【2026年版ものづくり白書|解説①】データが証明した賃上げ企業の共通点!利益を生む「省力化投資」の始め方

著者:ものづくりコラム運営 【2026年版ものづくり白書|解説①】データが証明した賃上げ企業の共通点!利益を生む「省力化投資」の始め方
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2026年版ものづくり白書では、原材料高や人手不足の中で持続的な賃上げを達成している成長企業には、「デジタル・省力化投資を積極的に行い、労働生産性を高めて利益率を拡大させている」という明確な共通点があります。

多くの経営者様が「原資がなくて給料を上げられない」と悩む中、白書データはアナログ経営の維持こそが最大のコストであり、投資による「儲かる仕組みづくり」こそが生き残りの唯一の道であることを証明しています。本コラムは、2026年版ものづくり白書の【第1部 第1章(業況・価格転嫁)】および【第1部 第4章(設備投資・デジタル活用)】のデータをもとに、多くの中小製造業様が直面する賃上げの壁と、その解決策となる「儲かる仕組みづくり(攻めのIT投資)」の重要性を徹底解説。アナログ経営の維持に潜むリスクを浮き彫りにし、人手不足を突破して成長を遂げるためのIT経営の第一歩を具体的に解説します。

1.2026年版ものづくり白書が指摘する「賃上げできる企業」の共通点

7割以上の企業が直面する賃上げの壁

2026年版ものづくり白書のデータによると、製造業において人材の確保・定着に向けて「賃金水準の向上(賃上げ)」に取り組む企業の割合は71.5%に達しており、過去最高水準を記録しています。これは、裏を返せば「給料を上げなければ、そもそも採用の土俵にすら立てない」という厳しい市場環境を示しています。

しかし、同白書ではもう一つの重要な相関関係が実証されています。それは、「収益力(利益率)の高い企業ほど、システム投資や省力化・省人化投資に積極的であり、結果として高い賃上げ率を達成している」という事実です。

2026年版ものづくり白書:第2章第3節 図232‐2

2026年版ものづくり白書:第2章第3節 図232‐2

投資をしている企業
労働生産性が向上 → 利益率が拡大 → 無理のない持続的な賃上げが可能

投資をしていない企業
生産性が停滞 ➡ 固定費(人件費)だけが増加 ➡ 企業の体力がすり減る

世間が賃上げムードだからといって、原資がないまま無理をして従業員の給料を上げるだけでは長続きしません。成長企業は必ず投資によって生産性を向上させ、原資となる利益を自ら作り出しています。

 

古い機械とアナログな体制が「稼ぐ力」を奪う

ここで、ある2つの町工場の日常を比較してみましょう。

A工場では、長年使い込んだ古い加工機械を騙し騙し使い、生産の進捗状況や在庫管理はベテラン社員が手書きのノートやExcelで個別に管理しています。トラブルが起きるたびに現場は大慌てで対応し、納期に間に合わせるために毎月多額の残業代が発生しています。

一方、B工場では、思い切って最新の省力化設備を導入し、さらに全部門の情報を一元管理できる生産管理システムを稼働させています。誰が・いつ・どの作業を行うべきかがデータで可視化されているため、段取り替えの無駄がなく、残業に頼らずとも高い生産性を維持しています。

一見、A工場の方が「設備投資にお金をかけていない分、コストを抑えられている」ように思えるかもしれません。しかし実際には、アナログな体制ゆえに「見えない無駄(機会損失や過剰な残業代)」を垂れ流しており、結果として利益率が低く、従業員の基本給を上げる原資が残らないのです。白書が示す通り、古い設備やアナログなやり方に固執すること自体が、実は最もコストの高い選択になっています。

2.「儲かる仕組み」へ転換するためのデジタル投資

単なるコスト削減ではない「攻めのIT投資」

2026年版のものづくり白書の第4章(我が国製造業の競争力強化に向けた視点)では、日本の製造業の課題として「先進国の中で労働生産性が依然として低水準であること」が指摘されています。この課題をクリアするために必要なのが、投資に対するマインドセットの転換です。

多くの企業において、ITツールやシステムの導入は「紙代を減らすため」「事務作業の手間を省くため」といった、いわゆる「コスト削減(守りの投資)」と捉えられがちです。

しかし、持続的な賃上げを達成している成長企業が行っているのは、売上や付加価値を高めるための「利益を生み出す仕組みづくり(攻めのIT投資)」です。

料理店の厨房に学ぶ、製造現場の効率化

これを分かりやすく例えるなら、人気料理店の厨房の動きと同じです。
注文が入るたびに、シェフが「冷蔵庫に食材が残っているか」をいちいち確認し、手書きの伝票を探し回っているようなお店では、どれだけ腕が良くても料理の提供スピードは上がりません。当然、1日に対応できるお客さんの数は限られ、売上も頭打ちになります。

しかし、注文が自動で厨房のモニターに表示され、食材の在庫数もリアルタイムで連動するシステムがあれば、シェフは「料理を作る(=付加価値を生み出す)こと」だけに集中できます。結果として回転率が上がり、利益が増え、スタッフの時給を上げることができるようになります。

製造業の現場も全く同じです。
現場の職人や技術者が「部品の在庫を探す時間」や「Excelへの二重入力」「手書き伝票の処理」といったノンコア業務(付加価値を生まない作業)に時間を奪われている状態を、ITの力で徹底的に排除する。これによって生まれた時間を、より難易度の高い加工や短納期対応といった「稼ぐ業務」へとシフトさせることこそが、デジタル化による正しい「仕組みづくり」なのです。

3.IT経営への第一歩:まずは自社の「データ」を知ることから

適切な価格転嫁も「データの見える化」から始まる

原材料やエネルギーコストが高騰するビジネス環境において、もう一つ避けて通れないのが「適切な価格転嫁(値決め)」です。白書でも価格転嫁の重要性が強調されていますが、ここでもデジタル化の成否が直撃します。

自社の原価計算を「勘」や「過去のデータ(Excelの古い単価)」に頼っている状態では、取引先(大手企業)に対して、コスト上昇の根拠を持った価格交渉を行うことができません。結果として、大手の要求をそのまま受け入れ、自社の利益を削る形で対応せざるを得なくなります。

IT経営の第一歩は、最新のデジタルツールを導入することそのものではありません。まずは、自社の現場で「何にどれだけのコスト(時間と原材料)がかかっているか」を正しく見える化し、データに基づく経営判断ができる状態を作ることです。自社のリアルな原価と進捗が1つのシステムで繋がって初めて、適切な値決めができ、無駄な投資を省くことができるようになります。

4.まとめ|設備・IT投資は、従業員の未来と企業の命運を決める「成長投資」

「原資がないから投資できない」という悪循環を断ち切る

「利益が出たらシステムを入れよう」「お金がないから今は賃上げも投資も無理だ」という考え方は、現代の激変する市場においては非常に危険な悪循環を生み出します。
以下のチェックリストを参考に、自社のガイドライン作成にお役立てください。

  • 投資をしない
  • 生産性が上がらない
  • 利益が出ない
  • 賃上げができない
  • 人材が流出し、さらに売上が落ちる

2026年版ものづくり白書が私たちに教えてくれるのは、この悪循環を断ち切るためには、小さくても一歩を踏み出す「決断(投資)」が必要であるということです。IT投資は一時的な支出(コスト)ではなく、未来の利益を最大化し、大切な従業員の給料を上げるための「投資」なのです。

次回第2回コラムでは、多くの工場が陥りがちな「Excel管理の限界」と、それを打破して利益を生むための「正しい生産管理システムの選び方・進め方」について、さらに踏み込んで解説します。
弊社は、中小製造業様の「稼ぐ力」を取り戻すため、現場の状況に合わせた生産管理・IT経営のサポートを行っています。経営の仕組みを変え、持続的な成長を目指したい経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

IT経営コンサルティング5.FAQ

Q1. ものづくり白書にある「設備投資・IT投資」を進めたいのですが、何から始めればいいですか?
巨額の費用をかけて一気に工場全体を変える必要はありません。まずは現場のボトルネック(最も時間がかかっている業務や、ミスが多い作業)を特定することから始めます。例えば、「在庫管理のExcelへの手入力をやめる」「進捗管理をデジタルボードに置き換える」といった、身近な部分の「見える化」から着手するのがIT経営の正しい第一歩です。
Q2. 価格転嫁(値上げ)の交渉をすると、取引先から仕事を切られるのではないかと不安です。
多くの中小企業様が抱く不安ですが、現在の社会情勢(政府・公正取引委員会の動き)は価格転嫁を強く後押ししています。重要なのは、感情論ではなく「原材料が〇%、エネルギー費が〇%上がったため、製造原価がこれだけ上昇した」という客観的なデータ(証拠)を提示することです。一元化されたシステムで正確な原価を算出することが、毅然とした交渉を可能にする最大の武器になります。
Q3. 投資をしても、本当に賃上げができるほどの利益が出るか心配です。
機械を入れる、あるいはシステムを入れる「だけ」では利益は出ません。重要なのは、システム導入と同時に「現場の古い業務フロー(無駄な二重チェックや転記など)を見直す」ことです。道具の導入と業務改革(DX)をセットで行うことで、労働生産性が大幅に向上し、確実に賃上げの原資となる利益を生み出せるようになります。


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