いツールとなるのが生産管理システムです。システムの導入によって、現場の改善活動を効率よく進めることができます。
生産管理システムの導入で実現できること
- 実績収集・分析の効率化
- 生産管理システムを活用すれば、作業実績の収集から分析までを一元管理できます。例えば、多品種少量生産の部品加工業様向け生産管理システム『TECHS-BK』では、予定工数や工程ごとの納期設定を行った作業指示書をもとに、実績データをリアルタイムに登録できます。加工実績がリアルタイムに収集できれば、工程単位での納期遅れや不良発生時の情報共有ができ、素早い対策がとれるようになります。
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『スマホ実績収集オプション』使用イメージ
- 見える化の強力なツール
- ガントチャート、進捗グラフ、アラート機能などを活用することで、現場と管理者が同じ情報をリアルタイムで共有可能になります。ただし、情報の鮮度を保つには、リアルタイムでの実績登録や、比較対象となる予定(予定工数や工程納期)の設定が必要不可欠です。
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生産管理システム『TECHS-BK』:工程ごとの進捗確認画面イメージ(製番別進捗問合せ)
上図の画面イメージ(製番別進捗問合せ)では、製番別に工程の進捗状況をリアルタイムで把握ができ、完了日を予測できます。
スマートフォンやハンディターミナル(専用端末)、パソコンなどでリアルタイムで登録された実績情報をもとに、工程が進むごとに色が変化します。
【グラフの色】
未着手 :黄色
段取着手 :ピンク
段取完了 :紫
着手再開 :緑
中断 :オレンジ
一部完了 :青
完了 :水色
キャンセル:灰色このように、リアルタイムで工程進捗が把握できるため、得意先への納期会頭や優先度の高い製番の進捗状況をすばやく把握できます。
事例①:情報の「見える化」で社員が自ら考え、行動する社風に
福岡県の株式会社フォーバンド様では、社内の各所に大型モニターを設置し、生産管理システムの情報を全社員に見える化し、意識改革を行われています。
【納期遵守率が、70%から99.9%に大幅アップ】
生産管理課に4つのモニターを設置して、生産管理システム『TECHS-BK』の工程負荷問合せ、製番別進捗問合せなどの画面をリアルタイムに確認。これをもとに専務が大枠の日程計画を立て、その後現場スタッフが詳細な工程設定を考え、効率的な手順で作業を回せるようになりました。
また、社内納期を出荷予定日の2営業日前にするなど、納期に余裕をもって対応できるようになったことで、納期遵守率が向上し、運送費も大幅に削減できました
事例②:大型モニターで日程を見える化 社員の納期意識が向上
岡山県の株式会社ビサン様では、大型モニターで日程計画の画面を共有することで、社員の納期厳守意識を向上させることに成功しています。
【一人あたり残業時間を月20時間削減】
日程計画のスケジュール画面を共有することで、急な日程変更が生じた場合でも、負荷分散しながら、スケジュール調整ができます。また、常に最新のスケジュールや仕事の流れを把握できるようになり、より効率的に作業を進めてくれるようになりました。その結果、一人あたりの月の残業時間を20時間削減できました。システム内で常に予定や加工状況が把握できるため、お客様からは、迅速な納期回答と納期遵守を評価していただき、新たな仕事の依頼も増えているとのことです。
6.納期遅延は「仕方ない」から「防げる」へ
納期遅延の要因は、感覚だけでは特定が難しく、再発も防ぎにくい課題です。しかし、作業実績データを活用すれば、どこで・なぜ・何が起こっているのかが明確になります。
中小製造業こそ、限られた人員と設備で高い納期遵守率が求められます。その実現のために、現場の見える化とデータに基づく改善をはじめてみませんか?
【納期管理に課題をお持ちの方へ】
弊社では、中小製造業様向けに、作業実績データの収集から活用までをサポートする生産管理システムをご提供しています。現場に無理なく定着する運用と、分かりやすいインターフェースで、データ活用の第一歩を後押しします。
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