エンジニアリングチェーンとは?製造業でよくある課題と改善ポイント

著者:ものづくりコラム運営 エンジニアリングチェーンとは?製造業でよくある課題と改善ポイント

エンジニアリングチェーンとは、製造業の製造プロセスにおいて、設計部門を中心とした業務全体の流れのことです。ものづくりに携わる企業が利益を最大化し、競争力を高めていく手段として、このエンジニアリングチェーンが注目されるようになっています。
本記事では、エンジニアリングチェーンの概要や、改善に向けて押さえておくべきポイントについて詳しく解説します。

1.エンジニアリングチェーンとは?

はじめに、エンジニアリングチェーンの基本的な概念について解説します。

エンジニアリングチェーンの意味

「エンジニアリングチェーン(Engineering Chain)」とは、製造業の製造プロセスにおいて、設計部門を中心とした業務全体の流れのことです。具体的には、市場調査や商品企画、設計からはじまり、製品設計や工程・設備設計、生産準備、生産、製造後のアフターサービスまで、製造工程の一連の業務が含まれます。製造における一連のプロセスであるエンジニアリングチェーンは、製品の品質を左右する重要な要素です。そのため、製造業で注目を集めるようになりました。

エンジニアリングチェーンが注目される背景

昨今エンジニアリングチェーンが注目されるようになった背景には、「デジタル化」があります。これまでアナログだった製品の製造プロセスを、デジタルの活用によって変革させる必要性が高まっているのです。

AIやIoT技術の発展に伴って、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が製造業にも押し寄せてくるようになりました。第4次産業革命の到来ともいわれる現代では、市場競争が激化しているため、時代の変化に取り残されて淘汰されていく企業も決して少なくありません。企業が市場競争を勝ち抜き、安定した事業活動を継続していくために、エンジニアリングチェーンのDXは必須です。

なお、経済のグローバル化や技術力の急速な進化、製品の品質基準の高度化など、製造業を取り巻く環境は日々変化しています。エンジニアリングチェーンに注目が集まっていることは一過性のトレンドではありません。製造業の生き残りに欠かせないポイントであるといえるでしょう。

エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの違い

エンジニアリングチェーンと似た用語として、「サプライチェーン」があります。エンジニアリングチェーンは「製造における業務の流れ」を指しますが、サプライチェーンは「顧客が製品を手にするまでの業務の流れ」を指す点が両者の違いです。サプライチェーンは、製品の原材料や部品の調達から生産、生産後の在庫管理、出荷、配送、販売、消費に至るまでの一連の流れを意味します。

多くの場合、エンジニアリングチェーンはサプライチェーンの上流工程とみなされ、品質は互いに連動します。たとえば、「エンジニアリングチェーンの観点で製造しやすく顧客から求められる製品を生産できるようになれば、下流であるサプライチェーンでは、コストを抑えて売上を伸ばしやすくなる」といったものです。

エンジニアリングチェーンとバリューチェーンの違い

エンジニアリングチェーンに関連するもう一つの用語として、「バリューチェーン」があります。バリューチェーンとは、事業活動における価値の流れです。具体的には、製品開発やマーケティング、製造、販売、労務管理、顧客へのアフターフォローなどに分類されます。

バリューチェーンの位置付けは製造工程であるエンジニアリングチェーンと、生産から消費までの流れであるサプライチェーンを包括するものです。製造業における一連の事業活動を、それぞれ「価値」として捉えます。そして、どの部分が強み・弱みであるかを分析し、事業戦略を改善していく際に活用するのがバリューチェーンです。

2.エンジニアリングチェーンにおけるよくある課題

次に、エンジニアリングチェーンを考え、最適化していくにあたり、よく挙げられる課題について解説します。

情報伝達の正確性や速さが不足している

一つ目は、エンジニアリングチェーンにおける情報伝達の正確性や速度の問題です。製造プロセスのうち「設計」にかかわる業務はとくに属人化しやすいといえます。デジタルが未整備であるケースも多く、情報伝達に問題を抱えている場合があるのです。

業務の際、正しい情報が直ちに伝達されないと、作業に出戻りが発生して余計なコストがかかります。たとえば、設計時点で出されている懸念事項が、次の生産準備の段階で共有されていない場合などです。この場合、生産準備に入ってから懸念事項が再度発生するため、設計段階に出戻りになってしまいます。
したがって、エンジニアリングチェーンを考えるうえで、情報伝達の正確さやスピードは大変重要です。

成果物の管理体制が機能していない

二つ目は、エンジニアリングチェーンで成果物の管理体制が機能していないケースがある点です。具体的には、成果物のバージョン管理などが該当します。製造プロセスでバージョンが十分に管理されていない場合、最新の情報を探すために工数が必要です。古いバージョンで生産を進めてしまった場合には工程に出戻りが発生します。すると、業務効率が著しく低下し、製造コストも跳ね上がるでしょう。

情報共有のズレは、不十分な連携で生じます。こうした事態は製造業でしばしば起こりうる問題でもあるため、エンジニアリングチェーンを考える際に押さえておきたいポイントです。

情報共有と作業工程の管理が連動していない

三つ目は、社内の情報共有と工程管理が連動していないケースがある点です。製造プロセスは複数の部門が横断的に関係します。しかし、問題はそれぞれの作業工程で必要となる情報が、部門間で引き継がれていない場合です。情報共有と作業工程が分離すると、生産性が落ちたり、品質低下を招いたりするリスクが生じます。エンジニアリングチェーンを考える際は、情報連携の運用が正しく行われ、必要な場所に必要な情報が十分に行き渡っているかどうかの検証も重要です。

3.エンジニアリングチェーンを改善するポイント

エンジニアリングチェーンの課題を発見し、改善するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

エンジニアリングチェーンマネジメントの強化

エンジニアリングチェーンを改善するためには、第一に「エンジニアリングチェーンマネジメント」の強化が重要です。「エンジニアリングチェーンマネジメント(Engineering Chain Management)」とは、エンジニアリングチェーンマネジメントを最適化させる経営手法です。英語の頭文字を取って「ECM」とも呼ばれます。
エンジニアリングチェーンマネジメントは、製造プロセスにおける部門間の円滑な情報共有や、管理体制の強化を実現するために有効な施策です。

たとえば、設計成果物や工程設計のデジタル化などが挙げられます。具体的には、製品のCADデータや3Dデータなどの設計図面の情報をデジタル化したり、製品情報や部品表、仕様書といった成果物をデータ化して管理したりするといったものです。これまでアナログで管理していた情報をデジタルデータによって管理すると、各プロセスにおける関係部門との円滑な情報共有が期待できます。その結果、開発コストの最小化や開発期間の短縮化、市場の需要に合った製品の開発といった、製品・生産の競争優位の獲得にもつながるでしょう。

デジタルを活用したデータ管理体制の構築

エンジニアリングチェーンを改善していくには、業務のデジタル化や、ITシステムを用いたデータ管理体制の構築も重要な要素です。中小企業がデジタルを基盤とした仕組みづくりを行う際、補助金の利用が可能な場合があります。専用のツールの利用でも円滑なDXが可能です。補助金やツールの利用によってさまざまなメリットがあるため、積極的に活用してみてください。

お役立ち資料のダウンロードはこちら:中小製造業がDXを進める6ステップ

4.企業の利益を最大化するエンジニアリングチェーン 鍵を握るのはIT化

エンジニアリングチェーンとは、設計部門を中心とした業務全体の流れです。製造業の製造プロセスでは、エンジニアリングチェーンの改善、最適化によって、業務効率化や生産性向上が期待できます。企業が市場で有利なビジネスを展開し、安定した事業活動を継続していくためにも、エンジニアリングチェーン改善は経営課題の一つです。

現場のデジタル化がエンジニアリングチェーン改善の鍵を握ります。業務の属人化を防ぎ、正確で迅速な情報共有を可能にするため、大企業だけでなく中小企業においてもデジタル化は必須の対応です。
デジタル化の仕組みづくりには、自社に適したITシステムの活用が近道になります。製造業においても、今回ご紹介したような業界特化型のシステムを導入すると、ゼロからシステムを開発するよりも低コストでの運用が可能です。自社のニーズに適したツールを選ぶ際の参考にしてみてください。

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また、部品納入状況の画面表示、進捗・納期管理機能、製番別原価グラフなどにより情報を「見える化」するため、共有もスムーズです。従来はアナログだった業務をデジタル化することで、OA(オフィスオートメーション)効果が期待できます。また、エンジニアリングチェーンの改善にも大きく役立つでしょう

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