「Society 5.0」とは?中小製造業が知っておきたい“超スマート社会”の第一歩

著者:ものづくりコラム運営 「Society 5.0」とは?中小製造業が知っておきたい“超スマート社会”の第一歩
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Society 5.0」「Industry 4.0」といった言葉を耳にしたことはあるけれど、難しそうでよくわからない――。
実はこれらのキーワード、中小製造業の“これから”と大きく関わるテーマです。

これらの言葉が意味する内容や、「超スマート社会」がものづくり現場にどう影響するのかを解説。大切なのは、AIやIoTなどの技術そのものよりも、「今の現場で何を変えられるか」。
まずは“見える化”からはじめることが、未来の第一歩になります。

1.Society 5.0/Industry 4.0ってなに?

「Society 5.0」や「Industry 4.0」という言葉を耳にしたことはあっても、意味までは知らない……という方も多いのではないでしょうか?これらは、日本やドイツがそれぞれ掲げる目指すべき未来像です。

Society 5.0とは、狩猟社会(1.0)→農耕社会(2.0)→工業社会(3.0)→情報社会(4.0)に続く、第5の社会。AIやIoT、ロボットなどの最先端技術を活用し、誰もが快適に暮らせる「超スマート社会」を目指しています。

一方、Industry 4.0は、ドイツ発の製造業における第四次産業革命構想です。スマートファクトリーやサイバーフィジカルシステム(CPS)など、デジタルと現場をつなげて生産性や柔軟性を向上させることが目的です。

日本では、Society 5.0がIndustry 4.0を包含する形で広がっています。

フェーズ 内容
Society 1.0:狩猟社会 人類が狩猟や採集で生活していた時代。移動しながら自然と共に暮らす。知識は経験に頼る原始的な社会。
【特徴】移動生活/自然との共存/知識は経験頼り
Society 2.0:農耕社会 農業の開始により定住生活が広がる。村や共同体が形成され、文化や分業が発展。食料の安定供給が社会の基盤となる。
【特徴】定住生活/農業中心/共同体や文化の形成
Society 3.0:工業社会 産業革命により機械化が進み大量生産が可能に。都市化が進み、農業中心から工場労働中心の社会に変わる。
【特徴】機械化/大量生産/都市化と雇用の変化
Society 4.0:情報社会 コンピュータやインターネットの普及で情報の価値が急上昇。場所にとらわれず働けるネットワーク社会が成立。スマホやクラウド技術が生活を変える。
【特徴】IT化/情報の価値向上/ネットワーク社会
Society 5.0:超スマート社会 AIやIoTなど先端技術で現実世界とサイバー空間が融合。人やモノがつながり、快適で持続可能な社会を実現。効率的で柔軟な働き方・暮らし方が拡大。
【特徴】AI・IoT活用/フィジカル×サイバー融合/持続可能で快適な社会

2.日本が目指す「超スマート社会」とは?

ヒト・モノ・情報がつながる未来像

Society 5.0で描かれているのは、社会全体がデジタル技術によってつながり、効率的で持続可能な社会が実現される未来です。
たとえば、製造業では次のような変化が想定されています。

・工場内の機械がすべてネットワークでつながり、リアルタイムで状況把握が可能になる
・ベテランの経験をデータ化して、若手にもノウハウを継承できる
・生産や物流の計画が自動化・最適化される

これにより、人手不足への対応や品質の安定化、さらには地域全体の活性化にもつながると期待されています。

製造業以外の分野 具体例(期待される変化のイメージ)
医療・健康分野の進化 ・AIやIoTを活用した遠隔診断や健康管理システムの普及で、地域に関係なく質の高い医療が受けられる
・高齢化が進む日本で、働く人や家族の健康を支える重要な分野である
交通・物流のスマート化 ・自動運転車やドローン配送の実用化が進み、物流の効率化・低コスト化を実現
・地方や離島など交通インフラが弱い地域の課題解決にもつながる
エネルギーの効率化
再生可能エネルギーの普及
・スマートグリッドによる電力の需給調整や再生可能エネルギーの効果的な利用で、環境負荷を抑えた持続可能な社会を実現
行政サービスのデジタル化 ・住民サービスのオンライン化やデータ活用による効率的な行政運営が進み、利便性向上や地域活性化に寄与
教育の個別最適化・オンライン化 ・AIを活用した個々に合った学習支援や、遠隔教育の普及で、地域差や年齢差を超えた学びの機会を提供

3.「超スマート社会」は中小製造業にどう関係する?

Society 5.0で描かれているのは、社会全体がデジタル技術によってつながり、効率的で持続可能な社会が実現される未来です。では自分事としてとらえる意味でも、中小製造業にとって何を意識すればいいのかを見てみます。

Society 5.0は大企業だけの話ではない

「Society 5.0って大企業が先行している話で、ウチみたいな小さな会社には関係ない」──そう思う人は少なくありません。しかし、Society 5.0の理念は規模に関係なく、むしろ中小製造業にこそ役立つ部分が多いのです。
たとえば、最新の技術や仕組みを導入することで、限られた人員や資源で効率的かつ高品質な生産が可能になります。一例として製造業では次のような変化が想定されています。

・工場内の機械がすべてネットワークでつながり、リアルタイムで状況把握が可能になる
・ベテランの経験をデータ化して、若手にもノウハウを継承できる
・生産や物流の計画が自動化・最適化される

これにより、人手不足への対応や品質の安定化、さらには地域全体の活性化にもつながると期待されています。
このように、中小企業ならではの柔軟な対応力を活かしながら、技術の恩恵を受けることができるのです。

中小企業が受けやすい具体的な恩恵とは?

Society 5.0は、最先端のデジタル技術を活用し、効率的で柔軟な働き方や生産体制を実現する社会を目指しています。特に中小企業にとっては、大企業にはない機動力や現場の声を活かしながら、無理なく段階的に技術を取り入れやすい環境が整いつつあります。こうした背景から、Society 5.0がもたらす恩恵は単なる最新技術の導入にとどまらず、業務の見える化や情報共有の促進など、現場レベルの具体的な改善につながるのです。

では、具体的には、どのような改善が期待できるのでしょうか?

①ムダやロスの「見える化」
作業の進捗や不具合をリアルタイムで把握することで、無駄な手間や時間を減らせます。これにより、少人数でもスムーズな運営が実現します。
②ムダやロスの「見える化」
書類や記録のデジタル化で情報がすぐに共有でき、属人化を防止。誰でも同じ情報をもとに作業ができるため、品質の安定やトラブル対応も早くなります。
③顧客・仕入先との連携強化
デジタル化された情報を活用して、発注や納期管理が効率化。取引先とのやり取りが円滑になり、リードタイム(納期までの時間)が短縮されます。

 
例えば、とある従業員数10名の工場では、紙ベースで行っていた日報や工程管理をデジタルに切り替えました。これにより、

・作業時間が約15%短縮
・トラブル発生時の原因究明が迅速化
・現場のスタッフ間での情報共有がスムーズに

といった成果が出ています。
このように、小さな一歩から始めても、現場の効率化と品質向上につながるのがSociety 5.0の大きな特徴です。

4.まずは「見える化」から始めよう

Society 5.0の実現を目指すには、無理なく一歩ずつ進める、段階的な取り組みが欠かせません。
この章では、まず現状を知る「見える化」から始め、現場の声を活かしながらシンプルなツールを取り入れ、データを活用した改善を繰り返す具体的なステップを紹介します。
また、全員で未来像を共有しながら進めることや、注意すべきポイントも合わせて押さえましょう。
これらを意識することで、無理なくSociety 5.0に向けた変革を進められます。

STEP1:現状把握と「見える化」から始める

まずは自社の業務や生産現場の現状を把握し、ムダや課題を見える化することが大切です。紙やExcelのデータを活用してもよいので、できる範囲で業務の流れや進捗、トラブルの原因を整理しましょう。
注意点:完璧を目指さず「まずは小さく始める」(デジタル化の範囲は徐々に拡大)

STEP2:現場の声を積極的に取り入れる

製造現場や事務所など担当者の意見や困りごとをしっかりヒアリングし、現場目線で改善策を検討することが大切です。現場が納得しないまま進めると定着しにくいなどデメリットがあります。
注意点:トップダウンだけでなくボトムアップの意見も重視

STEP3:シンプルなデジタルツールの導入からスタート

いきなり高度なAIやIoTを導入するのではなく、まずは日報のデジタル化や進捗管理アプリなど、使いやすいツールから試すことも重要です。また、現状把握のステップで洗い出した課題から、何から着手すべきなのかを明確にしておくことで、ITツールの選定や稼働範囲の決定に役立ちます。
注意点:操作が難しすぎたり複雑すぎるツールは逆効果(現場のITリテラシーに合わせる)

STEP4:データを活用して業務改善を繰り返す

集めたデータをもとに、どこにムダがあるか、どの作業を効率化できるかを分析します。成果だやデータの確認だけでなく、分析結果や各部署からの状況をヒアリングすることで、改善策を講じ、さらに調整を行ことができます。
注意点:一度で完璧を求めず、PDCA(計画→実行→評価→改善)を回し続けることが重要

STEP5:中長期的なビジョンを共有しながら進める

Society 5.0は一朝一夕で実現できるものではないため、社員全員で「将来こうありたい」というビジョンを共有し、段階的に変革を進める姿勢が求められます。
注意点:変化に対する抵抗や不安を無視せず、丁寧にコミュニケーションをとる

その他の注意点

・IT投資は計画的に
予算や人材に限りがある中小企業は、投資効果を見極めて無理のない範囲で進めることが大切です。
・セキュリティ対策の徹底
デジタル化が進むほど情報漏洩リスクも高まるため、基本的なセキュリティ対策は必須となります。
・外部支援の活用
補助金や専門家の支援制度を積極的に利用することもおすすめです。

 

5.未来を前向きにとらえるヒント

難しい言葉にふりまわされないで

Society 5.0やIndustry 4.0と聞くと、「難しそう」「自分たちには関係ない」と感じてしまうかもしれません。でも実際には、“より働きやすく、持続可能な会社づくり”のためのヒントがたくさん詰まっています。改めて、Society 5.0とは、ITツールやAIといった最先端技術を活用し、経済成長と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会の実現を目指すものです。

【超スマート社会とは?】
☑データ共有や連携の課題:ITツールやIoTで「ヒトと情報」「ヒトとモノ」がつながり、新たな価値が生まれる社会
☑データ活用の課題:AIの活用で必要な情報がすぐに得られる社会
☑様々なニーズへの対応:最先端技術で可能性の幅を広げ、イノベーションにより様々なニーズに対応可能な社会
☑人手不足や工数の課題:ロボットなどの技術を活用し、ヒトがすべき仕事の幅や可能性が広がる社会

中小製造業にとって大切なのは、「無理なく、小さく、でも確実に変化を始める」こと。技術よりも“目的”が先です。
そして、Society 5.0の視点は「これからのものづくり」を考えるうえで大きな武器になります。
未来は、知ることから始まります。

よくある質問Q&A

Q1.IoTって何ができるの?
A1.機械やセンサーからデータを集め、稼働状況を把握したり、異常を早期に検知したりできます。
Q2.Society 5.0は製造業にどう関係あるの?
A2.生産性の向上、労働環境の改善、働き手不足への対応など、中小製造業の課題解決につながります。
Q3.小さな工場でも始められることはある?
A3.図面や帳票、作業記録のデジタル化など、すぐ始められる取り組みがたくさんあります。
Q4.何から手をつければいいか分からない…
A4.まずは「現場の見える化」から。日々の業務を“見える形”にすることが第一歩です。

 

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