これからの中小製造業に必要なスキルとは?実践的リスキリングとOJTのすすめ
著者:ものづくりコラム運営ものづくりコラム運営チームです。
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「リスキリングは、個人のキャリアと企業の競争力を同時に高める“次世代のものづくり戦略”です。」
少子高齢化、人手不足、技術の進化…。今、製造業に必要なのは“現場を止めない”多能工人材の育成。
本コラムでは、製造現場で求められる「多技能化」と「リスキリング」の基本から解説します!
1.製造業を取り巻く現状とスキル再構築の必要性
日本の中小製造業は、急速な高齢化と生産年齢人口の減少という社会課題に直面しています。これらに対応するには、既存社員のスキル向上と多能工化の推進が急務です。
高齢化と人手不足の影響
製造業の現場では、技術伝承が追いつかないままベテラン社員が退職し、若手人材の確保も困難になっています。このままでは業務効率の低下や品質不良のリスクが高まる恐れがあります。
なぜスキルの再構築が必要か
現場の高齢化や人手不足が進む中で、変化に対応するため、今後は社員一人ひとりが新たな知識や技術を習得し、業務の幅を広げることが必要です。スキルアップを支援する取り組みは、企業の競争力を高めるだけでなく、従業員の働きがい創出にもつながります。
そんな中、一人の従業員が複数の業務をこなせる“多技能化”が注目されています。これは、業務の属人化を減らし、生産の安定性や効率性を確保する上で不可欠です。
さらに、IT・デジタル技術の導入が進む製造業において、従業員の「スキルの再構築(リスキリング)」は、生産ラインの変化や新たな設備導入に対応するための重要な取り組みです。
2.多技能化とリスキリングとは何か
「多技能化」や「リスキリング」といった言葉が注目されていますが、その目的と違いを正しく理解し、社内での取り組み方を見極めることがポイントです。
多技能化の意味と効果
多技能化とは、従業員が複数の作業や職務に柔軟に対応できるスキルを持つこと。これにより欠員時の応援体制が整うだけでなく、仕事の偏りの解消や現場全体の柔軟性向上にもつながります。
リスキリングとは?
リスキリングは、「別の職種に対応できるよう新たなスキルや知識を再習得すること」です。特にデジタル技術(IT・DX)の導入が進む中、従業員がツールやシステムを理解・活用できるようになることが求められています。
3.リスキリング研修の進め方と効果的なOJT設計
研修やOJTは、計画的に進めることで効果が高まります。業務に直結する学習設計と社内体制の整備が成功のカギを握ります。
リスキリング研修の基本ステップ
リスキリングを実施する際には、以下のような明確なプロセスが必要です。
・現在の業務と必要スキルの棚卸し
・習得目標と研修内容の明確化
・教育の実施と進捗確認
・フィードバックと再設計
これにより、企業全体での育成戦略が見える化され、社内の教育文化も定着していきます。
OJTの設計と役割
OJTは、現場での実践的なスキル習得を促す方法です。属人化を防ぐ指導マニュアルの整備や、担当者による定期的なフォローを行うことで、効果的なスキル伝承が実現します。
【現場主導のOJT設計と成功事例】
■目的のあるOJTが成果を生む
「教えることが目的」ではなく、「習得したスキルで何ができるようになるか」を明確にしながらOJTを実施することで、効果が高まります。
(成功事例)自社工場の多能工化 ある中小製造業では、ベテラン社員が若手に技能を引き継ぐ“ペア制度”を導入し、生産管理システムで進捗とスキルを可視化。半年でラインの欠員時応援体制が整い、生産性が15%向上した事例もあります。 |
4.リスキリングによる期待される成果
スキル育成への取り組みは、単なる「教育」ではなく、経営戦略としての価値を持っています。以下にその効果をまとめます。
従業員にとってのメリット:キャリアアップとやりがい向上
新しい知識や技術を身につけることで、将来的にはより高度な仕事や好条件のポジションへの道も開かれます。
また、習得したスキルが仕事に直結することで、自分の成長を実感できる=モチベーションアップにもつながります。
企業にとってのメリット:競争力と柔軟性の向上
現場で求められるスキルを常にアップデートできる体制が整えば、市場の変化や顧客ニーズの変動にも柔軟に対応できる組織になります。
結果として、「欠陥ゼロ」や納期遵守といった品質目標の実現にもつながります。
離職率の低下・人材定着にも効果
成長機会がある企業は、従業員にとって「長く働きたい職場」になります。教育の仕組みがあるだけで、若手の定着やベテランの再活性化にも貢献できます。
5. リスキリングを成功させるための4つのポイント
(1)企業の目標を明確に設定する
「どんなスキルを、どの職種に、どのレベルまで習得させるか」など、経営戦略に紐づいた人材育成のゴールを設定することが第一歩です。
(2)従業員のニーズを把握する
本人が「学びたい」「役立てたい」と感じる内容でなければ、定着しません。現場の声を取り入れた育成計画が、学習の継続率を高めます。
(3)レベルに合わせた効果的な学習プログラムを設計
座学・動画・eラーニング・実技OJTなどを組み合わせ、従業員のレベルに合わせた研修設計が必要です。
(4)継続的なフォローアップと社内サポート
学びっぱなしでは意味がありません。メンター制度の導入や教育履歴の記録など、継続支援の体制づくりが不可欠です。
6.まとめ:中小製造業が今すぐ取り組むべきスキル育成戦略
スキルの再構築やリスキリングは、一度きりの施策ではなく、継続的な取り組みとして文化化することが大切です。
「忙しいから教育できない」のではなく、教育をしないと、将来さらに忙しくなるという危機感を持つことが重要です。
特に中小企業では、一人ひとりの役割が大きく、多能工化によって生産ラインの柔軟性や欠員対応力が高まり、結果的に“欠陥ゼロ”の実現にも近づくことが期待されます。
今ある人材をどう活かし、DX時代にふさわしい人材へと育てていくか。この視点を持つ企業こそが、変化の激しい時代でも持続可能な成長を実現できるでしょう。
まずは、小さな一歩でも構いません。
現場に即した研修やOJTの見直しから始めてみてはいかがでしょうか?
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製造業にとって、リスキリングは真面目で地道な取り組みが多い分野です。
しかし、もっと柔らかい視点で発想の転換をしてみると、新たな気づきやチームの活性化にもつながります。
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