「試作」とは? 製品開発における定義と種類、メリットをわかりやすく解説
著者:プラッとものづくり コラム担当
現在はプラットフォーム事業部にて様々な業務に従事しております。 モノづくり企業様の「知りたいが見つかる」コラムを作成し、誠実に情報発信してまいります。
製品開発において「試作(プロトタイプ)」は、アイデアを形にし、問題点を発見・改善するために欠かせないプロセスです。新しいスマートフォンや家電製品、自動車など、私たちの身の回りにある製品のほとんどは、量産される前に何度も試作が繰り返されています。
この記事では、試作の定義や種類、具体的なメリットまでわかりやすく解説します。
1. 試作の定義と目的
試作とは、製品を量産する前に、設計や機能を実際に形にして検証する工程のことです。英語では「Prototype(プロトタイプ)」と呼ばれ、製品開発において重要なプロセスです。
例えば、新しいスマートフォンを開発する場合を考えてみましょう。CADデータやコンピュータ上のシミュレーションだけでは、実際に手に持ったときの感触、ボタンの押しやすさ、画面の見やすさといった細かな使い勝手はわかりません。また、組み立てた時の材質同士の相性、部品のかみ合わせが上手くいかない場合もあります。試作を行い、試作品を実際に触って確認することで、図面だけでは見えなかった問題点を具体的に可視化し、改善策を検討できます
試作の主な目的は、設計上の問題点を早期に発見すること、実際の使用感やデザインを確認すること、そして性能や耐久性をテストして量産前に改善点を洗い出すことにあります。製品開発のプロセスにおいて、試作は「アイデアを現実にする架け橋」としての重要な役割を果たしているのです。
2. なぜ試作を行うのか?意義と役割
試作を行う最大の意義は、リスクを早期に発見・回避できることにあります。もし量産が始まってから設計ミスや使い勝手の悪さ、製造上の課題が見つかると、大量の不良品が発生したり、生産ラインを停止して設計をやり直したりする必要が生じます。こうした事態は、大きな金額的損失につながりかねません。
しかし試作段階で問題を発見できれば、修正にかかるコストと時間は最小限で済みます。1個あたりの試作品の製作費用は高くても、トータルで見れば圧倒的に低コストでリスクを回避できるのです。これは保険のようなもので、初期投資として試作にコストをかけることで、将来的な大きな損失を防ぐことができます。
3. 試作の種類
試作は、開発の段階や目的によって異なるタイプに分かれます。ここでは、代表的な4つの試作段階について解説します。
① 原理試作(コンセプト試作・PoC)
原理試作は、開発の最初期に行われる試作です。製品の核となる技術や仕組みが機能するかを検証し、「そもそもこのアイデアは実現可能なのか?」という根本的な問いの答えを考えます。
見た目や細部の仕上げは考慮せず、段ボールや発泡スチロールといった簡易的な素材で作ることも珍しくありません。PoC(Proof of Concep:概念実証)とも呼ばれ、最小限のコストとスピードで実現可能性を確認することが目的です。
② 機能試作(エンジニアリングプロトタイプ)
機能試作では、製品の主要な機能が実際の使用環境で動作するかを確認します。基本的な機能は本番に近い状態で作成しますが、デザインはまだ簡易的でも構いません。
性能測定を繰り返して改良を重ねることで、製品の完成度を高めていきます。この段階で機能が実際に役に立つかをしっかり検証することで、後のデザイン試作や量産試作へスムーズに移行できます。
③ デザイン試作(デザインモックアップ)
デザイン試作は、ユーザーが最初に触れる「見た目」と「操作感」を磨き上げるための試作です。外観の質感、色、形状を本番に近づけ、実際のユーザーテストを実施することもあります。
例えばスマートウォッチであれば、ボタン配置や画面の見やすさを複数パターン作って比較したり、家電製品であれば操作パネルの使いやすさをユーザーに評価してもらったりします。機能的には問題なくても、使いにくい、見た目が悪いといった理由で顧客に選ばれにくくなる製品もあります。デザイン試作は、そうした失敗を防ぐための重要な工程なのです。
④ 量産試作(パイロット生産)
量産試作は、実際に量産を想定している生産ラインで問題なく製造できるかを確認する最終段階です。本番と同じ材料・製造方法で作成し、生産効率、コスト、品質の安定性をチェックします。
例えば自動車メーカーでは、工場のラインで実際に数十台作って組み立て手順や品質を検証します。パイロット生産とも呼ばれ、量産移行前の最終確認として作業手順書や検査基準を確立する重要な工程となります。ここでの確認を怠ると、量産開始後に予期せぬトラブルが発生し、大きな損失につながる可能性があります。
4. 試作を行うメリット|コスト削減・品質向上など4つの効果
試作を行うことで、以下のようなメリットがあります。
① 開発コストの大幅な削減
量産後の修正には莫大な費用がかかります。しかし試作段階なら、低コストで何度でも改善できます。
② 開発期間の短縮
早期に問題を発見することで後戻りや手戻りが減り、結果的にスピーディな開発が可能になります。
③ より高品質な製品の実現
実際に触って確かめることで、図面やシミュレーションでは気づかなかった改善点が見つかります。使い勝手の細かな調整、強度や耐久性の最適化、想定外の使用シーンへの対応などを行い、製品の品質向上を図ることができます。
④ 投資判断の材料になる
スタートアップや新規事業で、経営層や投資家に対して「実際に動くもの」を見せることで、プロジェクトへの理解や資金調達の支援を得やすくなります。
5. まとめ
試作はアイデアを形にする上で設計や製品開発における問題を早期発見し、最終的に競争力のある製品を生み出すための重要なプロセスです。重要なのは「完璧な試作品を作ること」ではなく、「早く作って、早く学び、確実に改善すること」です。特にスタートアップ企業や新規事業の場合、限られた予算の中で製品開発を進めなければならないことも多いでしょう。試作に力を入れることで一時的に支出が増えても、量産段階で発生する大規模な修正コストや不良品の損失と比べれば、はるかに少ない投資で済みます。
ものづくり相談ができる当社のマッチングプラットフォーム「プラッとものづくり」には、試作を得意とする製造業グループが在籍しており、設計から製造までワンストップでの依頼が可能です。試作の力を最大限に活用して、市場で勝てる製品作りを始めましょう。
詳細はこちら
https://platto.technoa.co.jp/
以下から登録してください。
https://mono.platto.technoa.co.jp/tempregist/customerinputuser
※登録、相談時のサービス利用料無料













