工場レイアウトとは?種類や設計手法、改善に役立つおすすめツール
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効率的な生産システムの構築に欠かせない工場のレイアウト。製造業の競争力を左右する重要な要素でありながら、その重要性が見過ごされがちです。本記事では、工場レイアウトの基本概念から、その種類、最新の設計手法、さらには生産性向上のための改善ポイントまで、幅広く解説します。
また、工場レイアウトの最適化に役立つおすすめツールもご紹介。経営者から現場管理者まで、製造業に携わるすべての方々にとって、有益な情報をお届けします。
工場の効率化を目指す皆様、ぜひ最後までお読みください。
1.工場レイアウトの意味と種類
工場レイアウトの意味
工場レイアウトとは、生産設備を適切に配置することを指します。これは単なる機械の配置だけでなく、作業効率や生産性の向上、安全性の確保など、多くの要素を考慮して決定される重要な要素です。工場によって最適なレイアウトは異なり、製品の種類、生産量、作業の流れなどに応じて柔軟に設計する必要があります。
工場レイアウトの種類
工場レイアウトには主に4つの種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
- ・ジョブショップ型 | 機械設備の機能別レイアウト
- ジョブショップ型レイアウトは、同じような機能の設備をまとめて配置する方式です。このレイアウトでは、エリアごとに作業内容が異なり、1人の作業者が複数の工程を行うことが特徴です。この方式では熟練工を育成しやすく、多品種少量生産に適しています。中小規模の工場によくみられるレイアウトで、柔軟な生産体制を構築できる利点があります。
- ・ライン型 | 工程の流れに沿ったレイアウト
- ライン型レイアウトは、製品の製造工程に沿って設備を配置する方式です。製品が順序良く移動していくため、自動車や家電製品の組立ラインなどで多く採用されており、作業の標準化や効率化が図りやすいのが特徴です。生産性が高く、作業者の専門性を活かしやすいですが、製品の種類が変わると全体のラインを変更する必要があるため、柔軟性には欠ける面があります。
- ・セル型 | 作業者中心のレイアウト
- セル型レイアウトは、作業者を中心に設備や道具を配置する方式です。電子機器や精密機械の製造などで採用されることが多く、品質管理も行いやすいのが特徴です。また、作業者の多能工化を促進し、生産の柔軟性を高めることができます。
- ・据え置き型 | 大型製品向けのレイアウト
- 据え置き型レイアウトは、動かすのが困難な大型製品を中心に、作業者や設備が製品の周りを移動しながら作業を行う方式です。大型の製品や重量物の製造に適しており、造船や航空機、大型建設機械の製造などで採用されています。このレイアウトの特徴は、製品の移動が最小限に抑えられることと、複数の作業を同時並行で行えることです。ただし、広い作業スペースが必要となり、設備の移動にも時間がかかるため、小型製品の生産には適していません。
工場レイアウトは製品や生産方式に応じて適切に選択することが重要です。効率的な生産体制を構築するためには、これらのレイアウトの特徴を十分に理解し、自社の生産に最適な方式を採用することが求められます。また、近年では生産の効率化や柔軟性の向上を目指し、複数のレイアウト方式を組み合わせたハイブリッド型のレイアウトも注目されています。
2.工場レイアウトを設計する手法「SLP」とは
ここではリチャード・ミューサー氏が提唱した工場のレイアウト計画手法「SLP(システマチック・レイアウト・プランニング)」について解説します。この手法は、工場レイアウトの設計を段階的に進めることで、効率的で最適な配置を実現することを目指しています。SLPは以下の6つのステップで構成されており、それぞれの段階で重要な分析と決定を行います。
P-Q(Product-Quantity)分析
P-Q分析は、何をどれだけ生産するかを明らかにするステップです。ここでは、製品の種類と数量を多い順に並べて整理します。この分析により、主力製品や生産量の多い製品を特定し、それらの生産に適したレイアウトを検討する基礎を作ります。P-Q分析は、工場レイアウトの方向性を決定する重要な出発点となります。
物の流れの分析(動線の確認)
物の流れの分析では、原材料の入荷から製品の出荷までの全工程における物の動きを視覚化します。この段階では、工程間の物の移動量や頻度、移動距離などを詳細に調査し、フローチャートやフロム・ツー・チャートなどを用いて表現します。これにより、無駄な動きや非効率な流れを特定し、改善の余地を見出すことができます。
アクティビティ相互関係図表
アクティビティ相互関係図表は、各作業区域や部門間の関係性を評価するツールです。この図表では、近接していることが望ましい区域や、逆に離れていることが望ましい区域を特定します。例えば、騒音の多い区域と静かな環境が必要な区域は離す必要があります。これにより、各区域の最適な配置を検討する基礎が形成されます。
アクティビティ相互関係ダイヤグラム
アクティビティ相互関係ダイヤグラムは、前段階で作成した相互関係図表をもとに、各区域の位置関係を図式化したものです。このダイヤグラムでは、関係の強さに応じて線の太さや本数を変えるなどして、視覚的に理解しやすい形で表現します。これにより、理想的な区域配置のイメージを具体化することができます。
スペース相互関係ダイヤグラム
スペース相互関係ダイヤグラムは、前段階のダイヤグラムに各区域の必要面積を加味したものです。ここでは、機械設備のサイズ、作業スペース、通路幅などを考慮し、実際の工場の広さに合わせてスケールを調整します。このステップにより、より現実的なレイアウトプランを作成することができます。
レイアウト案の作成
最終段階では、これまでの分析と検討をもとに、具体的なレイアウト案を複数作成します。各案について、効率性、柔軟性、拡張性、安全性などの観点から評価を行い、最適な案を選定します。また、将来の生産計画や技術革新なども考慮に入れ、長期的な視点でレイアウトを決定することが重要です。
SLPを用いた工場レイアウトの設計は、体系的かつ論理的なアプローチによって、効率的で最適な配置を実現することができます。この手法を活用することで、生産性の向上、コスト削減、作業環境の改善など、多くの利点を得ることができるでしょう。工場レイアウトの重要性を認識し、SLPのような体系的な手法を用いることで、競争力のある生産体制を構築することが可能となります。
3.工場レイアウト改善につながるおすすめのシステム・サービス
工場レイアウトの改善を効果的に行うためには、現在の工場が抱えている問題を正確に把握することが重要です。そのためには、工場の見える化を実現し、具体的な課題を発見することが不可欠です。ここでは、工場レイアウトの改善に役立つ見える化の重要性と、それを実現するためのツールについて解説します。
工場レイアウトの改善には課題の見える化が重要
工場レイアウトの課題を見える化するには、まず工場の現状を正確に把握する必要があります。一例として、以下のようなポイントを確認してみましょう。
- ・工場の構造やスペースを確認する
- 建物の構造、機械設備の配置、作業エリアの広さなどを詳細に把握します。これにより、有効に使われていないスペースを探すことができます。無駄なスペースを特定することで、より効率的なレイアウトの可能性が見えてきます。
- ・作業員の動線を把握する
- 従業員の移動パターンや頻度を分析することで、非効率な動きや無駄な移動を特定できます。これは、作業効率の向上や疲労軽減につながる重要な情報となります。
テクノアの『A-Eyeカメラ』で工場の見える化を実現
工場の見える化を実現するには、AIを活用して稼働監視を実現するIoTシステム「A-Eyeカメラ」がおすすめです。A-Eyeカメラは、ネットワークカメラで撮影された画像をAI(人工知能)が分析することで、生産設備の稼働率や稼働状況などを判断し、現状把握と工場の見える化を実現します。
機械設備のメーカーや年代を限定しないため、さまざまな設備でAIによる状況把握が可能です。主に次のような機能を持ちます。
・積層信号灯の点灯状態の判別機能
・画面上の情報の読み取り機能
・人物の有無の検知機能
生産設備の操作画面内の文字や、積層信号灯の点灯状態を学習内容に基づき判断します。豊富な可視化ツールを通じて、製造現場の稼働状況の確認・分析も可能です。
グラフなど分析表も充実しています。たとえば、稼働率推移グラフ、時間別稼働率円グラフ、ガントチャートなどの機能を用いて、稼働率の推移や傾向の把握、改善効果のチェックなどを生産設備ごとの分析が可能です。ITを活用して工場の見える化を実現するには『A-Eyeカメラ』をおすすめします。
AI画像認識を利用した工場の見える化システム『A-Eyeカメラ(エーアイ・カメラ)』
4.工場レイアウト最適化し生産性向上を目指す
工場レイアウトの最適化は、製造業の生産性向上と競争力強化の要となります。本コラムで解説した様々なレイアウト方式、SLPによる設計手法、そして最新のAI技術を活用した見える化ツールは、いずれも効果的なレイアウト改善のための強力な武器となります。
しかし、これらの知識や技術を持っているだけでは不十分です。重要なのは、自社の工場レイアウトを客観的に見直し、継続的に改善していく姿勢です。工場レイアウトの見直しを行う前に、以下の点について考えてみましょう。
- Q1. 現在の工場レイアウトは、生産効率を最大限に引き出せているか?
- Q2. 作業員の動線や設備の配置に無駄はないか?
- Q3. 将来の生産計画や技術革新に対応できる柔軟性を持っているか?
これらの問いに明確に答えられない場合、工場レイアウトの見直しが必要かもしれません。レイアウトの改善は、一朝一夕には実現できません。しかし、小さな改善から始めることで、大きな変革への第一歩を踏み出すことができます。
製造業を取り巻く環境は日々変化しています。グローバル競争の激化、技術革新のスピード、そして予測困難な市場変動に対応するためには、柔軟で効率的な生産体制が不可欠です。工場レイアウトの最適化は、そのための重要な戦略の一つなのです。
今こそ、自社の工場レイアウトを見直す好機です。本コラムで紹介した知識とツールを参考に、より効率的で競争力のある生産体制の構築に向けて、具体的な一歩を踏み出しましょう。工場レイアウトの改善が、貴社の生産性向上と持続的な成長への扉を開くことになるはずです。