図面管理とは?システム化する前に考えたいこと

著者:ものづくりコラム運営 図面管理とは?システム化する前に考えたいこと
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図面管理とは、図面を保管することでも、システムを導入することでもありません。どの情報を正とするかを決め、現場の判断を支えるための業務ルールそのものです。
図面管理を後回しにすると、製造ミスや手戻り、属人化といった問題が、静かに、しかし確実に積み重なっていきます。

本コラムでは、図面管理を「システムの話」にする前に、そもそも何を管理すべきなのか、なぜ管理が必要なのかを整理していきます。

1.そもそも図面管理とは何か?

図面管理は「システム導入の話」ではない

「図面管理」と聞くと、CADデータの保存場所や、ファイルサーバーの整理、あるいは専用システムの導入を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、現場で起きている多くのトラブルは、ツールの問題ではなく、考え方やルールが整理されていないことに起因しています。

たとえば、
・どの図面が最新版なのか分からない
・見積時の図面と製造時の図面が混在している
・ベテランに聞かないと判断できない

こうした状況は、特別な会社に限った話ではありません。
図面管理は後回しにされやすい一方で、一度問題が顕在化すると、現場全体に影響を及ぼす業務領域です。

なぜ管理が必要になるのか

図面管理とは、単に図面を保存することではありません。
本質的には、「正しい図面を、正しい人が、正しいタイミングで使える状態を維持すること」です。

図面は、製造現場において以下のような役割を担っています。

✅見積金額の根拠
✅製造指示の基準
✅品質判断の拠り所
✅トラブル発生時の証跡

つまり図面は、「情報」ではなく判断材料です。
この判断材料が曖昧な状態で使われると、現場では次のようなことが起こります。

⚠️同じ製品なのに、人によって判断が違う
⚠️「前はこうだった」という記憶に頼った対応
⚠️トラブルが起きた後で、原因を特定できない

図面管理とは、こうした判断のブレを防ぐための業務の土台なのです。

2.図面管理で扱う情報の範囲

図面は“形状データ”だけではない

図面管理という言葉から、形状データやCADファイルのみを想像すると、管理すべき範囲を狭く捉えてしまいます。
実際には、図面に付随するさまざまな情報も含めて管理する必要があります。

版管理(リビジョン管理)

まず欠かせないのが、版管理です。
図面は一度作って終わりではなく、修正や変更を重ねながら使われます。

✅どのタイミングで変更されたのか
✅何が変わったのか
✅現在有効なのはどの版なのか

これが整理されていないと、「最新だと思って使っていた図面が、実は古かった」という事態が起こります。
ファイル名で管理しているケースも多いですが、それだけでは限界があります。

図面にひもづく付帯情報

図面には、形状以外にも多くの情報が含まれています。

⚙️材質
⚙️表面処理
⚙️公差
⚙️使用部品や規格

これらの情報が図面と切り離されて管理されていると、
現場では「どれが正しいのか」を都度判断しなければなりません。

図面管理では、こうした付帯情報も含めて一つの判断材料として扱う視点が欠かせません。

図面の状態・ステータス管理

図面は常に「使ってよい状態」とは限りません。どの状態の図面なのかが分からないまま使われると、誤った判断が現場に持ち込まれます。

【ステータスのイメージ】
🟨作成中
🟫レビュー中
🟩承認済み
🟦製造可
⬛廃止

見積図面と製造図面の違い

図面には役割の違いがあります。代表的なのが、見積図面と製造図面です。

📌見積図面:仕様が確定していない段階の情報を含む

📌製造図面:現場判断の基準となる確定情報

この違いが曖昧なまま運用されると、
⚠️見積時と違う条件で製造してしまう
⚠️原価や工数が合わなくなる

といった問題につながります。
図面管理では、どの目的の図面なのかを明確にすることが重要です。

紙図面・PDF・CADデータの扱い

現場では、今も紙図面が使われているケースは少なくありません。スキャンした図面データを共有フォルダで管理しつつも、製造現場には印刷した紙図面を渡す…といったように運用方法は様々です。
重要なのは形式ではなく、どれを正とするかを決めることです。

図面と関連文書の関係

図面は単独で存在しているわけではありません。実際の製造現場では、図面とあわせて、さまざまな文書が参照されています。

たとえば、見積書や仕様書、工程表、作業手順書、検査基準書などです。

これらの関連文書との関係性をどう整理するかも、図面管理の範囲です。
文書管理と図面管理は似ていますが、目的が異なるため、同じ考え方では整理しきれません。

そのため、図面と関連文書を整理する際には、
次のような考え方が有効です。

✅図面を判断の中心に置く
✅関連文書は、図面を補足・裏付ける情報として位置づける
✅図面と文書の関係性を明確にする

たとえば、

・この図面に対応する仕様書はどれか
・この工程表は、どの図面を前提にしているか

といった関係性が分かる状態を作ることが、図面管理を機能させるうえで重要になります。

3.図面管理と文書管理の違い

図面管理で、図面と関連文書の関係性まで含めて整理する必要がある一方で、それらをすべて同じ考え方で管理しようとすると、かえって現場が使いづらくなることがあります。
その理由は、文書管理と図面管理では、そもそもの目的が異なるためです。
ここではまず、一般的な「文書管理」が何を重視する管理なのかを整理します。

文書管理とは何か

文書管理とは、社内外で共有・参照される「公式な情報」を適切に管理することを指します。
一般的には、次のような文書が対象となります。

【文書管理の対象例】
・規程・ルール類
・契約書・覚書
・手順書・マニュアル
・社内外向けの公式文書

これらの文書に共通する特徴は、「誰が読んでも同じ内容を理解できること」が求められる点にあります。
そのため文書管理では、以下のポイントとなる情報を整理し、内容の正しさと統一性を保つことが主な目的となります。

【文書管理のポイント】
・改訂履歴
・承認者
・有効期限
・公開範囲

図面管理が扱う情報の性質

一方で、図面管理が扱うのは、製造や判断に直接使われる情報です。

図面には、

⚙️形状や寸法
⚙️材質や公差
⚙️加工方法の前提条件

といった情報が含まれており、読み手の判断や作業内容そのものを左右する役割を持っています。

そのため図面管理では、
✅どの図面を使ってよいのか
✅この図面で製造判断して問題ないのか
✅この情報は確定しているのか

といった、現場判断に直結する視点が欠かせません。

図面管理と文書管理の決定的な違い

文書管理と図面管理を同じ考え方で整理しようとすると、現場では次のような違和感が生まれます。

【よくある違和感】
⚠️文書としては最新版だが、製造には使えない
⚠️承認済みだが、見積段階の情報が含まれている
⚠️改訂履歴はあるが、どの工程に影響するか分からない

これは、管理の目的が異なるためです。

📌文書管理:内容の正確性・統一性を保つ
📌図面管理:現場判断に使える状態を保つ

図面管理では、「保管されているか」よりも、「使ってよいか」「判断の根拠になるか」が重要になります。

文書管理と図面管理を分けて考える意味

文書管理と図面管理は、対立するものではありません。しかし、同一視してしまうと、どちらも中途半端になるケースが多く見られます。
以下のポイントをもとに、文書管理とも無理なく役割分担することが必要です。

【図面管理で大事な視点】
✅図面を中心に情報を集約する
✅現場判断に使えるかどうかを基準に管理する

4.図面管理の基本ルール

最低限、決めておきたいこと

図面管理というと、版番号や改訂履歴の管理に目が向きがちですが、
実務で機能させるためには、運用の前提となる基本ルールを決めておくことが欠かせません。
これらはシステム以前の話であり、ルールが曖昧なままでは、どれだけ高機能な仕組みを導入しても形骸化してしまいます。

また、図面管理のルールは、細かくしすぎると現場で守られなくなります。
まずは最低限、以下を決めることが重要です。

✅最新図面の定義
✅修正・変更時のルール
✅承認の考え方
✅現場が参照すべき図面

完璧さよりも、継続できることを優先すべきです。

保存場所は「全員が同じ場所」を前提にする

まず決めておきたいのが、図面の保存場所を一つに集約することです。
個人のPC、部門ごとのフォルダ、メール添付のまま保管されたファイルが混在すると、「どれが正なのか」を判断するために余計な確認作業が発生します。

図面管理では、「最新版がどこにあるか」ではなく、「ここを見れば必ず正しい図面がある」という状態を作ることが重要です。

【明確にしたいルール|保管場所編】
✅図面は必ず決められた場所に保存する
✅例外的な保存場所を作らない
✅メールやチャットは受け渡し手段であり、保管場所ではない

「個人管理しない」ことをルールにする

次に重要なのが、図面を個人の判断や裁量で管理しないことです。
ベテラン担当者のPCに最新図面があり、「その人に聞かないと分からない」状態になっている現場は少なくありません。

この状態では、

・担当者不在時に判断が止まる
・引き継ぎ時に情報が抜け落ちる
・「分かる人しか分からない」属人化が進む

といった問題が発生します。

図面管理の基本は、人にひもづく管理から、仕組みにひもづく管理へ切り替えることです。
誰が担当しても、同じ図面・同じ情報にたどり着ける状態を作ることが、管理の前提となります。

「最新版」と「使用可否」を明確に分けて考える

図面管理では、最新版=使ってよい図面、とは限りません。
見積段階の図面、検討用の図面、承認待ちの図面など、最新版であっても製造判断に使えないケースがあります。

【明確にしたいルール|使える図面編】
・最新版かどうか
・製造に使用してよいかどうか
・どの工程まで確定しているか

「最新版」という言葉だけに頼らず、現場で使ってよい状態かどうかを明確にすることが、図面管理の基本ルールになります。

変更ルールと判断基準を決めておく

図面変更が発生した際に判断基準が曖昧だと、現場では「念のため前の図面も残しておく」といった自己判断が増えていきます。

【よくある課題】
・誰が変更できるのか
・どの時点で確定とするのか
・変更がどの工程に影響するのか

これが結果として、

🚨複数の図面が併存する
🚨現場ごとに違う図面が使われる
🚨トラブル時に原因を追えない

といった事態につながります。

図面管理では、変更時のルールを明文化し、判断を個人に委ねすぎないことが重要です。

「例外を作らない」ことが重要

最後に、見落とされがちなのがルール運用の姿勢です。
「今回は急ぎだから」「この案件だけ特別」といった例外が増えるほど、図面管理のルールは形だけのものになっていきます。

【図面管理の基本ルール】
✅シンプルであること
✅誰でも守れること
✅例外を作らないこと

こうした前提条件を押さえたうえで初めて、図面管理は「管理のための管理」ではなく、現場判断を支える仕組みとして機能し始めます。

5.図面管理を後回しにすると何が起きるのか

図面管理を後回しにしてはいけない理由

図面管理の問題は、すぐに表面化しません。
日常業務は何となく回っているように見えますが、トラブルが起きた瞬間に、その影響は一気に広がります。

🚨原因が特定できない
🚨責任の所在が曖昧になる
🚨後から整理しようとしても手遅れになる

こうした状況に直面して初めて、「図面管理ができていなかった」ことに気づくケースも少なくありません。

その結果、「システムを入れれば何とかなる」という発想に陥りがちですが、整理されていない業務は、システム化しても整理されません。
図面管理を後回しにすることは、問題を先送りにしているだけであり、解決を難しくしているとも言えます。

なぜ図面管理は「分かる人しか分からない」状態になるのか

多くの製造現場では、長年の経験によって判断が回ってきました。
それ自体は悪いことではありませんが、判断基準が言語化されないまま業務が続くと、属人化が進んでいきます。

図面管理が曖昧なままでは、「この図面を使っていいのか」「どこまで確定しているのか」といった判断が、特定の人に依存する状態から抜け出せません。

図面管理は、単なる保管ルールではなく、現場全体で判断を共有するための共通言語づくりでもあります。後回しにされた図面管理は、属人化を助長し、結果として現場のリスクを高めていきます。

【図面管理が属人化している状態を示す“典型的な兆候”】
・ベテランの頭の中にある判断基準
・引き継がれない「なぜそうするのか」という理由
・人が変わると途端に回らなくなる業務

6.システム化の前に、図面管理の考え方をそろえる

図面管理は、ITの話ではありません。
業務の判断をどう支えるか、という考え方の話です。

✅どの図面を基準に判断するのか。
✅どの情報を「正」とみなすのか。
✅誰が、どのタイミングで、その情報を使うのか。

これらが整理されていない状態では、どれだけ高機能なシステムを導入しても、現場では「結局、誰に聞けばいいのか分からない」状況が残ってしまいます。

一方で、管理対象や判断基準が整理されていれば、システムはそれを迷わず共有するための器として機能します。システムは答えを作るものではなく、決めたルールを、ぶらさずに運用するための手段だからです。

図面管理を見直すことは、単に図面の置き場所や版数を整えることではありません。現場で行われている判断を言語化し、属人化していた業務を共通の基準に置き換えることでもあります。その意味で、図面管理の見直しは、生産管理全体を見直す第一歩と言えるでしょう。
図面管理が整理されることで、見積、工程、製造、品質といった各業務が、同じ前提情報のもとでつながり始めます。

システム化を検討する前に、まずは「考え方をそろえる」こと。
それが、図面管理を形だけで終わらせないための、最も重要な出発点です。

           

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