インダストリアルエンジニアリングとは?分析手法と実施時の注意点
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インダストリアル エンジニアリング(IE)をご存知ですか?製造業や生産現場で注目を集めるこの手法は、業務効率化の切り札として脚光を浴びています。科学的アプローチで作業を分析し、ムリ・ムラ・ムダを徹底的に排除。その結果、生産性向上やコスト削減を実現できるのです。しかし、IEの真の力を引き出すには、正しい理解と適切な実践が不可欠。本記事では、IEの基本から実践的な手法、さらには最新のAI技術の活用まで、わかりやすく解説します。
1.インダストリアルエンジニアリングの概要
製造業や生産現場において、効率的な業務改善を実現するためには、科学的な分析手法が欠かせません。そのような手法の一つとして注目されているのが、インダストリアルエンジニアリング(IE)です。本記事では、インダストリアルエンジニアリングの概要や手法、実施時の注意点について詳しく解説します。
インダストリアルエンジニアリング(IE)とは
インダストリアルエンジニアリング(IE)とは、作業工程や作業内容を科学的に分析する手法のことを指します。これは、業務改善を図るための技術の一つであり、生産性向上や品質改善、コスト削減などを目的として広く活用されています。
IEに関連する資格としては、主に2つが挙げられます。
- ・インダストリアルエンジニア(IE)
- インダストリアルエンジニアは、一般社団法人日本インダストリアル・エンジニアリング協会が認定する資格です。この資格を取得するためには、協会が主催する「IE資格認定講習会」を受講し、修了試験に合格する必要があります。講習会は5日間にわたり、IEの基礎知識や手法、実践的なスキルを学びます。
- ・技術士(経営工学部門)
- 技術士は、国家資格であり、「科学技術に関する高度な応用能力を有する者」として認定されます。経営工学部門の技術士は、IEを含む生産管理や品質管理などの分野で高度な専門知識を持つ専門家です。資格取得には、第一次試験(基礎能力を問う筆記試験)と第二次試験(専門知識と応用能力を問う筆記試験と口頭試験)に合格する必要があります。さらに、実務経験年数の要件も満たす必要があります。
インダストリアルエンジニアリングによって期待できる効果
IEを導入することで、以下のような効果が期待できます。
- ①客観的な現状把握
- IEでは、業務全体を数値化、記号化することで、客観的に現状を把握することができます。これにより、従来は感覚的にしか捉えられなかった問題点を明確に識別することが可能になります。
- ②科学的な分析結果
- IEは科学的な分析手法を用いるため、分析結果が人によって左右されることがありません。これにより、より信頼性の高い改善策を立案することができます。
- ③生産管理の最適化
- IEを活用することで、生産管理におけるムリ・ムラ・ムダの最適化を行うことができます。これにより、生産性の向上やコスト削減、品質改善などの効果が期待できます。
2.インダストリアルエンジニアリングの手法
IEには様々な手法がありますが、大きく分けて3つのカテゴリーに分類され、合計で8つの手法があります。以下、それぞれの手法について詳しく解説します。
方法研究
方法研究は、作業内容や作業のフローに注目して最適化を目指す手法です。具体的には以下の3つの分析方法があります。
- ・工程分析
- 工程分析は、材料から製品化までのフローを4つの要素(加工・運搬・検査・停滞)に分けて分析する手法です。各過程を図に表すことで、問題点や課題を可視化し、改善点を明確にすることができます。
- ・動作分析
- 動作分析は、作業者の動きに着目し、ムダな動作や非効率な動きを特定する手法です。サーブリッグ記号などを用いて動作を細分化し、それぞれの動作の必要性や効率性を評価します。これにより、作業の標準化や効率化を図ることができます。
- ・運搬分析(マテハン分析)
- 運搬分析は、工場内での物の動きに注目し、最適な運搬方法や経路を検討する手法です。From-To分析やスパゲッティ図などのツールを用いて、運搬距離や頻度を可視化し、ムダな運搬を削減することができます。
作業測定
作業測定は、作業工程における作業時間に注目して分析する手法です。具体的には、時間分析と稼働分析の2つの分析方法があります。それぞれの分析方法についても見てみましょう。
①時間分析
時間分析は、作業内容を要素や単位レベルに細かく分けて、時間を観測・記録して分析する手法です。主に以下の2種類の方法があります。
- ・ストップウォッチ法
- 現場で直接時間を計測する手法です。作業者の動作を観察しながら、各作業要素の所要時間を計測します。
- ・PTS(Predetermined Time Standard)法
- 各基本動作に標準時間を決めて、それらの組み合わせによって標準時間を設定する手法です。MTM(Methods-Time Measurement)やWF(Work Factor)などのシステムがあります。
②稼働分析
稼働分析は、作業者や機械の稼働状況を観察し、記録・分析する手法です。ワークサンプリング法やタイムスタディ法などがあり、作業者や機械の稼働率や非稼働の要因を明らかにすることができます。これにより、人員配置の最適化や設備投資の判断材料を得ることができます。
組み合わせ
組み合わせは、複数の要素を組み合わせて全体の効率を最適化する手法です。以下の3つの分析方法があります。
- ①ラインバランス分析
- ラインバランス分析は、生産ラインの各工程の作業時間のバランスを分析し、最適化を図る手法です。各工程の作業時間を均等化することで、生産ラインの効率を向上させることができます。
- ②連合作業分析
- 連合作業分析は、複数の作業者や機械が協力して行う作業の効率を分析する手法です。作業の相互依存関係や待ち時間を考慮し、全体の作業効率を最適化します。
- ③プラントレイアウト
- プラントレイアウトは、工場内の設備や作業場所の配置を最適化する手法です。物の流れや作業者の動線を考慮し、効率的な配置を設計します。
3.インダストリアルエンジニアリング手法を実施する際の注意点
次に、IEを効果的に実施するための注意点を確認してみます。
製造現場や事務所の業務において、最適な方法を追求する分析方法や改善手法です。勘や経験による判断をやめ、客観的な事実に着目して科学的な分析を行う必要があります。そのためにも、異なる担当者が実施しても同じ結果が得られるよう客観的かつ定量的な分析であることや、ありのまま分析するといった注意が必要です。
具体的に見てみましょう。
- ①分析は客観的・定量的に行う
- IEの分析は、誰が行っても同じ結果が得られるように、客観的かつ定量的に行う必要があります。感覚や経験だけに頼らず、数値や数量などで表した定量的なデータを収集することが重要です。
- ②作業の指示も定量的な情報に基づいて行う
- 改善策を実施する際も、定量的な情報に基づいて作業の指示を行うことが大切です。具体的な数値目標や基準を設定することで、改善効果を正確に測定することができます。
- ③通常の作業状態を観察する
- データ収集の際は、作業者が普段と異なる手順や動作を行わないよう注意する必要があります。作業者に観察されていることを意識させず、通常の作業状態でデータを収集することが重要です。
4.インダストリアルエンジニアリングの導入と革新的なツールの活用
インダストリアルエンジニアリングは、製造業や生産現場における業務改善に欠かせない手法です。IEの各種分析手法を適切に活用することで、生産性の向上、品質の改善、コストの削減などの効果が期待できます。
しかし、従来のIE手法だけでなく、最新のテクノロジーを活用することで、さらに効果的な改善が可能になります。その一例として、AI画像認識技術を用いた『A-Eyeカメラ(エー・アイ・カメラ)』があります。
AI画像認識を利用した工場の見える化システム『A-Eyeカメラ』
『A-Eyeカメラ』は、ネットワークカメラで撮影された画像を元にAI(人工知能)が生産設備の稼働状況を判断し、クラウドに情報を蓄積するIoTシステムです。
蓄積された情報をリアルタイムに集計・分析し、全社員で稼働状況を共有することで「工場の見える化」を推進します。
また、生産設備のメーカー・新旧問わず対応可能であり、リアルタイムあんどん表示といった機能を活用した設備の稼働監視だけでなく、稼働時間などの蓄積データを基に充実した分析表やアラート通知などの機能も取り揃えています。
インダストリアルエンジニアリングの基本的な手法と、このような最新のテクノロジーを組み合わせることで、より効果的な業務改善を実現することができます。生産現場の課題に応じて、適切な手法とツールを選択し、継続的な改善活動を行うことが、競争力の強化につながるでしょう。