工程管理の見える化とは?導入への流れやメリットとデメリット
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製造業では、納期遅延、品質のばらつき、過剰在庫など、さまざまな課題に日々直面しています。これらの問題の根底には、生産工程の不透明さがあります。「今、どの製品がどの工程にあるのか」「どの工程にボトルネックがあるのか」といった情報が見えにくいために、適切な判断や迅速な対応が困難になっているのです。この状況を打破する鍵となるのが「工程管理の見える化」です。本記事では、工程管理の見える化とは何か、どのような効果があるのか、そしてどのように導入すればよいのかを、わかりやすく解説していきます。生産性向上や品質改善にお悩みの中小製造業の皆様に、具体的かつ実践的な情報をお届けします。工程管理の見える化が、貴社の競争力強化にどのようにつながるのか、ぜひ最後までお読みください。
1.製造業における「工程管理の見える化」の意味
製造業における工程管理の見える化とは、製造工程や進行管理を誰もが一目で分かるように可視化することを指します。つまり、製品がどの工程まで進んでいるか、どの程度の時間がかかっているか、どこにボトルネックがあるかなどを、図や表、グラフなどを使って明確に示すことです。
この見える化を実現することで、作業の効率化や生産性の向上、さらには品質の改善などを図ることができます。例えば、ある工程に時間がかかりすぎていることがわかれば、その原因を特定し、改善策を講じることができます。
工程管理の見える化を実現する方法は複数あります。最も簡単な方法としては、ホワイトボードに工程の進捗状況を手書きで記入する方法があります。これは導入コストが低く、小規模な工場では十分効果を発揮する場合があります。
また、より詳細な管理を行いたい場合は、ガントチャートを作成する方法があります。ガントチャートは、横軸に時間、縦軸に作業項目を取り、棒グラフで各作業の開始時間と終了時間を表現するものです。これにより、各工程の進捗状況や全体のスケジュールを一目で把握することができます。
さらに進んだ方法として、専用のアプリやシステムを利用する方法があります。これらのツールを使うことで、リアルタイムでの進捗管理や、複雑な工程の管理、データの蓄積と分析などが可能になります。特に中規模以上の製造業では、このようなシステムの導入が効果的です。
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工程管理の見える化は、単に情報を可視化するだけでなく、その情報を活用して継続的な改善を行うことが重要です。次に、この見える化によってどのような効果が得られるのか、具体的に見ていきましょう。
2.工程管理の見える化によって得られる効果
工程管理の見える化は、製造業にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、主な4つの効果について詳しく解説します。
生産性や品質の向上を期待できる
工程管理を見える化することで、業務プロセスの適切化を図りやすくなります。現状の課題が明確になるため、改善へ向けて具体的に取り組むことができるのです。
例えば、ある工程に予想以上の時間がかかっていることが可視化されれば、その原因を探り、改善策を講じることができます。また、必要のない作業や、作業をしていない時間などが判明しやすくなるため、無駄な工程を省くことも可能になります。
また、機械・設備や作業者の負荷が見えるようになれば、適切な作業指示による生産活動の効率化や作業者の負荷軽減を実現できます。
これらの改善により、作業時間の短縮による製造コストの削減や、生産効率や品質の向上を期待できます。そのためには、作業日報などの実績登録により、リアルタイムでの進捗管理が必要です。その結果として、納期の短縮や不良品の減少につながり、顧客満足度の向上にもつながります。
トラブルや問題発生時の対応がスムーズになる
工程管理が見える化されていると、トラブルや急な変更が発生しても、担当者が迅速に対応しやすくなります。これは、可視化されることで情報が共有しやすくなるためです。
例えば、ある部品の納入が遅れた場合、その影響を受ける後工程をすぐに特定し、対策を講じることができます。また、急な注文の変更や不良が生じた場合も、現在の進捗状況を踏まえて、どの程度の対応が可能かをすぐに判断できます。
この情報は、経営層、営業担当、現場の責任者、作業メンバーなど、工程管理に関わる全ての人と共有されます。これにより、組織全体で迅速かつ適切な対応が可能になります。
業務が属人化しにくくなる
生産工程を可視化することで、業務を共有しやすくなります。これにより、特定の個人の技能や経験に頼らず、一定の水準で工程管理ができるようになります。
例えば、ベテラン社員が休暇を取る場合でも、他の社員が工程の進捗状況を把握し、必要な対応を取ることができます。また、新入社員の教育にも活用でき、早期の戦力化にも役立ちます。
結果として、社員の休職や退職によって業務に支障をきたすリスクが低減され、安定した生産体制を維持することができます。
人為的ミスを減らせる
工程管理の見える化により、納期や数量の誤入力、入力漏れなどがあった場合に気づきやすくなります。これは、複数人で情報が共有される体制が整っているためです。
例えば、ある社員が誤って納期を1週間後に設定してしまった場合、他の社員がその不自然さに気づき、修正することができます。また、作業の進捗状況が可視化されているため、入力漏れも発見しやすくなります。
人為的ミスが減ることで、製品ロスの削減や、トラブルの回避へつながります。これは、品質管理の向上や顧客満足度の向上にも寄与します。
以上のように、工程管理の見える化には多くの効果があります。次に、具体的にどのように見える化を進めていけばよいのか、その導入の流れについて見ていきましょう。
3.「工程管理の見える化」に生産管理システムを導入する場合の流れ
工程管理の見える化には、生産管理システムを利用するのが一般的です。システムを活用することで、より効率的かつ効果的に見える化を実現できます。ここでは、生産管理システムの導入にあたって気をつけたいことを説明します。
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Step1.見える化したい目的を明確にする
まず重要なのは、何をどう改善したいかを明確にすることです。例えば、納期遅れを減らしたい、在庫管理を効率化したい、品質不良を減らしたいなど、具体的な目的を設定します。
この目的設定が重要な理由は、改善したい課題によって導入方法や利用するべきツールが異なるためです。例えば、納期管理に重点を置きたい場合と、品質管理に重点を置きたい場合では、必要な機能や情報が異なります。
また、課題が複数ある場合は、優先順位も考える必要があります。全ての課題を一度に解決しようとすると、かえって混乱を招く可能性があるためです。まずは最も重要な課題から取り組み、段階的に改善を進めることをおすすめします。
Step2.現場の意見を聞く
適切な工程管理の見える化には、現場で働く人の意見が不可欠です。なぜなら、実際に作業を行っている人たちこそが、現場の実情を最もよく知っているからです。
例えば、現場の作業者に「どの情報があれば作業がしやすくなるか」「どの部分に時間がかかっているか」などを聞くことで、見える化すべき重要な情報が明らかになります。また、「システム入力に時間がかかりすぎないか」「操作が複雑すぎないか」といった懸念点も把握できます。
実状に合っていない工程管理の見える化は、かえって生産性の低下につながる可能性があります。また、多少管理工数が上がったとしても、会社として必要な情報があれば、現場にも納得してもらえるよう、目的や目指すべき姿をしっかりと共有することも大切です。特に生産管理システムを導入する際は、現場の業務フローに大きな変更が生じる可能性があるため、導入時の懸念や必要な機能などを丁寧に確認することをおすすめします。
Step3.利用するツールやシステムの候補を選ぶ
目的と現場の意見を踏まえて、具体的なツールやシステムの候補を選びます。この際、それぞれの候補について十分に理解を深めることが重要です。
自社に適合するツールやシステムを選ばないと、導入後の運用に支障をきたす可能性があります。例えば、機能が多すぎて使いこなせない、逆に必要な機能が不足している、既存のシステムと連携できないなどの問題が生じる可能性があります。
生産管理システム導入時にチェックしたいポイント
- ①現場で負担なく利用できるか
- 使い方が複雑すぎたり、慣れるまでに手間や時間がかかったりするアプリやシステムの場合、現場に大きな負担がかかります。これは業務効率化につながらないばかりか、見える化の重要性が浸透しない原因にもなります。結果として、工程管理の見える化が達成できないおそれがあります。
したがって、直感的で使いやすいインターフェース、十分な操作説明やサポート体制があるかどうかを確認することが重要です。 - ②機能のカスタマイズが容易にできるか
- 製造工程は工場や製造品によって異なるため、管理したい工程も企業ごとに違います。そのため、自社の製造工程に合わせてカスタマイズできるシステムであるかどうかは重要なポイントです。ここでのカスタマイズとは、システムの機能追加だけでなく、問合せ画面の検索項目の追加や画面自体を作りこむなど、様々な内容が考えられます。
カスタマイズが容易なシステムであれば、現場で導入しやすく、また将来的な業務の変化にも柔軟に対応できます。 - ③パッケージシステムへ運用をどこまで合わせられるか
- Excelでの工程管理を行っている企業の多くが、自社独自のルールを持っています。しかし、新しいシステムを導入する際には、これまでの運用方法を全て踏襲できるとは限りません。システム導入を機に、これまでの運用方法を見直し、より効率的な方法に変更することも検討する必要があります。同時に、自社でどの情報を重視しているのか、どの機能が必須なのかを再確認することも重要です。
- ④初期費用とランニングコストが妥当か
- 生産管理システムの導入には、初期費用やランニングコストが必要となる場合があります。これらの費用が自社の予算に見合っているか、また導入によって得られる効果と比較して妥当かどうかを検討する必要があります。ただし、単に価格だけで判断するのではなく、システムの導入によって得られる長期的な利益も考慮に入れることが重要です。例えば、生産性の向上や不良品の減少、納期短縮などによる利益を試算し、費用対効果を判断することが望ましいでしょう。
以上のポイントを十分に検討し、自社に最適な生産管理システムを選択することで、効果的な工程管理の見える化を実現することができます。
4.製造業の「工程管理の見える化」をサポートする管理システム
工程管理の見える化を効果的に実現するためには、適切な生産管理システムの選択が重要です。ここでは、中小製造業に特化した2つの生産管理システムをご紹介します。これらのシステムは、使いやすさと機能性を両立し、工程管理の見える化を強力にサポートします。
多品種少量型 部品加工業向けの生産管理システム『TECHS-BK(テックス・ビーケー)』
『TECHS-BK』は、多品種少量生産を行う製造業に特化した生産管理システムです。複雑になりがちな多品種少量生産のデータを一元化し、効率的な管理を可能にします。特に、多品種少量生産特有の、仕様によって毎回異なる複雑な工程や、頻繁に変更される生産計画にも柔軟に対応できる設計になっています。
【システムイメージ】バーコード付きの作業指示書とハンディ―ターミナルで、正確な実績とリアルタイムな進捗状況を把握
作業指示書をスキャンし、ハンディ―ターミナルで登録した加工実績のデータを反映し、各工程の進捗状況を問合せ画面で一目で把握することができます。
案件ごとに、各工程の進捗状況を共有できる環境を整えることで、前工程の進捗が把握でき、手待ちが減少します。また、事務所に居ながら現場の進捗をリアルタイムで確認できるため、現場への確認工数などを削減することもできます。
【詳細を見る】部品加工業に特化した生産管理システム『TECHS-BK』
また、『TECHS-BK』は、必要な機能や業務範囲によって「Standard」「Basic」「Mini」の3つのエディションよりプランを選択いただけるため、低価格かつステップアップ導入が可能となります。
個別受注型 機械・装置業様向け生産管理システム『TECHS-S NOA』
手配部品の多い機械・装置業様においても、工程管理は重要なポイントとなります。
リードタイムが長い案件の「大日程」や、部品一点ごとの詳細な加工工程を把握する「小日程」、また、購入品や外注の手配状況など様々な進捗の「見える化」が必要です。
【システムイメージ】大日程の生産計画(生産スケジューラ)
『TECHS-S NOA』は、個別受注生産の機械・装置業様に特化し、クラウド対応で1アカウントから利用できる生産管理システムです。受注から、工程管理、原価管理までの一連の業務を一元管理でき、導入することで、情報の共有化が図れ、業務の効率化が期待できます。また、リアルタイムでの進捗管理が可能となり、納期遅れやミスの防止につながります。
【システムイメージ】部品手配入力(『TECHS-S NOA』製品カタログより)
購入品や在庫払出予定の部品、加工部品など、案件に必要な部品リストを作成し、手配状況や納期、在庫数などを一目で確認できます。
発注処理などの日々の業務をシステムで行うことで、リアルタイムで手配状況を更新し、部品ごとに手配進捗グラフの色と長さで状況を見える化します。
【無料】『TECHS-S NOA』製品カタログをダウンロード
これらのシステムは、中小製造業の工程管理の見える化を強力にサポートします。自社の業務内容や規模、課題に合わせて最適なシステムを選択することが重要です。
5.工程管理の見える化で製造現場の生産性を向上させよう
工程管理の見える化は、製造業の競争力を高める重要な取り組みです。本記事で解説してきたように、見える化には多くのメリットがあります。生産性や品質の向上、トラブル対応の迅速化、業務の脱属人化、人為的ミスの低減など、その効果は多岐にわたります。
しかし、見える化の実現には適切な方法と工程管理システムの選択が不可欠です。自社の課題や目的を明確にし、現場の意見を取り入れながら、最適なシステムを選ぶことが成功への近道となります。
特に中小製造業にとっては、『TECHS-S NOA』や『TECHS-BK』のような専用システムの活用が効果的です。これらのシステムは、中小製造業特有の課題に対応できるよう設計されており、比較的低コストで高い効果を得ることができます。
工程管理の見える化は、単なる情報の可視化ではありません。それは、継続的な改善活動の基盤となり、製造業の未来を拓く重要な取り組みです。見える化によって得られた情報を活用し、常に改善を続けることで、製造業はさらなる進化を遂げることができるでしょう。
パソコンやシステムに苦手意識があっても、適切なサポートとシステムの選択により、工程管理の見える化は十分に実現可能です。まずは小さな一歩から始めて、徐々に範囲を広げていくことをおすすめします。その一歩が、あなたの会社の大きな変革の始まりとなるかもしれません。