M2MとIoTの違いは?具体例やメリット、導入時の注意点【比較表あり】

著者:篠田 光貴(しのだ みつたか) M2MとIoTの違いは?具体例やメリット、導入時の注意点【比較表あり】

ネットワークの技術進歩により、モノとモノが互いに通信を行い、連携させることで機器の操作や制御、データの送受信が可能となりました。この技術をM2Mと呼びます。M2Mのテクノロジーの発展は、これまでアナログで行ってきた業務の省人化、最適化を可能にし、さまざまな分野の業務改善に役立っています。
本記事では、M2Mの基礎知識、導入によって得られるメリットと導入時の注意点について解説します。また本記事の最後で、業務効率化と生産性向上におすすめのサービスをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.M2Mとは?IoTとの違い

はじめに、M2Mの基本的な知識について解説します。また、よく似た技術として取り上げられるIoTとの違いについても解説します。

M2Mの意味

M2Mとは、ネットワークに接続されたモノ同士が直接通信を行う技術のことです。
「Machine to Machine」の略で、「エム・ツー・エム」と呼ばれます。
M2Mによって、通信する端末の操作や制御、データの交換などが自動で行えるようになることが特徴です。

M2MとIoTの違い

M2Mと似た技術として、IoTがあります。IoTとは、あらゆるモノをインターネットに接続する技術を意味します。M2Mは機械だけで完結できるため、必ずしも人間の介入は必要ではありません。一方で、IoTは人間が判断や操作の主体となるケースがほとんどです。また、M2Mではインターネットを必要とせず、クローズドなネットワークで完結できます。一方でIoTは、インターネットを通じて行うことが前提です。その他、M2Mの主な活用目的は機械からの情報収集や機械の制御ですが、IoTはデータの収集や分析によって、新たな需要の掘り起こしや市場開拓にも活用されています。
近年ではM2MとIoTを統合して「IoT/M2M」と表現することも多いです。これは、M2MとIoTとを明確に区別しにくいケースで用いられます。

<M2MとIoTの違い>

M2M IoT
人間を介さず機械だけで完結できる 人間が判断や操作の主体になるケースがほとんど
クローズドなネットワークで繋げることもある インターネットに繋がっていることを前提とする
主な活用目的は機械からの情報収集や機械の制御 新たな需要の掘り起こしや市場開拓も活用目的になる

関連コラム:IoTとは?意味や注目される理由、製造業の導入事例とよくある課題

M2Mの市場規模の広がり

2022年4月に矢野経済研究所が発表した調査レポートによると、国内におけるM2Mの市場は年々拡大し続けています。2021年度の市場規模は2,190億円に達しており、2025年度には2,910億円に達する見込みです。

【参照】「IoT/M2M(機器間通信)市場に関する調査を実施(2022年)」(矢野経済研究所)
参考(外部サイト):https://www.yanoict.com/summary/show/id/671

2.M2Mで実現できることの具体例

M2Mは製造業や自動車産業、農業や住宅産業などを中心にさまざまな業界で活用されています。ここでは、M2Mの活用によって実現した技術や仕組みの活用事例を5つ紹介します。

自動車の自動運転システム

自動運転と聞くとAI(人工知能)をイメージするかもしれませんが、AIはあくまで判断部分を担うものです。M2MはAIが行った判断を、関連する機械へ伝達する経路を確保するために用いています。たとえば、運転システムからハンドルを操作したり、ブレーキやアクセルの操作を行ったりすることは、AIによる判断をM2Mがそれぞれの制御機械に伝達することで成り立つケースが挙げられます。

住宅の電力における自動制御

建物の鍵や窓のセンサーと連携することで自動での戸締まりを行ったり、エアコンの風量や温度を自動調節したりという制御が可能となります。これは、M2Mによって各家庭の機械同士を接続し、データを相互で連携することで実現しています。

駐車場の管理

コインパーキングなどの自動精算機をM2Mによって制御できます。故障などの異常が生じた際に警報と連動して遠隔地に知らせたり、紙のレシートがなくとも売上金額を自動的に収集したりといったメンテナンスが可能となりました。

トランシーバー

従来のトランシーバーは、同じ周波数の電波を利用することから複数人が同時に会話できないデメリットがありました。現在は、M2Mによってトランシーバーが携帯電話網を経由し、複数の機器同士で同時会話できる機能が実現しています。また、端末同士の無線の電波が遠隔で届かない距離であっても、モバイルの通信網を経由したトランシーバーは会話が可能です。

農業

温度や湿度、日照時間や農業データを常時監視し、これらの変化によってハウスの窓やエアコンを自動でコントロールします。また、カメラを使用することで、無人の農場で盗難や鳥獣被害のリスクが発生したときに自動連絡を行えるようになっています。

<M2Mによって実現されている技術や仕組みの具体例>

M2Mで実現できる技術や仕組み 概要
自動車の自動運転システム 自動車に設置されたカメラやセンサーが、周囲の自動車や人などを検知し危険を察知した場合に自動でブレーキを掛けるといった制御が行われる
住宅の電力を自動制御する 建物内の鍵や窓、エアコンに取り付けたセンサーが、タイマーや環境の変化によって自動で開閉したり調節したりするといった制御が行われる
駐車場の管理 自動精算機が警報と連動することで故障時に警報を鳴らしたり、紙のレシートで管理していた売上金を自動連携できたりするようになっている
トランシーバーの同時通話 携帯電話網を経由することで、複数台の同時通話が可能になる
農業 カメラやセンサーを利用して、環境に合わせた空調の調整や万一の際の連絡が可能となる

3.M2Mを導入するメリット・注意点

ここからは、M2Mを導入することで得られる主なメリットと注意点について解説します。

M2Mを導入するメリット

●人的コストの削減
M2Mの導入により、従来はマンパワーで行っていた業務の自動化が可能となります。業務の自動化は業務効率を向上させ、結果として人的コストの削減につながります。また、定常業務の省力化にも貢献し、より生産的な体制づくりに向けて人材配置の見直しも行いやすくなるでしょう。
●ヒューマンエラーの予防
M2Mを導入すると業務の中で人が介在する作業が少なくなります。人力で作業を行うことはヒューマンエラーの発生リスクと直結しますが、M2Mによって人力の作業をなくし、結果としてヒューマンエラーを未然に防止することにつながります。
●業務の標準化による生産性の向上
M2Mを導入して省人化が進むと、海外含め世界中どの拠点においても同じ成果を出せるようになります。業務の属人化を防ぎ、業務フローが統一されることで、業務標準化が実現します。業務の標準化は、不要なコストや工数のカットにつながるため、生産性向上にも寄与するでしょう。

M2Mを導入する際の注意点

一方、M2Mを導入する際には注意点もあります。ここでは代表的な注意すべき3つのポイントを解説します。

●通信する機械間の安定した接続が不可欠
機械間で連携し、操作を行うためには、途切れのない安定した接続環境が必須ともいえます。万一、接続が不安定な場合は、通信が途切れてトラブルが起きるリスクがあるため注意してください。トラブルの例は、生産の停滞や機械の故障です。最悪の場合は重大な事故に発展する恐れもあります。M2Mの導入にあたっては、安定して接続できる機械の準備や通信環境の整備などが求められます。
●サイバー攻撃による損失や事故のリスクがある
M2Mはネットワーク接続によって成り立っているためサイバー攻撃を受けることで「機械の制御ができなくなる」「情報漏えい」といったリスクがあります。サイバー攻撃は大企業だけでなく中小企業であっても受ける危険性があります。他人事だと思って軽視せず、十分なセキュリティ対策を講じるようにしてください。
●システム構築の初期費用や運用コストの増大する恐れがある
M2Mの導入は、内容によっては大規模になる可能性もあり、それによってシステム構築の初期費用や運用コストが増大する恐れがあります。業務に独自のシステムを用いているとコストはさらに高くなることが予想されるため、事前の見積もりを忘れないようにしましょう。

4.身近な業務でもM2Mを活用可能

IoT/M2Mを活用して業務の効率化や生産性の向上を図りたい製造業者向けにおすすめのソリューションをご紹介します。

工場の見える化を推進する『A-Eyeカメラ』

1つ目は、AI画像認識を利用して工場の見える化が可能となるシステム「A-Eyeカメラ」です。A-Eyeカメラは、ネットワークカメラを介して撮影した画像をもとに、AI(人工知能)が生産設備の稼働状況を自動的に判断し、クラウド上に情報を蓄積できるシステムです。具体的には、積層信号灯の点灯状態や、CNC操作盤などの画面に表示された情報を判別して機械の稼働状況を判断できます。
蓄積された情報はリアルタイムでのデータ収集が可能となり、設備や機械の精度の高い稼働データから業務改善ができるようになります。

A-Eyeカメラについて詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
製品ページ:AI画像認識を利用した設備・機械の見える化システム『A-Eyeカメラ』

これはシステムの一例となりますが、IoT/M2Mの中でも比較的導入しやすいというメリットもあります。ぜひ自社のビジネスにお役立てください。

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篠田 光貴(しのだ みつたか) ブランディング戦略室

ITコーディネータ
2007年3月入社。
入社以来、東海地区を中心に生産管理システム「TECHSシリーズ」の営業に従事。
IT利活用での効率化はもとより、お客様の企業変革を行う仕組みのご提案をいたします。