QMSとは?主な規格の種類や導入の効果を高めるポイント
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QMS(品質管理システム)とは、企業が提供する製品やサービスの品質を維持・向上させるための体系的な仕組みです。Quality Management Systemの頭文字を取ったもので、日本語では「品質管理システム」や「品質マネジメントシステム」と呼ばれています。中小製造業において、QMSの導入は顧客満足度の向上や業務効率化につながる重要な取り組みです。本記事では、QMSの概要や導入目的、主な規格、そして導入効果を高めるためのポイントについて詳しく解説していきます。
1.QMS(品質管理システム)の概要と導入の目的
QMSは企業の品質向上を支える重要な基盤です。その概要と導入目的を理解することで、効果的な品質管理システムの構築が可能になります。
QMSとは
QMSは、品質管理システム(Quality Management System)の略称で、良い品質の商品やサービスを提供するための仕組みです。日本産業標準調査会の定義によると、QMSとは「品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム」とされています。つまり、QMSは組織を動かすための全体的な仕組みであり、その対象は組織全体や事業所単位、さらには製品レベルまで及びます。
マネジメントシステムとは、組織の目的を達成するための一連の要素であり、方針の策定、計画の立案、実行、評価、改善といったプロセスを含みます。QMSはこれらを品質の観点から体系的に統合したものです。
引用:「品質マネジメントシステム(QMS)」(日本産業標準調査会)
QMSを導入する目的
QMSを導入する主な目的は、品質を向上させ、顧客満足度を高めることにあります。具体的には、QCD(品質・価格・納期)のうち、「品質」の面で顧客の期待するレベルを超える製品やサービスを提供することを目指します。
例えば、製造業であれば以下のような目標が考えられます
・品質:不良品率の低減や製品の耐久性向上
・価格:生産効率の改善によるコスト削減
・納期:生産リードタイムの短縮や納期遵守率の向上
これらを達成するためには、組織内でPDCAサイクルを回し、継続的な改善を図ることが重要です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つの段階を繰り返すことで、業務プロセスを継続的に改善する手法です。QMSはこのPDCAサイクルを組織全体で推進するための枠組みとなります。
2.QMSに関する主な2つの規格
QMSの導入においては、品質向上の達成に向けたガイドラインである規格が重要な役割を果たします。さまざまな規格が存在しますが、特に普及しているのが「ISO9001」と「SQF」の2つです。これらの規格は国際的にも信頼されており、認証を取得することで製品やサービスの信頼性を高め、市場での競争力を強化することができます。
なぜ「ISO9001」と「SQF」は信頼され、広く普及しているのでしょうか。その理由は、これらの規格が国際的な標準として認められており、多くの企業や団体が採用しているためです。
【ISO9001とSQFが広く信頼され、普及している理由】
・国際的な認知度:特にISO9001は世界中で認知され、多くの企業や組織で採用されています。
・汎用性:業種や規模を問わず適用できる柔軟性があります。
・継続的改善の促進:これらの規格は、組織の継続的な改善を促す仕組みを含んでいます。
・顧客満足度の向上:規格に沿った品質管理により、顧客満足度の向上が期待できます。
・競争力の強化:認証取得により、市場での競争力が高まります。
これにより、同じ基準で品質を評価・管理することが可能となり、取引先や顧客からの信頼を得やすくなります。
ISO9001
ISO9001は、QMS規格の中でも最も有名な国際規格です。あらゆる業種・規模の組織に適用可能で、組織のマネジメントシステムに関する要求事項を定めています。認証を取得することで、組織の品質管理体制が国際的な水準に達していることを証明できます。
【ISO9001の認証を受けるために満たすべき要件】
・顧客重視:顧客のニーズと要求を理解し、それを満たす製品やサービスを提供する。
・リーダーシップ:トップマネジメントが組織の方向性を示し、品質マネジメントシステムの有効性を確保する。
・人々の参画:従業員全員が能力を最大限に発揮し、組織の目的達成に貢献する。
・プロセスアプローチ:活動や資源を相互に関連するプロセスとして管理し、効率的に結果を達成する。
・継続的改善:PDCAサイクルを通じて、品質マネジメントシステム全体を継続的に改善する。
・意思決定への事実の活用:データや情報を基に客観的に意思決定を行う。
・関係性の管理:供給者やパートナーとの関係を戦略的に管理し、相互の価値創造を促進する。
これらの要件を満たすことで、組織は一貫して品質の高い製品やサービスを提供できる体制を構築できます。なお、JIS Q 9001はISO9001を日本語に翻訳・適用したもので、日本国内で円滑に使用するために作成されています。
▶【関連コラム】製造業におけるISO9001とは?認証取得のメリットと運用のポイント
SQF(Safe Quality Food)
SQFは国際食品安全イニシアチブ(GFSI)に承認されており、食品業界に特化した品質および安全に関する国際規格です。食品の安全性と品質を確保するための厳格な基準を定めており、食品の製造から流通までの全段階に適用されます。主に食品製造業、小売業、農業などの食品関連産業で広く採用されています。
【SQFの特徴】
・食品安全に重点:危害要因分析重要管理点(HACCP)の原則に基づいた食品安全管理システムを要求します。
・品質管理の要素も含む:食品の品質面でも高い基準を設けています。
・サプライチェーン全体をカバー:一次生産から小売りまでの各段階に適用可能です。
・リスクベースのアプローチ:食品安全リスクの特定と管理に重点を置いています。
・段階的なレベル:SQFには、食品安全のレベル2と品質のレベル3があり、組織の必要性に応じて導入できます。
なお、SQFの認証は、SQF協会(SQFI)によって認定された第三者機関が審査・認証を行います。認証プロセスには、文書審査や現地審査が含まれ、定期的な再審査も必要です。SQFの認証を取得することで、食品関連企業は安全性と品質の高い製品を提供していることを証明し、消費者や取引先からの信頼を獲得できます。
3.QMSの導入効果を高めるためのポイント
QMSを効果的に導入し、その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、KGIの設定、業務内容の言語化、経営層の関与、製品・サービス提供業務の明確化、内部監査の実施という5つのポイントについて詳しく解説します。
KGIを設定する
KGIは「Key Goal Indicator」の略語で、日本語で「重要目標達成指標」と訳されます。これは組織の目標達成のための指標であり、組織全体の品質向上の方向性を明確にするために用いられます。
【QMSにおいてKGIを設定する利点】
・品質目標の具体化:抽象的な目標を数値化し、明確にできる
・進捗管理の容易化:目標に対する達成度を定量的に測定できる
・全社的な方向性の統一:組織全体で共通の目標を持つことができる
また、目標達成に向けて、PDCAサイクルの実施が効果的です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4段階を繰り返すことで、継続的な改善が可能となり、組織の品質向上に寄与します。
【PDCAサイクルの各段階】
・Plan:KGIを含む品質目標を設定し、達成のための計画を立てる
・Do:計画に基づいて実行する
・Check:目標の達成度合いを確認・評価する
・Act:評価結果に基づいて改善策を検討・実施する
このサイクルを繰り返すことで、KGIの達成度を定期的に確認し、必要に応じて目標や計画を見直すことができます。
業務内容を言語化する
業務の手順について定めたマニュアルを作成することは、QMSの効果を高める上で非常に重要です。業務プロセスや手順を明確に定め、マニュアルとして文書化することは、品質の均一化と向上に直結します。業務内容を言語化することで、担当者間での認識のズレを防ぎ、誰が業務を行っても一定の品質を保つことができます。また、新入社員の教育や業務の引き継ぎもスムーズに行えるようになります。
【マニュアル作成時のポイント】
☑明確で簡潔な記述:誰が読んでも理解できる表現を心がける
☑視覚的な要素の活用:フローチャートや図表を用いて、理解を促進
☑定期的な更新:業務の変更や改善に合わせて、マニュアルを更新
☑アクセスの容易さ:全従業員が必要な時にすぐ参照できる環境を整備
経営層が関与する体制を整える
QMSは組織全体の取り組みであり、経営層のリーダーシップが欠かせません。経営者自らが品質向上の重要性を理解し、積極的に関与することで、組織全体に品質意識を浸透させることができます。経営層は、品質方針の策定や資源の確保、組織の戦略的な方向付けなど、重要な役割を担います。
【経営層の関与を促進する方法】
・定期的な品質会議の開催:経営層が直接QMSの進捗や課題を把握する機会を設けます。
・トップマネジメントレビューの実施:経営層がQMSの有効性を評価し、改善の方向性を示します。
・品質方針の策定と周知:経営層が品質方針を明確に示し、全従業員に浸透させます。
・リソースの適切な配分:QMS活動に必要な人材、設備、予算を確保します。
製品やサービス提供業務を明確にする
QMSの規格に定められているのは一般的な事項であり、個々の製品やサービスの細かな違いには対応しづらい面があります。そのため、QMSの規格を自社に合わせて明確にルール化することが重要です。
【ルール化のSTEP】
・現状の業務プロセスの可視化
・規格要求事項と現状のギャップ分析
・自社の特性に合わせたルールの策定
・ルールの文書化と従業員への周知
・運用状況のモニタリングと定期的な見直し
これにより、規格の要件を自社の業務に効果的に適用し、品質管理を強化することができます。
内部監査を実施する
ISO9001などの規格では、組織内部で定期的に監査を実施することが求められています。内部監査は、QMSが効果的に機能しているかを確認し、改善の機会を見出すための重要なプロセスです。
【内部監査の実施ポイント】
・監査計画の策定:年間計画を立て、全部門を網羅的に監査します。
・監査員の選定と教育:公平性を確保するため、自部門以外の監査員を選定し、必要な教育を行います。
・チェックリストの作成:規格要求事項や自社ルールに基づいたチェックリストを用意します。
・監査の実施:書類確認とインタビューを組み合わせて実施します。
・結果の報告と是正:発見された不適合事項について、是正処置を講じます。
・フォローアップ:是正処置の有効性を確認します。
内部監査を通じて、組織全体のQMSの実態を把握し、継続的な改善につなげることができます。
4.QMS導入を成功させるためのデータ活用
QMS活動を効果的に推進し、その効果を最大化するためには、品質にかかわるさまざまなデータを蓄積・分析することが重要です。特に製造業においては、生産活動における稼働状況や不良発生率、不良内容の分析などの情報をデータ化することで、より精度の高い品質管理が可能となります。そこで、生産管理システムなどのITツールを活用することで、蓄積したデータをもとに、製品やプロセスの課題や改善点を的確に見出すことが可能となります。データに基づいた分析は、主観的な判断を排除し、客観的な根拠に基づく意思決定を促進します。
生産管理システムの活用は、このようなデータの収集と分析を効率的に行う上で非常に有効です。システムを導入することで、以下のような利点が得られます。
【生産管理システム導入時のメリット】
・リアルタイムデータの収集:生産ラインの稼働状況や品質データをリアルタイムで収集可能
・データの一元管理:散在していた情報を一箇所に集約し、効率的な管理が可能
・分析の自動化:収集したデータを自動的に分析し、傾向や異常を迅速に把握可能
・レポートの自動生成:定期的な品質レポートを自動で作成し、意思決定を支援
・トレーサビリティの向上:製品の製造履歴を詳細に記録し、問題発生時の原因特定をサポート
【例:生産管理システムの活用による効果】
・稼働状況の可視化:設備やラインの稼働状況をリアルタイムで把握し、生産効率の向上に役立てる
・不良品の原因分析:不良発生の傾向や原因をデータで分析し、再発防止策を講じる
・在庫管理の最適化:原材料や製品の在庫状況を適切に管理し、無駄や欠品を防ぐ
これらの取り組みにより、品質向上だけでなく、コスト削減や納期遵守といった経営課題の解決にもつながります。
テクノアの生産管理システムは、中小製造業向けのDXソリューションとして、これらのデータ活用を強力に支援します。品質管理と生産管理を統合的に行うことで、QMSの導入効果を最大限に高めることができます。
ぜひ、テクノアの生産管理システムをご活用いただき、組織の品質向上と業績向上にお役立てください。
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