多品種少量生産の自動化とは?メリット・デメリットや自動化の方法
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市場のニーズが多様化した近年では、多くの企業が「多品種少量生産」へと移行しています。
多品種少量生産は、顧客が求めている製品を柔軟に提供でき、在庫リスクを抑えることができるメリットがある一方で、生産効率の低下が大きな課題となります。
そこで注目されているのが、多品種少量生産の自動化です。
自動化技術を導入することで、作業の効率化と品質の安定化を実現できます。
また、IoTやAIなどの先進技術を活用することで、生産ラインの柔軟性を高め、多品種少量生産に適した生産体制を構築することができます。
本コラムでは、多品種少量生産の自動化の鍵となる要素やその必要性、中小製造業が自動化を進める上でのポイントを解説します。
1.多品種少量生産が求められる背景
多品種少量生産が求められる背景には、いくつかの要因があります。
顧客ニーズの多様化
昨今、顧客が求めている製品を提供することに価値が見出されています。
市場の成熟化やライフスタイルが多様化してきていることからも、個々への細かなニーズに対応する必要があります。
多品種少量生産は、こうした顧客の多様なニーズに応えるための生産方式と言えます。
顧客のニーズに幅広く応えられる環境を整えようとする企業が増えているのです。
コスト削減意識の高まり
また、企業のコスト削減意識の高まりも一因です。
少品種大量生産では、需要予測が外れた場合に大量の在庫を抱えるリスクがありますが、多品種少量生産では、在庫を最小限に抑えつつ、市場の変化に素早く対応することができます。
発注元企業は在庫を抑えるために、仕入先企業への注文の際、ただちに納品を要求することが多くなります。企業は少量ずつ生産して短納期に応え、在庫をできるだけ持たずに無駄をなくしたいという意識が高まったのです。
2.多品種少量生産のメリット・デメリット
多品種少量生産のメリット・デメリットにはどういったことが挙げられるでしょうか。
多品種少量生産のメリット
- ●顧客のニーズに応じた生産ができる
- 多品種少量生産の最大の利点は、顧客のニーズに応じた生産ができることです。
多品種少量生産では、品質や機能、デザインなどを顧客のニーズに合わせて柔軟に調整し、生産することが可能です。これは、大量生産では実現が難しい、きめ細やかな対応力です。
中小製造業は、顧客との距離が近く、コミュニケーションを密に取ることができるため、顧客の情報を細分化し、ニーズに合わせた製品開発や提供ができます。
結果的に、顧客満足度が向上し、受注の増加に繋がりやすいのです。 - ●在庫を抱えるリスクが少ない
- 多品種少量生産は、中小製造業にとって、在庫リスクの低減に大きく貢献します。製品を少量で生産するため、製品の在庫量を最小限に抑えることができます。
在庫の保管コストや、需要の変動によって在庫が滞留するリスクなどを考慮すると、在庫量を適切にコントロールすることが重要になります。多品種少量生産は、この課題に対する効果的な解決策の一つと言えるでしょう。
また、多品種少量生産では、完全受注生産にするなど、生産の調整がしやすくなります。
顧客からの注文に基づいて生産を行うことで、在庫を持たない、あるいは最小限の在庫で運用が可能です。これにより、在庫リスクを大幅に低減できます。
さらに、在庫リスクの低減は、キャッシュフローの改善にもつながります。在庫に投じていた資金を、設備投資や研究開発、人材育成などに振り向けることができるようになります。
中小製造業が競争力を維持・強化するためには、在庫リスクを適切にマネジメントすることが不可欠です。多品種少量生産は、在庫リスクの低減に効果的な生産方式であり、中小製造業の経営基盤の強化に大きく貢献すると言えるでしょう。 - ●製品の多様性が向上する
- さらに、多品種少量生産は、中小製造業にとって、製品の多様性を向上させる上で大きなメリットがあります。
市場のニーズは常に変化しており、新しいトレンドが次々と生まれています。中小製造業が競争力を維持・強化するためには、これらの変化に迅速に対応し、新しい製品を開発・提供していくことが不可欠です。
多品種少量生産では、少量での生産が可能であるため、新製品の導入に伴うリスクを最小限に抑えることができます。新しい技術や素材を使った製品を試験的に生産し、市場の反応を確認しながら、製品の改良や量産化を進めていくことが可能です。これにより、市場の変動や新しいトレンドに迅速に対応し、競争力を維持・強化することが期待できます。
多品種少量生産のデメリット
- ●生産効率が下がる可能性がある
- 多品種少量生産は、中小製造業にとって多くのメリットをもたらす一方で、生産効率の低下というデメリットも伴います。
この生産方式では、一度に大量に生産するのではなく、多品種の製品を少量ずつ生産するため、生産効率が下がりやすいという課題があります。
多品種少量生産では、品種ごとに生産ラインの段取りや設定の変更が必要となります。これには時間と手間がかかり、生産効率を低下させる要因となります。
例えば、ある製品の生産が終わり、次の製品の生産に移る際には、機械の設定変更や材料の交換などが必要です。この段取り替えの時間は、生産時間を圧迫し、効率を下げてしまいます。
また、多品種少量生産では、生産ロットが小さいため、機械の稼働率が下がり、生産性が低下することもあります。一度に大量に生産する場合と比べて、機械の起動・停止の回数が増え、エネルギーや時間のロスが発生します。 - ●生産コストがかかりやすい
- 多品種少量生産では、各製品に特化した原材料や部品が必要となります。これにより、調達する原材料や資材の種類が増え、在庫管理も複雑になります。
また、少量生産のため、原材料や資材を大量に安く仕入れることが難しく、コストが上がる傾向にあります。
さらに、多品種少量生産では、生産ラインの段取り替えや設定変更が頻繁に行われるため、人的コストも増加します。熟練した技術者や作業者が必要となり、人件費が嵩むことがあります。
生産コストの増加は、製品の価格競争力を低下させ、中小製造業の収益性を圧迫する可能性があります。多品種少量生産を導入する際には、生産コストの管理と削減のための対策が不可欠です。
3.多品種少量生産を自動化する方法
多品種少量生産は、中小製造業にとって顧客ニーズに対応し、市場の変化に迅速に適応するための重要な生産方式です。
しかし、この生産方式には、生産効率の低下や生産コストの増加といった課題も伴います。
これらの課題を解決するために、多品種少量生産の自動化は有効な手段の一つとなります。自動化の技術を導入することで、生産工程の効率化や品質の安定化を実現でき、多品種少量生産に適した生産体制を構築することができます。
では、多品種少量生産を自動化するためのステップを見ていきましょう。
自社に適した自動化の方法を選択する
まず、自社の生産規模や製品の種類に適した方法を選択することが重要です。自動化の方法は多岐にわたるため、自社の特性や目的に合ったものを検討し、導入することが求められます。
生産方式ごとに見てみましょう。
- ●ジャスト・イン・タイム生産方式 の場合
- ジャスト・イン・タイム生産方式は、トヨタ自働車の創業者である豊田喜一郎が提唱した生産方式で、必要なものを必要な時に必要な量だけ生産するという方式です。
在庫を最小限に抑えながら、顧客の需要に合わせて生産を行うことができるため、多品種少量生産に適しています。
トヨタ自動車でのジャスト・イン・タイムは、「流れ生産」を重要視します。部品や材料を一括で保管しておくのではなく、必要なタイミングで必要な数だけ調達し、生産ラインを常に流れるように保つことで、余分な在庫や作業の手待ちを防ぐのが基本です。
このため、ジャスト・イン・タイム生産方式を自動化することで、在庫管理の効率化や、生産リードタイムの短縮が期待できます。ジャスト・イン・タイム生産方式を自動化するために効果的な手法として、在庫管理システムを自動化することが挙げられます。リアルタイムで在庫を管理し、必要な時に正確な量を供給することで、在庫の最小化と効率的な生産を実現します。
また、需要予測や生産計画に基づいて、部品や材料の発注を自動化することも重要です。これにより、過剰在庫を防ぐだけでなく、供給チェーン全体の効率を高めることができます。
具体的な方法として、IoTデバイスやクラウドベースの管理システムを使用してリアルタイムで在庫状況をモニタリングし、必要なときに自動でサプライヤーに発注が行われるような仕組みが考えられます。 - ●セル生産方式 の場合
- セル生産方式とは、少人数のチームで一つの製品を完結させる生産方式です。複数の工程を一つのセルで行うことで、生産の流れを円滑にし、仕掛品在庫を減らすことができます。
また、セル内で品質管理を行うことで、不良品の発生を抑制できます。セル生産方式の自動化は、多品種少量生産における生産効率の向上と品質の安定化に貢献します。セル生産方式では、少人数のチームで作業を行うため、協働ロボット(コボット)の導入が有効です。
コボットは人間と共同で作業を行うように設計されており、細かい組立作業や繰り返し作業を自動化することで、作業効率を向上させます。人間の柔軟性とロボットの精度を組み合わせることで、生産性が飛躍的に高まります。しかし、セル生産方式では、製品ごとに異なる工程やスキルが求められるため、標準化が難しく、自動化のハードル高い傾向にあります。
また、作業者が工程ごとに柔軟な判断や調整を行うことが多く、品質チェックや微調整が求められる場面では人間の判断が不可欠です。そのためコボットにも高い性能が求められ、コストが非常に高額になり、投資対効果が見合わないこともあります。
これらの理由から、セル生産方式の自動化には多くの課題があり、完全な自動化は難しいとされています。
自社に適した自動化の方法を選択するためには、現状の生産工程を詳細に分析し、改善点を明確にすることが重要です。
また、自動化技術の動向や、他社の事例を参考にすることも有効です。自社の特性に合った自動化の方法を導入することで、多品種少量生産の効率化とコスト削減を実現することができるでしょう。
装置をモジュール化する
多品種少量生産のスマートファクトリーを実現するために装置をモジュール化する必要があります。
モジュール化とは、製品や装置を標準化された独立した機能単位(モジュール)に分割し、それらを組み合わせて全体を構成する設計手法です。
モジュール化された装置は、互換性が高く、交換や組み替えが容易であるため、生産ラインの柔軟性を高めることができます。
また、スマートファクトリーでは、設計から製造、保守までのビジネスプロセス全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を行う必要があります。
モジュール化された装置は、IoTセンサーやAI技術と組み合わせることで、生産工程のデータ収集や分析、制御を容易にし、スマートファクトリーの基盤となります。
モジュール化のメリットは、生産の柔軟性向上だけではありません。部品同士の調整が不要なため、組み立てや保守にかかる時間と労力を削減できます。これにより、生産コストの削減も期待できます。
さらに、モジュール単位での性能向上や機能追加が可能であるため、設備投資の最適化にもつながります。
多品種少量生産における装置のモジュール化は、自動化とスマートファクトリー化を進める上での重要な基盤となります。標準化された機能単位に分割することで、生産ラインの柔軟性を高め、IoTやAIなどの先進技術との連携を容易にします。これにより、多品種少量生産の効率化と品質向上、コスト削減を実現することができるのです。
生産管理システムを導入する
また、多品種少量生産の自動化には、生産管理システムの導入も効果的です。
生産管理システムとは、在庫管理、工程管理、品質管理など、生産に関する様々な業務を一元的に管理するためのシステムです。
多品種少量生産では、製品の種類が多く、生産量が少ないため、生産工程の管理が複雑になりがちですが、生産管理システムを活用することで、効率的な運用が可能になります。
生産管理システムによる自動化の効果を見てみましょう。
- ●段取り時間の短縮と生産性向上
- 生産管理システムの導入により、段取りの効率化が期待できます。
多品種少量生産では、製品の種類が多いため、生産ラインの取り替えが頻繁に発生します。生産管理システムを用いて作業工程を見える化することで、生産ラインの取り替えに付随する段取り時間のムリ・ムダ・ムラを最大限削減し、生産効率を向上させることができます。また、生産計画と実績の差異を迅速に把握し、必要に応じて生産スケジュールを調整することも可能です。 - ●適切な在庫管理
- さらに、生産管理システムは、適切な在庫管理にも役立ちます。多品種少量生産では、原材料や部品の種類が多岐にわたるため、在庫管理が難しくなります。生産管理システムを活用することで、リアルタイムな在庫状況の把握や、適正在庫量の維持が可能となります。これにより、在庫切れや過剰在庫を防ぎ、コスト削減につなげることができます。
- ●品質の安定化
- 加えて、生産管理システムは、品質管理の面でも大きな役割を果たします。多品種少量生産では、製造工程が複雑なため、品質のばらつきが生じやすいですが、生産管理システムを用いて工程ごとの品質データを収集・分析することで、品質の安定化を図ることができます。不良品の発生を抑制し、顧客満足度の向上にもつながります。
中小製造業が多品種少量生産の自動化を進める上で、生産管理システムの導入は欠かせない要素の一つです。
生産工程の可視化、段取りの効率化、適切な在庫管理、品質の安定化など、多岐にわたる効果が期待できます。
自社の生産体制に適した生産管理システムを選択し、導入することで、多品種少量生産の効率化とコスト削減を実現することができるでしょう。
テクノアの生産管理システム
自動化を進めるために適切な方法を選択するのと同様に、生産管理システムについても自社に合ったものを検討する必要があります。
ここでは、テクノアの生産管理システムを2種類ご紹介します。
- 『TECHS-BK(テックス・ビーケー)』
- 「TECHS-BK」は多品種少量型の部品加工業様向けに開発された、中小製造業のための生産管理システムです。
受注から作業指示、売上までを一元管理することができ、工程負荷や進捗がいつでも誰でも確認できます。
また、バーコードハンディターミナルを併せて運用することにより、実績収集が簡単になり、原価集計時間も大幅に短縮することが可能です。
多品種少量型の複雑になりがちなデータを一元化することで、製番毎の詳細な原価がリアルタイムで可視化されるようになります。 - 『TECHS-S NOA(テックス・エス・ノア)』
- 「TECHS-S NOA」は個別受注型の中小製造業向けに開発された、クラウド対応の生産管理システムです。
CADやExcelから部品表データを取り込むことができ、転記作業の事務工数を削減します。
利用料は定額サービス(サブスクリプションモデル)で、クラウド環境で利用可能のため、導入コストを抑えて短期間でシステムの利用を開始できます。
4.自社の強みを活かし、多品種少量生産の自動化を積極的に導入していきましょう
いまや多品種少量生産は、中小製造業にとって顧客ニーズに対応し、市場の変化に迅速に適応するためには不可欠な生産方式です。
しかしこの生産方式には、生産効率の低下や生産コストの増加といった課題も伴います。これらの課題を解決するために、自動化は有効な手段の一つとなります。
生産方式に応じて適切な自動化手法を取り入れ、装置のモジュール化を進めることで、生産ラインの柔軟性を高め、効率的な生産体制を構築できます。
さらに、生産管理システムを導入することによっても、段取りの効率化、適切な在庫管理、品質の安定化など、多岐にわたるメリットを享受できるでしょう。
中小製造業が競争力を強化し、新たな市場を開拓するためには、多品種少量生産の自動化が鍵となります。
自社の強みを活かし、自動化技術を積極的に導入することで、他社との差別化を図り、ビジネスチャンスを掴んでいきましょう。