生産管理のあるべき姿とは?正しく実現できていないと起こり得ること

著者:ものづくりコラム運営 生産管理のあるべき姿とは?正しく実現できていないと起こり得ること

生産活動を最適化する上で欠かせない業務が、生産管理です。製造業における生産管理とは、一定の品質の製品を、納期にあわせて生産・納品できるように計画し、進捗を管理することです。

具体的な業務は、
・生産計画の立案
・製品の受注
・原材料の調達
・生産状況のチェック
・品質のチェック
・在庫の管理
などになります。

生産管理が正しい状態にないと、モノづくりを適切に行うことができません。
本記事では、生産管理のあるべき姿とは何か、実現方法なども含めて詳しく解説します。

1.製造業における生産管理の「あるべき姿」とは

生産管理の「あるべき姿」を実現するためには、製造に関わるヒトやモノ、カネを管理する必要があります。さらに、受注から生産、納品まで一貫した管理が行われている状態が理想です。では「あるべき姿」とは具体的にどのような状態なのでしょうか。

QCDのバランスが適切な状態

QCDの3つのバランスが適切な状態であることが理想です。適切な状態は顧客と現場の関係や各工場によって異なります。QCDの各要素と相互の関係性は以下の通りです。

●Quality(品質)
品質とは、製品そのものの品質を指します。より良い製品を作るように努力するのは顧客満足度を高めるため、品質の追求は企業にとって重要です。しかし、品質を過剰に求めると原材料や工数といったコストが高くなるリスクがあります。

 

●Cost(コスト)
コストは、一つの製品が完成するまでにかかった原価を指します。製造業では売上から原価を引いたお金が利益となるため、コストをいかに抑えるかが経営のポイントです。ただし、コスト削減をするあまりに低品質な原材料を使用すると、品質に悪影響を及ぼすおそれもあります。

 

●Delivery(納期)
納期とは、顧客の求める納品時期です。近年では短納期化が進んでいるといわれており、顧客が提示する納期にいかに即応できるかが重要視されています。品質とコストとも密接に関係しているため、相互のバランスを考えながらリードタイム短縮を追求していきましょう。

 

生産の合理化における3Sが満たされている状態

生産管理のあるべき姿の2つ目は、合理化の3Sが満たされている状態です。
合理化の3Sとは下記を意味します。
・Simplification(単純化)
・Standardization(標準化)
・Specialization(専門化)
また、合理化とは生産現場や管理部門での無駄をなくし、生産性を高めることを意味します。合理化を実現する基本的な原則として3Sがあるのです。

●Simplification(単純化)
生産工程においてミスをなくし、スピードを早くするためには複雑な作業を単純化する必要があります。全工程を見直し、手順や作業内容を単純化できれば、製造スピードの向上やミスの防止につながります。

 

●Standardization(標準化)
標準化とは、どの業務をどの社員が行っても同じアウトプットになるよう、ルール化することです。作業手順が人によって違う状態では製品にムラができてしまい、求める品質を維持できません。作業方法を統一するなどのマニュアル作成が重要となります。

 

●Specialization(専門化)
取り扱う製品を減らして特定のものに注力したり、作業工程を細分化して作業者の専門性を高めたりすることを専門化と呼びます。専門化が注目されているのは、専門性を高めるとノウハウや知見が深まるため、競合他社との差別化を図れるなどのメリットがあるからです。

なお、3Sには、「整理」「整頓」「清掃」を意味する、改善の3Sもあります。次に紹介する5Sと合わせて、内容を説明します。

職場管理のための5Sが定着している状態

3つ目の生産管理のあるべき姿とは、5Sが定着している状態です。5Sは整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の頭文字の「S」から生まれた言葉です。職場環境を整える活動を指します。

●整理
不要なモノと必要なモノを分けて、不要なモノを処分することです。作業のスペースを確保するためには、整理をして不要なモノを残さないようにします。

 

●整頓
必要なモノをすぐに使える位置に保管することです。作業をする上で必要な工具や部品を探す手間がかからないようにします。

 

●清掃
清掃は生産現場をきれいにするだけでなく、設備メンテナンスも含まれています。清掃を適切に行えば、品質や納期を守りやすくなります。

 

●清潔
清潔は、整理・整頓・清掃を継続して行うことを指します。人員が入れ替わってもキレイな状態を維持するために重要な要素です。

 

●躾
躾は、社員に教育をしてルールを守らせるということを指します。躾が大切な理由は、製品づくりは日々の業務の積み重ねの上で成り立っているからです。

 

2.生産管理で「あるべき姿」と乖離があるときに起きること

生産管理のあるべき姿は、「QCD」「合理化の3S」「5S」の3つが満たされている状態です。あるべき姿と乖離があると企業のモノづくりに以下のような悪影響が出てきます。

高い生産性を維持できない

「受注→生産→納品」までの一連の流れを適切に管理できないと、無駄なコストや工数がかかり、高い生産性を維持できなくなります。無駄なコストや工数とは、不良品や誤発注、過剰在庫の発生や部門ごとの管理による転記作業などです。

精度の高い生産計画が立てられない

需要予測を人間のカンで行ってしまうと正確な予測ができません。適した原材料の手配ができなかったり、見える化ができず生産ラインに負荷がかかったりします。在庫数も適正に保てないでしょう。特に生産計画は、特定の担当者に依存してしまうなど、属人化しやすい部分でもあります。情報の共有や標準化が難しい程、業務の改善もしにくくなるため、管理の悪循環に陥ります。

業務の属人化

業務の標準化・単純化ができていないと、特定の人にしか業務を遂行できない状況になります。属人化の弊害は、担当者が不在になると業務が遅延しやすいことです。担当者が退職した場合は、引継ぎが上手くいかず、生産活動にも影響が出るなどのリスクもあるでしょう。

企業の信頼性の低下

生産管理の担当者が生産の進捗状況を適切に把握できていない状況は、納品の遅延につながりうる事態です。納品の遅れはクレームの発生や顧客との信頼関係を壊す要因になります。自部門だけの管理ではなく、生産活動に関わる全ての工程の状況を共有することで、納期遅延の対策や防止が素早く行いやすくなります。

3.生産管理のあるべき姿を実現する方法

製造業の生産管理は受注から出荷まで把握すべき業務が幅広いため、業務が煩雑になりやすいものです。生産管理のあるべき姿を実現するためには、自社の生産管理の現状を見直し、PDCAサイクルを回して改善することが必要なステップとなります。

まずは、生産管理においての課題を洗い出しましょう。課題の例は「生産管理で『あるべき姿』と乖離があるときに起きること」を参考にしてください。見えてきた課題をもとに、自社にとって適した生産管理の姿を明確にし、要件を定義します。効率的な業務フローやマネジメントしやすい組織体制、標準化された業務内容などの観点から考えるとよいでしょう。

課題を解決するための組織体制を、すべて人の手で構築するのは大変です。そこで、生産管理システムを導入するのも一つの手でしょう。生産管理システムの導入により受注や生産、売上など、製造に関する情報の一元管理ができるようになります。生産管理専用のシステムは、製造業が求める機能が充実している点がメリットです。

システムやツールの種類は豊富にあるため、会社の規模や生産方式など自社に適した生産管理システムを選ぶと、課題解決により近づくでしょう。

4.生産管理をあるべき姿にするには生産管理システムが有効

生産管理をあるべき姿にするには、生産に必要なヒト・モノ・カネを適切に管理しなければなりません。しかし、生産管理は業務範囲が広いため、紙などの帳票やEXCELでこれらの情報と流れを一致させることは簡単ではありません。

そこで生産管理システムの導入が有効ですが、中小製造業向けならテクノアの製品がおすすめです。個別受注生産型の機械・装置業様に特化した生産管理システム『TECHS-S NOA(テックス・エス・ノア)』は、情報の一元管理ができるだけでなく、仕掛段階での原価の予実対比などが行えます。たとえば部品の進捗状況をリアルタイムに把握できる機能があるため、複雑になりがちな部品管理にお困りの企業にぴったりのシステムです。また、クラウド対応型の生産管理システムとなるため、初期導入費用を抑えた利用が可能です。

一方の『TECHS-BK(テックス・ビーケー)』は、多品種少量製造業に特化した生産管理システムです。製番管理に対応しており、製番別の工程の進捗状況を正確に確認できます。原価も在庫材料費、消耗品費、仕入材料費などと細かく分析できるため、PDCAを回した改善に役立ちます。

最後にご紹介するのは、複雑になりがちな多品種少量生産の生産計画を自動化できる『Seiryu(セイリュウ)』です。機械の負荷状況を考えながら、納期に間に合うように自動的に割り付けてくれるシステムとなります。計画立案が特定の人に依存することなく、属人化の防止に貢献できるでしょう。

これらのシステムは一例となります。貴社の課題や管理すべき内容を確認したうえで、自社に合った生産管理システムの導入をおすすめいたします。

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