SaaSとは?サブスク型ソフトのメリット・注意点
著者:ものづくりコラム運営
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SaaSとは、ソフトウェアを自社で保有・管理するのではなく、インターネット経由で継続的に利用する提供形態です。
初期投資を抑え、業務や環境の変化に合わせて柔軟に使える点から、DX時代の標準的な選択肢となりつつあります。一方で、IaaSやPaaSとの違い、導入に向く業務・向かない業務を理解せずに選定すると、期待した効果を得られないケースもあります。本記事では、SaaSの基本から、その背景、メリットと注意点、そして中小製造業における導入判断の考え方までを整理します。
1.SaaSとは何か、その仕組みと広がりの背景
SaaSとは? ― 基本的な定義と考え方
SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをインターネット経由で提供し、利用者はサービスとしてそれを利用する形態を指します。利用者はソフトウェアをインストールしたり、サーバーを管理したりする必要がなく、ブラウザなどを通じて機能を利用します。
重要なのは、SaaSが単なる「月額課金のソフト」ではないという点です。SaaSは、運用・改善・保守を含めた仕組み全体をサービスとして提供するという思想に基づいています。
そのため、提供側は常にソフトウェアを改善し続け、利用者はその成果を自動的に享受します。ここに、従来型の買い切りソフトとは異なる前提があります。
なぜ今、SaaSという提供形態が広がっているのか
かつて業務システムの導入といえば、専用サーバーの準備や高額な初期投資が前提でした。
システムは「一度導入したら長期間使い続けるもの」であり、途中での見直しや変更は容易ではありません。そのため、導入時点で将来の業務まで想定し、過剰な機能を含めて構築することも珍しくありませんでした。
しかし、事業環境の変化が激しい現在、その前提自体が成り立たなくなっています。
製品ライフサイクルの短縮、顧客ニーズの多様化、人材不足など、企業を取り巻く状況は年々変化しています。こうした中で、「最初から完璧なシステム」を目指すこと自体がリスクになりつつあります。
SaaSは、この変化を前提とした提供形態です。
必要な機能を、必要な期間、必要な規模で使いながら、業務や組織の変化に合わせて調整していく。この考え方が、多くの企業に受け入れられるようになりました。
2.SaaSとあわせて理解したい関連用語
SaaSについて調べていると、「クラウド」「オンプレミス」「サブスクリプション」「XaaS」といった似た言葉に数多く出会います。
これらはしばしば混同されがちですが、それぞれが指している対象や視点は異なります。SaaSを正しく理解するためには、これらの言葉を一度整理しておくことが重要です。
クラウドとは何か?|利用形態を示す大きな概念
「クラウド」は、インターネット経由でサーバーやソフトウェアなどのIT資源を利用する考え方全体を指す言葉です。
SaaS、PaaS、IaaSはいずれもクラウドサービスの一種であり、クラウドは“上位概念”にあたります。
クラウドの本質は、「自社でシステムを保有・管理しなくても、必要なIT機能を必要な分だけ使える」という点にあります。
これにより、初期投資を抑えつつ、環境構築や保守運用の負担を軽減できるようになりました。
ただし、クラウド=SaaSではありません。
SaaSはクラウド上で提供されるサービスの中でも、「アプリケーションそのもの」を利用する形態を指します。
つまり、SaaSはクラウドという大きな枠組みの中の一つの提供モデルだと整理すると分かりやすいでしょう。
オンプレミスとは?|クラウドと対比される従来型の形態
オンプレミスとは、サーバーやソフトウェアを自社内に設置し、自社で運用・管理する形態を指します。
かつてはこのオンプレミス型が企業システムの主流でした。
オンプレミスの特徴は、システム構成や運用ルールを自社で細かくコントロールできる点にあります。
一方で、サーバー購入や環境構築に多額の初期費用がかかり、保守や障害対応も自社で行う必要があります。
SaaSは、このオンプレミス型と対比される存在です。
自社で「持つ・管理する」オンプレミスに対し、SaaSは「使う・任せる」考え方と言えます。
どちらが優れているという話ではなく、業務特性や組織体制によって向き・不向きが分かれる点が重要です。
サブスクリプションとは?|支払い方式を表す言葉
サブスクリプションは、料金の支払い方法を表す言葉です。
一定期間ごとに利用料を支払う定額課金モデルを指し、月額・年額課金が一般的です。
SaaSの多くはサブスクリプション型で提供されていますが、サブスクリプション=SaaSというわけではありません。
例えば、クラウドとは無関係なソフトウェアや、デジタルコンテンツ、さらには物理的な製品でも、サブスクリプション型で提供されるケースがあります。
そのため、サブスクリプションは「提供形態」ではなく「課金モデル」として切り分けて理解する必要があります。
SaaSは「クラウド上で提供されるソフトウェア」であり、サブスクリプションは「その料金の支払い方の一つ」という関係です。
XaaSとは?|あらゆる機能をサービスとして提供する考え方
XaaS(Anything as a Service / Everything as a Service)は、
ITに関するあらゆる機能を「サービス」として提供しようとする考え方を指します。
SaaS、PaaS、IaaSも、このXaaSという大きな流れの中に位置づけられます。
近年では、セキュリティ、データ分析、AI、業務プロセスそのものまで、さまざまな領域で「◯◯aaS」という形が登場しています。
XaaSという言葉が示しているのは、「自社で保有・構築するのではなく、必要な機能を外部サービスとして柔軟に利用する」という思想です。
SaaSの普及は、このXaaSの流れを象徴する代表例とも言えるでしょう。
用語を整理すると、SaaSの位置づけが明確になる
これらの用語を整理すると、次のように捉えることができます。
✅クラウド:インターネット経由でIT資源を利用する大きな概念
✅オンプレミス:自社でシステムを保有・運用する従来型の形態
✅サブスクリプション:料金の支払い方式
✅XaaS:あらゆる機能をサービスとして提供する考え方
✅SaaS:クラウド上で提供されるアプリケーションの提供モデル
この整理ができると、SaaSを「流行の言葉」としてではなく、業務や経営判断の選択肢の一つとして冷静に捉えられるようになります。
3.IaaS・PaaS・SaaSの違いを整理する
SaaSを正しく理解するためには、IaaSやPaaSとの違いを整理しておくことが欠かせません。これらはすべてクラウドサービスの一種ですが、提供される範囲と利用者の責任範囲が異なります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaSは、サーバーやストレージ、ネットワークといったITインフラそのものをサービスとして提供する形態です。
利用者は仮想サーバー上にOSをインストールし、ミドルウェアやアプリケーションを構築します。
自由度は高い一方で、
⚠️OSやセキュリティの管理
⚠️障害対応
⚠️システム設計
といった責任は利用者側に残ります。
そのため、ITに関する一定の知識や運用体制が必要になります。
【用語集で簡単解説!】IaaS(Infrastructure as a Service)
PaaS(Platform as a Service)
PaaSは、アプリケーションを動かすためのプラットフォームまでを提供する形態です。OSや実行環境は提供側が管理し、利用者はアプリケーション開発や設定に集中できます。
自社開発システムや独自サービスを構築する場合には有効ですが、業務アプリケーションとして使う場合は、やはり設計や運用の負担が発生します。
【用語集で簡単解説!】PaaS(Platform as a Service)
SaaS(Software as a Service)
SaaSは、アプリケーションそのものを完成形で提供します。
利用者は設定やデータ入力を行うだけで、すぐに業務で利用できます。
【用語集で簡単解説!】SaaS(Software as a Service)
つまり、
IaaS → PaaS → SaaS の順に、利用者の管理負担は小さくなる
と考えると分かりやすいでしょう。
中小製造業が業務システムとして利用する場合、多くのケースでSaaSが選ばれる理由は、この管理負担の差にあります。
4.なぜSaaSは「スモールスタート」を可能にしたのか
SaaSが広がった背景には、技術的な進歩だけでなく、提供側と利用側の関係性の変化があります。
従来のシステム導入では、導入時点で大きな費用を支払い、その後は保守契約を結ぶという形が一般的でした。この構造では、導入後の改善や使い勝手の向上は後回しになりがちです。
SaaSでは、利用料を継続的に支払う代わりに、
✅機能改善
✅法改正対応
✅セキュリティ強化
がサービスとして提供されます。
提供側は「使われ続けること」が事業の前提となるため、改善に投資し続けるインセンティブを持ちます。
この構造が、部分導入や段階導入を可能にしました。最初から全社導入を目指す必要はなく、一部業務から始め、効果を確認しながら広げていくことができます。
5.DX時代にSaaSが重視される理由
DXとは、単にITを導入することではありません。
業務の進め方や判断の仕組みを見直し、変化に対応できる状態を作ることが目的です。
SaaSは、こうしたDXの考え方と相性が良い仕組みです。
なぜなら、SaaSは「変わらない業務」を前提としていないからです。
💡業務が変われば、設定を見直す。
💡必要になれば、新しい機能を使う。
💡合わなければ、別のサービスを検討する。
この柔軟性こそが、SaaSがDX時代に欠かせない理由です。
| 項目 | IaaS | PaaS | SaaS |
| 提供される範囲 | サーバーやネットワークなどのITインフラを提供 | アプリケーションを動かすための実行環境までを提供 | 業務で使うアプリケーションそのものを提供 |
| 利用者が担う役割 | OSの設定、ミドルウェア構築、アプリ開発・運用まで自社で対応 | アプリケーションの設計・設定・運用を自社で対応 | 設定とデータ入力を行い、業務で利用する |
| 管理・運用負担 | 高い ITインフラの知識と運用体制が必要 |
中程度 開発・運用スキルが求められる |
低い 専門的なIT管理は基本的に不要 |
| 自由度・カスタマイズ性 | 非常に高い | 高い | 限定的 ※提供範囲内での設定が中心 |
| 導入までのスピード | 設計・構築が必要なため時間がかかる | 比較的早いが準備は必要 | すぐに利用開始できるケースが多い |
| 主な利用目的 | 自社独自のシステム基盤を構築したい場合 | 独自アプリケーションやサービスを開発したい場合 | 業務効率化・情報共有などをすぐに実現したい場合 |
| 中小製造業での利用例 | 基幹システムを自社開発・内製するケース | 特殊要件の業務システムを開発する場合 | 生産管理、原価管理、進捗管理などの業務システム |
| 向いている企業像 | IT部門・エンジニア体制が整っている企業 | 開発リソースを持つ企業 | IT専任が少なく、現場主導で改善したい企業 |
6.SaaS導入のメリットと、理解しておくべき注意点
SaaSのメリットとしてよく挙げられるのは、初期費用の低さや運用負荷の軽さです。
しかし、それ以上に重要なのは、導入後の付き合い方を設計しやすい点にあります。
一方で、SaaSには制約もあります。
カスタマイズ性には限界があり、仕様変更が自社の都合と完全に一致するとは限りません。また、長期間利用した場合の総コストをどう捉えるかも検討が必要です。
これらは欠点というより、SaaSという形態が持つ前提条件です。その前提を理解したうえで選定することが重要になります。
SaaSが向いている業務、向いていない業務
SaaSは万能ではありません。
業務の性質によって、向き・不向きがあります。
情報共有や可視化が重要で、一定の標準化が可能な業務は、SaaSと相性が良いと言えます。一方で、極端に独自性が高く、頻繁な仕様変更を前提とする業務では、SaaSが制約になることもあります。
重要なのは、「SaaSか否か」ではなく、その業務にとって最適な形は何かを考えることです。
SaaSが向いている業務の例
SaaSが力を発揮しやすいのは、「業務の流れがある程度整理されており、情報の共有や可視化が成果につながる業務」です。
たとえば、生産管理業務はその代表例です。
製造現場では、受注情報、工程進捗、在庫状況など、複数の情報をリアルタイムで把握する必要があります。SaaS型の生産管理システムであれば、入力されたデータが即座に関係者へ共有され、現場と管理部門の認識ズレを減らすことができます。業務改善を重ねながら運用できる点も、SaaSとの相性が良い理由です。
進捗管理や作業実績の記録も、SaaS向きの業務です。
作業内容や時間を都度入力することで、現場の負荷やボトルネックが見える化されます。こうした情報は、改善を重ねることで価値が高まるため、常に最新機能を利用できるSaaSの特性が活きます。
原価管理や見積管理も、SaaSと親和性の高い領域です。
材料費や加工費、外注費などの情報を蓄積し、過去実績と比較しながら判断する業務は、データの一元管理が重要になります。SaaSであれば、入力ルールを揃えながら運用でき、属人化の防止にもつながります。
製造業以外でも、勤怠管理や経費精算、顧客管理(CRM)などはSaaSが広く普及している分野です。
これらの業務は、業界を問わず共通性が高く、法改正や制度変更への対応も必要となるため、サービス側で継続的にアップデートされるSaaSの利点が活かされます。
SaaSが向いていない、または慎重な検討が必要な業務の例
一方で、SaaSの導入にあたって慎重な判断が求められる業務も存在します。
たとえば、極端に独自性の高い業務です。
長年の取引慣行や顧客ごとの特別ルールが複雑に絡み合っている業務では、SaaSの標準機能では対応しきれない場合があります。このような業務を無理にSaaSに合わせようとすると、現場の負担が増え、かえって非効率になることもあります。
業務ルールが整理されていない状態の業務も注意が必要です。
「担当者によってやり方が違う」「判断基準が暗黙知になっている」といった状態でSaaSを導入しても、入力ルールが定まらず、データが活用できません。この場合、まず業務整理やルールの見直しを行うことが先決です。
また、取り扱う情報の性質によっては、SaaSが適さないケースもあります。
たとえば、法令や契約上、外部環境でのデータ管理が厳しく制限されている情報を扱う業務では、SaaSの利用が難しい場合があります。このような場合は、オンプレミス型や閉域ネットワークの検討が必要になります。
製造業特有の例としては、装置制御やリアルタイム性が極めて高い工程管理が挙げられます。
ミリ秒単位の制御や、現場設備と直接連動する処理については、SaaSではなく、現場システムとして別途設計する方が現実的です。
SaaS導入で失敗しやすいパターン
SaaSが向いていないというより、「導入の仕方」で失敗するケースもあります。
たとえば、「とりあえず有名だから」「他社が使っているから」という理由で選定すると、自社業務とのズレが生じやすくなります。また、すべての業務を一気にSaaS化しようとすると、現場がついていけず、定着しない原因になります。
SaaSは、段階的に導入し、効果を確認しながら広げていくことで、本来の価値を発揮します。
重要なのは「SaaS向きかどうか」ではなく「どう使うか」
SaaSが向いているかどうかは、業務の内容だけで決まるものではありません。
自社の業務をどう改善したいのか、どこまで標準化できるのかを考えたうえで判断することが重要です。
SaaSは、業務を無理に変えるための道具ではなく、業務を見直すきっかけを与える仕組みとして活用することで、真価を発揮します。
7.複数SaaSを使う時代の課題
現在、多くの企業が複数のSaaSを併用しています。
これは自然な流れですが、全体設計を考えずに導入を進めると、データや業務が分断されるリスクがあります。
どの情報をどこで管理し、どのように判断につなげるのか。
SaaS導入は、個別のツール選定ではなく、業務全体の設計として考える必要があります。
失敗しないSaaS選定の考え方
SaaS選定で重要なのは、機能表の比較ではありません。
自社がどのような判断をしたいのか、そのためにどの情報が必要なのかを明確にすることです。
特に中小製造業では、現場と経営の距離が近い分、業務理解や導入後の支援体制が結果に大きく影響します。短期的なコストや機能数ではなく、長く使い続けられるかどうかという視点で選ぶことが重要です。
SaaSは「選び方」より「使い方」で価値が決まる
SaaSは、システム導入のハードルを下げました。
しかし、その価値は導入した瞬間に決まるものではありません。
自社の業務と向き合い、改善を重ねながら使い続ける。
そのプロセスを支える仕組みとして、SaaSをどう活用するかが問われています。
SaaSを正しく理解することが、DX時代の第一歩になります。














