現場のムダは“歩行”から見える:簡易モーション分析のススメ
著者:ものづくりコラム運営
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なぜ“歩行”に注目するのか?結論から言えば、歩行を見るだけで、現場に潜むムダの多くが見えてきます。
作業そのものは変えていないのに生産性が上がった──そんな現場では、意外な“盲点”として歩行に着目することで改善の糸口が見つかるケースが多くあります。
なぜ歩行なのか。
それは、歩行が“付加価値を生まない作業の代表”であり、改善余地が大きい工程だからです。
しかも、特別なIoTや機器がなくても、紙とペンだけで可視化できます。忙しいのに作業が進まない現場ほど、目に見えない“歩くムダ”が積み重なっていることが多いのです。
1.よくある現場の一日:歩いてばかりで作業が進まない
どれだけ頑張ってもなぜか生産が伸びない──。
そんな現場を観察すると、作業者が1日のうちに“1万歩以上”歩いていた、というケースは少なくありません。
もちろん歩くこと自体が悪いわけではありません。
しかし、
◍部材を探しに行く
◍図面や治具を取りに行く
◍上司に確認しに行く
◍レイアウトが使いにくくて行ったり来たり
といった歩行は、本来の作業時間を圧迫する“隠れたコスト” です。忙しさの原因が「歩きすぎ」にあったとしたら──。歩行を見直すだけで、現場は大きく変わります。
2.歩行という“隠れコスト”が生産性を下げる理由
歩行は、付加価値を生まない動作の典型です。
1歩あたり約0.7秒とすると、1日1,000歩のムダ歩行で“十数分”が消えていきます。複数の作業者が同じ状態なら、そのロスは現場全体で何時間分にもなります。
さらに、歩行が多い現場ほど次のような問題が起きがちです。
| 💥作業の切り替えに時間がかかる 💥探し物が増えてストレスが溜まる 💥作業の流れが中断され、生産性が落ちる 💥危険動作や疲労の増加につながる |
つまり、歩行は“結果”であり、背後には必ず改善すべき原因があります。
3.モーション分析のポイント:見るべきは“歩く理由”
歩行が多い現場にも、必ずパターンがあります。簡単に分類すると、次の4つに整理できます。
- 【1】探し歩行
- 例)部材・図面・治具が見つからず、ウロウロしてしまう
- 【2】取り歩行
- 例)よく使う物が遠い位置にあり、毎回取りに行く
- 【3】確認歩行
- 例)上司や工程担当に“聞きに行かないとわからない”状態
- 【4】習慣歩行
- 例)昔からこの動線…という理由で、無意識に遠回りしている
改善のコツは、「歩数」ではなく「歩く理由」を見ること。理由がわかれば、改善ポイントは自然に浮かび上がります。
4.現場でできる“紙とペンだけ”の簡易モーション分析
モーション分析というと難しそうに聞こえますが、実際は次の5ステップだけで十分です。
| ✅現場レイアウト図をコピーする(手書きでもOK) ✅作業者の動きを矢印で書き込む ✅距離が長い線を太くする ✅歩行が多い場所に「なぜ?」を3回書く ✅すぐ変えられる改善策から実行する |
わずか10分観察するだけでも、ムダな動線が驚くほど浮き彫りになります。
5.ちょっとした工夫でも“2ケタ%”の削減は狙える
歩行のムダは、少しの工夫で大きく減らせます。大がかりなレイアウト変更をしなくても、次のような取り組みで“2ケタ%の歩行削減”が起きる現場も珍しくありません。
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【取り組み例】
🔎よく使う工具・部材を“手を伸ばせば届く範囲”に置く
🔎探し物ゼロを目指し、ラベル付けや影置きを徹底する
🔎一緒に使う物をセット化し、移動回数を減らす
🔎簡単なレイアウト微調整で、動線の遠回りを解消する
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ポイントは、「大きく変えようとしない」こと。一つの歩行理由をなくすだけで、現場は確実に軽くなります。
6.まとめ:歩行を見ると、現場のボトルネックが見えてくる
歩行は“結果”であり、その裏には必ずムダの原因があります。まずは10分だけ、作業者の動線を書き出してみてください。
歩行を見ると、現場のムダが一気に見える。
それが、現場改善の第一歩です。














